太田述正コラム#4517(2011.1.24)
<皆さんとディスカッション(続x1085)>
<太田>(ツイッターより)
(コラム#4515に関し)すべての歴史は現代史って話を以前したことがあるけど、日本人にとって戦前史の現代的意味は極めて大きい。
戦後の属国状況下で日本人は劣化してるという謙虚な気持ちで当時の日本人の言動を理解する努力をしよう。
(コラム#4306に関し)既に亡き、ワシントン(個人)の評価も帝国陸軍(組織)の評価も一筋縄じゃいかない。
しかも前者のケースでも分かるようにツキの要素もからんでくる。
大切なことは、新しい評価をハナから拒絶しないことだ。
<ΤδΤδ>(「たった一人の反乱」より)
講演会行きたかったなあ・・・。
太田さんってオフ会で酒が入ったらどうなるんだろ?w。
レポよろしくですw。
<太田>
誰かさんがレポするまでもなく、ボク、あんまし酒飲めないから、飲むには飲んでも量はたかが知れてるから、ほとんど変わらないはずだよ。
<ΤδδΤ>(「たった一人の反乱」より)
けっこう前から太田コラム読んでいるが、日本の保護国化と自民党による長期政権(政官業の癒着)の論理関係が分からない。
<太田>
本来、きちんと、世論調査等の推移等を踏まえた議論をしなきゃならないんだけど、一応の説明をしておこう。
戦後日本じゃハト派が世論の多数を占めており、親米政党たる自民党支持者についても同じことが言えた。
その自民党がハト派かタカ派一色になってしまうと、自民党支持者中のそれぞれ、タカ派、ハト派が逃げ、親米政党がもう一つできてしまって親米政権の安定的な維持が困難に陥ってしまう恐れがあった。
そこで、自民党は、ハト派一色の反米政党たる社会党との明確な差別化を図るために、あえてタカ派綱領を掲げた上で、自民党の主流派はハト派、反主流派はタカ派・・実態は隠れハト派だが・・であるため、タカ派綱領は容易に実行に移せないかのように装うことによって、自民党支持者中のタカ派を逃さないという詐欺的な手口でもって長期(恒久)にわたって政権を維持してきたわけさ。
ああそうそう、親米+ハト派=属国派、だからね。
社会党も、事実上この詐欺の半肩を担いできたと言える、とボクは思ってる。
長期(恒久)政権がどうして癒着を生ぜしめ、腐敗するかの説明は必要ないよね。
<MS>
<太田さん次著>第五章を編集しました。まだ、米国型帝国主義の節はかなり編集が必要ですが。
最近のXXXX資料由来のコラムを目次に加えました。
戦前日本外交を批判するため、第十章を加えました。
まだ、コラムの割り振りをしたのみで、節たてはよく考えていません。
現・第十一章の2節に吉田ドクトリンが外交官たちの自己保身からうまれたことを示唆するため、吉田の自問シリーズを加えたいと思っています。
また、米国関連のコラムは第七章に入れました。
次は第十一章(戦後の章)をやります。
<太田>
ご苦労様です。
後に吉田ドクトリンとなったところの、吉田の再軍備拒否政策の動機について、『防衛庁再生宣言』で、吉田の米国/占領軍への怒り、というものを仮定してみたわけですが、もともと典拠があったわけではありません。
しかし、最近、その動機が、吉田の個人エゴと出身組織(外務省)のためのエゴ、という賤しいものであったのではないか、むしろそう考えた方が、種々の間接的典拠と整合性がある、と考えるに至ったわけです。
<(以前の私の解釈ではマッカーサーに対して怒りと侮蔑感情を抱いていても不思議ではない吉田茂が、85歳という高齢にもかかわらず、1964年にマッカーサーの葬儀に参列した
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4SUNA_jaJP315JP315&q=%e3%83%9e%e3%83%83%e3%82%ab%e3%83%bc%e3%82%b5%e3%83%bc%ef%bc%9b%e6%ad%bb%ef%bc%9b%e5%90%89%e7%94%b0%e8%8c%82
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC
ことにひっかかるものがありました。
今度の解釈なら、彼、マッカーサーに筆舌に尽くせないほどの恩義を蒙っていたことになるので、葬儀にはとるものもとりあえず駆けつけなければならなかったはずであり、腑に落ちます。)>
この最新の歴史解釈を次著に盛り込んでいただけるのは有り難いですね。
<XXXX>
資料整理していましたら、以前に送ったはずの『日英交流史一巻 1600―2000 政治・外交Ⅰ』が出てきたんですけど、ちゃんと届いてましたか?
