太田述正コラム#4299(2010.10.7)
<皆さんとディスカッション(続x976)>
<太田>(ツイッターより)
(コラム#4297に関し)尖閣問題の記事にコメントを付け忘れたけど、通訳の件、中共の方が関係修復により熱心だったという理解でいいんちゃう。
 だけど、外務省、温首相との会談の有無はともかく、漢語のできる随行員をつけてなきゃ。
<霞蜀>(同上)
 そういう 「用意周到さ」がなくて 思いつきでばかり行動しているから 危なっかしいんです。民主党は。
<太田>
 民主党が政治主導を掲げて試行錯誤していることは評価すべきでしょう。
 従来のように、官僚機構がすべてお膳立てしていた時に比べて、危なっかしく見えるのは当然ですが、官僚機構の方も、政治家に指示されたことだけをやるのではなく、できるだけ気を利かせて政治家を補佐する必要があります。
 今回の外務省の気が利かなさぶりはひどい。
 消極的抵抗をしているのではないか、という印象すら受けます。
<jim977>(ツイッターより)
 太田さんの意見はどうですか? ↓
 「軍事アナリスト 小川和久 本格的な自立は米国が阻止するでしょう。自立の程度の問題ですね。」
https://twitter.com/#!/kazuhisa_ogawa
<太田>
 私の日本属国論も「独立」論も、法的議論なんですよ。
 そういう意味においてですが、「<日本の>本格的な自立<を>米国が阻止する」なんてのは、朝鮮戦争が勃発した瞬間以降、およそありえないことです。
 小川のようなこと言い始めたら、現在、世界で自立してる国なんて、米国を含め皆無だけど、どうしてくれるってまぜっかえしたくなるねえ。
<おさ>
 イラン保守派政権は、イスラエルのイラン核施設空爆を阻止する能力もないのに、イスラエルを潰すとか言っていて、もし、あっさり核施設を潰されたら、国内からダメ政権として、批判されるとは考えないのでしょうか?
 バルカン半島、イラクでロシア製防空網が役たたずなことを見たはずなのに、ロシア技術者の口車にのって、阻止できるとでも思っているのでしょうか?
<太田>
 それが、イスラム教の判断腐食作用って奴ですよ。
 なお、「バルカン半島、イラクでロシア製防空網が役たたず」的な箇所には典拠を付けましょう!
<唯我独尊>
≫TVは、嘘をつくこともできるが、真実の姿を現すこともできる。両刃の剣だ。≪(コラム#4297。辻よしたか)
 TVは報道しない(知りながら知らんぷりする)ことも嘘をつくことになりませんか。
 ・・・
 「週間たかじんのそこまでやって委員会」
 青山繁晴さん大激怒!
 メタンハイドレート採掘が進まぬ「ある理由」!
http://ex-iinkai.com/free/detail15.html
 公共放送を標榜するNHKだけでも特集番組を組んでほしかったのですが。
<太田>
 この動画に登場するのは、青山本人とその部下だけで、青山の話に出てくるエピソードに出てくる人はすべて匿名であるだけでなく、エピソードが起こった日時すら明らかにされてません。
 しかも、要は、青山は、自分の会社が推進している事業のPRを行っているということであり、利害当時者が、評論家然として、上から目線で競合事業を推進してる人々を貶めちゃあいけませんや。
 青山の自民党政権下での政官業(+学)癒着や対米従属の主張には、私の主張にあい通じるようなところこそあれ、このような内容の動画は評価するわけにはいきませんね。
 なお、念のため、関連情報にあたってみました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E5%B1%B1%E7%B9%81%E6%99%B4
http://blogs.yahoo.co.jp/mvbzx0147/23771670.html
 結果、上記の私の感想に更に自信を持ちました。
<TH>
 太田さま、最近かなり頻繁に文字化け現象が起こります。
 非公開版だけのようです。(今回は#4297)
 偶然か否かはわかりませんが、公開版と並送されてきた場合に起こるように感じます。
 このような問い合わせは他にありませんでしょうか。
 気がかりなため、ご連絡いたします。   
<太田>
 その種のクレームは、これまでのところありませんが、他の有料読者の方々、いかがでしょうか。
 それでは、記事の紹介です。
 おめでとうございます。↓
 「ノーベル化学賞、根岸英一氏・鈴木章氏ら3人に・・・」
http://www.asahi.com/national/update/1006/TKY201010060321.html
 小沢問題と尖閣問題の寄与率、どっちが大きいのかなあ。↓
 「・・・菅直人内閣の支持率は45%で、9月18、19日の前回調査の59%から下落した。不支持率は36%(前回25%)。小沢氏は民主党を離党するなどのけじめをつけるべきだとする意見が69%に達し、「その必要はない」の21%を大きく上回った。・・・」
http://www.asahi.com/politics/update/1006/TKY201010060450.html
 「・・・小沢氏に議員辞職を求める人は54・3%、離党論は63・8%に上った。菅内閣の支持率は47・6%と改造直後の前回九月調査64・4%から16・8ポイント急落。中国漁船衝突事件での船長釈放を72・3%が不適切とし、検察の釈放判断への政治介入を否定する政府説明に「納得できない」も82・0%を占めた。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010100702000034.html 
 「・・・菅内閣の支持率は53%となり、内閣改造直後の前回調査(9月17~18日実施)の66%から下落した。
 不支持率は37%(前回25%)だった。沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、検察が中国人船長を処分保留のまま釈放したことを「適切ではなかった」と思う人は72%に達し、・・・船長釈放の決定について、菅首相は「検察当局が判断した結果だ」と説明し、政治介入はなかったとしている。これについては「納得できない」が83%に上った。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080116-907457/news/20101003-OYT1T00606.htm?from=nwla
 今回の小沢起訴の決定についてのこの朝日電子版掲載コラム、全部読めるのは有料読者だけなのだが、掲載分からの抄録↓にお目を通されたい。
