太田述正コラム#4105(2010.7.2)
<皆さんとディスカッション(続x880)>
<ΒΒωω>(「たった一人の反乱」より)
こういう見識のある人は今の防衛省にはいないのかねえ・・?
いたとしても出世はできないんだろうなあ・・・。
<太田>
見識とは何ぞや?
<ΒωωΒ>(同上)
≫アメリカ人の歴史認識を改めるのは難しそうだ≪(コラム#4103。takahashi)
アラン・ミレット(海兵隊のretired colonelだから米国人だと思う)
http://mershoncenter.osu.edu/people/faculty/bio%20pages/millett.htm
の研究報告の5~7ページの「戦略」の節に書かれてるんだけど↓、長谷川等の主張で、アラン・ミレットの歴史認識は改まったと理解していいのかなあ?
日本語がむずかしくて、よく分からんorz。
「1945 年7月から8月に日本の政治エリートが抱えた内省と葛藤は、日本の文献等をもとに検証しても、「決断力」の問題について回答をもたらすものではない。
しかしながら、日本に同情的でありながら戦時中のアメリカの行動の擁護者であるハーバート・ファイスとロバートJ・C・ビュトーによる「通説」に比べれば、日本が降伏を受け入れた過程をより微妙なニュアンスで、かつ同情的な見方をすることができる。
日本を犠牲者と定義することによって、ファイスらの研究は、その後の入江昭やジョン・ダワーの被害者の視点からの分析を奨励することとなった。しかしこれらの研究は、1945年における捨て身の日本外交を正当に評価していない。
天皇制の維持こそが明らかに日本の外交を動かしていたのである。ただし、日本のこの中心的な目標が、他の国益や目標を排除することはなかった。
その他の目標とは、ソビエト連邦の北アジアにおける勢力拡張を鈍らせること、海外に居住する500万人の日本人を帰還させること、アジアにおける反帝国主義の擁護者であり続けること、報復的な占領をかわすこと、ソビエト連邦から革命が飛び火するのを阻止すること、そして近代的な経済インフラを維持すること、であった。
アメリカの歴史家たちが二発の原爆の使用に固執することを選ぶのであれば、戦後の日本を形作ってきた実質的な問題は日本の有識者たちの研究分野として彼らに任せることができる一方で、アメリカの歴史家は以上の知的な非難を受け続けるべきである」(脚注5)。
(脚注5)
以下などを参照。
Yukiko Koshiro, “Eurasian Eclipse: Japan’s End Game in World War II,” American Histori al
Review 109 (April, 2004) pp. 417-444; and “Japan’s World and World War II,” Diplomatic History 25 (Summer, 2001) pp. 425-441
交渉における日本の基本的立場については、以下の記述を参照。
John Dower, Emb acing Defeat: Japan in the Wake of World W r II (W.W. Norton, 1999); Tsuyoshi Hasegawa, Racing the Enemy: Stalin, Truman and the Surrender of Japan (Belknap Press, 2005).
核兵器の開発問題に焦点を絞り、西側の視点からみた降伏後の政治については、非常に良い記録も存在している:
Leon V. Sigal, Fighting to a Finish: The Politics of War Termination in the United States and Japan, 1945 (Cornell University Press, 1988);
Richard B. Frank, Downfall: The End of the Imperial Japane e Empire (Random House, 1999).
アメリカの歴史観の狭量さを示す最善の例としては、以下を参照。
Michael J. Hogan, ed., Hiroshima in History and Mem ry (Cambridge University Press, 1996).」
http://www.nids.go.jp/event/forum/pdf/2007/forum_j2007_05.pdf
http://www.nids.go.jp/event/forum/j2007.html
<太田>
連日、読者諸氏からこれだけ資料の提供を受けたんじゃ、これら資料の一部を使って、今晩あたり、ハセガワ論争とでも銘打って非公開コラムに無理矢理仕立てあげるかな。
ウー、夏なのに暑苦しいこっちゃ。
一点だけ。
アラン・ミレットの言っている「天皇制の維持」を「日本の自由民主主義化を可能にした天皇制」と読み替えれば・・というより、より正確に言い換えれば・・、全面的に彼の言うことに賛成だね。
<eno>
質問です。
消費税の話題が世間を占めるようになっていますが、天下りはどうするつもりなのでしょうか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/781?page=2
自民党は癒着構造にあり、天下り禁止はできないのはわかるのですが、現政権が、増税とともに天下り禁止を少しでも言ってもいいと思うのですが。
それともまさか現政権まで癒着構造を作ろうとしているんでしょうか?
