太田述正コラム#4439(2010.12.16)
<皆さんとディスカッション(続x1046)>
<太田>(mixi太田コミュより)
 コラム<#4437>に書いた通り、<kenji Hall「記者」との一件は>骨折り損のくたびれもうけでした。
 それにしても、日系米人らしいし、東京を拠点に活動してるんだから、たまには<「防衛計画の大綱」といった>テクニカルターム等、日本語を用いればいいのに、徹底して英語だけだったな。
<太田>(ツイッターより)
 (コラム#4437に関し)『走れメロス』じゃないけれど、約束は守らなければならない。
 太田コラムの読者の大部分は約束を守る人だろうけど・・。
 インディアンやフィリピン人との約束を反故にして恥じなかった米国人、日米安保は守るんだろうか。
<umeboshitaboman>(同上)
 理屈で正当化すると思います。
<bonkers_blunder>
 米国が日米安保を守るかどうかは米国自身に実害が及ぶかどうかでしょうか?
 まずは吉田ドクトリン、米事大主義打破から!
<ΔοοΔ>(「たった一人の反乱」より)
 「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想―「平和創造国家」を目指して―」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/houkokusyo.pdf
 読んでみたが、ツッコミ所満載だろ↓
 「日本は南北に細長い列島で、長大な海岸線と多くの島嶼を有し、国土は狭く山が多く、国土の縦深性に乏しい。つまり、日本は軍事的に防衛しにくい地理的特性を持っている。」
(PDFファイル上の24頁)
 「?」な記述は多数。アホかと言いたくなる文言が山ほど。面倒臭いから一々列挙しない。
 この文書を要約すると、「これからも吉田ドクトリンを墨守していきます」ってことだろ?
 それでも頑張って最後まで読んだら、真面目に読んだ俺がアホだったと理解したよ↓
 <委員>
岩間陽子 政策研究大学院大学教授
佐藤茂雄 京阪電気鉄道株式会社代表取締役CEO 取締役会議長
白石隆 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所所長
添谷芳秀 慶應義塾大学法学部教授
中西寛 京都大学大学院法学研究科教授
広瀬崇子 専修大学法学部教授
松田康博 東京大学東洋文化研究所准教授
山本正 財団法人日本国際交流センター理事長
 <専門委員>
伊藤康成 三井住友海上火災保険株式会社顧問(元防衛事務次官)
加藤良三 日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー(前駐米大使)
齋藤隆  株式会社日立製作所特別顧問(前防衛省統合幕僚長)
 委員の中に安全保障だの国際政治だの軍事だのの専門家がいねーじゃねーか!
<οοδδ>(同上)
 今に始まった事じゃねえだろ?
 しかし元防衛事務次官の伊藤氏や元統合幕僚長の斉藤氏が軍事の専門家じゃなかったら、お前さんは誰なら軍事の専門家だと言うんだ?
<ΔοοΔ>(同上)
 「安全保障と防衛力の在り方に関係する分野等の有識者を委員として、これに加え同分野に関する行政実務上の知験を有する者を専門委員として参集を求め、御意見をいただくことを目的として、」(PDFファイル上の61頁)
 専門委員は「行政実務上の知験」とやらでの意見しか言えない、という風に俺は読んだんだ。
<οδοδ>(同上)
 委員の議事録は公開されてないのね。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/
 ほにゃらら委員とか有識者って、名誉職(実質的な権限・責任の伴わない名義上の職)みたいなもんじゃないの?
 これ↓は、官僚が書いてるんでしょ?
