太田述正コラム#4375(2010.11.14)
<皆さんとディスカッション(続x1014)>
<太田>(ツイッターより)
私、吉田茂を買いかぶってたかもな。
彼、一時的ならぬ恒久的軍備放棄を目指したけれど、晩年、それは間違ってた、いや自分が戦前戦後にやったこと全てが間違っていたと悟ったってあたりが本当のところかもよ。
<植田信>(2010.11.14)http://8706.teacup.com/uedam/bbs
–尖鋭化する「太田述正・言論」、実に結構です–
・・・この前半は、まったくその通りです。
後半は、そんなことはないでしょう。吉田茂氏は、明治時代にその思想を構築した人です。もし終戦前に間違ったことをやったのだとしたら、信念をもってやっていたわけです。吉田茂は、その信念は終生持ったままで死を迎えました。つまり、彼は、自分で規定したように(いや、ジョン・ダワーがそう指摘したのだったか)、明治時代の人間であり、天皇主義者でした。
だから、民主主義の時代になった戦後になって、アメリカ占領軍への日本民主化政策に反抗する意味もあり、「臣・茂」と称しました。戦前の天皇制は今も生きているぞ、と。
戦後世代から見て吉田茂を評価するときに最も目につくのは、この人は民主主義者になったことは一度もなかったということです。明治時代の武士あがりの官僚たちと同じく、民は統治されるべき存在、と見なしていました。もちろん、官僚は民をいつくしみ、統治する主体です。
こういう統治思想を持った人が、今に至る「吉田茂体制」を構築しました。昭和天皇の意向を100%体現したものです。
<太田>
「『吉田茂の自問』を読む」シリーズ(未公開)で書いてる最中だが、戦前から戦後にかけての日本の外務官僚の大部分は、英米崇拝で、その裏返しで自国及び自国の国民をバカにしてて、自国が自由民主主義(的)国家であることを認めないか、認めても自由民主主義に対して強い違和感を持ってたんだな。
だから、英米を事大視して、戦前はことごとに日本の国策の遂行を邪魔して日本を破滅させた挙げ句、戦後は、米国の属国になる道を選んだっちゅうこと。
私は、吉田が、日本を破滅させた英米、就中米国に含むところがあったから再軍備を(とりあえず)拒否した、と解釈しようとした(拙著『防衛庁再生宣言』)んだが、それは吉田に対するとんだ買いかぶりであり、彼、2度と日本が英米に楯突くようなことがないよう、永久に軍備を放棄しようと思ったに過ぎないんじゃないかって考えるに至ったんだな。
その根拠?
だって、吉田だけじゃなく、当時の大方の外務官僚が、英米崇拝で自国及び自国民をバカにしてて、自国が自由民主主義(的)国家であることを認めないか、認めても自由民主主義対して強い違和感を持っていたことを知ったからだよ。
ここに昭和天皇がからんでくる余地なんかないさ。
だって、彼、五箇条のご誓文を拳々服膺する自由民主主義信奉者だった(コラム#2973、3903)からだ。
なお、彼、戦前から象徴天皇制志向だった(コラム#3123)ことも忘れてはならない。
自分の考えを押し通そうとしたことなど、戦後はもちろん、戦前にだってまずないよ。
そうだ、肝腎のことを言い忘れるところだった。
吉田はその最晩年に、遅きに失したけれど、以上のような自分の世界観が根底から誤っていたことに気付いたんじゃないか、それが彼の『世界と日本』における吉田ドクトリンを形成してしまったことへの反省の弁なんじゃないか、そう考えないと説明がつかないって私は思うに至ったんだな。
とにかく、植田サン、私のコラム(本文)を読まずにツイッター(片言隻句)に反応するのは止めなさい!
