太田述正コラム#4102(2010.6.30)
<日進月歩の人間科学(続X14)>(2010.7.30公開)
1 始めに
引き続き、表記をお送りします。
昨日は米ニューヨークタイムスでしたが、科学記事、とりわけ人間科学の記事、英ガーディアンも頑張っていますよ。
2 伝染病とIQ
「・・・疾病が蔓延している国に住んでいる人々は低いIQを持つのかもしれない。
というのは、彼等は感染と戦うために脳の発達のためのエネルギーを転用しなければならないからだ。・・・
この物議を醸すアイディアは、どうして世界中でIQの数値が違っており、マラリアのような衰弱させる寄生生物が蔓延している暖かい諸国のうちのいくつかでIQの数値がどうして低いのかを説明するよすがになるかもしれない。・・・
・・・5歳未満の子供は、そのエネルギーの多くを脳の発達のために捧げる。
身体が感染と戦わなければならない場合は、身体は脳の発達を犠牲にしなければならない。・・・
・・・様々な疾病と長期にわたって共存してきた諸民族は、脳の機能を犠牲にして、より良い免疫システムを発達させることによって<そのような環境に>適応したのかもしれない。・・・
<ただし、この説に対しては、>低い民族的IQ<こそ>、部分的に蔓延する感染的諸疾病に関して責任がある<のではないか、と批判する者もいる。>・・・」
http://www.guardian.co.uk/science/2010/jun/30/disease-rife-countries-low-iqs
(6月30日アクセス。以下同じ)
→これは、実に面白い説ですね。
もともとの環境と切り離された新しい環境に何世代にもわたって居住しているにもかかわらず、米国の黒人のIQが低いことも、この説で説明がつきそうです。(太田)
3 子宮癌の移植治療の延命効果
「・・・癌治療は女性を不妊にしてしまう場合がある。
しかし、患者の中には、その後卵巣(ovary)を移植することで妊娠能力を回復する者がいる。
卵巣組織は、措置が始まる前に自分のものを集めて冷凍しておく場合と、他の女性から寄付を受ける場合とがある。
・・・研究者達は、卵巣移植をマウスに対して行うと、その寿命が40%を超えて延びることを発見した。・・・
・・・<ただし、>卵巣の移植が人間の女性の寿命も延ばすかどうかは、とりわけ、卵巣移植を受けた女性で老齢に達した者がいないだけに、更なる多くの調査が必要だ。・・・」
http://www.guardian.co.uk/science/2010/jun/29/ovary-transplants-women-lifespan-mice
→癌に罹っていない女性も、自分の卵巣を切り取り、それを自分に移植すれば寿命が増えるのかしらん。
もともと男性に比べて平均寿命の長い女性が、更に寿命が延びるなんて、それだけ考えれば不公平ですよね。(太田)
4 妊婦の飲酒と男児の精子の数
「・・・妊娠中に飲酒する女性は、まだ生まれぬ息子の生殖能力に害を与えているのかもしれない。・・・
たくさん飲酒した母親の息子は、妊娠中ほとんど飲まなかったり完全に断酒した母親の息子に比べ、平均して精子の数が3分の1少なかった。・・・
<他方、>父親のアルコール消費は、その息子の精子の質には何の影響も及ぼさなかった。・・・
・・・この数十年で<人間の>精液の質が劣化したように見えることと、<その劣化の度合い>が民族間によって異なることの理由がもうじき解き明かされるのかもしれない。・・・」
http://www.guardian.co.uk/science/2010/jun/29/pregnant-women-alcohol-sperm-count
→結局、妊娠だけとっても、女性は男性にはない苦労があるわけですから、寿命が男性より長いくらいの特典が女性に与えられても当然かもしれません。(太田)
日進月歩の人間科学(続X14)
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