太田述正コラム#3987(2010.5.4)
<皆さんとディスカッション(続x823)>
<midshipman>
≫地方分権を推進することでしょう。…そうなれば、政治家が推進すべき政策がなくなってしまうので、否応なしに外交や安全保障を手がけざるを得なくなり、「独立」気運も出てこようというものです。≪(コラム#3985。太田)
我が国にとって、地方分権または9条解釈変更、もしくはその両方が成されることは、確かに必要です。
しかし、今だに護憲か改憲の低次元な議論に終始し、問題の核心たる安全保障のガバナンスに関する議論が公の場で見られないことを考えると、地方分権や9条解釈変更は夢のまた夢ではないでしょうか?
<太田>
そうかなあ。
今じゃ、猫も杓子も地方分権って叫んでるし、集団的自衛権(の少なくとも一部について)政府解釈を変更することは、ミサイル防衛がらみ・・グアム等に向けて発射された北朝鮮等の弾道弾を米国は日本に打ち落として欲しい・・で焦眉の急になってますよ。
<太田>(ツイッターより)
日本の右翼や「タカ」派がNHK大河ドラマ<(コラム#3985)>を糾弾しないのはどうしてかしらん?
<lhasa0619>(同上)
NHK自体を散々糾弾してますよ。
NHKに1万人の集団訴訟してるの、ご存知ですか?
<takimaru310>(同上)
<大河ドラマなんて>最初から見てないのですよ。
<8ko1u>(同上)
今どき大河なんては観ませんよ。
<jaguar321>(同上)
すでにNHKそのものを糾弾・集団訴訟しているから、でしょうかね。
典拠なしで突然すみません。
<太田>
その集団訴訟、
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/media/090812/med0908121417000-n1.htm
知ってるし、それはそれで大変結構なことだけど、もっと大本を追求しなくっちゃ。
<tjan>
太田述正なる「脳内アングロサクソン崇拝者」は、中国を「支那」だの「中共」だのと呼んでいるが、それなら日本は「小日本」とか「倭奴」とよばれてもいいのか。
<太田>
コラム#294読んでから、もう一度投稿してごらん。
<kt2>
・・・日本人から「支那」とか「中共」とか呼ばれると、大多数の中国人はtjanさんと同様に差別されていると感じるのでしょうか?
もしそうなら、こちらに差別するつもりがなくても、中国人の嫌がる呼び方をあえてする必要はないので、改めるべきでしょう。・・・
tjanさん、コラム#294 はこれです。
http://blog.ohtan.net/archives/50955539.html
「しかし私は、「中国」は中華民国または中華人民共和国を指す言葉であるのに対し、地理的呼称であるChinaと同義の日本語として、「支那」に代わる適当な言葉がないので、今後とも地理的呼称としては「支那」を使わざるをえない、と考えています。」(コラム#294より)
中国(地理的呼称)としたら?
<kt2>
≫免疫学者で能の新作を何本か書いたことでも知られる多田富雄氏の追悼文が出ていました。↓≪(コラム#3985。太田)
http://www.nytimes.com/2010/05/03/health/research/03tada.html?hpw
“Everyone accepts that regulatory T cells are suppressor T cells, except the vocabulary has changed,” said Mitchell Kronenberg, a scientist and president of the La Jolla Institute for Allergy and Immunology.
はなむけかな。
“Dr. Tada did the pioneering work in bringing forth the concept of immune suppression, which is a fundamental and correct concept in immunology.”
これはその通り。
免疫学の論文引用ランキングを見ると、
http://www.rbbtoday.com/article/img/2010/04/14/67071/101137.html
大阪大学が世界5位。岸本忠三元総長はノーベル賞候補かな?
