太田述正コラム#4759(2011.5.21)
<最近の邦書を通じて日本の防衛問題を語る/皆さんとディスカッション(続x1210)>
1 始めに
 本日は、「最近の邦書を通じて日本の防衛問題を語る」と題して久しぶりに防衛問題をとりあげたいと思います。
 日本の論壇をフォローしていないので、防衛問題関係の日本人著書について、本日俎上に載せる3冊だけ・・たとえば、「左」の人の著書が含まれていない・・をもとに、全般的批評めいたことを行うのは基本的に控えることにします。
 なお、この3冊は、読者のTAさんから提供を受けたものです。
2 井上和彦(1963年~。法政大社会学部卒。ライター、日本文化チャンネル・キャスター)『国防の真実 こんなに強い自衛隊』双葉社(2007年2月)
 「仮にかつて日本が国策を誤って”侵略戦争”を行なっていたとしても、だからといってその反省から現代の国防体制に制限を加えるべきだというのはまったく筋違いな論理である」(16)
→ここに典型的に表れているように、戦後日本の「右」の人々は、日本の戦前史について確固たる史観を持っていないように私には思われます。(太田)
 「どうせなら防衛省などという躊躇(ためら)いに満ちた名称ではなく、世界標準の「国防省」とすべきであった。・・・
 日本では・・・国防費という名は、「国家を守る」という印象が強いため、その守るべき対象をぼかそうという狙いで防衛関係費なる名称が用いられているのである。」(19、63)
→こういうことを言う人がいるから「右」の人々が十羽ひとからげでバカにされてしまうのです。
 米国はDepartment of Defense 英国は Ministry of Defence であり、National Defense などという名称をつけている国を、私は寡聞にして知りません。(太田)
 「<グアム移転によって、>沖縄方面の抑止力の一翼を担ってきた強大な米海兵隊のプレゼンスが低下し、莫大な財政負担を強いられるというのはどう考えても割に合わない。」(35)
→筆者には、海兵隊を含む米軍の再編成構想の核心部分が全く理解できていないようです。(太田)
 「「在日米軍基地の施設・区域の75%が沖縄県に集中」・・・でいう「在日米軍基地」とは、実際は「在日米軍専用の基地」ということであり、三沢、厚木、岩国各基地のように自衛隊が少しでも共有している基地は計算対象から外されているのだ。・・・実際に在沖米軍基地の全在日米軍基地に占める面積割合は・・・「約25%」だったのである。」(35~36)
→後者の数字は、自衛隊使用部分を無視しているのでしょうが、面白い指摘ではあります。(太田)
 「中国や北朝鮮の影に隠れて着実に軍事力を増強してきた韓国は、もはや警戒を厳とすべき存在となってい<る>のだ。」(43)
→米国が日韓両国の枢要な同盟国(日本については宗主国と言った方がより正確)であって、韓国の安全保障にとって兵站基地たる日本と在日米軍基地の存在が不可欠であり、見通しうる将来にかけてそのような状況に変化は考えられない以上、韓国が日本の脅威になるようなことはありえず、およそ噴飯ものの議論です。(太田)
 「日本の固有の領土である北方領土がいまだロシアによる不法占領下にあることを認識し、粘り強く返還交渉を続けていかねばならない。・・・
 台頭する中国の脅威を日本と<ロシア>との同盟によって抑えるという・・・現実論<が>今後ロシア国内だけでなく日本でも活発化する可能性がある。」(48~49)
→北方領土問題についてはここでは再論しません。
 後段については、国のかたちにおいて、ロシアは、日本よりも中共との方が圧倒的に似通っていることもあり、日露同盟・・「同盟」とは日本が集団的自衛権を行使できないことから筆者は比喩的に言っているのでしょうが・・など、ロシアがNATOに加盟する可能性以上にありえないことです。(太田)
 「現行の日本国憲法は、大東亜戦争終結後にGHQから押し付けられたものであり、日本人に対する罪意識の植え付けや日本軍部を悪とするアメリカの洗脳政策の一環であった。」(59)
→とんでもない。米国はすぐ悔い改めたのに、吉田茂を始めとする日本の国賊達が自分達のエゴのために日本国憲法を墨守し続けたということは、太田コラムの読者なら先刻ご承知でしょう。(太田)
 「世界で初めてディーゼルエンジンを戦車に搭載した日本は、世界に先駆けて砲弾の自動装填装置の実用化に成功し、そしてこれから日本の先端技術を結集させた新戦車を世に送り出そうとしているのである。」(80)
 「海上自衛隊は、いまや米海軍に次ぐ世界第2位の実力を誇るまでに”復活”を遂げている。」(89)
 「いまや日本の対潜技術は世界一といわれるまでに成長し<た。>」(94)
→筆者が軍事オタクと言ってよいのか分かりませんが、日本の軍事オタクにひいきの引き倒し的なところがあるのは残念です。(太田)
 「冷戦中、・・・有事には米軍に共同して、海上自衛隊がソ連潜水艦を周辺海域で殲滅することも想定されていたのである。」(94)
→ここだけはその通りですが、筆者、太田コラムを読んだのですかね。(太田)
 「F15J戦闘機の場合、その可動率は実に90%を越えるといわれており、おそらくその数値は世界最高レベルであろう。ちなみに、F15を開発したアメリカでも80%程度と見られており、また中国などは、最新鋭戦闘機のスホーイ27(ロシア製)ですら稼働率65%に達していないと推測される。」(112)
→これは恐らく事実でしょうね。日本人の一所懸命さ、あるいは匠の技というやつです。(太田)
 「戦後の日教組による反日的歴史教育、つまり自虐史観の洗脳の成果ともいえる。」(218)
→こういうところが「右」の人達の頭が固いところです。
 吉田ドクトリンの呪縛(その戦前史への投影)の方がはるかに大きいでしょう。(太田)
