太田述正コラム#4160(2010.7.29)
<狩猟採集時代の性(その1)>(2010.12.1公開)
1 始めに
クリストファー・ライアン(Christopher Ryan)・Cacilda Jetha夫妻の ‘Sex at Dawn: The Prehistoric Origins of Modern Sexuality(夜明けの性・・現代における性的なことの前史的起源)’ をワシントンポスト等が注目しています。
私が見逃すことができないテーマを掲げた本である以上、ご紹介しないわけにはいきますまい。
A:http://www.newsweek.com/blogs/we-read-it/2010/07/26/sex-at-dawn-the-prehistoric-origins-of-modern-sexuality.print.html
(書評。7月28日アクセス(以下同じ))
B:http://www.glamour.com/sex-love-life/blogs/smitten/2010/07/ask-an-expert-why-famous-men-c.html?printable=true
(著者へのインタビュー)
C:http://www.salon.com/books/feature/2010/06/27/sex_at_dawn_interview
(著者へのインタビュー)
D:http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/05/27/AR2010052706046_pf.html
(書評)
E:http://voices.washingtonpost.com/shortstack/2010/06/polite_sex_at_dawn.html
(著者へのインタビュー)
なお、ライアンはバルセロナ大学医学部等で教鞭を執ってきた実験心理学者であり、奥さんはスペインの臨床精神医です。(B、C)
取材したのが米国のメディア等であり、言語の問題があったかもしれませんが、上記の3つのインタビューのいずれにも奥さんの方は登場しません。
2 狩猟採集時代の性
(1)序
「一夫一婦制についてクリストファー・ライアンが考えるきっかけを与えたのはビル・クリントンだった。
1990年代末、心理学の博士課程の学生であった彼は、「どうして世界中で最も強力な男が、誰かとの行きずりの性的関係を持ったからといって、公的に屈辱を受けなければならないのか」と。・・・」(D)
「・・・女性の貞節(そしてその結果としての父性の確実性)と男性による地位、保護との交換は、人間の進化の主流思想にとって根本的なものだ。
これが、女性が年上の金持ちの男性を好み、女性が一般的に男性より性的ではなく、かつ、つれあいの選択にあたってよりえり好みをする理由であると我々は教えられてきた。
女性の嫉妬は彼女のつれあいの他の女性との感情的紐帯に焦点をあてるが、男性の嫉妬は彼女の潜在的な性的接触に焦点をあてる。
・・・我々は、しかし、この男性と女性との本質的な交換が、本当に約10,000年前まで、すなわち農業の到来までの間、それほど重要であったかに疑問を投げかける。
(我々は、約200,000年にわたって我々の現在の姿で存在し続けて来たことを思え。)・・・」(E)
「・・・この本は、人間生理学、考古学、霊長目生物学、そして世界中の前農業的種族の人類学的研究を証拠として使用しているが、その中で、著者達は一夫一婦制と核家族は我々の大部分が思っているよりも最近の発明であって我々が信じるに至ったよりもはるかに自然なことではない、と主張する。・・・」(C)
(2)狩猟採集時代の人間
「・・・石器時代の<人間の>生活はファンタスティックなものだった。
我々の祖先は狩猟採集者であり、食料が乏しくなると次のサバンナを見つけるために彷徨した。
人間は、非常に散らばっていたので、最良の食餌場所をめぐって戦う必要が生じることは希だった。
多彩な食餌と恒常的漂泊が申し分のない健康をもたらした。
成人は6フィートほどに成長し60歳代から70歳代まで生きた。
狩猟採集する種族は、「高血圧、心臓病、あるいは癌を患ったという証拠がない。
貧血や風邪とも無縁だった。
寄生虫も持っていなかった。
小児マヒ、肺炎、天然痘、水疱、発疹チフス、腸チフス、結核、マラリア、あるいは血清肝炎の既往症の兆候もなかった。
遊牧的生活様式は、彼等に財産や所有権の感覚がなかったことを意味した。
従って、紛争が生じる真の原因がほとんどなかった。(ジョン・レノンよ聞いているか?)
そして、集団セックスがあった。・・・」(A)
(続く)
狩猟採集時代の性(その1)
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