太田述正コラム#4253(2010.9.14)
<皆さんとディスカッション(続x954)>
<roma_sakamoto>
「平和・自然との共生・人間主義をコアとする縄文的価値観を維持しつつ、この価値観を世界に普及させるくらいの意気込みを持って>これからの(日本以外の)人類は、日本と邂逅し、日本の影響を受けて変容しなければならない、と私は信じている。
自然との共生と人間主義をベースとする日本、それと同時に、ポスト農業革命的文化だけを身につけた社会やアングロサクソン社会と論理的な対話が可能な日本は、・・・」
(非公式FAQの最初のページより)
太田さんの過去コラムを少しづつですが、読ませていただいており、やっとどうにか全体の主張がわかりつつあるところです。私、読者の皆さんのようなインテリではないので、理解が及ばなかったり、浅い疑問しか思い浮かばないのですが、上記の主張に関しては、違和感があります。
といいますのは、私、留学などの海外長期滞在の経験がないせいか、太田さん言うところの、アングロサクソン、欧州の個人主義や、全体主義的文明の悪しき面、逆に日本の人間主義的な良さ、というものが、どうしても体感できないのです。(一応、関連コラムも少しづつ読んでいますが)
それどころか、人権や男女共同参加社会など、社会の人への優しさという面ではEU、米国の方が一歩も二歩も進んでいるように見受けららますし、イタリアなどをはじめとして、古都にみられるような古いものを大切に残そうという姿勢、スーパーなどでみられる瓶の回収や、簡素な包装など、自然との共生という面でも、負けているように思えます。
自己犠牲、助け合いの精神なども、今の日本人(私も含めて)が世界に勝っているなどとはとても思えません。
以上はあくまでも雑感なので典拠はありませんし、長くなってしまったので、まとも答えていただかなくても結構ですが、もしもこの件に関してはこの辺りを読んでみろ、というのがありましたら教えていただけますでしょうか。
<太田>
戦後日本人が、吉田ドクトリンの下で経済至上主義に染まってしまったことや、戦時総動員体制としての日本型経済システムを、その耐用命数を超えて使い回して現在に至っていることから、戦前までの日本人に比べて堕落してしまった面は否定できません。
そこで、オンリー・イエスタデーであるところの江戸期から戦前期までの日本を振り返ってご覧になることをお勧めします。
江戸時代に関しては、コラムでもご紹介している、渡辺京二の本とか、石川英輔の本等があります・・もちろんこれらの本を援用した過去コラムをお読みいただいてもよろしい・・し、戦前期については、日本の植民地統治を欧米のそれと比較した過去コラムがよろしいかと存じます。
適宜、読後感想などお寄せいただければ幸いです。
<ぬり>
<コラム>#3637で太田さんが引用されたgardianの石油ピーク記事<に関してです。>
8月31日にドイツのシュピーゲルが、Bundeswehrというドイツ軍系のシンクタンクによるレポートをリークしました。
レポートのリンク
Teilstudie 1: PEAK OIL – Sicherheitspolitische Implikationen knapper Ressourcen
http://bit.ly/arsKjL
記事原文
Bundeswehr-Studie warnt vor dramatischer ���lkrise
von Stefan Shultz
http://www.spiegel.de/wirtschaft/soziales/0,1518,714878,00.html
英訳記事
Military Study Warns of a Potentially Drastic Oil Crisis 2010.9.1
by Stefan Shultz
http://www.spiegel.de/international/germany/0,1518,715138,00.html
その内容は、ピークオイルがいかに世界を変えるかというもので、市場取引に混乱を引き起こし深刻な政治的危機をもたらすと警告しています。
英文記事を翻訳しました。よろしければご活用ください。
<著作権の関係から、以下、その一部を掲げます。なお、私が気がついた範囲で訳文に若干手を入れました。(太田)>
「軍事研究が潜在的で劇的な石油危機を警告」 シュピーゲル紙
ドイツの軍事シンクタンクが、「ピークオイル(peak oil)」によって世界経済がいかに変わるかという分析を行った。・・・
「ピークオイル」という用語は、エネルギー専門家にとって、世界の石油生産が頂点に達し、徐々に減少に向かうタイミングを指す。このことは、恒久的な供給危機をもたらし、商品市場や株式取引に混乱を引き起こすと懸念されている。・・・
