太田述正コラム#4321(2010.10.18)
<皆さんとディスカッション(続x987)>
<太田>(ツイッターより)
 (コラム#4262に関し)このシリーズは米国人の日本近現代史認識を根底的に批判するものだが、コラム#4303でやった日本人の日本近現代史認識への根底的批判と一対をなすものだ。
 どっちも言われて見りゃコロンブスの卵ざんしょ。
<roma_sakamoto>(同上)
 改めて<コラム#4317、4319での太田さんの>回答に感謝します。
 陰謀論の類が書籍やネット上で後を絶たないのも、それなりに噂の元となるものがあるのだなと、妙に納得です。
 最後に一つだけお聞かせください。
 では少なくとも、高級官僚は日本が属国であることを知っている、と理解してよろしいのでしょうか
<太田>
 これまでのところ残念ながら、私自身が、日本が属国であることを自覚している官僚(・政治家・企業人)に遭遇したことはありませんね。
 他方、在日米軍の将校や文官幹部で、日本が属国であることを自覚していない人はまずいませんでしたねえ。
 私が、日本を家畜化した牛に準える理由がお分かりいただけるでしょうか。 
<SK>
 太田さま、<私の質問をコラム#4317で>取り上げて頂きありがとうございます。・・・
 カトリック及びプロテスタントという単純な区別では不十分なのですね。
 ご教授頂きありがとうございます。
 この部分の区別をもっと深めたく思うのですが、お勧めの日本語の書籍等がありましたら、ご紹介願えないでしょうか?
 出典にお使いになった英語版のwikiはかなり骨が折れますので。 
<太田>
 今月の29日に恐らく公開できると思いますが、未公開のコラム#4284から、英国映画の『エリザベス』『エリザベス ゴールデン・エイジ』の監督のインド人、シェカール・カプールの言葉を引いておきましょう。
 「この<二つの>映画は、実際には、すこぶるつきに全くのところ、反カトリックじゃないんだ。
 それは、宗教の極端な諸形態に反対する映画なんだ。
 当時、スペインの教会、あるいはフェリペ2世は、全世界をカトリシズムの純粋な形態で染め上げると語っていた。・・・
 そんなのは、神の言葉の特異な一つの解釈であって、信仰(faith)を付随的(concomitant)なものと見なすエリザベスによる解釈に反するものだった。
 法王が彼女の処刑を命じたのは事実なのだ。
 彼は、誰であれ、エリザベスを処刑するか暗殺した者は天の王国で美しい場所を見出すだろうと言った。
 サルマン・カーン(Salman Khan)やサルマン・ラシュディー(Salman Rushdie)について語られたこの種の言葉を、そのほかどこで聞いたことがあるというのだ。
 これこそ、私がこの映画をつくった理由なんだから、カトリシズムとプロテスタント達との仲違いなんて発想はこの映画にはないんだ。
 私は、エリザベスについてはより大きな寛容<の追求を行った>という解釈であるのに対し、フェリペ2世については絶対的真理<の追求を行った>という解釈だ。
 彼女がこの種の女性的なエネルギーを持っていたことは完全に本当だ。
 それは、多様性ないし矛盾を包含する能力がないフェリペ2世と、それを行う女性的能力があったエリザベスとの間の紛争だった。・・・
 この映画は原理主義対寛容という観念から出発しているわけだ。
 カトリック対プロテスタントじゃないんだ。
 カトリシズムの原理主義的形態を問題にしているんだ。
 それは、スペインの異端審問の時代であり、<フェリペ2世は>彼女の臣民の半数がプロテスタントで半数がカトリックであった一人の女性<たるエリザベス>に敵対したのだ。
 彼女のプロテスタントの議会にはたくさんの凝り固まった人々がいて、「奴らを全部殺せ」と言ったものだが、彼女は常にノーと言い続けた。
 彼女は、常に寛容の側に立ったのだ。・・・」
<SK>
 太田コラム#1043も参考になりました。
 この回でもお使いの「就中欧州文明」の言葉についてなのですが、「欧州文明」は分かるのですが、「就中」の意味が分かりません。
 この部分の質問はコラムからは発見できませんでした。 
 よろしければ解説をお願いできないでしょうか。
<太田>
 言葉の意味が分からない時は、オンライン辞書で調べましょう!↓
 「なかん‐ずく〔‐づく〕【▽就▽中】
[副]《「就中」を訓読みにした「なかにつく」の音変化》その中でも。とりわけ。・・・」
http://dictionary.nifty.com/word/%E5%B0%B1%E4%B8%AD?dic=daijisen
<太田>(ツイッターより)
 米国は、今でも対日作戦計画を持っていて、首都圏に米3軍の基地があり、うち2つは飛行場付だ。
 いつでも自由にこれら基地の部隊を増強した上で、東京を制圧することができる。
 このことを忘れないようにしよう。
<ishizaka80>(同上)
 漫画「沈黙の艦隊」でそれを発動した場面があった。
 で、今日もあるその対日計画の名は「オレンジプラン」ですか?
