太田述正コラム#4155(2010.7.27)
<皆さんとディスカッション(続x905)>
<太田>(ツイッターより)
(コラム#4153に関し)「右」の産経新聞や読売新聞には困ったもんだ。
なお、コラム#4135で紹介した岩上安身と上杉隆の対談の中で、経営者某が記事の内容を左右する読売新聞をこきおろしてたが、かつてのタイム社の例を見ても、経営者が記事の内容に口出すのはOKさ。
(コラム#3934に関し)19から20世紀にかけて、プロテスタンティズムは、日本でも支那でも大衆には浸透しなかったもののエリートの一定部分には浸透したように見える。
しかし、日本人にとっては精神の拠り所、支那人にとっては世俗目的を達するための手段?
<bonkers_blunder>(同上)
太田さんは韓国民主党をどう評価しますか?
北朝鮮のエージェント政党?
http://www.chosunonline.com/news/20100727000033
<太田>
米国の左がかった歴史学者のブルース・カミングスは、
「<米国は北朝鮮>を「東洋学者的偏見(Orientalist bigotry)」でもって見ており、その病的な面しか見ていない・・・<しかも、> 米国は、朝鮮<戦争の際に、主として北朝鮮に対し>、第二次世界大戦中に全太平洋戦域に投下された爆弾よりも多くの爆弾(635,000トン。これに加えて32,557トンのナパーム弾)を投下した。・・・<だから、>北朝鮮は、・・・日本と<日本の朝鮮半島支配をかつて認めた>米国<・・しかも、同国は、朝鮮戦争の時に、上述のようなひどい仕打ちをした・・>に対して憎しみに満ちた思いと恐怖を抱き続けている。北朝鮮<が>、日本と長きにわたる歴史的紐帯を持<ち、かつ米国の庇護を受けてきた>指導者達をいただく韓国の手を払いのけるためにできることは何でもや<ろうとしてきたことは不思議でも何でもない>。」
と記しています。(コラム#4154(未公開))
このような北朝鮮の思いに共感を寄せる・・ある意味北朝鮮に洗脳された・・韓国の人々が同国の民主党を支持しているわけですが、私としては、日本の朝鮮半島支配に係る部分については複雑な気持ちながらも自治=ガバナンスの確保の重視ととらえれば十分理解できるし、米国に係る部分に関しては手放しで全面的に同感です。
つまり、韓国の民主党及び同党を支持する人々は、戦後の日本人の大部分より、はるかにまともである、と考えるべきでしょう。
<ΓΕΓΕ>(「たった一人の反乱」より)
明治9年3月17日太政官指令:妻の氏は「所生ノ氏」(=実家の氏)を用いることとされる(夫婦別氏制)。
※ 明治政府は,妻の氏に関して,実家の氏を名乗らせることとし,「夫婦別氏」を国民すべてに適用することとした。
なお,上記指令にもかかわらず,妻が夫の氏を称することが慣習化していったといわれる。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji36-02.html
明治31年民法(旧法)成立:夫婦は,家を同じくすることにより,同じ氏を称することとされる(夫婦同氏制)。
※ 旧民法は「家」の制度を導入し,夫婦の氏について直接規定を置くのではなく,夫婦ともに「家」の氏を称することを通じて同氏になるという考え方を採用した。
「氏」という名称でもわかるとおり、新政府は復古主義により、一般化していた「苗字」から、古代から中世初期まで主流として使われてきた氏族名の「氏」に戻そうとした。
なので「所生の氏(出身の実家の氏)を名乗る」とした。
ところが一般的には家名である苗字のほうが慣習として定着していたため、妻が夫の氏を名乗るケースが多く、政府に陳情が多数寄せられた。
それで、それなら慣習に合わせるべきか、ということで家名である苗字を採用しこれを法律上の「氏」とした。
したがって、このことから、庶民には家名としての苗字のほうが、氏族名としての氏よりも定着していたことが明白であって、つまり「夫婦別氏が日本の伝統だった」というのは大きな間違いです。
<太田>
肝腎なところに典拠が付いてませんねえ。
いずれにせよ、私が問いかけているのは、江戸時代末期の庶民(大多数の日本人)において、夫婦たる女性がその姓を聞かれた場合、彼女が、「姓はない」、「姓は実家の姓」、「姓は嫁ぎ先の姓」、の三択のどれにマルをつけただろうか、ということです。
<MK>
縄文・弥生モードにつきご思索ご発展のご様子、大慶に存じます。
ムラ・ウジ・イエなどについても議論ご発展、益々大慶に存じます。
卑近な例で面白い事例がありますのでご笑覧にいれます。
小生の祖先はある藩の典医でした。
藩とは日向高鍋藩であります。
この藩主、氏は秋月、本姓は大蔵、姓は劉。漢の霊帝の末裔を称していると聞いております。
私見ですが、秋月の名字は、大陸渡来の大蔵氏(党)が発展した後、藤原の家名のように『日本の土地や雅名由来』に『名乗り』して興ったものと考えています。
本姓が大蔵というのは日本人向けで、いわゆる昨今の『通名』に近く、(源平藤橘でもないわけですから)姓である”劉”は、ことさらこの島々の人々には言わないけれど、血脈というか、オリジンとして大事にしてきたのだと思います。
<US>
–縄文人は南太平洋や南米に到達していたのだ —
≫その後の話の展開はないのだろうか≪ (コラム#4153。太田)
こういう話は結構好きなので調べてみました。
提示された典拠
http://www18.ocn.ne.jp/~tugaru/minamitaiheiyou.html