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/houkokusyo.pdf
<太田>
 「「動的積極防衛」構想に基づき、「機動即応部隊」を設けるってのは、それだけとりゃ結構なことだが、集団的自衛権行使を禁じる政府憲法解釈を撤廃せずして、そんな構想やそんな部隊に、一体何の意味があるのよ。」とコラム#4435で嫌みっぽく書いたけど、実は、ボク、選挙に出た2001年当時、まず当選しないと思ってたけど、いずれにせよ、選挙が終わったら、この(英国の防衛構想にヒントを得た)構想を民主党の防衛政策として同党に売り込むつもりだったんだな。
 (民主党の関係誌に2編の論考を載せたが、3つ目はこれを書くつもりだった。しかし、ついにお呼びかからず。)
 これなら、「右」にも「左」にも受け入れられ易いという点では、当時までの基盤的防衛力構想と変わらず、しかも、基盤的防衛力構想と違って、自衛隊のトータルとしての軍事的意味づけができ、従って、自衛隊のトータルとしての効率性・効果性を確保できると考えたんだ。
 言うまでもなく、そのココロは、集団的自衛権行使の解禁を含みに、そうなった場合に備えて、自衛隊を、世界中のどこにでも武力行使を目的として即応的に派遣することができるように整備することさ。
 民主党がこのボクの構想を2001年とは言わないが、2002年中に受け入れておれば、「(昔の名前で出ている)基盤的防衛力構想の自民党」対「(革新的な)機動即応構想の民主党」、という「建設的」な対立軸がその時点で生まれていて、民主党がもっと安全保障分野に通暁した形で、しかも、昨年よりずっと早く、小泉内閣退陣の直後には政権を奪取してたんじゃないか、と捕らぬ狸の皮算用的に思うんだけどね。
<雅>
 <コラム#4425における私のキリスト教と植民地に関する質問に対するお答えに>納得しました。
 丁寧なご説明ありがとうございました。
<太田>
 どーもどーも。
<高橋あゆみ>(2009.9.19?)http://www.slideshare.net/nwrnet/0919
 –女はなぜ出世できないか–
 ヘイトによるレポートなので日本ではないが、外国でも同様に男女の差別はあるという事実。
 ただ、 <このレポートは>2001 年と少し古い。
 そこで現代のアメリカについて太田述正さん(おおたのぶまさ)の意見をお借りする。
 現在のアメリカの男女差別の様子を元防衛省太田述正は日本のことに絡め、次のように述べている。<(コラム#3603を要約している。(太田))>
 「1960年代まで超男女差別社会だったアメリカは、1964年市民権法(Civil Rights Act)に“性”について付け足しを行ったことにより、大きく変化した。そのことにより、アメリカでは女性の地位向上という風潮が起こった。日本は、人種差別を含め、米国に比べれば一貫してはるかに差別の少ない国だった。しかし、その日本において、女性差別の現状は、半世紀前の米国よりもひどいのではないだろうか。日本の女性差別状況は、日本国の自立の欠如という問題である。」
<太田>
 大学3年生の女子大生に注目してもらっていたことはうれしいね。
 話変わるけど、ツイッターの「11月のアクセス数ランキング TOP20(評論家・ジャーナリスト)」
http://www.talenttwitter.com/access/index.php?ct=16&page=1
の中で、
 14位 山口一臣
 防衛省OBで評論家の太田述正さんのtwitter(ツイッター)です。太田述正(おおたのぶまさ):1949年2月17日生まれ 出身:三重県
と名前とコンテンツがずれちゃってたけど、なんでだろね?
<太田>(mixi太田コミュより)
 <昨夜、NHK衛星2でロンドンッ子監督>ヒッチコックの『フレンジー』<(英国映画。1972年
http://en.wikipedia.org/wiki/Frenzy
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%BC
)>見たけど、フランスをあそこまでバカにするシーンが出てくるとは、実に面白かったな。
 ・朝食はイングリッシュ(サブスタンシャル)じゃなきゃ、フレンチ(コンチネンタル)じゃ力出ないよ的なことが話題になるシーンがあること。
 ・刑事が、フランス料理勉強中の奥さんが食わせる料理に閉口しているシーンが繰り返し出てくること。やり玉にあがるのは、ブイアベースやジビエ(gibier)料理。
 そのココロは、私に(前に記したことがあることを踏まえて)言わせれば、フランス人はカネがないからあんな貧しい朝飯しか食えないんだろう、フランス人はカネがなく、また、フランスは半内陸国でしかも土地が痩せてるためにまともな海の幸・陸の幸に恵まれていないから、あんなまずくて新鮮でない、げてもの類を、香辛料とソースでごまかして喉を通らせなきゃならないんだろう、ってこと。
 (だから、日本語ウィキペディアの「食事をする警部に殺人の生々しい話をして食欲を失わせるとぼけた雰囲気の妻」という箇所は、はっきり言って誤りだ。)
 ちょっと考えさせられたのは、この奥さんがつくるカクテルのマルガリータまでも、くさすシーンがあること。
 このカクテルの発祥が米国なのかメキシコなのか、はっきりしないようだ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BF
が、恐らくは、フランス(欧州)の延長線上で、欧州とのキメラの米国and/or欧州の外延たる中南米、をバカにしてるんだろね。
 おお、大事なことを言い忘れるところだった。
 この奥さん、料理を出しながら、名推理を次々に展開して亭主の刑事に誤認逮捕をしたことに気付かせる。
 ここでもイギリス人の、男に伍して活躍するっちゅう女性観(コラム#4396(未公開)、4404)がはっきり打ち出されてるんだよね。
 この映画の主人公は、元英空軍少佐だが、空軍時代の友人が、犯罪を犯したと疑われている主人公を、危険を冒して助ける。
 生死を共にした友人をボクはついに持ち得なかった・・まだ分からない?・・ので、ちょっとうらやましかったな。
 そもそも、この映画を見ようと思ったのは、舞台がロンドンのど真ん中だということを知ったからだ。
 (何たって、ボク、1958年、1976年、1988年(1年間)と、随分間を置いて、3回もロンドンに行ってるもんね。)
 実際、ロンドンのテームズ川、議事堂、警視庁、レスター・スクエア、オックスフォード通り、コヴェントガーデンといった懐かしい場所が登場した。
 よかったー。
 以上、映画評論のミニ版でした。
 それでは、記事の紹介です。
 パチパチパチ!