 「平成17年度の・・・アメリカの国防費に占める研究開発費の比率は約14%であり、イギリス・フランスでも約10%が確保されている。ところが、日本のそれは約2.7%でしかないのだ。ではそのような予算環境でどうして世界最高水準の高性能兵器を開発することができるのだろうか。その理由の一つとして、世界に冠たる・・・日本企業の技術・製造及び品質管理ノウハウの兵器製造への転用が挙げられる。」(231~232)
→前段はその通りですが、そんな状況下で、後段が成り立つわけがありません。
 試験の回数とか実戦的な試験の実施を確保するためのカネがなくっちゃ、いくら一所懸命で匠の技だなどとほざいたところで、まともな兵器の開発などできるわけがないからです。(太田)
 「戦後は、・・・自存自衛の戦いに立ち上がった軍人にあらゆる戦争の責任が転嫁されていったのである。・・・これらは東京裁判の判決を基準としたGHQによる洗脳政策のいわば成果であり、皇室と自衛隊の疎隔は、まさしくその後遺症といってよかろう。」(248)
 「平成13年(2001)10月、・・・自衛隊法が改正され、自衛隊が国内の自衛隊施設や在日米軍の施設等の警護のため出動できるようになった・・・。・・・問題なのは、・・・自衛隊の警備対象から首相官邸や国会議事堂、原子力発電所、そして皇居が含まれていないことである。」248)
 「天皇陛下<は>観艦式や観閲式、防衛大学校の卒業式にご出席・・・いただ<いていない。」(252)
→冒頭部分は、繰り返しになりますが、吉田らの共謀の下で行われたことであり、吉田らの罪が重いのは、GHQから再軍備要求があった時も主権を回復した時も、旧軍人、とりわけ旧帝国陸軍軍人の名誉回復を行おうと一切しなかったことです。
 なお、皇室と自衛隊との「疎隔」については、天皇制存続の観点から、そこには昭和天皇や今上天皇の意思も働いた、と指摘せざるをえません。(太田)
3 北村淳(東京学芸大卒。警視庁公安部勤務。その後カナダのブリティッシュ・コロンビア大でPh.D(政治社会学))『米軍が見た自衛隊の実力』宝島社(2009年5月)
 「P-3C哨戒機を大量に配備したのが、米第7艦隊をソ連海軍攻撃原潜から護るためだったように、イージス艦を日本が配備したのも、米第7艦隊空母任務部隊をソ連超音速爆撃機の脅威から護るためだった。・・・
 横須賀を母港とする米第7艦隊にとっては、仲間である海上自衛隊がイージス・システム搭載艦を保有すれば、それだけ脅威が減少することになる。米国にとっても極めて高価な兵器であるイージス・コンバットシステム搭載艦を1隻でも2隻でも日本が肩代わりして建造してくれれば、それだけ予算面で助かる。そこで、日本にも建造させようということになった。」(52~53)
 「米海軍関係者たちは、・・・空母打撃部隊を編制する<などというところまで>予算と人員を拡大しなくとも、海上自衛隊が米海軍空母打撃群の防衛に不可欠なイージス艦を増強してはどうかと考えている。」(65)
→間違いです。第7艦隊は、西太平洋からインド洋までを担当しており、日本近海を除いては海上自衛隊の艦艇など通常いないのですから、同艦隊は、海上自衛隊による護衛など全く期待していません。
 私が自衛隊の訓練を担当していた時、日米共同訓練で海幕が米空母の護衛というシナリオを提案しても、相手にされませんでした。(太田)
 「新型艦艇の調達の場合、予算を認めさせるには、常に退役する護衛艦の後継としての建造という名目がなければならない。要するに、海軍戦略上の必要性とは無関係に、単に財務の理論に合わせて建艦が進められているだけなのだ。」(56)
→ここは、そのとおりですが、筆者の記述には一貫性がありません。
 イージス艦だって、単に艦隊防空用の護衛艦(DDG)を最新型のものに更新近代化したというだけのことです。(太田)
 「海軍が最小限保持しなければならない国家主権維持活動のひとつで・・・ある「貿易活動に不可欠な航路帯(シーレーン)の航行の安全の確保」を、日本では海上自衛隊ではなく、米海軍が肩代わりしている・・・。」(68~69)
→議論の前提からして間違いです。
 先の大戦当時と違って、現在では、空母や揚陸強襲艦の護衛はありえても、もはや、商船の護衛はもとより、商船団の護衛、あるいは航路帯の防衛、という観念はありません。
 現在、海軍の軍隊としての任務は敵地、敵水上艦、敵潜水艦、敵飛翔体攻撃です(典拠省略)。その結果として、与国側の海上交通の安全が確保される場合がある、ということです。(太田)
 「シーレーンの航行を脅かす人為的障害の代表的なものに、海賊・海洋テロ・通商破壊戦がある。・・・
 ただし、海賊行為<も>・・・海洋テロ<も>・・・単発的な事件であって、長期間にわたり多数の船舶の航行がストップする事態は起こらない。・・・
 これら3種の人為的危険のうちで発生する可能性がもっとも低いのは通商破壊戦だ。」(70~71)
→そのとおりですが、海賊・海洋テロ対処は、海軍の警察としての任務であり、本来、各国沿岸において、当該国沿岸警備隊によって対処されるべき事柄です。(太田)
 「トマホーク・ミサイルはイギリス海軍が運用しており、オランダ海軍とスペイン海軍への配備も進められている。日本がトマホーク・ミサイルを輸入することは、十分容認されるだろう。<日本は同ミサイルを米国から輸入すべきである。>」(118)
 「<また、>陸戦力を海兵隊化・・・<ないし米>海軍の特殊部隊シール<化>・・・し、予防的攻撃を実施できる能力を保持する必要がある。」(121)
→陸上自衛隊を軽快で機動力のあるものにしなければならない、と読み替えれば賛成です。民主党政権が策定した新防衛大綱がまさにその方向を打ち出したところです。(太田)
 「もともと陸上自衛隊は、冷戦時代に対ソ連戦略にもとづいて整備された。ソ連軍が北海道方面から日本に上陸して本土進攻を企てた際に、米軍の救援部隊が来るまでの期間、陸上自衛隊が抵抗して持ちこたえるというのが、基本的な戦略だった。
 しかし、地政学的状況が大幅に変わった現代になっても、戦力の配備や装備の転換が遅々として進んでいない。」(136)