には、2つの話が紹介されていましたのでそれぞれ調べました。
1)南太平洋ブアヌアツ<(バヌアツ)>共和国エファテー島の縄文土器
これは怪しいです。
Vanuatsu と Efate で検索したところ、日本からの贈り物がパリでエファテ島で発見した土器類と混ざってしまったのではという記事を見つけました。
典拠A)
http://goliath.ecnext.com/coms2/gi_0199-12083072/Jomon-sherds-from-Aomori-Japan.html
発見された地層が当時の海岸線や体積の具合から考えて理屈に合わないとのことです。
日本語のものでも以下を見つけました。
典拠B)
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/mizuy/zenki/vanuatu.htm
贈り物をしたという経緯が詳細に載っています。
なお、その土器が日本の土でできているのは事実なのですが、発見された14点のほとんどが前期のものだが数点中期・後期のものであることから、そのような構成自体が人為的なコレクションぽいとしています。
また、長年エファテ島の地層にいたわりには、表面に付着している土も日本のものだったとのことです。
ただし、この典拠Bについては書いてあることが伝聞調なので裏を取る必要がありますが、そこまでは調べていないため、反論の余地が残ります。
2)エクアドル・パルデイビア遺跡
まずは写真から。数個見つかったとか言うレベルではなく、そこで見つかる土器の特徴として縄文土器と類似性があるようです。
http://www.flickr.com/photos/japantours_ecuador/3900724618/in/set-72157622308310262/
すでに50年ほど前に、これらの土器が、その水準に至るまでの発掘途上の土器を伴わず、突如として技術的に高度ものが出現していることから、ほかの地域から持ち込まれた疑いが否定できないため、日本の縄文人がそれらを持ち込んだという説が紹介されました
http://www.wonder-okinawa.jp/024/japanese/kataru/hanne/peruu/
http://siris-libraries.si.edu/ipac20/ipac.jsp?menu=search&aspect=subtab114&npp=20&ipp=20&spp=20&profile=liblim&ri=&term=&index=bc&x=14&y=14&aspect=subtab114&term=357852&index=bib
もし、真実なら海洋を渡ったのか、陸上を歩いてきたかどちらかなのですが、次のことから今は海洋を渡った説の方が有力のようです。
1)3500年前の南米のミイラからアジアに生息する寄生虫が発見された。もし、陸上を歩いてくるのであれば寒さに耐えられずそれらは死滅しているはず
2)親潮、黒潮を利用し、縄文時代と同じ手漕ぎ船で実験したところ、51日間で太平洋を横断できた
http://www5c.biglobe.ne.jp/~k1145/jyoumon2.htm
http://www.ne.jp/asahi/tokfuruta/o.n.line/mate/on-kaiin/frtnws841.htm
(本来ならオリジナルの根拠を示すべきですがそこまで探しだせませんでした。)
その他、エクアドルの旅行ガイドなどごくごく当たり前のようにこの話は紹介されています。
しかしながら、形式的な比較ですべてが同じではあるとはいえないことなどから、学説としては未だ受け入れられていないそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2
<太田>
バルデイビア(バルディヴィア)の土器は、下掲
http://www.flickr.com/photos/japantours_ecuador/3900724618/in/set-72157622308310262/ 上掲
の解説の中で言及されている縄文火炎土器
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B8%84%E6%96%87%E5%BC%8F%E5%9C%9F%E5%99%A8
とは少なくとも全く違いますね。また、下掲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2 上掲
の中で言及されている縄文曽畑式土器
http://www.jomon-no-mori.jp/no18.htm
とも素人目には明確な違いがあります。
どうもよく分からない議論ですねえ。
なお、最後に引用したサイトに、「曽畑式土器の<朝鮮半島南部から沖縄本島に至る>広範な分布状況から見て,この時代,丸木舟を自在に操る海洋性に富んだ人々の移動があったことは,容易に想像できます。」とありました。
<唯我独尊>
>「・・・男の性的なリーダーシップが現実的にはどんどん後退している分、セックス幻
想を満たしてくれるAVに、女性がより傾倒する傾向がある。」
> http://news.livedoor.com/article/detail/4904714/
>記事の紹介(太田述正コラム#4153)
草食男性、肉食女性ということをメディアが大喜びして取り上げているので、庶民は「そうかもしれない」と受け止めているだけです。
