太田述正コラム#4009(2010.5.15)
<豊かな社会(アングロサクソン論2)(続)(その1)/皆さんとディスカッション(続x834)>
1 始めに
本日は、投稿も記事も乏しいことから、今読んでいる ‘A World by Itsef–A History of the British Isles’ から、表記に関連する箇所を抜き出してご覧に供することにしました。
2 イギリスの豊かさ
(1)ローマ時代
「ローマは、ブリテン島において、オリヴァー・クロムウェルが出現するまで、恐らくは同島におけるその後のどの統治者が賄うことができたものよりも大きな軍隊を維持した。
ローマ軍は、職業兵士集団であり、給与が支払わなければならなかった上、しばしば賄賂を要求する代物だった。
こんなにカネのかかるブリテン島がいかにローマにとって重要であったかは、皇帝や将来の皇帝でここにやってきて死亡さえした者が多数にのぼったことから分かろうというものだ。
確かに、初めてブリテン島を征服したクラウディアス(Claudius)<(コラム#2317)>は、ドーバー海峡のこちらにはわずか16日間しかいなかったけれど、彼の<ブリテン島征服>兵団のうちの一つは将来の皇帝であるヴェスパシアヌス(<Titus Flavius >Vespasian)<。9~79年。コラム#3618に登場した同名の皇帝の父親
http://en.wikipedia.org/wiki/Vespasian (太田)
)> が司令官だった。
皇帝セプティミウス・セヴェルス(Septimius Severus)<(コラム#2317、3487)>は、ピクト人への遠征の最中に211年にブリテン島で亡くなった。
コンスタンティウス(<Flavius Valerius >Constantius<。250?~306年
http://en.wikipedia.org/wiki/Constantius_Chlorus (太田)
>)も同じく306年に亡くなった。だから、彼の息子のコンスタンティヌス(Constantine)<(コラム#413、1026、1761、2766、3475、3483)>はヨークで皇帝に推戴された。
コンスタンティヌスは、更に2~3回この地を訪問した可能性がある。
コンスタヌス(<Flavius Julius >Constans<。320~350年。コンスタンティヌスの息子
http://en.wikipedia.org/wiki/Constans (太田)
>)は、342年か343年の冬に慌ただしい訪問を行っている。
将来の皇帝のテオドシウス(Theodosius)<(コラム#413、2486、3475)>は、彼の父親と一緒に、<ブリテン島における>軍事的態勢を立て直すために、368年から369年にかけてやってきた。
そうである以上、<ローマ人が>ブリテン島をどうでもいいとかとっかえがきく存在であるなどと思っていなかったことは確かだ。
どうしてローマ帝国は、かほどもお値段の張った粘り強さでもってこの地にしがみついたのだろうか。・・・
ブリテン島の鉱物資源は極めて貴重であったに違いない。
少なくともローマ時代末期における、ブリテン島の繁栄とその諸処における人口の多さという印象からすると、300年頃の賛辞陳述者による、ブリテン島では租税収入をたくさんあげることができるという、極めて注目すべき言明はもっともだということになるかもしれない。
358年から359年にかけて、皇帝ユリアヌス(Julian)<(コラム#413、3483)>が、ブリテン島から、穀物をライン河地域におけるローマ軍に輸送艦隊を仕立てて供給した、という注目すべき話は、ブリテン島が、北アフリカに比肩しうるローマ帝国のパン籠であったかもしれないことを示唆するものだ。」(PP72)
「ローマによる征服より何世代も前から、既に、貨幣はブリテン島南部の鉄器時代の小王国群によって鋳造されていた。しかし、ローマ時代のブリテン島の多くの地域で貨幣はより大量に用いられた。
貨幣がかなり用いられたことは、<ブリテン島の>すべてではないけれど、広汎な地域で、一般の用に供される製造された商品、とりわけ陶器が入手可能であったことと関連している。
ローマ時代のブリテン島は、かくして、それ以前よりも、そしてその何世紀も後よりも、いくつかの意味において、はるかに「近代的」な経済を発展させていたのだ。・・・
<既に、ローマ時代になる前から、>イギリスの広汎な地域で、農場、そして通路と小さい道路が既に張り巡らされていた可能性が極めて高い。」(PP7)
「この何十年というもの、かなりの数の学者は、4世紀のローマ時代のブリテン島の人口が400万人付近であると示唆してきたし、推定によっては、700万人近かったのではないかとあえて指摘する者もいる。
1086年のイギリスの人口は(我々にとっての最初の包括的調査録であるドゥームズデイ・ブック(Doomesday Book<。ウィリアム征服王によって1085~86年に実施された検地の記録
http://en.wikipedia.org/wiki/Domesday_Book (太田)
>)に立脚して)しばしば300万人未満という結論が下されている。
この二つの数字を比較すると、我々は色々考えさせられる。」(PP8)
このように、イギリスは、産業革命からどころか、何とアングロサクソンの国になる以前から、欧州大陸の中で、極めつきに先進的な豊かな地であったのです。
(続く)
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<太田>(ツイッターより)
皆さんの「私の考えを形作った本」、教えて!