→間違いです。
 警察予備隊(陸上自衛隊)は、朝鮮半島(アジア大陸)用の予備兵力として創設されました。
 朝鮮半島においてすら、自ら手を下さず、当時文字通り傀儡国家であった北朝鮮(や途中からはこれに加えて中共)に(米軍が駐留していなかった)韓国を侵攻させたソ連が、(米軍が駐留している、しかも「大国」の)日本に侵攻するということを考えることはナンセンスですし、そもそも、一貫してソ連にはそんな軍事能力はありませんでした。
 第二次冷戦期に陸上自衛隊がソ連の脅威論を黙認し、「活用」したのは、それが組織の存続発展のために有効だったから、というだけの理由からです。(太田)
 「揚陸強襲艦として使用可能な艦艇と上陸用ホバークラフトは海上自衛隊も保有している。しかし海兵隊員が<おらず、>しかも、それらの艦艇も日本防衛に必要な質と量を大きく下回っている。
 また、上陸作戦にとって不可欠な水陸両用強襲装甲車を自衛隊は保有していない。このほか、自衛隊は強襲揚陸艦から発着可能な戦闘攻撃機も保有していない。・・・陸上自衛隊は水陸両用戦能力がゼロなのである。」(139)
→上陸作戦の意義そのものが世界的に薄れてきており、海兵隊の存続の是非すら問われつつある時代ですが、いずれにせよ、日本の防衛政策においては、可能性のほとんどないところの領域防衛を、さしあたり、あまり重視すべきではありますまい。
 なお、「敵性国」が日本の離島を奇襲的に奪取したとしても、得られる少々の利益など、日本の本格的再軍備を誘発することでかき消されてしまうことから、純粋に頭のトレーニングに過ぎませんが、離島が「敵性国」に奪取された場合、日本としては、上陸作戦を敢行して奪い返すよりも、兵站路を断つことで干上がらせて降伏させる方が容易で賢明な対処の仕方でしょう。(太田)
 「<抑止力として極めて有効な>沖縄に駐屯する海兵隊の現有兵力<は不足しており、>現在沖縄とハワイに分散配備されている第3海兵遠征軍をひとまとめにして、沖縄に配置しなければならない。・・・
 <それなのに、その相当部分をグアムに移転させるという>沖縄の海兵隊の戦力<を>低下<させる計画が進められている。>」(133)
→井上和彦のところで行った批判と同じですが、北村は、米海兵隊の友人が大勢いるらしいのに一体どうしたことでしょうか。彼らの冗談を真に受けたのですかね。(太田)
 「中国空軍のSu-30、Su-27、J-10といった・・・ロシア製の・・・新鋭戦闘機が・・・F-15、F-16、F-18、F-2より強いのかどうなのかという議論があるが、AWACS(早期警戒管制機)や指揮管制情報システムが同等な場合はほぼ互角か、ロシア製のほうが若干優勢と見ておいたほうがいい」(166~167)
→F-15の最新バージョンでもSu-30にかなわないし、
http://vayu-sena.tripod.com/comparison-f15-su30-1.html
F-16、F-18それぞれの最新バージョンとの比較はむつかしいが、やはりSu-30の方が能力的に上ではないか
http://vayu-sena.tripod.com/comparison-f16-f18-su30-1.html
http://www.flymig.com/forum/posts/1155365489.htm
といったところですが、これらは、米国のF-22等の次世代戦闘機を売り込むタメにする議論だという批判もあります。
 当然のことながら、Su-30とF-22では、勝負にならないほど後者の能力が高い、と言えそうです。
http://www.f-16.net/f-16_forum_viewtopic-t-4163.html
 日本はF-22導入を米国にソデにされてるけど、本命になりつつあるF-35は能力的にどれくらいなんでしょうね。(太田)
 「海島国が”引きこもり戦略”を採用した場合、・・・硫黄島と沖縄における戦闘を検証すれば<分かるように、>・・・その国は戦争に敗れ、国土が荒らされる運命が待っている。・・・
 軍事超大国である米国しか、・・・”殴り込み戦略”・・・を採用することはできない。
 一方、海島国が”海洋出撃戦略”を用いる場合、主な戦場は海洋(海上・上空・海中)だから、第三国の領土を踏み荒らす必要はない。また、”殴り込み戦略”ほど大規模な軍事力も必要ない。つまり、”海洋出撃戦略”こそが、軍事超大国を目指さない海島国に与えられた唯一採択すべき戦略だということになる。・・・
 日露戦争後、海軍軍人で戦略理論家でもあった佐藤鉄太郎大佐(後に中将で退役)が、・・・”海洋出撃戦略”・・<を>主張していたのだ。ところが、陸軍や大陸進出勢力に排斥されてしま<い、>・・・”海洋出撃戦略”が、日本の国防原則になることはなかったのである。」(192~193)
→領域防衛的発想である時点で、既にアウトです。(太田)
4 中村秀樹(1950年~。防衛大卒、海幕等で勤務。2005年退官)『自衛隊が世界一弱い38の理由–元エース潜水艦長の告発』文藝春秋(2009年5月)
 「「自衛隊は戦えない」
 これが本書のテーマである。・・・
 私<は、>少年時代から自衛官を志し、人生を国防に捧げてきた。・・・
 戦えないという意味は、有事、つまり侵略を受けた際、それを排除するための国防軍として戦う機能がないという意味である。外見上は世界最高水準の軍隊であっても、国家体制の不備や法に縛られている上、肝心の作戦、戦闘能力もないというのが実態だ。・・・
 自衛隊が戦えない状態にある、その最大の要因は「戦争がない」という前提だろう。」(18~20)
→「有事、つまり侵略を受けた際、それを排除するための国防軍」という箇所を除いて同感です。「」と言ってしまうと、自衛隊は日本の領域防衛のためのものである、ということになってしまい、それだけで、自衛隊は存在意義がほとんどなくなってしまうからです。(太田)