この研究は、Bundeswehr(<ドイツ>連邦軍) Transformation Center(以下Bundeswehr)の “未来分析部”によって行われたものである。Bundeswehrは、ドイツのシンクタンクで、ドイツ軍の方針を決める任務を負っている。Thomas Will中佐に率いられた執筆陣<によって行われた。>・・・
たった一週間前、ガーディアン紙が報じたところによると、英国のエネルギー気候変動省(DECC)は英国政府が供給危機にかなり関心を持っていることを示す文章を秘密にしているという。
ガーディアン紙によると、DECCと、イングランド銀行、英国国防省が産業界の代表と共同で、あり得るエネルギー供給の不足に対処する危機対応プランの構築を行っているという。・・・
<さて、Bundeswehrの上記>報告書によれば、「2010年前後にピークオイルが発生する可能性があり、その安全保障に与える影響は15~30年後に現れてくるだろう」とある。・・・
石油専門家のSteffen Bukold氏・・・によると、報告書の内容は以下の通りである。
(1)石油が国力を決める
・・・「国際システムの中で産油国の相対的な重要性は増加している。これらの産油国はこの強みを使って、彼らの国内外の展望を拡大し、新しく、またはかつてそうだったように、地域のリーダー、場合によっては世界においてでさえ、リードする国になろうとしている」。
(2)石油輸出国の重要性が高まる
・・・
(3)市場の代わりとしての政治
・・・供給危機はエネルギー市場の自由化を後退させるだろうと予測している。「国際取引される石油の割合、つまり自由に手に入れられる石油の取引市場は、石油の二国間取引が増えることによって縮小していくだろう」。・・・
(4)市場の失敗
・・・商品の輸送は石油に依存しているため、国際取引も関税の大きな引き上げに直面する。結果として、「重要物資の供給不足が起こる」として、例として食料を挙げている。石油は直接的または間接的にすべての工業製品のおよそ95%の生産に使われている。そのため、価格の衝撃はほとんどすべての産業のすべての段階のサプライチェーンに影響する。「中期的にみれば、国際経済システムとすべての市場志向型の国家経済は崩壊するだろう」。
(5)計画経済への逆戻り
実質的にすべての経済セクターは深く石油に依存しているため、ピークオイルは 「部分的または完全な市場の失敗」を引き起こしうる。それにとって代わる可能性があるのは、政府による配給制により重要物資の割り当てを行い、生産計画を設定するなどであり、市場に基づいたメカニズムが他の強制的な方法にとって代わる。
(6)国際的な連鎖反応
・・・「多くの国がその時に必要な投資を十分な大きさで行うことができなくなりそうだ」。もし、世界のどこかの地域で経済危機が発生すれば、ドイツは影響を受ける。ドイツと世界経済は強く統合されているので、ドイツは他国の危機から逃げることはできない。
(7)政治的正当性の危機
<こ>の研究は民主主義そのものの存続に懸念を投げかけてもいる。一部の人々はピークオイルによる大混乱を「全面的なシステム危機」と理解する。このことは、「現在の政治形態がイデオロギー的で極端な代替物へと代わる余地」を与えてしまう。影響をうけた人々の分裂は、「極端なケースでは紛争」を起こしうる。
・・・「石油輸入に依存する国々」は「外交政策において産油国に対しより現実主義的に」ならざるを得ないだろうという。政治的な優先事項は、エネルギー供給の懸念という重要事項によって、いくらか後回しにされざるをえなくなる。・・・
特にロシアとの関係は、ドイツが石油と天然ガスにアクセスする上で基本的な重要性を持つ。・・・ドイツはもしエネルギー供給を保障したければ、たとえそれがポーランドや他の東欧国との関係にヒビが入る危険があっても、モスクワの外交方針に協調的になるべきということである。
ピークオイルはベルリンの中東に対する立ち位置に重大な帰結も投げかけている。この研究によると、「ドイツの中東外交政策の見直しは、その政策変更の重要性によって、イランやサウジアラビアなど中東で最大の石油埋蔵量を持つ産油国とより緊密な関係をとることに賛成し、イスラエルとドイツの関係に緊張をもたらすだろう」と書かれている。
<太田>
こりゃ大変じゃー。
日本の主要メディアが無関心なのはともかくして、何で米国の主要メディアが、この問題を取り上げてないんだろ。
<××××>
依然として2chスレのデータが復旧しないのでこちらに書きますが、クレイギーが1946年に上奏した『Behind the japanese mask』のコピーいりますか?