<太田>(ツイッターより)
どんどん私の日本戦前史観が先鋭化して行ってるように思うが、これは読者諸氏のインプット(史料提供)によるものだ。
しかし、先鋭化とこの私の史観の普及とは相容れない面がある。
この点でも読者諸氏、よろしく。
<植田信>(2010.11.14)http://8706.teacup.com/uedam/bbs
いや、ますます正気になってきています。
私も、そろそろギア・チェンジをしなくても、普通に太田氏のコメントが楽しめるようになりつつあります。
尖鋭化とは、すなわち、律令理性人たちがまき散らした戦後の日本語言論から離脱して、正気の道への歩みです。
したがって、太田氏のこれからのさらなる尖鋭化が期待されるところです。
戦後の日本語言論は、しょせん、吉田茂体制の中でのママゴトです。
これを離脱して、はじめて日本語は「普通」の目線に立つことが出来ます。
太田氏が、ここに「到達、一番乗り」、という気配がしてきました。
<太田>(ツイッターより)
外交官試験廃止の結果がどうなったのか、主要マスコミの電子版じゃお目にかかったことないね。
誰か教えてくれないかな。
ま、外交自主権がない現在の日本じゃ、どっちみち大した話じゃないが・・。
<植田信>(2010.11.14)http://8706.teacup.com/uedam/bbs
太田述正氏の冴えわたるコメント。↑
まったくその通り。
どっちみち、たいした問題じゃない、ですよ、ホント。
<太田>
植田サン、「踏まれてもついてゆきます下駄の雪」、and/or「悪女の深情け」?
ここで、コラムを読まない植田サン以外の人のために、面白いデータを紹介しておこう。
戦前の日本の国防費は米国を上回っていた。↓
http://www.cna.org/documents/D0007249.A1.pdf
<太田>
それでは、記事の紹介です。
例の映像流出経路は完全に明らかになった。↓
「・・・海保大に映像が存在することは公表されず、保存期間も9月中旬以降の4日間だけだったが、海保大のフォルダーには2管本部(宮城県塩釜市)と5管本部(神戸市)から計数十件のアクセスがあった。・・・
海上保安庁は「10月に映像の管理を厳格化した」としていたが、直接指示を出したのは石垣海保と11管本部、本庁の3カ所だけで海保大は含まれなかった。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101114/crm1011140011002-n1.htm
「・・・映像は鑑定などのため第十一管区海上保安本部(那覇)から海上保安大学校に提供され、海保のサーバー内にある同大学校の共有フォルダーに保管されていた。
パスワードが設定されていなかったため、全国の海保で閲覧できたという。
捜査当局の聴取に、十一管の関係者は「すぐに消去するという前提で映像を提供した」と説明。同大学校の関係者は「本来はダウンロードしたら共有フォルダーから消去することになっているが、消し忘れ、四、五日後に気づいて消した」と説明しているという。
この間に神戸海上保安部(神戸市)の巡視艇「うらなみ」の乗務員が、操舵室にある共用パソコンから大学校の共有フォルダーにアクセスし、偶然に映像を見つけた。
乗務員は映像をダウンロードして保存。「面白いものがある」と、流出への関与を認めた同海保の男性海上保安官(43)らに伝え、保安官と一緒に閲覧したこともあったという。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010111490070459.html
結論。逮捕はなし、起訴はあり。↓
「・・・公益通報支援センター事務局長の阪口徳雄弁護士「ビデオ流出は国家公務員法違反に該当し、違法性は高く起訴されるべき事案だと思う。あの程度のビデオを公開しなかったという政府の判断には賛成しないが、政府がいったん公開しないと判断したものを、公務員が政府の政策が気にくわないからといって勝手に公開するとなると、国家の体をなさなくなる。
内部告発者を保護する公益通報者保護法は、刑事罰に処されるような違法、不正行為の場合に限って告発者が守られるもの。今回のケースは政府が外交上の判断などでビデオを一般公開しなかっただけで不正行為ではない。政策の当否をめぐる議論にすぎず、公益性のある通報とはいえない。
普通の公務員ではなく、海上保安官という点も重要だ。海上保安官は捜査権という権力を持っており、例えば、民主党元代表の小沢一郎氏の政治資金規正法違反事件を担当した東京地検特捜部検事が『不起訴は許せない』といって関係者の供述調書を公開するのと同じ行為だと思う。
今後も公務員が秘密を暴露する事件が起きたらどうするのか。再発防止の観点からも、刑事処分は粛々と行われるべきだ」」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101113/crm1011132108015-n1.htm
今回、別に中共だけじゃない、ロシアとも、そして宗主国サマとも、首脳会談は全部形だけだった。
だって、属国でハイポリティックスを放棄してる日本の首脳と会談したって時間の無駄だもんね。
つい最近までは、大金持ちだったからしょうがなくホイホイしてくれたけど、今じゃ用済み。↓
「<日中>首脳会談応諾は30分前・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101113-OYT1T00801.htm
「・・・念願の会談はわずか22分・・・
しかも中国外務省は最終的に正式な会談ではなく「交談」(懇談の意)と発表。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101114/plc1011140028001-n1.htm
「菅首相は・・・、ロシアのメドベージェフ大統領と横浜市のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議会場で約40分間会談した。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101113-OYT1T00715.htm
「・・・菅首相は・・・オバマ米大統領との会談で、リンカーン大統領が江戸幕府の第14代将軍・徳川家茂にあてた親書・・・の複製を贈呈した。・・・
一方、大統領は横浜にちなみ、横浜在住の花火師が1883年に米国で初めて取得した「昼花火」の特許の複製を首相にプレゼント。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101113-OYT1T00692.htm