 「自衛隊批判は常に反対勢力、それも政治的立場から攻撃することが目的だったから、批判の内容は低レベルで非論理的、ときに感情的なものばかりだった。自衛隊サイドがまじめに取り合うようなものではない。一方で、自衛隊の支援勢力は無条件に擁護するのみだ。苦労している自衛隊や自衛官への同情と好意に満ちてはいるが、欠陥には目をつぶってきた。いや、欠陥には気がつかなかった、というのが本当のところかもしれない。反対勢力も支援勢力も、自衛隊の実態を理解していない点では同じである。したがって、自衛隊に対して部外からの建設的な改革意見はほとんどなかったと言っていい。」(20~21)
→全く同感ですが、前段の「左」からの「攻撃」は、その結論はともかくとして、提示される事実や用いられる論理には参考になる点が多々あるのに対し、後段の「右」からの擁護は、あらゆる意味でほとんど参考にならない、という違いがあります。(太田)
 「国防の目的の一つ–それは国民の生命財産を守ることである。これはどこの国でもほぼ共通している。」(34)
→ここは、単純に間違いです。筆者は警察と軍隊とを同一視しています。(太田)
 「侵略軍相手に軍事行動をとる場合でも、国内の法律に行動を制約されている・・・。
 こうした問題を解決するのが有事法制・・・だが、新法が成立してはいるが、防衛出動までの手続きがかえって複雑になって、即応性が損なわれているくらいだ。
 敵は当然日本の国内法など無視してかかるから、自衛隊は法律を守り、敵は法律を守らない状態で戦うことになる。・・
 <しかも、>奇襲<を受けた場合、防衛出動が発令され・・・(正確には>防衛大臣が「防衛出動に関する自衛隊行動命令」(行防命)を出<し、)>・・・さらに「自衛権に基づく武力の行使」が命ぜられ・・・<るまでには、>現状では甘い試算でも一日以上が会議などで費やされてしまう。<これではその間に自衛隊は大損害を被ってしまう。>・・・
 しかし、いまだにその問題は解決していない。」(38、50~51)
→全く同感ですが、自衛隊にとって日本の領域防衛での出番はほとんどありえないので、この「問題を解決」する優先順位は極めて低いと見るべきでしょう。(太田)
 「「奇襲」事態<として考えられるのは、>具体的には次の3つが代表的なものだろう。
一、外国軍隊等による奇襲着上陸
二、海上・航空における突発的な局地武力紛争
三、弾道ミサイル攻撃緊急事態
 このうち、一と三は国家的緊急事態(侵略事態)で、二は部隊レベルの緊急事態(自衛行動)と個人的緊急事態(国民個々が危険に曝される)とも言える。
 国家的緊急事態ならば、遅かれ早かれ防衛出動が命令されるはずだ。一はきわめて明確である。しかし三のミサイル対処には別の規定がある。この規定は摩訶不思議で、弾道ミサイルはどういうわけか敵の攻撃ではなく、危険な落下物とみなされている。「組織的、計画的な武力の行使」に該当しない事故や、誤射による弾道ミサイルの発射に対しては、防衛出動の対象外だ。それゆえ、迎撃等のための法的根拠がない。この法律の間隙を埋めるために規定が設けられているのだが、要するに「攻撃意図をもってミサイルが発射された」と考えるのではなく、「偶発的事故でロケットやミサイルが落下してくるので、それを安全のために排除する」という発想なのだ。・・・これではミサイルで攻撃されても反撃や報復ができないどころか、二発目以降の発射を阻止するために、発射基地を攻撃することもできず、我が国を狙うミサイルの発射を許し続けることになる。
 二については・・・海上警備行動<が発令されている場合ですら、>警察官職務執行法<に基づき、武器の使用ができるだけなので、>武器の使用は極端に制限される。・・・
 <ちなみに、これは地上でのPKOの話だが、>イラクでは、軍隊のはずの自衛隊が、他国軍に守ってもらうという信じ難い態勢が必要になったのである。
 他国軍に守ってもらわなければならない事情は、自衛隊より個人のほうが深刻だ。現行法では、外国で紛争に遭遇した邦人は、他国の軍隊に守ってもらい、他国の好意で飛行機に乗せて脱出させてもらうしかない。」(53~55)
→「奇襲」をもっぱら問題にすること自体、筆者が「日本の領域防衛」という想定にとらわれていることを示しています。
 まさに、PKO等を主として念頭において議論が展開されるべきなのです。(太田)
 「旧軍(とくに陸軍)暴走の要因の一つに幕僚統帥があった。要するに、責任や権限のない幕僚が勝手に作戦を立て、指揮官や上級司令部が追認することで日本の歴史が変わったのである、ノモンハンや、満州事変がその好例だろう。
→ノモンハン事件は、日本軍がソ連軍(とモンゴル軍)の奇襲攻撃を受けて始まった局地戦であり、関東軍がある程度下剋上的に作戦を行うことはそれほど大きな問題ではありません。
 他方、満州事変については、国策として実施すべきであったところ、関東軍が下剋上的に実施したものであり、極めて問題でした。
 いずれにせよ、この二つを、幕僚の指揮への容喙問題・・実際それはあったのであり、「<ノモンハン事件においては、>日本軍は関東軍という出先軍の、辻政信と服部卓四郎など一部の参謀の近視眼的な独断専行による対応に終始した」(出典がつけられていない)、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%83%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6
「満洲事変の発端となった・・・柳条湖(溝)事件は、・・・関東軍高級参謀板垣征四郎大佐と関東軍作戦参謀石原莞爾中佐が首謀しておこなわれた」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%80%E5%B7%9E%E4%BA%8B%E5%A4%89
という事実がある・・と一括りにし、しかも矮小化してとらえてしまうと、問題の本質をとらえ損なうことになるのではないでしょうか。(太田)
