太田述正コラム#4082(2010.6.20)
<グラマー(性的魅力)について(その1)>(2010.7.20公開)
1 始めに
 キャロル・ダイハウス(Carol Dyhouse)の ‘Glamour: Women, History, Feminism’ の紹介をしようと思い立ったところまではよかったのですが、途中から、果たして自分に適切な紹介ができるのか不安になってきました。
 私には、グラマー(galamour)というとマリリン・モンローというイメージがあったのですが、どうやらそれは違うらしいということが分かってきたのと、グラマーに関わるらしい、化粧とか衣装についての私の知識が乏しすぎることを自覚するに至ったからです。
 ですから、おかしなことを書いているかもしれないのであって、女性の読者等から忌憚のないご批判をたまわることを期待しています。
A:http://www.islingtontribune.com/reviews/books/2010/mar/books-review-glamour-women-history-feminism-carol-dyhouse
(6月19日アクセス。以下同じ)
B:http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2010/mar/21/glamour-feminism-cinema-carol-dyhouse
C:http://danine.net/2010/06/03/book-review-glamour-women-history-feminism/
D:http://www.historytoday.com/MainArticle.aspx?m=33919
E:http://www.ft.com/cms/s/2/e2d49ee4-7a5f-11df-9cd7-00144feabdc0.html
(この本を含む3つの本の書評)
F:http://www.thescavenger.net/fem1/glamour-and-feminism-a-marriage-made-in-heaven-or-hell.html
(この本からの抜粋)
 なお、ダイハウスは、英サセックス大学の社会史家たる歴史学研究専念教授(research professor)です。(B、E)
2 グラマーについて
 (1)プロト・グラマー時代
 「・・・<英国での>20世紀初期の家計調査は、<当時の>労働者階級の女性がほとんど自分自身のために何も消費していなかったことを示している。・・・」(A)
 「・・・グラマーという言葉は1900年より前には余り使われておらず、もともとは、呪術とか魔法のような魅力、そして早く旅行する新しい諸形態といったものに近い何物かを意味していた。
 男性も女性同様グラマラスたりえた。
 パイロット(英空軍の乗り組み員はしばしば「グラマー・ボーイ達」と称されていた)、ラリーの自動車運転手達、ルドルフ・ヴァレンティノ(Rudolph Valentino<。1895~1926年。米国で活躍したイタリア人俳優・セックスシンボル・大衆的偶像(pop icon)
http://en.wikipedia.org/wiki/Rudolph_Valentino (太田)
>)、あるいはイヴォール・ノヴェロ(Ivor Novello<。1893~1951年。ウェールズ人作曲家・歌手・俳優
http://en.wikipedia.org/wiki/Ivor_Novello (太田)
>)などがそうだ。・・・」(B)
 「・・・フランスの有名人美容師たるアントワーヌ(Antoine)は、1905年にロンドンを訪問した際、ショーウィンドーに男物の衣類ばかり<が飾ってあること>を発見するとともに、男連中に比べて女性が身にまとってるものがほとんどどこでも見劣りすることに気づいた。
 英国の労働者階級の女性の多くは、まだ若いうちに中年のように見えることに誰もが気づいていた。
 1930年代にマージェリー・スプリングライス(Margery Spring-Rice<。1887~1970年。避妊を擁護した英国人女性
http://www.oxforddnb.com/index/101074760/ (太田)
>)は、かつてのかわいい女の子が結婚後数年経つと面白みのない風情に見え、30歳になる頃には消耗してしまったような外見を呈する、と記している。・・・
 <ところが、>1905年から第二次世界大戦の間に、物事は顕著に変化したのだ。・・・」(F)
 (2)グラマー概念の確立:総論
 「<ダイハウス>は、ハリウッド、及びマックス・ファクター、デビアス・ダイヤモンド、ハドソン湾会社(毛皮)のような会社が女性に人工的な観念たるグラマーを売り込む陰謀を1920年代と30年代からどのように立てたかを並べ立てる。・・・」(C)
 ・・・彼女は、もともとはグラマーというのは、ハリウッドの夢工場の古典期である1930年代から50年代の間の米国映画と関連づけられていると指摘する。・・・」(A)
 「・・・<それ以前とは>異なり、ファッションと美に係る商品にカネを使うようになったことから、今や女性は靴中毒や買い物中毒と形容されるようになった。
 彼女は、グラマーであることは、常にファッショナブルではなかったし、ピンナップ写真(cheesecake photography)と関連づけられるとして汚名を着せられた、とも指摘する。
 グラマーという言葉にしばしば関連づけられたところの否定的な含意に焦点があてられたにもかかわらず、それは、「<自分が>豊饒の愉楽への権原(entitlement)<を持っていると>の主張」たりえるのだ、とダイハウス教授は指摘する。
 「<グラマー>は、抑圧的ないし男性の幻想(fantasy)として片付けることなどできないのであって、<グラマー>は女性にとって有名人的意味を帯びうるのだ」と。・・・」(A)
 「・・・美しく生まれる者は極めて少ない。
 <しかし、>誰であれ、口紅が引け、ベルトを固く締めることができ、髪に逆毛を立てることができさえすれば、一定程度のグラマー度は達成できるのだ。・・・」(D)
 「・・・ハリウッド的な感覚(sense)のグラマーの普及(growth)は、労働者階級の女性に一つの逃避先(escapism)を与えた。・・・」(A)
 「・・・1920年代と30年代になると、グラマーの観念は、近代性、就中ハリウッドと固く結びつくに至ったのだ。・・・」(B)
(続く)