ただし、日本もローポリティックスはやってるので、実務レベル会談はまともに行われるってワケだ。↓
「・・・大畠経産相(右)と張平・中国国家発展改革委員会主任・・・との会談。時間が当初予定30分をはるかに超える2時間25分にまで及んだ・・・」
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819481E3E1E2E1E78DE3E1E3E3E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;bm=96958A9C889DE3EAE3E5E6E7E0E2E3E6E3E3E0E2E3E29F9FEAE2E2E2
面白いデータが示されてたよ。上で紹介した戦前の面白いデータと併せ読むといい。↓
・・・On the eve of World War II, Japan accounted for 5 percent of the world’s industrial production. Devastated by the war, it did not regain that level until 1964. From 1950 to 1974, Japan averaged a remarkable 10 percent annual growth rate and by the 1980s was the world’s second-largest national economy, accounting for 15 percent of global output.・・・
・・・only half as many Japanese students study overseas as did two decades ago.・・・
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/print/2010/11/14/2003488461
諜報面で活用するために、戦後旧ナチが米国で重宝されたって話が暴露されてた。↓
・・・the C.I.A.’s use of Nazis for postwar intelligence purposes. ・・・
America, which prided itself on being a safe haven for the persecuted, became ? in some small measure ? a safe haven for persecutors as well・・・
・・・the number of Nazis who made it into the United States was almost certainly much smaller than 10,000, the figure widely cited by government officials. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/11/14/us/14nazis.html?ref=world&pagewanted=print
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ユダヤ人音楽のシリーズの第3弾の2つ目は、エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルト(Erich Wolfgang Korngold。(1897~1957年。オーストリア・ハンガリー→米国)
http://en.wikipedia.org/wiki/Erich_Wolfgang_Korngold
小特集です。(昨日、入力するのを忘れました。)
前半は、「色物」を集めてみました。
[バレー『Der Schneemann』]
セレナーデ(11歳の時の作品だよ!) バイオリン Joseph Lin
http://www.youtube.com/watch?v=oHN_jiZxZMw&feature=related
[歌劇『Violanta』]
序曲 ?
http://www.youtube.com/watch?v=Bl-EwIbubSw&feature=related
フィナーレ Siegfried Jerusalem & Eva Marton
http://www.youtube.com/watch?v=SQBo9Kjaa_I&feature=related
[歌劇『Die tote Stadt(The city of the dead)』]
Gluck, Das Mir Verblieb(Mariettas Lied) Kiri Te Kanawa
http://www.youtube.com/watch?v=TtooFuA1h58&feature=related
Pierrot’s Tanzlied Thomas Hampson
http://www.youtube.com/watch?v=lolPTlQX84w
[歌劇『Das Wunder der Heliane』]
アリア Renee Fleming
http://www.youtube.com/watch?v=H2x5NgtGSx4&feature=related
[映画音楽]
FLIRTATION 米映画『The Prince and the Pauper』(1937)のサントラより
http://www.youtube.com/watch?v=vPzkKHTV5-8&feature=related
米映画『The Adventures of Robin Hood』(1938)のサントラより 1:54~
http://www.youtube.com/watch?v=E-r6mU2JnKo&feature=related
米映画『The Sea Hawk』(1940)のサントラより
http://www.youtube.com/watch?v=C-RPzAbW7No
(続く)
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太田述正コラム#4376(2010.11.14)
<『吉田茂の自問』を読む(その5)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x1014)
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