<太田>
政官業の三位一体的癒着構造から政が脱落しつつあります。↓
「かつて自民党の集票マシンといわれた業界団体。政権交代後は自民党離れが進むが、参院選では民主党への支持も広がっていない。中央の推薦方針と地方対応が食い違ったり、民主、自民両党の候補を推薦する事実上の自主投票も多く見られ、対応は入り乱れている。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010070202000065.html
政権交代の霊験あらたかだと言うべきでしょう。
しかし、官と業の癒着はまだ残っており、この癒着を断ち切るためには天下り禁止が不可欠ですが、こちらはどうやら、現民主党政権下では尻切れトンボになりそうですね。
私が前から指摘しているように、恩給制度の復活といった反対給付を与えない限り、官僚達に天下り禁止を飲ませることは不可能なのです。
現在恩給制度の復活的なことを謳っている政党は皆無ですが、これは、「みんなの党」を含め、どの政党も天下り禁止を本気でやろうとなどしていない、ということを意味します。
このところつくづく思うのですが、「天下り禁止≒恩給制度的なもの復活」は、日本「独立」と対でしか実現できないのではないでしょうか。
つまり、「独立」するとなると再軍備しなければならない。
となると、フツーの年金制度だけで、自衛官(日本の軍人)に命を的に戦闘を命ずることはできない。
だからせめて自衛官だけには恩給制度的なものを復活させなければならない。
となると自衛官に準じるような仕事の公務員にも恩給制度的なものを復活させなければならない。
そして、そこまで来れば、全公務員に恩給制度的なものを復活させてもおかしくはない。
更にその結果として天下りが禁止される。
という具合に事態が進行するだろう、ということです。
<Fat Tail>
–Scottish independence–
日本における地方分権に係る議論、及び太田さんが唱える沖縄の「独立」論との関連で注目しているスコットランドの独立運動。
沖縄も近海で油田でも物に出来れば、財政的にも独立の現実性が増すと思料。英国(この場合はスコットランドも含む)は、本当についている国だ。
Unabashed, Mr Salmond will keep arguing for greater fiscal autonomy. Far from displacing independence as a goal, it fits with his long-term view of how to achieve it: by gradual steps rather than in one go. Scotland’s political centre of gravity is, in fact, moving towards independence, he wrote in a letter to the Scotsman on June 28th: “A generation ago it was for an assembly, then for a parliament, then for Calman, now for fiscal responsibility.”
“One step back”
Alex Salmond plots a new path to his long-held goal
http://www.economist.com/node/16485590?story_id=16485590
<太田>
自分がやってないのに恐縮ですが、他の読者のため、英文にはできるだけ仮訳をつけてくださいね。
それやると、太田に添削されるのがいやだ?
いや、あなたなら多分、添削されるこたあないでしょ。
<Fuku:翻訳>
コラム#4101より。
銃規制に係る米最高裁判決(コラム#4099)の評価の第二弾をお送りしておく。
タイム誌のもやはり、歯切れの悪い判決批評だ。↓
・・・憲法による小火器所有権をめぐる法的闘争はわずか2年前に加熱したばかりである。ワシントン市の厳しい銃規正法への異議申し立てにおいて、最高裁は5対4で憲法修正第2条は個々人に武器携帯の権利を認めている、と裁定した。この裁定は多くの司法監視人と銃規制擁護者にとって、かなりの衝撃だった。というのは、200年以上もの間、司法界では、修正第2条は「規律ある民兵」を維持するための州の権利のみを保護する、という見方が支配的だったからである。(2009年10大犯罪の記事を見よ)
今週、最高裁は2008年の裁定に関する法的疑問に回答を与えた。つまり、最高裁が認める連邦の権利(ワシントン市は連邦議会の直轄地である)は50州にも適用されるのか、という疑問である。またしても5対4で、最高裁はそれが適用されると判定した。
多数派となった最高裁の保守的な5人が修正第2条の銃所有権を大胆にも宣言したとはいえ、同裁はどの銃規正法がその権利を侵しているのか、ということに関してはまったくはっきりしない。実際のところ、最高裁は、市民による拳銃所持を事実上禁じたシカゴの法を本当に廃止したわけではないのだ。同裁は単に、下位の裁判所にシカゴ法の見直しを求めたに過ぎない。・・・
今週の裁定の衝撃が限られたものだった理由がもう1つある。意見の異なる裁判官は、憲法による銃の携帯権を認めた2008年の裁定の背後にある考えに対して疑義を唱え続けた。最高裁の保守派のうち1人がいなくなってリベラル派に替われば、修正第2条の解釈は2世紀以上続いてきたものに立ち戻るだろう。つまり、その権利は個々人ではなく州に属するものだ、という解釈である。
<太田>
このところ、毎回大変結構ですね。
23ポイントです。
そろそろ、再び100ポイント達成したかな?