一方、国立感染症研究所が世界173位(307機関の中で)。
わが国の感染症対策のオソマツさを”省庁”しているみたい。
それでも、医学部<は>文系学部よりずっとましですね。
<太田>
投稿される方は、できれば、英文を翻訳していただけるとありがたいですねえ。
<mslansing>(ツイッターより)
コラム<#3985>末の<一人題名のない音楽会の>ロシアン・タンゴがサイコーでした。
<太田>
そいつはどうも。
ロシア・タンゴを聴いてたら、日本の戦前のモボ、モガの姿が髣髴としてきたなあ。
<宮里立士>
5月1日の皆さんとのディスカッション(コラム#3981)中の「沖縄県立平和祈念資料館」についてコメントを差しあげます。
「沖縄県立平和祈念資料館」は、たしか10年ほど前にリニューアルしたはず。
私はその前の20数年前に訪れたことがあります。
数年前、同祈念館を訪れたことのある友人が、日本軍や戦前の日本がいかに悪かったかを、沖縄戦と関係ないところまで拡張して「洗脳」しようとする意図がミエミエでうんざりしたと言っておりました。
私が訪れたころ(1980年代)は、兵士や看護婦として沖縄戦を経験した人たちがまだまだ多くご存命で、「洗脳」の場、というよりも、慰霊の想いを濃くする場という雰囲気がありました(それでもやはり、戦前日本や日本軍を否定的に置き、戦後を「平和」な時代とする前提はあったように思いますが……)。
どうも実際、戦前を知らない世代が増えるにつれ、この種の「洗脳」は強化されつつあるようですね。
沖縄戦で学徒動員された看護婦部隊は「ひめゆり部隊」が有名ですが、ほかにも「しらうめ看護隊」などあります。沖縄でもさほど知られておらず、その祈念塔も以前は、中に収められたお骨が見えるような状態だったという話を聞いたことがあります(今は改善されているかもしれませんが)。
ただ、個人的には戦死した旧制女学校の生徒(14~17歳くらいの)の写真が一面に貼り出されている展示場面で、そこに「宮里」や、「比嘉」、「金城」、「城間」といった身近な名まえが記されているのを見て、とても悲しくなりました(これはいまの祈念館にもあると聞きましたが……)。
遺書などがそのまま掲げられており、それらは後世の「解釈」を拒むものであったと記憶しております。
地方の神社に行くと支那事変、大東亜戦争戦没兵士の遺影が神社内部に一面に飾ってあるところがあり、大分の田舎で偶然、そのような無人の神社に入り驚くというか、異様な感動を受けたことがあります。
そのとき先の体験が甦りました。
また、「対馬丸祈念館」という、沖縄戦直前に九州に疎開しようとした学童を乗せた船をアメリカの潜水艦が撃沈した悲劇を伝える祈念館もあって、その展示は、ヘンな「洗脳」の意図はあまり感じられず、良かったのですが、その周囲にタバコの投げ捨てや空き缶などあり、少し汚れた感じがありました。
一緒に来た友人(沖縄出身で東京在住)が、「靖国神社はその周りも清浄なのにこの落差は何だ」と歎いておりました。
長々と感想を書き連ね失礼いたしました。
<太田>
なるほどね。
防衛庁時代に沖縄に出張で何度か行きましたが、(日本軍が最後まで抵抗した)摩文仁の丘や、ひめゆりの塔、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%96%E7%B8%84%E6%88%A6%E8%B7%A1%E5%9B%BD%E5%AE%9A%E5%85%AC%E5%9C%92
そして海軍壕
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E8%BB%8D%E5%8F%B8%E4%BB%A4%E9%83%A8%E5%A3%95
を見学した記憶はあるのものの、摩文仁の丘にある平和祈念資料館を見学した記憶がありません。
たまたま時間がなかったのか、案内してくれた沖縄の防衛庁の人があえて避けたのかは分かりませんが。
話は変わります。
今、「選択の自由という重荷」シリーズをコラム連載中(未公開)ですが、私有自楽さんから、このシリーズに関連して、5年ほど前に、上田令子さん(コラム#828、810、811、813、3047)が、ご自身のブログで取り上げたところの、10年ほど前に塩野七味が日経Article連載コラム『昔も今も』のうちの1篇として書いた「自由–自分で判断するのは疲れる」が送られてきました。
塩野さんは、「社会主義国から自由主義国への脱出に成功し・・・たというのに、・・・再び共産国へのもどりたいと願う人々を収容する・・・ウィーンの難民収容所のドキュメンタリーを見て・・・マキャベリ<が>・・・「民衆といういものは、善政に浴しているかぎり、とくに自由なぞを望みもしなければ、求めもしないものである…と言った」ことを思い出した、というのです。
戦後日本は、「自分で判断するのは疲れる」と、「自由」を上記「難民」のように自分で放棄して、米国の属国となり、宗主国米国に外交と安全保障の基本を委ねてきました。
こうして戦後の日本人は太平楽な毎日を送ってきました。
とりわけ、戦後日本の政治家稼業は気楽なものでした。
その行き着いた先が、極楽とんぼのような、安倍、福田、麻生、鳩山という一連の首相の出現です。
しかし、上記マキャベリの警句を援用して申し上げれば、腕っ節だけは強いけど、戦前の日本の仇敵であって、しかも戦前の日本に比べて当時も今も数段アホな米国に、国の最重要な事柄の「判断」を委ねた戦後日本の愚かさを、一体何と形容すればいいのでしょうか?