 これで、菅政権、しばらくはもつぜ。↓
 「政府が17日に閣議決定する予定の新たな「防衛計画の大綱」最終案で、兵器の国際共同開発が主流になっている国際環境の変化に応じ、武器輸出管理の在り方について方策を検討すると明記したことが分かった。武器輸出解禁を視野に入れた記述だ。日米両政府によるサイバー対策での協力推進も盛り込んだ。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010121501000827.html
 ヨルダン川西岸だろうがどこだろうが、体制の生存がかかっている場合、表現の自由は制約されざるをえないってことだろうね。↓
  Each week, Mahmoud Habbash, the Palestinian Authority’s minister of religious affairs, sends an e-mail to mosques across the West Bank. It contains what amounts to a script for the Friday sermon that every imam is required to deliver.
 The practice, part of a broader crackdown on Muslim preachers considered too radical, shows the extreme steps the Palestinian Authority is taking to weaken Hamas, its Islamist rival, as it seeks to cement power and meet Israeli preconditions for peace talks. ・・・
 ・・・the overall crackdown on Hamas, including the mosque policy, has clearly weakened Hamas in the West Bank. “They have no media – no newspapers or magazines” in the West Bank, he said. “No doubt they have lost the mosques as a key platform.”
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/15/AR2010121506440_pf.html
 最高のエロ小説(good sex novel)10作がコラムニストによって列挙されている。
 この中に、『ロリータ』、『チャタレー夫人の恋人』、『O嬢の物語』(コラム#3867)が入っているのは当然として、『ドラキュラ』が入ってるのはオモロイねえ。↓
http://www.guardian.co.uk/books/2010/dec/15/rowan-somerville-good-sex-fiction
 近親相姦がどうして許されないのか、この意見はなるほどなと思う。↓
 ・・・don’t tell me you’re just adding a second kind of love to your relationship. That’s like adding a second kind of life to your body. When a second kind of life grows in your body, we call it cancer. That’s what incest is: cancer of the family.・・・
http://www.slate.com/id/2277787/
 右手が不自由になってしまったために、大昔に事実上引退した、米国人天才ピアニストのレオン・フライシャー(Leon Fleisher。1928年~)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC
の記事が出てた。
 フライシャーいわく:↓
 ・・・”German music is what knocks you out—in quantity as well as in quality. ・・・the German tradition is metaphysical. It connects with the greater cosmos.・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703326204575616911411469180.html?mod=WSJASIA_hpp_RIGHTTopCarousel_3
 ボク、形而上学的なものにはどうしても若干の違和感を覚えずにおれないということなのか、ドイツのクラシックの、フライシャーがあげるところのBach、Haydn、Mozart、Schubert、Beethoven、Brahms、といった正統派の作品には、モーツアルトの作品のうちのいくつかを除いて、イマイチ全面的傾倒ができないんだよね。
 それはともかく、フライシャーの往年の演奏をどうぞ。↓
Chopin Nocturne in Db op.27 no.2
http://www.youtube.com/watch?v=iBBVmlyHq48
Brahms Piano Concerto No. 2 in B-flat Major, Op. 83
http://www.youtube.com/watch?v=283C9s-ODFA&feature=related 以下
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太田述正コラム#4440(2010.12.16)
<私の原風景(その2)>
→非公開