他の人、最近翻訳に挑戦してくれないなあ。
それでは、記事の紹介です。
昨夜の非公開コラムでとりあげたばかりですが、米国でのロシア・スパイ団摘発についての続々報です。
ロシア国内から、自分達の「スパイ」の余りのお粗末さを慨嘆する声があがっている。↓
・・・Popular author and commentator Yulia Latynina dismissed the alleged operation as “an imitation of espionage.”
”Putin’s Russia has an imitation of democracy, an imitation of the empire and now an imitation of espionage,” she said in a telephone interview. “The only thing Putin’s Russia is not even pretending to have is an imitation of an economy.”・・・
Gennady Gudkov, deputy chairman of the State Duma’s security committee, said diplomats could obtain from official sources the same information the alleged spies were sent to get. If the charges are true, he said, parliament might organize hearings about how the spy services spend their money.
”In the best times of Soviet history, the organizers and controllers of such a sloppy operation would have ended in prison,” said Gudkov, a graduate of the Russian Foreign Intelligence Academy. “And at the worst times, they would have been shot.”
When funding was cut in the 1990s and foreign operations were limited, spies and instructors began to leave the service, the former spymaster said. Some defected, but many went into business.
”The only people remaining in the center by the mid-90s were very young inexperienced guys and old folks just biding their time before retirement,” the spymaster said. “The quality of training immediately went down and the number of failures and exposures in the field went up.”・・・
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-russia-spies-20100702,0,4126698,print.story
ワールド・カップでのフランス・チームの大失態で、フランス内で反移民感情が高まっている。↓
・・・During the 1990s, it was only the French extreme right that ridiculed the idea that multiracial sport could facilitate racial integration in France. Now the derision directed against the indiscipline of a “black” team and the implicit failure of sport’s integrative role in French society rains down from across the political spectrum. ・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2010/07/01/le_scandal?print=yes&hidecomments=yes&page=full
この記事だけでは、イマイチよく分からないのがもどかしいが、プラトンは、対話篇に暗号でギリシャ音階を埋め込んだらしい。
そして、そのメッセージは、この世界は、神々によってではなく、音楽、ひいては数学によって記述されている、という超先進的なものであったという。↓
・・・”Plato and the Greeks believed music was the key to mathematics and the cosmos.
”What we didn’t know was that he used Greek musical scales to give his works a hidden structure and then built layers of hidden meanings beneath that.”
The hidden codes reveal that Plato anticipated the Scientific Revolution 2,000 years before Isaac Newton, discovering its most important idea – the book of nature is written in the language of mathematics. ・・・
”Plato’s own teacher was executed for religious heresy,” he said. “And Plato and the other followers of Pythagoras were known for hiding their doctrines.
”They wanted to replace the Olympic Gods with science and mathematics. These were dangerous views.
”So Plato wrote his stories with a fascinatingly rich and seductive surface story then, underneath, hid the messages he really wanted to convey to future generations.” ・・・
http://news.bbc.co.uk/local/manchester/hi/people_and_places/newsid_8773000/8773564.stm
幸福には2種類あって、カネである程度買える幸福と、社会的存在であること/自分の能力を活用できること、に関わる幸福とがあり、前者の意味での幸福が担保されている社会に生きる人々といえども、必ずしも後者の意味では幸福ではない場合もあるという。↓
・・・there are two major categories of happiness: overall life satisfaction; and more moment-to-moment enjoyment of life. And while overall satisfaction of life is strongly tied to income, meaning richer nations and individuals have more of this overall bliss, how much one enjoys life (by measures such as laughing and smiling) depends more on social and psychological needs being met. These include having social support and using one’s abilities, as opposed to sitting at a mind-numbing job.
The United States, which had the highest gross domestic product per capita, came in at No. 16 for overall well-being and No. 26 for enjoyment, referred to as positive feelings. The No. 1 spot for overall well-being went to Denmark, and New Zealand landed the No. 1 slot for positive feelings.・・・
http://www.csmonitor.com/Science/2010/0701/The-US-may-be-the-richest-nation-but-it-s-not-the-happiest
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太田述正コラム#4106(2010.7.2)
<原爆論争(その1)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x880)
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