 今日の内局の干渉は、本質においてそれに匹敵する問題であると私は考えている。いや、むしろ軍事知識のない背広官僚が傭兵に口を出すので、さらに深刻な問題と言えるだろう。予想される悲劇は、ノモンハンよりむしろ湊川の例に近いかもしれない。」(65)
→既に述べたように、筆者がノモンハンや満州事変を持ち出したのは、この文脈の中では全く意味がないのであって、筆者は、戦闘についてシロウトであった公家がプロの武士に口出しをした湊川の話を最初からすべきだったのです。(太田)


 「本来行政や管理になじまない自衛隊の行動や防衛計画などが、内局の管制下に置かれて、自衛隊の行動を窮屈にしている。こんな世界の珍例が長く存在しているのは、これまで実戦がなかったからであろう。・・・
 特殊な性格の政府機関を事務次官の監督下に置くことが適切でないのは、何も自衛隊ばかりではない。たとえば法務省では、検察庁は法務事務次官の監督を受けることはない。・・・また、外務省では、・・・在外公館長・・・大使など・・はやはり外務事務次官の監督下ではなく、大臣直轄という組織になっている。
 自衛隊の場合、行政業務をとる本省と、戦闘を前提とする部隊との性格の差は、法務省(検察庁)や外務省(在外公館)以上のものがある。」(71)
→全く同感です。私自身、拙著『防衛庁再生宣言』で、このような説明もすべきでした。(太田)
 「<装備調達にあたって>業者選定に政治家や高級官僚が介入<し、>・・・軍事的合理性より利権が作用す<る。>」(96)
→良く書いてくれました。ご本人が天下りをしていなさそうだからこそ言えることです。(太田)
 「陸上自衛隊は、・・・朝鮮戦争に派遣された在日米陸軍・・・の代替兵力として考えられた・・・。・・・
 海上自衛隊は、終戦と同時に、海軍大臣米内光政(海軍大将)が軍務局長保科善四郎(海軍中将)に海軍再建計画の研究を命じたため、統一された再建計画ができた。さらに昭和27(1952)年4月の海上警備隊創設前、すでに旧海軍将兵が機雷掃海任務に従事中であった。・・・
 米海軍の好意<もあった。>
 <そこで、>海上自衛隊<は>三自衛隊の中で最も旧軍の伝統を色濃く残<すことになる。>・・・
 航空自衛隊は、保安隊、海上警備隊に遅れること2年、昭和29(1954)年の自衛隊創設とともに誕生した。・・・米軍(空軍)の影響が強い・・・。」(97~98)
→海上自衛隊だけは、日本側のイニシアティブでつくられたという重要な指摘を筆者はしています。
 しかし、残念ながら、あのできの悪い旧海軍がイニシアティブをとったために、海上自衛隊は第二次世界大戦において弱体であった機能を強化する、というか、そのような機能だけに特化したいびつなものになってしまったのです。すなわち、対潜戦と対機雷戦に特化した、海上輸送機能を守るだけの存在に・・。(太田)
 「冷戦時代、日本にとって最大の脅威はソ連軍だった。樺太や北方領土からの侵攻に備えて、陸上自衛隊は兵力の三分の一を北海道に配備した。それも新型装備や高充足の部隊を優先的に配備したから、実質は戦力の半分が集中していたと言ってよいだろう。・・・
 北方の脅威が減少し、北海道が主戦場でなくなった現在では、より市街戦の比重が増している。・・・
 一体、日本国内のどこで、機甲部隊同士の戦闘が生起するのだろうか。・・・戦車<の>・・・存在意義<は>疑わしい。・・・」(106~107)
→陸上自衛隊は、外征軍である米陸軍の予備兵力として、米陸軍の(しかし、首尾一貫しないけれど兵站機能を縮小したところの)コピーとして発足しました。それはそれで意味はあったのです。なぜなら、何度も繰り返すようですが、自衛隊は日本の領域防衛での出番はほとんどないからです。
 冷戦時代のソ連の脅威論はウソであったという話はここでは繰り返しません。
 なお、「意味があった」と過去形で書いたのは、ポスト冷戦期においては、陸上自衛隊は、集団的自衛権の行使を前提に、軽快に世界のどこにでも迅速に駆け付けられるような編制・装備にすべきであるからです。(これは、民主党政権が策定した新防衛大綱で打ち出された方向性でもあります。)
 戦車等を多数抱え込んだ編制・装備の陸軍は米国が保有していれば十分である、ということです。(太田)
 
 「海上自衛隊は・・・対潜戦に特化した海軍だから、敵の水上部隊と決戦することはできない・・・。
 <しかも、>我が国に出入りする外航船は年間約13万隻である。一日平均約360隻ということだ。これを、わずか100機程度の哨戒機と約50隻の護衛艦(修理や訓練で何割かは使えない)で守るというのは妄想に近い。・・・<その上、>1000マイル<までしか守らないときている。>」(115~117)
 「<では、米空母護衛、すなわち>対潜護衛<はどうか。>・・・空母を守る水上艦の感覚は・・・数十キロメートルであろう。だから、潜水艦は、この間隙を簡単に抜けることができる。この間隔を数キロメートルに狭めて、潜水艦を近寄らせないような防御陣形を作るためには、何百という数の水上艦が必要になり、現実的ではない。
 さらに、水上艦のソーナーの探知距離は、・・・潜水艦が水上艦を探知する距離の百分の一程度だ。・・・だから・・・特定の軍艦を対象にした対潜護衛も成立しないのである。
 ・・・対潜掃討はどうだろうか。これは消極的な護衛に対して、潜水艦を積極的に探して攻撃しようとするものだ。・・・しかし、潜水艦は対潜掃討部隊が出す電波(レーダーなど)や音(ソーナーなど)で、その存在を遥か彼方から知ることができる。・・・<そうして、>潜水艦は・・・とっとと逃げてしまう。・・・
 <ところが、>訓練では、潜水艦を探知・・・させてから訓練が始まるのが一般的なやり方だ。・・・海上自衛隊の主流を占める彼らは、仕組まれた成功体験を重ねていくうち、「対潜戦は困難だが成立する」と考えるようになるのである。事実を知っている潜水艦乗りは、海上自衛官の5~6%にすぎないから、海上自衛隊では対潜戦への希望と意欲は消えることはない。・・・
