2001年11月29日
英国へのこだわり
前回の私の話を読まれた方は、私がブレア首相が打算だけで米国と行動をともにしたと指摘したと思われたかもしれません。
そうではないのです。同じアングロサクソンなるが故に、同時多発テロに対する米国の対応を全面的に支持することは最初から決まっていたのだけれども、あのような形で英国が最初から米国と共同歩調をとるに至った背後には様々な政治的思惑があったということなのです。
(日本の場合は、米国の保護国であることから、米国の死活的利害に関わる今回のような事案では、米国の対応を全面的に支持する以外に選択肢はありえず、また、具体的に日本がいかなる形で米国に協力するかは、国内の反対勢力の抵抗と周辺諸国の懸念の度合いだけを考慮して決定されたわけです。英国と比べて日本の対応は似て非なるものであり、その主体性のなさがお分かりいただけるでしょうか。)
これだけではきれいごと過ぎるので、ブレア首相の判断に影響を与えたと思われるもう一つの事情についても触れておきましょう。それは英国が対米テロの準備基地として使われてきた実績があるということです。例えば、同時多発テロの19名の実行犯のうち、9月11日に至る9ヶ月間に11名もの人間が何らかの形で英国に滞在していますし、タリバンに義勇兵として加わっている英国籍のイスラム教徒は100名もいるのです。(Jonathan Stevenson,Britain’s New Terrorism Problem http://www.iiss.org/pub/tx/tx01022.asp 参照。このペーパーでは、何故英国が対米テロの準備基地になってしまうのかについての説明も試みられています。)
そうだとすると、英国としては、米国への罪滅ぼしのためにも米国と共同歩調をとらざるをえなかったという見方も、まんざらできないわけではないかもしれません。
ところで、日本にはアングロサクソン関係の報道や本があふれているのに、日本人にはアングロサクソンの肝心のところは全く分かっていないという印象を持っています。アングロサクソンを真に理解するためには、何と言っても、アングロサクソンの母国たる英国を研究する必要があります。それも、歴史上の英国だけではなく、現在の英国についてもです。
今大流行の「何でも民営化」の口火を切ったのはサッチャー時代の英国でしたし、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)にせよ、はたまたハリー・ポッターにせよ、現代の英国が生み出したものの豊穣さを考えてもみて下さい。
映画になって更に大反響を呼んでいるこのハリーポッターだって一筋縄ではいきません。英国は子供向けのお話の里としても世界随一ですが、不思議の国のアリスに哲学的寓意があるように、ハリーポッターだってサッチャリズムへの風刺があるのです。(Jesse Cohen,When Harry Met Maggie・・Harry Potter, starring a witch named Margaret Thatcher http://slate.msn.com/?id=2058733。参照)
子供向けのお話でもこれだけ深みがあるからこそ、大人にも読み応えがあり、だからこそ世界を風靡するということになるわけです。
恐るべし英国!