取り敢えず著書の半分をコピーしたので半分は送れますよ。クレイギーシリーズ続くかも?
(もう半分は1週間ほど後になりますが。)
<太田>
では、遠慮なく、お願いしまーす。
前にクレイギーの報告書のコピーを送っていただいた方なら私の住所ご存じですよね。
住所忘れたり、別の方だったりした場合は、私にメール下さい。
<××××>
あ、それと前にツイッターでつぶやいてた件(半年間の~<名誉有料読者扱い>)は遠慮しときますよ。
<太田>
奥ゆかしい人がいるもんだ。
<太田>
それでは、記事の紹介です。
そんなこと選挙やる前から分かってたろうが。
私の小沢発狂説、当たらずと雖も遠からずでは?↓
「民主代表に菅氏再選 党員・サポーター票で小沢氏に大差・・・」
http://www.asahi.com/politics/update/0914/TKY201009140397.html
属国外交としては、ライバル中共と宗主国米国相手に、それぞれ、まあまあうまく立ち回った2例かもね。↓
「・・・尖閣諸島・・・付近で中国漁船と海上保安庁の巡視船が接触した事件をめぐり、中国の戴秉国国務委員が12日未明、丹羽宇一郎駐中国大使を緊急に呼び出し、日本側の対応に抗議したことが注目を集めている。強硬姿勢をさらにエスカレートさせた無礼千万の呼び出しには実は、自らのメンツを保つ形で早急に事態の収拾を図ろうとする中国政府の思惑が見え隠れしている。背景には、中国国内で高まりつつある「政府の弱腰」に対する批判があろう。・・・
<これは、>焦点の船長への言及を意図的に避け、日本側の既定方針であるはずの漁民と漁船の「早期送還」を強く求めて見せた「芝居」・・・だったといえるだろう。・・・ 中国と日本の両国政府が水面下において「事態収拾」のシナリオを描き、それを実行に移したのではないかとの見方も浮かび上がる。もし、そうだとすれば、日本の領土保全にかかわる重大な問題で中国側との妥協に安易に応じた日本政府の姿勢こそが問題なのである。」
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100914/chn1009140135000-n1.htm
・・・Japan Foreign Minister Katsuya Okada apologized Monday to a group of former US prisoners of war for being abused and used as slave labor during World War II. It was the first public declaration of contrition the World War II veterans have received from Japan, ・・・
Former POWs from other Allied countries including Britain, Australia, New Zealand and Holland, have been invited on previous trips to Japan, but this is the first for US veterans. Tenney said he has been “dumbfounded” as to why American POWs had been excluded from such programs but there has been speculation that it has been linked to the lack of an apology for the atomic bombings of Hiroshima and Nagasaki.
Last month US Ambassador to Japan, John Roos, became the first official American representative to attend the annual memorial peace ceremony in Hiroshima of the atomic bombing, and will visit Nagasaki later this month. ・・・
http://www.csmonitor.com/World/Asia-Pacific/2010/0913/Did-Japan-apologize-to-US-POWs-in-exchange-for-Hiroshima-visit
世界の武器貿易の現状が出ていた。↓
・・・the value of worldwide arms deals in 2009 was $57.5 billion, a drop of 8.5 percent from 2008. ・・・
For 2009, the United States signed arms deals worth $22.6 billion – a dominating 39 percent of the worldwide market.・・・
Russia was a distant second in worldwide weapons sales in 2009, concluding $10.4 billion in arms deals, followed by France, with $7.4 billion in contracts. Other leading arms traders included Germany, Italy, China and Britain. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/09/13/world/13weapons.html?ref=world&pagewanted=print
旧東独地域も急速に旧西独地域に追いつきつつあるようだね。↓
・・・the standard of living in the former communist East had improved dramatically between 1991 and 2009. The gross domestic product of the eastern German states doubled while in western Germany GDP increased by just 12 percent, it said.
Wages in eastern Germany have also edged up towards western levels. Back in 1991, the average eastern German worker earned just 57 percent of the equivalent western salary — today that figure stands at 83 percent.