 <このように、>効果のない対潜戦より、本来の任務である海上防衛、つまり対水上戦を重視すべきであろう。」(118~121)
→このような誤った記述は、筆者が海上自衛隊の中枢にいたことがなく、従って、機密情報に接していなかったことを示しています。
 「潜水艦を探知・・・させてから訓練が始まる」のは、主としてSOSUS(、補助的に水上艦艇の曳航式パッシブソナー)でもって敵味方潜水艦のおおまかな位置は把握されているからです。
 従って、「対潜戦は」少なくともSOSUSが有効な深海域においては、「成立する」のです。
 また、備蓄を考えれば、有事において、敵性の潜水艦を撃破し終わるまで外航船が日本に出入りする必要は、(米海軍や米国からの戦略物資を積んだ外航船を除けば、)基本的にない(コラム#省略)ので、筆者のような問題の設定そのものがあまり意味がありません。
 以上を踏まえれば、海上自衛隊現有の100機に近い哨戒機は、多すぎる、というのがむしろ本当のところなのです。
 結論的に申し上げれば、「日本の領域防衛」がらみで海上自衛隊等が対水上戦を行う場面はほとんど想像できないだけに、海上自衛隊は、米海軍同様、対陸上打撃能力を中心としたものへと重点を移行させる必要がある、ということなのです。(太田)
 「<自衛隊には>役に立たない・・装備・・・<が少なくないが、それらは、>要するに、必要だからという軍事的合理性に基づくものではないのだ。たであ前例主義(惰性)に従っているだけである。あるいは、国内メーカーへの配慮かもしれない。天下り先の防衛産業を保護するためでなければよいが。・・・
 独自に開発したものには、より安価な輸入品より劣っている場合が少なくない。
 また、国産といえども、製造に必要な部品や材料の大半は輸入に頼っている。・・・所詮は輸入なら完成品を買ったほうが早い。限られた輸入品にしても米国製が圧倒的に多いが、複数国の製品を比較検討して、高性能で安いものを買うべきだ。インターオペラビリティ(相互運用性)などという怪しげな理由に騙されてはならない。米国製武器を装備しない米国の同盟軍はNATOをはじめ、たくさんある。」(123~124)
→全面的に同意です。(太田)
 「訓練の目的が技能向上ではなく事故防止では、本末転倒であろう。」
→文章がちょっとおかしいけれど、趣旨には全く同意です。
 「どこが「防衛対象国」なのか・・・日本を侵略できる能力を持った国は、同盟国の米国をノア置けば、中国、韓国、ロシアである。北朝鮮は、弾道ミサイルと少数の特殊部隊以外の攻撃能力を持たないから、ここでは除く。・・・
 韓国の場合、地理的に近いため脅威は中国より高いともいえる。・・・韓国も・・・中国<同様>・・・九州に大兵力を揚げる能力はないから、危ないのは<中国の場合は>・・・先島辺り<だが、>・・・対馬である。・・・
 また、旧ソ連ほどではないが、ロシアも北海道に侵攻する能力はある。」(152~153)
→北村淳だけじゃなくお前までそんなことをって言いたいですね。
 私としては、韓国を潜在敵国とみなす、彼らの精神構造に興味を持ちます。(太田)
 「自衛隊にも罰則規定があるが、きわめて甘いものだ。
 最大の罪は、有事(防衛出動時)の職務離脱、つまり敵前逃亡である。しかし最高刑は懲役7年に過ぎない。映画館で盗撮すれば、最高刑は懲役10年である。・・・旧軍では、敵前逃亡の最高刑は死刑であった。」(216)
 「軍法会議<や>・・・軍律法定・・・そして、刑の執行機関・・・軍刑務所や営倉・・・<も必要である。>」(219、221)
→全く同感です。(太田)
4 終わりに
 最初の2冊は読むことはお奨めできません。
 最後の1冊は、うのみにしないという前提の下でですが、読むには値する、と申し上げておきましょう。
 この種の読み物に典拠がついていないのはやむをえないとしても・・もっとも、最後の本だけには巻末に参照文献一覧が載っている(しかし、問題意識が結構重なり合っているというのに拙著『防衛庁再生宣言』は出てこない)・・、3冊とも、自分達以外の著作にまったく言及がないのは不思議なことです。
 防衛問題で国内に議論がないこと、従って、防衛問題に関する知識が国民の間で蓄積していかないこと、のこれは結果であると同時に原因の一つではないでしょうか。
<TA>
 <今回オフ会には出席できませんが、事前に太田さんの上記講演原稿(ただし、草稿段階のもの)を読ませていただきました。>
 この三冊の本を読んでからかなりの時間が経っており、記憶がかなりあやふやなのですが、この本への私の感想などを書きたいと思います。
 まず、井上和彦氏の著作についてですが、確か20~30頁あたりに、自衛隊に関する法整備の不備を指摘した上で、「これらが改善されれば自衛隊は劇的に強くなる」といった意味の記述があったと記憶します。これは裏を返せば、現在の自衛隊が弱いと言っているに等しく、『こんなに強い自衛隊』との書名が完全な偽りであることの証拠です。私はこの記述で、この本をゴミ箱行きにすることに決めました。
 ただし、「自衛隊は強いんだ!」という嘘を、なぜ敢えてつくのかは、興味深いと思いました。「取材対象の好意を得て飯のタネにするため」というのは邪推が過ぎるでしょうから、「右」特有の「軍隊への(盲目的?)偏愛」がそうさせているのだと、私は解釈しました。
 恐ろしいのは、お送りした本の著者三者の内、一番有名であろう方が、この井上氏なのです(しょっちゅう、「たかじん・・・委員会」に出演されています)。
 次に、北村淳氏の著作についてです。読んでいた当時はそれほどはおかしな記述はなかったと思っていたのですが、コラム#4565の『正論』記事の<(太田さんの指摘によるところの(コラム#4571))>あまりの出来の悪さに愕然とし、当時の認識に自信が無くなっていたところ、案の定、太田さんに「読むことはお奨めできません」と言われてしまいました。
 細かい論述は覚えていないのですが、ミサイル防衛や敵ミサイル基地(発射装置)への敵基地攻撃能力、北朝鮮のミサイルなどに関する記述は、印象に残っています。
