太田述正コラム#3726(2009.12.24)
<ウッドロー・ウィルソン(その1)>(2010.5.6公開))
1 始めに
 本日のディスカッションでちょっと言及した、ジョン・ミルトン・クーパ-・ジュニア(John Milton Cooper Jr.)のウッドロー・ウィルソン(1856~1924年。大統領:1913~21年)(コラム#312、597、624、1073、1373、1630、2054、2102、3028、3043、3574、3586)の伝記 ’Woodrow Wilson: A Biography’の概要を、書評(下掲)をもとにご紹介しましょう。
A:http://www.csmonitor.com/Books/2009/1223/Woodrow-Wilson-A-Biography
(12月24日アクセス。以下同じ)
B:http://www.nytimes.com/2009/12/13/books/review/Gage-t.html?_r=1&pagewanted=print
C:http://www.post-gazette.com/pg/09326/1014899-148.stm
D:http://www.newsweek.com/id/223507
E:http://www.goodreads.com/book/show/6551739-woodrow-wilson
 ちなみに、クーパーは、ウィスコンシン大学マディソン校の歴史学者です。(A)
2 ウッドロー・ウィルソン
 (1)序論
 「歴史家達が米国の大統領のランクづけをすると、ウッドロー・ウィルソンはほとんどいつも上位10番までには入る。
 <高いランク>は、成功裏に戦争を行った指導者に与えられる名誉のように見える。
 、・・・<実際、>いつも上位3番までを占めるのはリンカーン、ワシントン、そしてフランクリン・ローズベルトだが、うち2人は戦時の大統領だったし、1人は将軍だった。
 ところが、この威風堂々たる万神殿(Pantheon)に祭られている他のメンバー達の評判に比べると、ウィルソンの評判は、はるかに下の方だ。・・・
 今日においては、いっぱしの著名人でウィルソンに関心を持っているように見えるのは、フォックス・ニュースのホストのグレン・ベック(Glenn Beck)くらいなものだが、彼は、現在の「社会主義的」苦難のルーツは、ウィルソンの大統領時代の所得税、戦争プロパガンダ、そして怪しげな金融界の大物達にまで遡ると主張している。・・・
 <このウィルソンという人物は、>彼の国際連盟を巡って挫折した闘争から生まれた二つのステレオタイプたる、冷たい知識人でもなければ浮世離れした救世主でもなかった。
 いや、彼は「ウィルソン的」人物ですらなかったのだ。・・・」(B)
 (2)大統領になるまで
 「トーマス・ウッドロー・ウィルソンは、南北戦争直前にヴァージニア州ストートン(Stauton)で生まれた。
 彼の父親は、長老派(Presbyterian)の牧師であり、ウィルソンは宗教的な環境で育ったので、神がこの世界に内在(immanent)しているという感覚を心に染みこませた。・・・
 普遍的、米国的、キリスト教的・・ウィルソンは、これらの言葉を殆ど同義語として用いた。・・・」(D)
→ウィルソンは、文字通りのキリスト教原理主義者だったわけです。(太田)
 「・・・ウィルソンは、プリンストン大学に入学するまで、いくつかの南部の州に住んだ。
 彼は、短期間、(鬱々と)弁護士業に従事してから、ジョンズ・ホプキンス大学で博士号をとり、米議会における意思決定についての、極めて高く評価されたところの、研究書を著した。・・・」(A)
 「・・・大学教授としてのウィルソンの担当科目は米国史だった。・・・」(C)
 「・・・そして<彼は>、プリンストン大学の学長になった。・・・」(D)
 「・・・ニュージャージー州の知事に選出された後、2年経った時点で、彼は大統領に選出された。・・・」(D)
 「・・・<大統領時代、>彼は、仕事に9時前後に現れ、昼食に1時間かけ、午後遅くにはもう退出してドライブをしたりゴルフをしたりした。・・・
 ・・・<米国を>第一次世界大戦に参戦・・・<させた>翌年、ウィルソンには、恋に陥り、再婚し、3週間の新婚旅行に出かける時間があった。・・・」(B)
→マイケル・ダグラス(Michael Douglas)主演のアメリカン・プレジデント(The American President)
http://en.wikipedia.org/wiki/The_American_President
を、ちょっと思い出させるような話ですね。(太田)
(続く)