太田述正コラム#4246(2010.9.10)
<幸福論(その2)>(2010.10.10公開)
4 幸福体験と幸福感
 「・・・テキサス州の900人の女性<を対象にした研究によって、>・・・これら女性達にとって、5つの最も気持ちイイ(positive)活動は、(イイもの順に)セックスをすること、人と交わること(socializing)、のんびりすること(relaxing)、祈ったり瞑想に耽ること、そして食べることであることが分かった。
 運動をすることとTVを見ることがそれに続いた。
 しかし、このリストのはるか下の方に「自分の子供達の面倒を見ること」が来た。
 これは、料理することよりも下で、家事よりほんのちょっと上だけだった。・・・
 ところが、「あなたの人生に最大の幸福をもたらしたものは何ですか」と聞かれると、35%は、それは自分の子供達または孫達、もしくはその双方だという答えが返ってくる。
 (配偶者についてはずっと下の方でわずか9%であり、宗教は2番目であって17%だ。)・・・
 この二つは非常に異なったものなのであって、諸研究から、この二つの相関度は余り高くないことが分かっている。
 我々の全般的な(overall)幸福度は、単に、我々の幸福な瞬間の総和から我々の怒ったり悲しかったりした瞬間の総和を減じたものではないのだ。・・・
 <ノーベル経済学賞を受賞した>カーネマン(<Daniel> Kahneman<。1934年~。イスラエル生まれの米国の心理学者
http://en.wikipedia.org/wiki/Daniel_Kahneman (太田)
>)は、経験しつつある自身(experiencing self)と思い出しつつある自分(remembering self)とを区別しようとする。・・・
 最後がどうであったかの力がいかほどのものかがカーネマンによって行われた瞠目すべき諸実験によって検証された。
 そのうちの一つに結腸内視鏡検査を受けている人を対象にしたものがある。
 これは、曲がる管が結腸の中を通って動いていくという不愉快な手順を伴う。
 対照群には標準的手順でこれを行う一方、被験者の半分は管の動きが最後に60秒間止められるという手順に耐えさせられた。
 不愉快さの原因は通常、管が動くことだ。
 分かったのは、良性の終わり方をする、より長時間の手順で措置された集団のメンバー達は、対照群より不愉快さが少なかったということだ。
 彼等は、結腸内視鏡検査をもう一度受けることにより乗り気だった。・・・
 ・・・幸福は、三つの構成要素からなる。
 それは、喜び(pleasure)(微笑んだ顔って奴だ)、関与(engagement)(その人の家族、仕事、恋愛(romance)、及び趣味との関わり(involvement)の深さ)、そして意義(meaning)(大義(larger end)に奉仕するために個人的な力を用いる)だ。
 幸福で満足の行く生活に至るこの三つの道のうち、喜びは一番重要ではない。・・・」
5 幸福になる方法
 「・・・人生における満足感(satisfaction)の約50%は遺伝的プログラミングに由来する。
 (遺伝子は、快活で暢気な性格を持つ、ストレスに強い、不安と鬱を感じるの度合いが少ない、といった諸特徴をもたらす。)
 収入、婚姻関係、宗教、そして教育といった状況的諸要素は、全般的な幸福(well-being)にわずか約8%しか貢献しない、ということも・・・分かっている。・・・
 <このことを押さえた上で、なおかつ、自分で幸福になる方法はあるものだろうか。>
 ・・・感謝日誌(gratitude journal)・・自分が感謝したい事柄を書き記す日記<を書くという方法がある。>
 週一度かかる嘉すべきこと(blessing)を良心的に数え上げるのに時間を費やすと6週間にわたってその人の全般的満足度が顕著に増大することが・・・分かっている。・・・
 この感謝の訓練(exercise)は、その人の気分を良くする以上のことを可能にする。
 ・・・それは、肉体的健康を改善し、エネルギー水準を高め、神経筋(neuromuscular)疾病持ちの患者の痛みと疲れをとることが分かった。・・・
 <鬱等ではなく幸福といったプラスの諸問題について研究している>心理学者達は、幸福を増進するもう一つのものは、看護施設の訪問、友人の子供の宿題を助けてやること、隣人の芝生を刈ること、祖父母に手紙を書くことといった、利他主義的行為ないし親切な行為を行うことだと言う。
 一週間の間に、できることなら全てを一つの日に、5つの親切な行為を行うと、計測可能な<幸福感の>増進が・・・被験者にもたらされた。・・・
 ・・・先生や牧師や祖父母といった、自分が感謝の負債を負っている人に感謝状を書き、次いでその人を訪問し、その感謝の手紙を読み聞かせること<などだ。>
 ・・・瞠目すべきことは、これをたった1回やっただけで、1ヶ月後も計測可能なほどより幸福でより鬱でない状態になったことだ・・・。
 これほど強力ではないけれど、より持続的なものは、その日うまくいったことを、そしてそれらがどうしてうまくいったかを、3つ、毎日時間を費やして書き記すこと、すなわち、・・・3つの嘉すべきことと呼ぶところの訓練を行うことだ。
 ・・・それをやれば、人は、3ヶ月後でも6ヶ月後でも、より鬱ではなく、より幸福たりうる・・・。・・・
 ・・・<ちなみに、>脳の徳であるところの、好奇心、勉強好きは、親切、感謝、そして愛する能力(capacity for love)といった人間的な(interpersonal)徳に比べて、より少なくしか幸福と結びついていない。・・・」
http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1015902,00.html 上掲
6 終わりに
 何度も申し上げているように、人間(じんかん)主義的な行動をとることが、幸福への最も確実で迅速な方法なのです。
 従って、営利活動を行っているわけではないこの私が書き綴っている太田コラムの有料読者の方や、太田コラムに大小様々な形で協力されている読者の方々は、幸福である・・とまで言うと、やや我田引水に過ぎるかもしれませんが・・。
(完)