・・・on average, eastern German households had a net income of EURO10,900 ($13,870) shortly after the Wall came down, just 35 percent of the western level. In 2008, that had risen to EURO19,500, or 53 percent of its western equivalent.・・・
Some 11.5 percent of easterners were unemployed in August, compared to a rate of 6.6 percent in western states. ・・・
http://www.spiegel.de/international/germany/0,1518,717136,00.html
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太田述正コラム#4254(2010.9.14)
<映画評論10:ラストキング・オブ・スコットランド(その1)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x954)
- 公開日:
早い時間に送ったんで明日には着くと思いますが、他にも色々と資料を詰めて送ってしまったんで、使えたらコラム書く際の典拠にでもどうぞ
断片的すぎてほとんど産廃のような資料ですが、個人的に面白いと思った本の一部をコピーしたモノです。
説明もなしに突然送られても困ると思うので、どういったモノを送ったのか一応の内訳を内容を抜粋しながら書いときます。
『太平洋戦争への道 別冊資料編』
「支那に関する米国の提案〈日本側の分析〉」p399
「若し米国側が支那の残部を蒋介石政府の政治的主権に委ねることを固執するならば、我々〈日本政府〉はそれを受け入れるには及ばない。
その場合には、今日迄我々が支那で発達させ来たものとは異なった何等かの実際的機構を米国が提案することが出来るかと尋ねればよい。・・・その機構は、
(1)支那人に政治上受入れられ得るものであり、内乱、軍閥による地方的分裂、混乱等の再発を予見するものであってはならない。
(2)部分的にせよ共産主義であってはならない。
(3)国家的発達を遂げ、飢餓を脱し、残酷なまでに低い支那人の生活水準を向上させうる国家経済を以て組織されるものどなければならない。
(4)・・・支那に永続的不幸をもたらし、且つ他の諸国の帝国主義的又は共産主義的野望に対する不断の誘惑となるものであってはならない。
(5)極東の平和、秩序及び安全の脅威とならぬよう米国がそれを保障し且つ強力にそれを阻止する所のものでなければならない。・・・
「情勢ノ推移二伴フ帝国国策要綱〈御前会議において〉」p464
・・・<ソ連>ハ共産主義ヲ世界二振リ蒔キツツアル故何時カハ打タネハナラヌ
現在支那事変遂行中故「ソ」ヲ打ツノモ思フ様二行ヌト思フケレトモ機ヲ見テ「ソ」ハ打ツヘキモノナリト思フ・・・続きはWebで!!
大山梓編の『山県有朋意見書』からは横井小楠のコンセンサスを堅信化させた?「外交政略論」や「帝国国防方針私案」等です
つまり、横井小楠のコンセンサスである『・・・日本国ノ国是ハ維新以来確乎トシテ定ツテ、一日モ変更ノナイコトデアル』p205といったような事が書いてあると思います。
『断たれたきずな(Broken Thread)』は駐日イギリス陸軍武官であったピゴット少将が書いた日英同盟の回顧録です
500pの大著なので、断片的すぎますが、良著だったので紹介がてらにコピーしときました。モーリス・ハンキー卿の序言から抜粋します。
『・・・第一次世界大戦において、日英同盟にたいするわれわれの信頼は、正当だったことが実証された。
条約破棄が文字通り十指を以て数えられる時代において、日本がその義務を忠実に履行した1914年―18当時を回顧するのは愉快である。
1914年日本はわれわれの敵に宣戦を布告し、青島のドイツ海軍根拠地を占領し、イギリスの軍輸船隊を護衛し、
1917年地中海の対潜水艦作戦に協力するため駆逐艦を派遣し、そして1918年にはシベリアに陸軍の大部隊を派遣した。
1921―22年のワシントン海軍軍縮会議において、・・・アメリカは日英同盟の破棄を事実上、会議の前提条件としていたが、
これは日英両国の首班代表たちにはすこぶる不愉快なことだったが、氷を割る仕事は・・・日本代表団の事務総長となってきた佐分利氏とわたくしに押し付けられた。
わたくし達二人にとつて、この仕事は、わたくし達の上官にそうであったと同様にいやなことであった。
日英同盟の結果生まれた四国条約について、佐分利氏は悲しそうに、しかし、予言的にこう言った
――「他の国が割りこんで来るだろう。ブドウ酒は水で薄められれば薄められるほど効能が少なくなる。ちょうどその通りのことが起こったら。そして日英両国は次第に離れて行った。・・・』
最後に前回送らなかった池田清の「1930年代の対英観」と「英帝国と宥和政策の論理」を送っときました。
断片的すぎるとも思いますが、面白い資料を見付けた興奮のままやってしまったんで、勘弁・・・・・・もう送ってしまったんで!