メディアは常に話題を提供しているだけなのですが、このような話題に翻弄されているのが庶民ということです。
およそ50年前のことですが、小学校高学年から中学生にかけての多くの女子児童は、人間の生殖行為に快楽を伴うということを既に知っており、一部の女子は積極的に男子の私に積極的に(?)説明していたのです。
→典拠は?(太田)
日本は、表面的には男尊女卑であっても、心理的には女性が男性(配偶者)を支配している(リーダーシップを駆使している)と思いませんか?
哀れな男性のみなさま!
<太田>
何せ、日本は、天照大神から始まる皇室をいただく国なんですから、おっしゃるとおりなんでしょうな。
<ΓΕΓΕ>(「たった一人の反乱」より)
≫俺が分からないのは、<学校教育で>「なぜ学ばせるか?」ということなんだが。。。 太田コラムで取り上げてくれないかな≪(コラム#4145。ΔΓΓΔ)
大学は学ばせる所じゃなくて、学ぶ所なんだけど、日本の大学は学生を甘やかしすぎなのかもね。
実質、義務教育化している高校で、学ばせるから学ぶへ気構えがスムーズに移行できればいいのかも。
http://d.hatena.ne.jp/kenjiito/20100725/p1
大学院は病院じゃないのでバカは治らない←名言だと思うw
そうそう、太田さん、応募してくれないかなあ~。
http://www.nhk.or.jp/harvard/form/index.html
<太田>
サンデル教授、このコラムで紹介してる(コラム#3622以下)んだから、それでご勘弁を。
しかし、なんで来日「授業」をだだっ広い安田講堂でやるんだろね。
「学生」500人なら、そのすぐそばの法学部の大教室がぴったりなんだけどなあ。
<名無しのごんべい>
–科学の発祥について–
<コラム#46>「近代科学の成立(アングロサクソン論1)」<を読み>ました。
http://blog.ohtan.net/archives/50955789.html#comments
「近代科学の発祥」に興味を持ち、ネットをさまよっているうちに太田さんのこのブログに辿り着きました。太田さんの「近代科学の成立」が書かれたのは8年も前のことなので、興味も薄れたこととは思いますが、ご意見を伺いたく投稿いたします。
私もロジャー・ベーコンが「近代科学」(つまり仮説・検証の体系)の始祖かと思っていましたが、それよりも遥か前に、イスラムのイブン・アル=ハイサム<(ibn al-Haytham。965年?~1040年?)>が実験を駆使して光学理論を打ち立てています。Wikiによれば、彼の主著である「光学の書」が、12世紀頃にはヨーロッパでラテン語に翻訳されているようですので、ロジャー・ベーコンは間違いなく翻訳本を読んでいるでしょう。
http://en.wikipedia.org/wiki/Alhazen
以上を知るまで、私も仮説・検証という方法はイギリス生まれで、それは多神教のケルト文化がイギリス社会の基層にあるからではないかと思っていました。
一神教からはドグマしか生まれませんからね(同様に多神教からも普遍的理論を追求する姿勢は出てきません。だから、両方の-つまり演繹と帰納の-要素を持つイギリスで科学的方法が生まれたと思ったわけです)。
ところが、一神教のイスラム世界から科学的方法論が生まれたわけですから、不思議です。恐らくイスラム教の中に、キリスト教とは異なる性質(ドグマに毒されない)があるのかもしれません。ところがイスラム教を全く知らない私にはこれ以上の考察は出来ず、ストップしています。
ご意見ありましたら、お願いいたします。
<太田>
私は、コラム#3132で、
「光が小さい穴から暗室に差し込む際に、外の光景が壁に投影されるところの一種のピンホールカメラであるカメラ・オブスキュラ(camera obscura)は、最初に11世紀、ハッサン・イブン・アル=ハイサム(アルハゼン)(Hassan ibn al-Haitham (Alhazen) )によって実験を通して研究された。ロジャー・ベーコン(前述)は、後にこの器具を日食の研究に用いた。また、ファン・アイク(Van Eyck<。1395頃~1441年。オランダの画家>)からフェルメール(Johannes Vermeer<1632~75年。オランダの画家>)に至る古の大画伯達は、この投影手法を活用して彼らの細密リアリズムを達成した可能性がある。」
とイブン・アル=ハイサムに言及したことがあります。
また、同じくコラム#3132で、
「「私は近代科学はイギリスに生まれたと考えています。しかも、ギリシャ文明が存在しなかったとしても、その上、欧州大陸が存在しなかったとしても、早晩、近代科学はイギリスに生まれたであろうとさえ考えています。」とコラム#46で記したことを、あながち否定する必要はないけれど、イギリス人のアデラードが西側世界の中で最初にイスラム世界経由でギリシャ合理論科学に邂逅し、これをイギリスと欧州に紹介したことは、恐らくイギリス経験論科学、すなわち近代科学の(早期)成立に決定的な役割を果たしたに違いない、ということです。」
と結論づけたところです。
しかし、今にして思えば、イスラム科学に経験科学、つまりは近代科学、の萌芽が見られたことをもっと重視すべきだったかもしれませんね。
いずれにせよ、大事なことは、イスラム科学はその後消滅してしまったのに対し、イスラム科学を通じてギリシャ科学を継受したイギリス・・イスラム科学そのものも継受したイギリス、と付け加えるべきか・・において、近代科学は爾後持続的に発展を遂げ、その方法論が世界に広まって現在に至っている、ということであると私は考えます。