確か「移動式のミサイル発射装置への攻撃は、そもそも技術的に難しい。だから敵基地攻撃能力云々の議論はあまり意味がない」という話と、「通常弾頭に限れば、北朝鮮のミサイルは、世間で騒がれているほど脅威ではない」といった話を、割と詳細に述べておられたと記憶します。これらに関する記述も、「読むことはお奨めできません」でしたか?
 最後に、中村秀樹氏の著作ですが、「読むには値する」と一応の評価をして頂き、安堵しました。
 『自衛隊が世界一弱い38の理由』という書名は、井上氏の『こんなに強い自衛隊』への対抗意識と推測しますが、書名同様、井上氏の主張と(少なくとも表面上は)真逆の内容です。この二冊はぜひセットで読まれるべき本だと思います。
 「<太田さんと>問題意識が結構重なり合っている」とは、読んでいる当時も感じており、てっきり何がしかの面識(接点)がお有りなのだと推測していたのですが、そうではなかったのですね。
 ・・・オフ会次第や動画のアップを楽しみにしております。
<太田>
 北村氏、既に太田コラムに登場してたんですね。
 すっかり忘れていました。               
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 –皆さんとディスカッション(続x1210)–
<太田>(ツイッターより)
 訂正。東電の清水正孝社長は6月末退任でした。
http://s.nikkei.com/kA9BhS
 太田コラムじゃ、フーバー大統領ないし同政権関係者以外には、戦前の米国人について褒めたことがないけど、こんな親日的な有力米国人もいたよ、と教えていただければありがたい。
<ΣΕΕΣ>( (「たった一人の反乱」より)
 アップされた<前回のオフ会での>講演見たけど、特に後半の一問一答形式が面白かった。
 内容が面白いのはもちろんだけど、若干お笑いっぽくなってて見てて笑っちゃったよw 。
 立て続けの重箱の隅をつつくような質問に、太田さんが笑いながら答えて参加者もウケてるという楽しそうな雰囲気が感じられてよかったよ。
<太田>
 それでは、記事の紹介です。
 原発の世界に専門家はいるのかって言いたくなってくるね。↓
 「東京電力福島第1原発・・・1号機では、3月12日午後3時半すぎ、水素爆発が発生。東電の公開資料によると、東電は同日午後7時4分から海水注入を開始した。一方、首相官邸での対応協議の席上、原子力安全委員会の班目春樹委員長が再臨界が起きる可能性を菅直人首相に進言。これを受けて首相が中断を指示し、午後7時25分に海水注入を停止した。
 その後、問題がないと分かったため、午後8時20分に海水とホウ酸の注入を開始したが、55分の間、冷却がストップした。・・・
 海水注入の中断で、被害が拡大した可能性もある。・・・」
http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201105200178.html
 「菅首相は20日の参院予算委員会で、東京電力福島第一原子力発電所で起きたメルトダウン(炉心溶融)が約2か月後に判明したことについて、「私が国民に言ったことが根本的に違っていた。東電の推測が違うことに政府も対応できなかったという意味では大変申し訳ない」と陳謝した。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110520-OYT1T00964.htm
 「・・・ 冷却水が失われ、原子炉に入っていた核燃料の大半が溶け落ちたとして、「全炉心溶融(メルトダウン)」とほぼ断定された東京電力福島第1原発1号機。・・・
 「メルトダウン」の定義が曖昧で誤解を招くとの指摘もある。・・・
 大阪大学大学院の山口彰教授(原子炉工学)は・・・「圧力容器の下部に水があり、温度も安定している。溶融燃料が連鎖的に核反応を起こす臨界状態になる可能性は低く、底が抜けて大量の燃料が漏れ出すとは考えにくい」と指摘している。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110520/dst11052021240024-n1.htm
 あのね、もともと米国は国際政治にちょっかいを出すだけの能力なんてなかったの。
 それが、経済力が相対的に低下してきたため、誰も米国におべっか使わなくなり始めたってだけのことさ。
 (モチ、中東の方だって後で出てくるように、大きく変わりつつあるけどね。)↓
 ・・・More and more,・・・the Middle East・・・see the United States as poorly intentioned, incompetent, and less relevant to their interests; as a result, they are ever more prepared to take major decisions and initiatives without deference to American preferences. ・・・
 The Middle East is changing, and American policy toward the region needs to change, too. Unfortunately, Obama hasn’t fulfilled his repeated promises to improve on George W. Bush’s disastrous foreign policy. Instead, he may end up presiding over an even more precipitous decline in America’s regional standing and influence than his predecessor.
