太田述正コラム#4127(2010.7.13)
<皆さんとディスカッション(続x891)>
<太田>(ツイッターより)
 (コラム#3906に関し、)前法王ヨハネ・パウロ2世は、まことに遅ればせながら、カトリック教会が犯した十字軍、フランスのプロテスタント殺戮、ガリレオ裁判、反ユダヤ主義を謝罪している。
http://www.guardian.co.uk/world/2000/mar/13/catholicism.religion
<モッキー>
≫民主党のガバナンスに見切りをつけたと考えられる日本の少なからざる有権者の判断は誤りである、ということです。≪(コラム#4125。太田)
 太田さんの仰ることわかるんですけどねぇ。頭では分かっていても、政権交代で旧態然とした利権構造が壊れてきているとか、そうした良い面って、実際には一般の市民に目に見えるのものではないですから、こうした選挙結果も致し方無いかと思います。
 あと、これは私個人の思想信条的(というより単に感情的なもの)なものと、民主党の左向き度がどうしても相容れないんだよなぁ。
 ま、それは私の個人的なものだから、よいにして集団的自衛権とか一言も出ないのは困ったものです。
<太田>
 民主党が「左」向いてるとおっしゃるが、せいぜい、韓国の「右」である現李明博政権のスタンスじゃないですか。
 私とて、それらに全部が全部賛成じゃないけれど、めくじらたてるほどの話じゃないと思ってるワケ。
 民主党の議員達、それを意識してこの種政策を推進しているのではないんでしょうが、結果として、韓国の政府と世論の親日化を維持・促進してるんじゃないかな。
<宮里>
 –参議院選挙を巡る沖縄の「意思表示」について–
 太田述正様、今回の参議院選挙を巡る沖縄の結果に「普天間問題」への意思表示が現われているか? という問いかけをツィッターのつぶやきで見ました。
 端的に言って、私はまだそこまで明確な意思表示は出ていないと思います。
 民主党は沖縄選挙区から結局、候補者を立てられず、出馬したのはみな野党。
 当選した自民党の島尻安伊子氏も、野党の立場から鳩山民主党が稚拙な対応の挙げ句に元に戻した「県内移設」には反対と言うしかなかったでしょう。
 しかし、島尻氏に投票した人びとのどれだけが「県内移設絶対反対」と思っているか? 
 この半年あまりの政治状況から「とりあえず反対と言わんとなー」と思っている人が多数と推測します。
 これが社民党(山城氏)か、共産党(伊集氏)の押す候補者が当選していたら、もちろん「県内移設」は絶対反対です。
 とは言え、県議会で与野党ともに全員一致で「県内移設反対」の決議が出たので、当分これが表向きの沖縄の「主張」になると思います。
 そこを押さえて考えると、今年の8月(だったと思います)に名護市議選、11月に県知事選が控えていますので、今年の後半に「普天間問題」は大きなヤマバを迎えると思います。
 これへの対応を民主党政権が誤れば(菅政権は続いているか?)、「沖縄独立」まではいかなくとも、それに似た気運が生まれる可能性も無くはないと思います(菅首相も、沖縄は独立すればいいと思っているみたいだし……)。
<太田>
 どうもありがとうございました。
 比例で、沖縄の喜納昌吉前参議院議員が落選したこともイミシンですね。
<宮里>
 ところでこれも以前のツィッターで見ましたが、弥生時代に関する情報を求めているとの由。
 少し前になりますが、私が編集のお手伝いをした広瀬和雄・小路田泰直編『弥生時代千年の問い』(ゆまに書房)という本があります。
 主に関西の考古・古代史・近代史の研究者が中心となり、近年の考古学の成果と科学測定を前提にして、既成の史観(戦後歴史学)を克服する目的で編まれたシンポジウム・論文集です。
 お役に立つか解りませんが、よろしければ近日中に御贈呈いたします。       
<太田>
 それはありがたい。
 「弥生時代「千年」」というネーミングだけでもセンスのよさそうな本ですねえ。
<TA>
≫みんなの党の十八番である公務員改革問題への同党の政策を、私の過去コラムでの関連指摘とつきあわせてみてください。いかに、同党の政策がムチャクチャか、お分かりになることでしょう。≪(コラム#4125。太田)
 つきあわせてみました。確かに、よくよく考えなければならないようですね。
 みんなの党 選挙公約(抜粋)↓
 「国家公務員を10万人削減(道州制導入と地方出先機関の廃止など。現在31万人)。」
 「民主党政権で作られた抜け道をふさぎ、真に天下りを根絶。「政務三役によるあっせん」も禁止。裏下り(「OBのあっせん」等と称する天下りあっせん)には刑事罰を導入。」
http://www.your-party.jp/policy/manifest.html
 これに対して、そもそも日本の公務員は異常に少ないから公務員の削減はナンセンスというコラム↓
「小さい政府」について(その1)
http://blog.ohtan.net/archives/50954967.html
「小さい政府」について(その2)
http://blog.ohtan.net/archives/50954960.html
→地方公務員をその分増やすのだとすれば、みんなの党が「削減」を謳うのは詐欺に等しいし、もしそうでないのなら、中央政府のガバナンスが一層低下するだけのことです。(太田)
 天下り根絶に関しては↓
 「それに、私が何度も申し上げているように、現に官僚OBの大部分は天下りをしてヤミ年金をもらっているのであって、この特権を何の見返りもなく剥奪することは、革命期であればともかく、できることではありません。