それでは、記事の紹介です。
中共の中南米へのえげつない進出ぶりが、ブラジルを中心に描写されている。↓
・・・China’s investment in Brazil topped $20 billion・・・That puts China on track to be Brazil’s No. 1 investor for 2010, compared with 29th in 2009.・・・
China became Brazil’s biggest trading partner, replacing the United States. ・・・
U.S. analysts have written extensively on China’s support of Venezuela’s military, noted its bolstering of Cuba’s air defense systems and speculated about whether Chinese analysts have replaced Russians at three signals intelligence sites in Cuba. U.S. officials have also expressed concern about Chinese-Brazilian cooperation in satellite and rocket technology.
“But that’s a smoke screen,” Abdeneur said. “The Chinese are playing on a different chessboard. The competition is commercial. You simply cannot compete because of the very special tools China has.” ・・・
Although U.S. oil and gas technology may be more advanced, the financing terms that China can offer Brazil are almost unbeatable. In some cases, China has handed out billions of dollars at less than 1 percent interest; under OECD rules, the United States must lend at market rates. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/07/25/AR2010072502979_pf.html
アフガニスタンの米軍非文書漏洩事件で、漏洩文書をニューヨークタイムス、ガーディアン、シュピーゲルが協力して調査している。↓
これで、世界3大高級プレスが決まりだな。
ドイツと同じ敗戦国の日本の「高級」プレスの影も形もそこにないのは当然と言えば当然だが、何と恥ずかしいことだろうか。
A total of 91,731 reports from United States military databanks relating to the war in Afghanistan are to be made publicly available on the Internet.・・・
The editors in chief of SPIEGEL, the New York Times and the Guardian have agreed that they would not publish especially sensitive information in the classified material — like the names of the US military’s Afghan informants or information that could create additional security risks for soldiers stationed in Afghanistan. The publishers were unanimous in their belief that there is a justified public interest in the material because it provides a more thorough understanding of a war that continues today after almost nine years. ・・・
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,708314,00.html
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太田述正コラム#4156(2010.7.27)
<改めて朝鮮戦争について(その2)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x905)
- 公開日:
投稿しようとしたら長すぎた為、mixiのほうにカキコミましたのでご覧頂けたら嬉しいです。