<太田>
 昔の名前(ニックネーム)はそうだったけど、今、何て呼ばれてるのかは知らない。
 現在じゃ、世界中の国ほとんどに対する作戦計画を米国は持ってるとされている。
 ネットであたってみれば、すぐ分かるはずだ。
<bonkers_blunder>(同上)
 欧州が多文化社会を目指すためにはアングロサクソン的社会化が必要なのでしょうか?German multiculturalism has ‘failed,’ Merkel says –
http://edition.cnn.com/2010/WORLD/europe/10/17/germany.merkel.multiculturalism/index.html
<太田>
 この話、欧米の主要メディア、ほとんどが取り上げている。
 さて、一般論で言えば、ご指摘のとおりだ。
 しかし、本件に関して言えば、それは、ドイツ社会の非アングロサクソン性(=非寛容性)の問題でもなければ、移民一般の問題でもなく、イスラム移民特有の問題だ。
 (現に、英国だって、ドイツに比べれば規模こそ小さいが、同じ問題を抱えている。)
 日本でも既に、ささやかながらイスラム移民(居住者を含む)問題が起こりつつある。↓
 「・・・外国人が約10万人、日本人が約1万人と推計される国内イスラム教徒日本に住む・・・<この>イスラム教徒の間で墓地不足が深刻だ。土葬のため、地域住民から理解を得られず、行政の許可がなかなか下りない。・・・」
http://www.asahi.com/national/update/1017/TKY201010170288.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Cremation
 このことが象徴しているように、宗教上の「禁忌」への固執度がイスラム教徒の場合異常に強く、これが彼等から柔軟性を奪っているわけだ。
 イスラム教そのものが世俗化する(=水で薄まる)・・これがむつかしい。論理矛盾と言ってもいいくらいだ。むしろ、原理主義化のモーメントが常に働いていると考えた方がいい・・か、彼等がイスラム教を捨て去る・・禁止されているからこれも容易ではない・・ことがない限り、間違ってもイスラム教徒を積極的に移民として受け入れてはならない、ということだ。
<δηηδ>(「たった一人の反乱」より)
 反日デモ、実は官製=政府系学生会が組織―香港紙
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101017-00000041-jij-int
 太田さんが見抜いていた通り「中共当局のやらせ」って事ですか。
<太田>
 かねてより国際的に注目されている件で中共国内で何かが起こったら、それが当局のやらせでないことの挙証・立証責任は中共当局にある、と考えるべきだろう。↓
 自由な買い物はやらせ 劉霞さんが批判
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101017-00000037-mai-cn
 それでは、その他の記事の紹介です。
 これも、ほぼ私の指摘があたったねえ。↓
 「・・・中国は今年、日本を追い越し、米国に続き国内総生産(GDP)規模で世界2位に浮上するとみられていた。しかし、最近の為替戦争と円高により、ドル建てでみた日本の経済規模は年末時点でも世界2位を維持する見通しが強まった。・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20101018000021
 要するに中共当局、イランに対する経済制裁、やる気ないってことでしょが。↓
 The Obama administration has concluded that Chinese firms are helping Iran to improve its missile technology and develop nuclear weapons, and has asked China to stop such activity・・・
 ・・・the Obama administration thinks that the companies are violating U.N. sanctions, but that China did not authorize their activities. ・・・
 China now is the only country with a major oil and gas industry that’s prepared to deal with Iran・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/10/17/AR2010101703364_pf.html
 所得不平等度の高まりが、米国で何をもたらしているかが詳述されている。↓
 ・・・ the counties where income inequality grew fastest also showed the biggest increases in symptoms of financial distress.
 For example, even after controlling for other factors, these counties had the largest increases in bankruptcy filings.
 Divorce rates are another reliable indicator of financial distress, as marriage counselors report that a high proportion of couples they see are experiencing significant financial problems. The counties with the biggest increases in inequality also reported the largest increases in divorce rates.
 Another footprint of financial distress is long commute times, because families who are short on cash often try to make ends meet by moving to where housing is cheaper ? in many cases, farther from work. The counties where long commute times had grown the most were again those with the largest increases in inequality.
 The middle-class squeeze has also reduced voters’ willingness to support even basic public services. Rich and poor alike endure crumbling roads, weak bridges, an unreliable rail system, and cargo containers that enter our ports without scrutiny. And many Americans live in the shadow of poorly maintained dams that could collapse at any moment. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/10/17/business/17view.html?hp=&pagewanted=print
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太田述正コラム#4322(2010.10.18)
<『網野史学の越え方』を読んで(その1)>
→非公開