太田述正コラム#4238(2010.9.6)
<アナーキズム(その1)>(2011.1.5公開)
1 始めに
アレックス・バターワース(Alex Butterworth)が ‘THE WORLD THAT NEVER WAS A True Story of Dreamers, Schemers, Anarchists and Secret Agents’ を上梓し、英国を中心に大きな話題になっています。
さっそくその概要を書評類をもとにご紹介したいと思います。
A:http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/08/27/AR2010082702200_pf.html
(9月5日アクセス。以下同じ)
B:http://www.newstatesman.com/books/2010/03/early-anarchists-butterworth
C:http://www.guardian.co.uk/books/2010/mar/27/world-never-was-alex-butterworth
D:http://entertainment.timesonline.co.uk/tol/arts_and_entertainment/books/book_reviews/article7059346.ece
E:http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/reviews/the-world-that-never-was-a-true-story-of-dreamers-schemers-anarchists-and-secret-agents-by-alex-butterworth-1923491.html
F:http://www.guardian.co.uk/books/2010/apr/11/world-that-never-was-alex-butterworth-book-review
G:http://articles.latimes.com/2010/aug/01/entertainment/la-ca-alex-butterworth-20100801
なお、バターワーズは、オックスフォード大卒(英語)で、Royal College of Artで修士号を取得(Interactive Media)し、著述家、劇作家、研究者として活躍しており、この本は、’POMPEII’ に次ぐ彼の2番目の本です。
http://www.convilleandwalsh.com/index.php/authors/author/alex-butterworth/
2 アナーキスト
(1)起源
「・・・アナーキズムが生まれるきっかけになったのは、・・・1871年の春にパリを短期間統治した革命的コミューンだ。
この本で我々が出会う主役達の多くはコミューンの異常な指導者達だった人々だ。・・・」(D)
「・・・バターワースは、19世紀末の暴力的な直接行動の勃興の背景に、いかに1871年の敗れたコミューン要員達が直面したひどい報復があるかを示す。
約17,000人が集団墓に埋められ、もっと多くが粉みじんにされたバリケードのがれきの下に埋められ、その他の者達はニューカレドニアの厳しい諸条件の下で亡くなった。
ロシアの皇帝達の専制統治も、穏健な反対の声が余りもカ国に処罰されたために、同様な極端な形の抗議を生んだ。・・・」(E)
(2)理念
「・・・ルイーズ・ミシェル(Louise Michel<。1830~1905。フランス人アナーキストにして学校教師。パリコミューンに参加。ニューカレドニア流刑を経験。パリの地下鉄の駅の一つは彼女の名前
http://en.wikipedia.org/wiki/Louise_Michel (太田)
>)は、・・・諸段階についての賛美歌を歌った。
「社会が通らなければならない初段階は、社会主義、共産主義、アナーキズムだ。
社会主義は正義をもたらし人道化する。共産主義は新しい国家を洗練化する。そして、アナーキズム…においては、人は、もはや飢えたり凍えたりすることはないので良き存在となるのだ」と。・・・」(F)
「・・・ロシアのアナーキストのアンドレイ・ゼリャボフ(Andrei Zhelyabov<。1851~81年。ロシアの革命家にして人民の意思(Narodnaya Volya=People’s Will)のメンバー。皇帝アレクサンドル2世暗殺の首謀者の一人として処刑される
http://en.wikipedia.org/wiki/Andrei_Zhelyabov (太田)
>)は、「歴史の動きは遅すぎる。<我々はそれを>押してやらなければならない。・・・」(B)
→アナーキストは、共産主義者と同じ世界観を持ちつつ、社会主義、共産主義の段階を飛び越して一挙にアナーキズムの世界を招来しようとしたわけです。(太田)
「・・・初期のアナーキスト達は、全人類を包摂するところの、いかなる者もいかなる他者を統治することなき、国家のない、平等主義的な社会を夢見た。
彼等は、これ・・搾取的で操作的なエリート達によって妨げられなければ、あらゆる所に存在するであろう調和と平等の状況・・こそ、人間達が本当に欲していることだと信じた。・・・」(B)
「・・・ウィリアム・モリス(William Morris<。1834~96年。イギリスの織物デザイナー、芸術家、著述家にして社会主義者
http://en.wikipedia.org/wiki/William_Morris (太田)
>)の言葉である「他の人間の主人たりうるほど良い人間は存在しない」を信じ、いつの日にか、搾取、抑圧、紛争が除去された協力的連邦(commonwealth)が到来するという世界観(vision of the world)を共有する<このような>男性達や女性達がいたのだ。・・・」(C)
(続く)
アナーキズム(その1)
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