今連載中のコラム「ワシントン体制の崩壊」と重複する部分がある資料ですから、一応、早急にポストに投函しておきました。ひやひや。
<太田>
午前中に届きました。
『日英交流史一巻・・・』については、今まで沢山資料をいただきすぎてるので、ダブってるかどうか、すぐには判然としません。
とにかく、感謝、感謝。
<株式日記と経済展望>(1010.12.21)http://gensizin4.seesaa.net/article/174376346.html
–歴史チャーチルが、大英帝国を救おうとして行った戦いが、逆説的にその喪失へと導いて、ソ連/共産主義の勢力の大伸張を招いてしまうのです–
◆落第政治家チャーチル(その4)太田述正コラム#4212(2010.8.24)
(4)意に反して大英帝国を崩壊させたチャーチル
「・・・エドワード国王の時代の植民地省の若き閣外相(youthful minister)の時、彼の政治的敵対者達は、チャーチルを小イギリス主義者であって大英帝国にとって危険であると描写した。・・・」
<中略>
・・・このチャーチルの痛切な悔恨は、意に反して吉田ドクトリンが成立し、それを日本人が墨守し始めたことについての吉田茂の痛切な悔恨を思い起こさせますね。
決定的な時期に英国がチャーチルを、そして日本が吉田をそれぞれ首相として持ったことは、それぞれの国民にとって何という不幸であったことでしょうか。
その結果、大英帝国は余りにも過早に崩壊してしまったわけですが、日本もまたひょっとすると崩壊すべく運命付けられてしまったのかもしれません。(太田)
(私のコメント)
戦争の勝敗を何をもって判断するかは見解は分かれますが、歴史家が見る勝敗の目安は戦争目的が達成されたかが目安になる。
人的物的な被害が大きいほうが負けとするとソ連や中国は敗戦国となってしまう。
だから人的物的な被害が大きくても戦争目的を達成した国が戦勝国となる。
大英帝国は戦争には勝ちましたが、大英帝国は多くの植民地を失い通貨のポンドも暴落して基軸通貨としての地位を失ってしまった。
チャーチルはナチスドイツと戦う決断をしましたが、大英帝国にとって正しい決断だったのだろうか?
ヒトラーはバトルオブブリテンの戦いでイギリス本土占領を諦めた。副総統のヘスはイギリス本土に単独飛行して講和を求めましたが、チャーチルはそれを蹴った。
大英帝国にとってナチスドイツ以上に手強い相手はソ連でしたが、ヘスの講和に応じてナチスとソ連とをぶつけさせれば、チャーチルは大戦略家としての目的は達成されたのではないだろうか?
しかしチャーチルはナチスとの戦いを続行させる為にアメリカとソ連と手を組んだ。
アメリカを戦争に引き込むには日本とアメリカが戦争になることが必要だった。
そうすれば日独伊三国同盟によって世界大戦となりアメリカは大英帝国と手を組む事になる。
その事は日本と大英帝国が戦争になることになり、大英帝国は香港要塞とシンガポール要塞を失った。
二つのアジアの拠点を失う事で大英帝国は崩壊の道をたどった。
おそらくチャーチルは日本軍が攻めてきても香港とシンガポールは落ちないと見ていたのだろう。
制海権についてもイギリス海軍は日本海軍に勝てると見ていたのではないだろうか?
大英帝国から見れば日本はアジアの小国であり海軍戦力も見かけだおしと見ていたのだろう。
ここにチャーチルの戦略ミスがあるのであり、ナチスとの講和に応じて独ソ戦に引きずり込んで独ソ戦の行方を見守るべきだっただろう。
→独英和平がなっておれば、ヒットラーは対ソ戦を行わなかったんじゃないでしょうかね。(太田)
その方が大英帝国の分割統治支配の伝統にかなう戦略だった。
ソ連がもしナチスとの戦争に勝った後はソ連の勢力がヨーロッパを支配する事になるからだ。
チャーチルはそこまで計算はできなかったのだろう。
これは結果論であり、チャーチルに責任を負わせることは難しいが、アメリカの助けを請えばアメリカの勢力拡大に手を貸す事になる。
しかし当時のアメリカは孤立主義であり、そのままにしておくことが大英帝国にとっては都合が良かったはずだ。
しかし日本を対米参戦させる事でアメリカを引きずり込む事に成功した。
→当時の米国の指導層は、チャーチルの策略に乗ったように見せかけていた可能性が大であり、そうだとすれば、ここでもチャーチルには誤算があったわけです。(太田)
その結果、大英帝国はアジアの植民地を失いヨーロッパの小国となった。結果から見れば大英帝国の敗北は明らかであり、第二次世界大戦は大英帝国の滅亡を早めただけだ。
イギリスは戦争に勝ったにもかかわらずチャーチルは英雄になる事は出来ずに、戦後行なわれた選挙にも破れた。
勝ったのはソ連であり、ナチスが負けたことでヨーロッパの半分がソ連の支配下に入った。
今から考えれば、アメリカとソ連は手を組んでナチスと大英帝国と日本帝国をつぶすことを企んでいたのかもしれない。
米ソ冷戦体制はアメリカが仕組んで作り上げた体制であり、アメリカが開発した核兵器の技術もスパイによって素早くソ連に提供された。
ソ連が強大化してヨーロッパを米ソで分割支配することでアメリカに世界覇権が渡った。
→これは穿ち過ぎです。
単に、日英に比べて、当時の米国はソ連/スターリン主義の脅威認識が著しく希薄であったというだけです。
しかし、米国のこの認識は、さすがに、先の大戦末期には変わっていました。(太田)
1991年のソ連の崩壊は、ヨーロッパの復権でもありましたが、EUを結成してユーロ経済圏を作って米ソの分割支配から逃れる事ができるようになった。
しかしイギリスはEUには参加できてもユーロには参加できずに爪弾きされている。
それだけチャーチルの犯した過ちはヨーロッパの恨みを買っている。
→ユーロ圏に入っていないのは英国自身の選択です。(太田)
もしチャーチルが日本の軍事力を正当に評価していれば、日本を対米戦に引きずり込む事はしなかっただろう。
大英帝国はアジアにおける制海権を失って日本海軍に大敗北を喫した。
日本は人的な損失や領土を失って物的な被害も大きく敗戦国となりましたが、歴史的評価からすれば、人種差別戦争に勝利しアジアの植民地戦争でも勝利して目的を達したのだから日本は戦勝国なのである。
→それだけでは日本が戦勝国であるとは言えません。
第一、それは、先の大戦にあたって日本が急遽付け加えたサブの戦争目的に過ぎません。
日本のメインの戦争目的は、東アジアにおける赤露(対ソ連/スターリン主義)抑止体制の維持です。
こちらの方の戦争目的は、日本帝国崩壊の後、米国が、それまでよりも東アジアにおいては、はるかに後退したラインにおいて、しかし、全面的に、かつ全球的に肩代わりすることによって、達成されました。
というわけで、いささか人的物的な被害、就中人的な被害が大き過ぎたけれど、日本・・正確には旧日本帝国中の内地プラスアルファ・・は先の大戦に完全勝利を収めた、ということになるのです。(太田)
<δΤδΤ>(「たった一人の反乱」より)
・・・
政府批判始めた中国メディア 高まる民衆の不満、無視できず