 「・・・検察官による不起訴処分における不起訴の理由の多くは、「起訴猶予」か「嫌疑不十分」である。起訴猶予は、起訴して有罪判決を得るだけの証拠はあるけれども、犯行の動機、態様、被害回復の程度、被疑者の反省状況、前科の有無、被害者の感情等の事情を総合考慮して、敢えて訴追する必要がないと認める場合に訴追しないことであり、まさに「裁量」権の行使である。これに対し、嫌疑不十分は、犯罪を立証するに足る証拠が収集できていない、ということであり、有罪判決が獲得できる見込みがない、あるいは薄いので不起訴とすることになる。
 検察審査会に申立てがあった事件が「起訴猶予」により不起訴になった事件であるとすると、審査の内容は、検察官の裁量権の行使が適切であったかどうかを、「民意」、言い換えれば、一般社会の常識に照らして判断することにあり、これは、広く一般社会から集っている審査員が判断するのによく馴染む内容であるということができる。
 これに対し、「嫌疑不十分」により不起訴になった事件が審査を申し立てられた場合には、審査の内容は、検察官が不起訴とした事件の証拠を吟味し、検察官の捜査が十分であったかどうか、仮に十分であったとしても、適切に評価していたかどうか、にあることになる。このような判断に、「民意を反映」させるとは、一般常識から見て、警察ないし検察が、当然にやっているべきであるはずのことをやっているかどうか、あるいは、一般常識からすれば、証拠からはXという事実が認定できるはずなのに、間違ってそれを認定していない(あるいはYという事実を認定している)というようなことはないか、という検証を行うことを意味すると思われる。・・・
 しかし、この起訴できるレベルにあるかどうかの判断が、実際には、検察審査会にとって大きな問題事であるように思われる。単純化して説明しよう。検察官が、通常、事件を起訴することができると判断する証拠のレベルを90%とし、ある事件(大きく報道されている重大な事故の事件であるとしよう)については、80%の証拠しかなかったため、嫌疑不十分としたとする。この事件の被害者が検察審査会に審査を申し立てた場合、審査員が証拠を吟味した結果、実際には90%に達していた、あるいは所要の補充捜査を遂げれば確実にそれに達することができると判断されるのであれば、「起訴相当」の議決は不合理ではない。しかし、審査員の吟味の結果でも、やはり証拠のレベルは80%しかなかったとしよう。この場合、審査員は、「そうは言っても、このような国民の関心の高い重大事件は、裁判所の公開の法廷で審理することにより国民に広く内容を知らせることが『民意』であり、例え証拠が80%であっても検察審査会としては起訴相当とすべきである。」と判断して果たしてよいのであろうか。・・・」
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/outlook/2010092900001.html?iref=chumoku
(10月6日アクセス)
 この指摘はおかしい。
 陪審のアナロジーで考えて見よう。↓
 「刑事事件では、陪審が有罪・無罪を答申し、有罪の場合の量刑については裁判官が決定するのが原則である。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%AA%E5%AF%A9%E5%88%B6
 上記コラムの筆者の言う「起訴猶予」の是非は、裁判における量刑判断に関わるものであり、「嫌疑不十分」の是非は裁判における有罪無罪に関わるものである、と私には思える。
 そうだとすると、前者は法律のプロの判断になじむのに対し、後者は法律のシロウトの判断でも問題ない、という前提で陪審制が成り立っているという事実に照らせば、この筆者の指摘は、アングロサクソン法系の諸国を中心に世界で広く行われている陪審制を貶めるような、(法律専門家にあるまじき)筋悪の指摘である、ということになるのではないか。
 おーなさけない。
 米国は中共と経済戦争をやったら負けるとよ。
 それにしても、米国防省、サイバーウォーどころか経済戦争にまで所管を広げようってか。↓
 ・・・In March 2009, the Pentagon for the first time held a series of economic war games exercises. The soldiers were Wall Street traders and executives, economists and academics. The weapons were stocks, bonds and currencies.・・・
 What the exercises showed was that the U.S. consistently lost to China in economic warfare. Part of the reason was that the U.S. could be easily distracted by expensive side conflicts that sapped our economic strength. But the more important reason was that China could inflict real pain on the U.S. without feeling it at home. For instance, by simply moving the maturities of some of its $850 billion in Treasury holdings from 90 days to 60 days, it could cause chaos in the U.S. stock markets. Or China could sell just a trickle of its U.S. financial assets and signal that it didn’t have confidence in the U.S. economy, setting off a panic here.・・・
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-weiner-china-20101006,0,2950473,print.story
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太田述正コラム#4300(2010.10.7)
<映画評論14:エリザベス1世 ~愛と陰謀の王宮~(その2)>
→非公開