 ですから、現在のヤミ年金総額の半分を確保してやるのか、8掛けを確保してやるのか、悩ましいけれど、恩給制度を天下り全廃の見返りとして導入すべきだ、と私は主張しているのです。」
http://blog.ohtan.net/archives/51106019.html
 質問ですが、天下りの禁止は見返りがなければできることではないとのことですが、ここで言う「できることではない」とは、官僚の反対(ボイコットや政治家の不祥事情報のリークなど)するから不可能という意味でしょうか?
 それとも、できはするけど弊害(優秀な人材が官僚になりたがらなくなるなど)の方が大きいからやらない方がマシという意味でしょうか?
 大阪府は公務員の給与カットを断行できましたが(↓)、これと天下りの件は関係ないのでしょうか。
 「大阪府 給与カット継続…11年度以降 基準額下げも検討」
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/20100110-OYO8T00314.htm
<太田>
 民主党政権は、天下り廃止どころか、その大前提となる、政治主導を確保するための諸措置すら、官僚の抵抗にあって法制化できていません。↓
 「・・・「内閣人事局」の設置を盛り込む国家公務員法改正、国家戦略局、行政刷新会議の設置を進める政治主導確立法案<は、>鳩山由紀夫前政権で内容がすべて骨抜きにされ、結局は廃案、継続審議の憂き目になった。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/election/100713/elc1007130304000-n1.htm
 法制化作業を行うのは官僚であり、官僚がそのペースと文言を操作できるからこういうことになるのです。
 ですから、お答えは、不可能だ、ということです。
 大阪府の話についても、以前コラムでとりあげたことがあったのではないかと思いますが、地方は大統領制で首長の権限が極めて強いので、ご指摘のようなことができたのでしょうが、暴挙です。
 地方公務員の給与水準は、基本的に、国家公務員の給与に準拠させ、それに地域の物価水準等を反映させて設定されるべきでしょう。
 警察官の場合を例にあげれば、一番分かりやすいかな。
 このまま橋下府政的なものが長期化すれば、警察官の質が低下し、大阪府の治安状況が悪化する可能性が高いですね。
 ところで、英ファイナンシャルタイムスが、みんなの党は今後伸びない、と予測しました。
 ついでに言うと、自民党が「勝利」したことで、同党は改革の機を逸することになろう、とも記しました。↓
  “The reason [Your party] is not going to become a major party is that its thinking is not in tune with the great majority of Japanese. It’s a party of small government and American-style capitalism ? that doesn’t go down here,” said Gerry Curtis, a veteran analyst of Japanese politics.・・・
 Tobias Harris, an analyst of Japanese politics, said “old guardsmen” would be able to use the victory as vindication for their resistance to substantive change in how the LDP works. Party reformers might have been better off “had the LDP lost”, Mr ¬Harris wrote. ・・・ 
http://www.ft.com/cms/s/0/fd836520-8dd5-11df-9153-00144feab49a.html
 いずれも、慧眼ですな。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 前にも同じような話題をとりあげたけど、フランスの文化的影響力の相対的低下を指摘した本が出ました。↓
 ・・・ in the fields of literature, music, film, theatre and the plastic arts, France’s global influence has waned. ・・・
  ・・・(その原因としてあげられるのが、)the French education system and the extensive cultural subsidies offered by the interventionist French state・・・inexorable rise of English as the language of art and commerce・・・
http://www.ft.com/cms/s/2/b1f656c6-8ae7-11df-bead-00144feab49a.html 
 これに照らすと、日本のソフトパワーの健闘はどう考えたらいいのだろうか?
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太田述正コラム#4128(2010.7.13)
<映画評論5:サルバドル/遥かなる日々(その4)>
→非公開