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110120/mcb1101201240029-n1.htm
↑
少しずつのガス抜き(国民の不満)作業ならよいけど、本格的なガス抜きは無いことを祈るばかり。
<太田>
上記コラムがとりあげている話は、中共において、党中央による一元的コントロールがきかなくなってきている現象の一つであって、それがメディア面で現れたもの、と見るべきじゃないかな。
だから、「新聞が政府批判を盛んにやるようになった背景には、党と政府の支配からはみ出しつつある市場経済とネット世論の発達がある。」とか、いわんや「体制そのものの崩壊もそう遠くない」という、このコラムニストの分析・結論には必ずしも首肯できない。
党中央による人民解放軍への一元的コントロールがきかなくなってきているように見えること↓等の理由が「市場経済とネット世論の発達」などではありえないからだ。
・・・In 1995 and 2005, Chinese generals made specific threats, in the presence of the U.S. ambassador to China and to foreign journalists visiting Beijing, of nuclear attacks against U.S. cities. In 2001, when a U.S. patrol plane made an emergency landing on Hainan Island after colliding with a Chinese fighter, China’s military leadership did not cooperate with its civilian counterparts in quickly resolving the incident. And the PLA’s destruction in 2007 of a weather satellite using a ground-launched missile took the government by surprise and left the Foreign Ministry unable to respond to international concerns for 10 days. ・・・
This seeming lack of control was worryingly highlighted last week when China conducted an unusually public test flight of its new stealth fighter during U.S. Defense Secretary Robert Gates’s visit to the country, an action some considered to be a rude provocation. The affront was compounded when it became apparent that Hu was kept in the dark about the test.・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/01/21/this_week_at_war_whos_chinese_military_is_it?page=full
<太田>
それでは、その他の記事の紹介です。
アラブ世界の権力者達は、おしなべてマフィア一家的支配を行っていることを、今次チュニジア「革命」が明るみに出したとよ。↓
・・・The fall of Ben Ali has accomplished one thing nonetheless: it has exposed the corrupt common denominator of every regime in the Arab world. They are all, in effect, mafia states—entire nations run by families for their own benefit. Whether they call themselves republics or monarchies, whether they are allied to the United States or opposed to it, are on the list of states supporting terrorism or fighting it, have made peace with Israel or not, they are all family businesses. Whether they claim to be secular or follow Sharia or try to chart a course in between, their governance has less in common with the Magna Carta than it does with La Cosa Nostra.
In lands where the building block of society is not the individual but clans and tribes, government has always tended to be a matter of someone else’s family telling your family what to do. But in this region, where at least half the population is now under the age of 30, is more educated than any previous generation, and is more frustrated than ever before, the traditional model just doesn’t deliver enough hope for the future. ・・・
http://www.newsweek.com/2011/01/23/a-dictator-dispatched.print.html
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太田述正コラム#4518(2011.1.24)
<ワシントン体制の崩壊(その9)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x1085)
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