<文十郎>
井沢元彦 「逆説の日本史」シリーズと樋口清之 「逆日本史」シリーズです。
各事柄の正当性は歴史学業界にお任せして、歴史に対して色々と理由を考えるきっかけとなりました。
<太田>
6月5日(神戸)と6月26日(東京)に予定されている私の講演会(オフ会1次会)での「講演」のテーマでもあるので、よろしければ他の方もお聞かせ下さい。
なお、神戸のオフ会(コラム#3989)の申込みは、下掲↓から。
http://www.ohtan.net/meeting/
それでは、記事の紹介です。
キモー。↓
清華大学が池田大作氏に名誉教授の称号を授与・・・
http://j.peopledaily.com.cn/94474/6985621.html
昔の別の淫行がばれた(?)ポランスキー監督、大ピンチ。↓
・・・ Los Angeles County prosecutors have met with a British actress who claims she was sexually abused by director Roman Polanski in his Paris apartment when she was 16 – years before she appeared in one of his movies.
Charlotte Lewis, 42, said Friday that the filmmaker abused her “in the worst possible way” in the 1980s. ・・・
The alleged assault took place four years after Polanski had unlawful sex with a 13-year-old girl in the U.S., Lewis said, which would put the alleged assault date at 1982. Lewis later had a role in Polanski’s 1986 movie, “Pirates.” ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/05/14/AR2010051403761_pf.html
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一人題名のない音楽会です。
ロシア・タンゴのからみで、今回はポーランド・タンゴ特集をどうぞ。
前者に比べて後者は全般的に軽快な感じがします。
それにしても、戦前の欧州や日本っていい時代だったって思いませんか?
Never more/Never again
http://www.youtube.com/watch?v=PwxRvmhzulA&feature=related
Love will forgive you everything
http://www.youtube.com/watch?v=Gere_K02mGE&feature=related
Tango Notturno
http://www.youtube.com/watch?v=Y-MUkQe9GbI&feature=related
同じ曲を女性歌唱でどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=tMjtIN-RFlQ&feature=related
Serce matki(Mother’s Heart)のポーランド版原曲。
http://www.youtube.com/watch?v=4IRVSxV80UQ&feature=related
でもロシア語版(コラム#3985)↓の方がいいのは何故でしょう?
http://www.youtube.com/watch?v=4iMz6VtkpJA&feature=related
Pamietam Twoje oczy
http://www.youtube.com/watch?v=Fa9k8ff3l8c&feature=related
GRAJ SKRZYPKU(Play fidler, play !)
http://www.youtube.com/watch?v=dkt_IebF0bw&feature=related
同じ曲を女性歌唱でしかも今風編曲でどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=eEvIz6psEUQ&feature=related
Golden chrysanthemums
http://www.youtube.com/watch?v=djJGEWeeNUo&feature=related
przedwojenna Warszawa 原曲はドイツ人Joe Rixner 作曲のBlauer Himmelです。
http://www.youtube.com/watch?v=DQH0fWXRv4I&feature=related
タイトルの表示不可能。酒飲み讃歌らしいです。
http://www.youtube.com/watch?v=8OfagR1wBiA&feature=related
Autumn Roses
http://www.youtube.com/watch?v=ybI4-vnL4Js&feature=related
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太田述正コラム#4010(2010.5.15)
<帝国陸軍の内蒙工作(その5)>
→非公開
豊かな社会(アングロサクソン論2)(続)(その1)/皆さんとディスカッション(続x834)
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