それでは、記事の紹介です。
「オバマ政権の高官たちが鳩山由紀夫首相をloopyだとみなしているという米側の報道が話題を呼んだ。この英語の意味が「愚か」にせよ、「現実遊離」にせよ、実感は遠まわしながらよく伝わってくる。だが私が最近、聞いた、もっと直截な言葉はcontempt(軽蔑)である。・・・
保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のブルース・クリングナー上級研究員<は>・・・「日本はアジアでも無意味となりかねない」という題」<の>・・・論文・・・<で、> 「日本は日米同盟からいつも安全保障や経済の最大利益を得ながら、米側に対しては最小限の互恵のジェスチャーをみせるだけだ。経済力を政治や安保に転化できず、当の経済力も溶解し始めた・・・
日本の一部の識者は自国の『ソフトパワー』を強調するが、これも政治的影響力に転化はできず、安保上の責任を避けるための言い逃れにすぎない。ソフトパワーなるものは安保の責務を補強はできても代替はできないのだ・・・
<日本は、>アジアの危険な戦略環境に対し防衛費を8年連続で相対的に減らし、集団的自衛権も禁じたまま、自衛隊の国際貢献には愚かなほどの制約を課し、中国その他の諸国が国際安保への寄与を増大していることから目をそらし<てきた。>」などと指摘する。
そうなると日本の無意味化の責任は自民党にも帰されることとなる。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100504/plc1005040255002-n1.htm
↑私は、「<米>国政府が、日本による米軍駐留経費の負担を維持させたいという思惑もあって、・・・表面化していないだけ<で、>・・・日米関係はかなり危機的な状況にある」(拙著『防衛庁再生宣言』4頁 2001年)と以前から言い続けてきたけど、それが、政権交代の「功績」で表面化してきたってわけだ。
あーた、そんなことに今頃気づいたのかい?
自民党べったりの論陣を張り、吉田ドクトリンの延命に力を貸してきた「右」の産経や讀賣、とりわけ産経の責任は大きいぜ。
古森義久記者を始め、これまでの産経の編集関係者や主要政治記者は、この際、全員頭を丸めたらいかが?
中共当局もバカだねえ。
上海万博でどれだけ宣伝しようと、これじゃ台無しだぞ。↓
「・・・<韓国>政府消息筋は「4月30日の韓中首脳会談で(中国の)胡錦濤国家主席は、李明博(イ・ミョンバク)大統領に対し『天安』沈没事故について、慰めの意を伝えるとともに、韓国政府の客観的事故調査を評価すると語った。韓中首脳会談から3日後に中国が金総書記の訪中を認めたことはにわかに納得しにくい」と述べた。・・・
金総書記の訪中をわずか3日後に控えた時期に、胡主席は李大統領に(金総書記に訪中について)一言も触れなかったことになる。韓国側関係者は「李大統領は胡主席に対し、『天安』の事故原因について、それまでの調査結果を説明し、(韓国の)立場を十分に伝えており、中国もそれに沿って対処するとみている」としていた。
政府内部では、国際社会が「天安」事故の推移を注視しているだけに、中国も金総書記の訪中を直ちに受け入れるのは困難との予測があった。ある関係者は「金総書記の訪中を受け入れた中国の決定に困惑し、都合の悪さを感じているのは事実だ」と語った。・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20100504000008
金欠病を背景に、米国防長官は、海軍本体については、空母(空母機動部隊)が多すぎると言い出したけど、海兵隊については、その存在根拠にすら疑問を投げかけた。
ゲーツさんよ、在沖海兵隊は潔く廃止しようぜ。↓
・・・“Do we really need 11 carrier strike groups for another 30 years when no other counry has one?”・・・Defense Secretary Robert Gates・・・said. “Any future plans must address these realities.”・・・
“We have to take a hard look at where it would be necessary or sensible to launch another major amphibious landing again ? especially as advances in antiship systems keep pushing the potential launch point further from ashore,” Gates said. “On a more basic level, in the 21st century, what kind of amphibious capability do we really need to deal with the most likely scenarios, and then how much?”・・・
