太田述正コラム#4124(2010.7.11)
<日進月歩の人間科学(続X15)>(2010.8.11公開)
1 始めに
今回は、(人間(じんかん)主義とも関連するところの)幸福感(happiness)は感染するか、そして、(私が個人的にも関心がある)引っ越しが多い家で育った子供はどうなるのか、に関わる研究をとりあげましょう。
2 幸福感は感染するか
「ハーバード大学とMITの研究者達によって、SARSや口蹄疫といった伝染病の伝播を追跡し予測するために開発された数学モデルが幸福の伝播にも応用できるかを見てみたところ、それが使えることが判明した。・・・
・・・研究者達により、個人の情的状態とその個人の接触先の情的状態とが相関していることが判明したのだ。
換言すれば、人は<風邪をひくように>幸福をひく場合があるのだ。
悲しみ(sadness)についても然りだ。
更に言うと、「快復期間」は、<「患者」との>接触<期間>に全く依存しない。
これは伝染病の特徴なのだが、情的文脈の中では驚くべきことだ。
というのも、幸せな或いは悲しんでいる人々と引き続き接触しておれば、最初の「感染」後も人の情的状態が影響を受けると期待されえたからだ。
人々は、満足した場合より不満足の場合の方が、より速く「快復」(中立的状態への復帰)をすることが判明した。
平均で言うと、満足的な(contentedness)「感染」は10年前後まとわりつくけれど、不満足的な(discontent)「感染」からの快復には5年しかかからない。・・・
ところで、悲しみは幸福感よりももっと感染的だ。
一回限りの不満足的な接触は不幸感を抱く確率を2倍にするのに対し、<一回限りの>幸せな接触は満足感を抱く確率をわずか11%しか増大させない。
伝染病と感情とが異なった成り行きを示す場合が一つだけあることも研究者達によって判明した。
それは、感情に関しては、「伝染」した場合だけでなく、昇進とか病気に罹ったと診断される場合等、自分自身の生活上の出来事によっても、それを抱きうることだ。
良い人にとってもう一つ幸いなことは、幸福感は悲しみよりも<「感染」によってではなく>自然発生的に抱かれがちであるという点だ。・・・」
http://latimesblogs.latimes.com/booster_shots/2010/07/how-are-sadness-and-happiness-like-diseases-theyre-infectious-study-finds.html
(7月9日アクセス)
→人は、幸せのお裾分けにあずかろうなどと考えず、自分で幸せを掴もうとする一方、悲しみは人間主義的に分かち合おうとする、と受け止めたらいかがでしょうか。
また、幸福感は長続きし、悲しみは長くは続かない、というのも、人間、うまくできているなあと思いますね。(太田)
3 引っ越しが多い家で育った子供はどうなるのか
「・・・心理学者達、社会学者達、そして疫学者達は、何回も引っ越しをした子供達は、ずっと同じ所にとどまっていた子供達に比べて、学校出の成績がより悪くふるまいに問題がより多く生じるという認識を、これまで長らく持ってきた。・・・
すなわち、何度も引っ越しした子供達は、「良質の(quality)」社会的関係を持つ度合いが、より少ない傾向がある。
また、引っ越しが多ければ多いほど、大人になった時に「幸福な状態(well-being)」と「生活の満足(life satisfaction)」・・この二つは「幸せ」と呼ばれるえもいわれぬものを計量的に示す標準的物差しだ・・を表明する度合いが少なくなる傾向がある。
そして、<子供の時に>たくさん引っ越しをした大人達は、10年後に彼等を追跡しようとした時に死んでいる割合が多かった。
(自分自身が短期滞在を繰り返した子供時代によってはもとより、)あなたの家族が引っ越し目前であることから、恐慌を来す必要はない。
・・・引っ越しは、特定の人格の型の人だけに問題を発生させることが判明しているからだ。
(かかるレッテルを貼り付けるところの、一連の質問により、鬱ぎがちな(moody)、神経質な(nervous)、神経が張り詰めがちな(high strung)、或いは内向的な、すなわち、)「神経症的」という評価を下された人々は、悪い影響を受けるけれど、外向的な人々は、この上なく幸せなことに、<引っ越しが多くても>動じることなくあり続ける。・・・
また、場所が変わることは、それより若かったり年長だったりする子供達に比べて、既に思春期と格闘しているところの中学生にとって、より困難なことなのだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2010/07/11/fashion/11StudiedMoving.html?pagewanted=print
(7月11日アクセス)
→小学校時代に、三重県四日市で1回、次いでエジプトのカイロで2回、帰国して東京で2回、中学校時代に1回、計6回引っ越しをしている私としては、小学校時代の引っ越しはそれほど問題ではない、ということのようなので一安心しました。
なお、私は一人っ子なのですが、一人っ子は、長子同様、知力が学業成績で秀でている一方、特段マイナス面はない、ということのようです。
http://www.time.com/time/nation/article/0,8599,2002382,00.html
(7月10日アクセス)(太田)
日進月歩の人間科学(続X15)
- 公開日:
三井物産取締役で同社シンクタンク所長寺島氏のブログ
各論ではえっ??と思うところがありますが、全体的には単刀直入な太田ドクトリンの“ぼやかし版”というところでしょうかね?
http://mgssi.com/terashima/nouriki1008.php
政権交代によって「官僚主導から政治主導への転換」が語られている。だが、政治主導が機能していない省が二つある。外務省と防衛省である。
バランス感覚と豊かな人間性を持った優秀な官僚が多いのだが、彼らと真剣に議論をしてみて、直感的に思い起こすのは、清国末期の、亡国に導いた官僚が放つ空気である。
英国を初めとする列強の圧力を与件として、状況を打開するよりも列強の存在を当然の現実として受け止め「なんとか穏便に事態が推移すればよい」という心理に陥った専門家が清朝を支えていた。教養と学知はあるが硬直した時代認識に埋没した官僚群は、事件の囚人となって日々を繰り回すことだけに憔悴し、惰性のままに国の没落をもたらしていった。
偉い方なんですね? 内向的な →内省ができる・自分と向き合えるとプラス思考で考え、交通事故の脳挫傷の後遺症害と闘いながら生活して頑張ってます。