http://www.csmonitor.com/USA/Military/2010/0503/Defense-secretary-signals-he-ll-reassess-Navy-Marine-Corps-programs
下掲の記事↓が、女性のセックス依存症(セックス中毒)「患者」に対するキリスト教団体の治療方針の中に、ポルノ、オナニー、淫らな妄想を悪とする発想があることを紹介しているところ、
http://www.nytimes.com/2010/05/03/us/03addiction.html?src=twt&twt=nytimes&pagewanted=print
このような発想を批判する記事が、米スレート誌の関係誌に出ていました。
(セックス依存症そのものを否定しかねない論調はともかくとして、)私もそう思います。↓
・・・Sexuality is more like a muscle, and if you don’t use it, you lose it. One reason many women have trouble orgasming in a sexual relationship is they don’t masturbate enough, and they have trouble knowing what works and what doesn’t. Indeed, the research links losing your virginity later in life to experiencing more sexual dysfunction. ・・・
http://www.doublex.com/blog/xxfactor/addicted-orgasm
なお、上記記事中に登場する、’<one> losing・・・virginity later in life・・・experienc<es> more sexual dysfunction’ を指摘した研究が、2年半前の以下の記事で紹介されています。↓
http://abcnews.go.com/print?id=3932047
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太田述正コラム#3988(2010.5.4)
<選択の自由という重荷(その4)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x823)
- 公開日:
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100504-00000043-jij-soci
中国調査船がEEZ内に=海保に測量中止要求-奄美沖・外務省が抗議
とってもクールな太田さんは、最近の中国の不穏な動きに関して、特に感想はないのでしょうか?私も極力、努めて冷静にこれが何を意味しているのか考えているのですが、見えません。狙いは、単に性器の大きさを自慢したい程度のハッタリなのか、領土・資源を本当に狙っているのか。ただ、鳩山政権にとっては、沖縄駐留米軍の必要性の言い訳にはなるので、追い風かも知れませんね。
しかし支那程度の言葉で言葉狩りする人は、
東シナ海や、南シナ海も、東中国海とか南中国海とか呼べと言うんですかね・・・。
当のメインランド・チャイナの人に支那人と呼ばれてイヤかどうか聞いてもなんの拒絶反応もありませんけどね。
対人民解放軍の安全保障戦略ですが、
確かに現状では中国の原潜やディーゼル動力の潜水艦は、静粛性においてはロシア艦にも及ばず、(22ページ参照)
http://www.fas.org/irp/agency/oni/pla-navy.pdf
昨年の暮れに黄海で実施したゴルフ級攻撃型原潜の海中発射大陸間弾道ミサイルテストもマンガのような結末で失敗に終わってますが、
http://www.freerepublic.com/focus/f-news/2437433/posts
潜水艦については、2025年までに現在の60-61隻体制から78隻までに増えると予想され、中共が将来的に大規模な軍事行動という愚行にでないまでも、彼らのルールで西太平洋~アンダマン海に影響力を及ぼして、彼らが自分たちの外交政策を優位に運ぶために海軍力を増強して、自由主義への挑戦として低強度紛争に発展させする下手な示威警備航海など冒険的意志を挫く必要はあると思いますが・・・。
http://s3.amazonaws.com/thf_media/2010/pdf/bg_2367.pdf
将来的にはこのような事態を予防するために日本がイニシャチブととって、オーストラリア、シンガポール、インドネシア、タイなどと共同してSOSUS網の拡充などの監視体制や共同防衛を構築していくことが望ましいと思いますが、いかがでしょうか?