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/05/20/the_dispensable_nation?page=full
 こいつはメッチャ面白い。
 アラブ革命を予言してた奴がいたんだね。↓
 ・・・in the middle of the Cold War, in the days of Leonid Brezhnev,・・・French social scientist Emmanuel Todd・・predicted the collapse of the Soviet system. In 2002, <he> described the economic and imperial erosion of the United States, a global superpower. And, four years ago, <he> and <his> colleague Youssef Courbage predicted the unavoidable revolution in the Arab world・・・<which is supposedly caused by the followings, ie.> the rapid increase in literacy, particularly among women, a falling birthrate and a significant decline in the widespread custom of endogamy, or marriage between first cousins. This shows that the Arab societies were on a path toward cultural and mental modernization, in the course of which the individual becomes much more important as an autonomous entity.・・・
 <He says,> according to the law of history that states that educational progress and a decline in the birth rate are indicators of growing rationalization and secularization, Islamism is a temporary defensive reaction to the shock of modernization and by no means the vanishing point of history. For the Muslim world, that vanishing point is far more universal than people are willing to admit. The notion of unchanging Islam and the Muslim essence are purely intellectual constructs of the West. The tracks along which the world’s various cultures and religions move are converging toward an encounter rather than the battle that Samuel Huntington believed would take shape.・・・
 The Arab Spring resembles the European Spring of 1848 more closely than the fall of 1989, when communism collapsed. The initial spark in France triggered unrest in Prussia, Saxony, Bavaria, Austria, Italy, Spain and Romania — a classic chain reaction, despite major regional differences.・・・
 <ここ↑までは感心しながら読んでたけど、ここ↓でのけぞっちゃったぞ。
 アホか。仏独は同じ穴のムジナだろが。>
  ・・・only Great Britain, France and the United States, in that historic order, constitute the core of the West. But not Germany.・・・
 ・・・the postwar <German> history is all very well and good, but it had to be put into motion by the Western Allies. Everything that happened earlier failed. Authoritarian government systems consistently prevailed, while democratic conditions had already predominated in England, America and France for a long time. Germany produced the two worst totalitarian ideologies of the 20th century. Even the greatest philosophers, like Kant and Hegel, were, unlike David Hume in England or Voltaire in France, not exactly beacons of political liberalism. No, Germany’s immense contribution to European cultural history is something completely different.・・・
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,763537,00.html
(以下、明日に回します。)
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 一人題名のない音楽会です。
 ハメリン特集の2回目です。
Con Intimissimo Sentimento No. 4 “After Pergolesi”
http://www.youtube.com/watch?v=BVkVdR1CRag&feature=related
 ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(Giovanni Battista Pergolesi。1710~36年。イタリアのオペラ作曲家)
http://bit.ly/hyXlVu
の作風の一端を知っていただくため、彼の「聖母哀傷(Stabat Mater)第一楽章Dolorosa」をKatia Ricciarelli(ソプラノ) and Contralto Lucia Valentin(コントラルト=メゾソプラノとテノールの間)
http://en.wikipedia.org/wiki/Contralto 
の歌唱、Claudio Abbado指揮、Chorus and Orchestra of La Scala でお聴きください。↓
http://www.youtube.com/watch?v=mNt13Vw-K6Q
 今度は、軽ーいやつをどうぞ。
Suggestion Diabellique 
http://www.youtube.com/watch?v=XhJQ3IUhWfI&feature=related
 「原曲」(プロコフィエフ Suggestion Diabolique) プロコフィエフ本人演奏 この曲にはひっかけているだけですが・・。
http://www.youtube.com/watch?v=nGfWVh98p2g&feature=related
 原曲(ベートーベン「ディアべり変奏曲(33 Variations on a Waltz by Anton Diabelli)」) ブレンデル演奏 これが本当の原曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=wctoxElV8Os
http://www.youtube.com/watch?v=tVJ83WKmd9M&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=6IV70oWLVhw&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=Y5RN9a7d-Rk&feature=fvwrel
 原曲の原曲(ディアべり 「ワルツ」) Cubus?演奏 更にその原曲があるってわけです。
http://www.youtube.com/watch?v=IgCw6jjPuIw
 原曲が全然軽くないじゃないかって?
 それじゃ、しばしの間、原曲も軽ーいやつでお口直しを。
Abreu/Hamelin Tico Tico No Fuba  Sandro Russo演奏
http://www.youtube.com/watch?v=_6MVJYKvubc&feature=related
 原曲(Abreu Tico Tico No Fuba) バレンボイム指揮 ベルリンフィル
http://www.youtube.com/watch?v=voOBtUAK2sg&feature=related
Valse Irritation d’apres Nokia (Ringtone Waltz) 
http://www.youtube.com/watch?v=gYpO6M-LyY8&feature=related
 原曲 Nokia Fugue (op. 31, old version) ノキア携帯の着信音に使われている曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=QnI-ymx6hcc&feature=related
 もうお分かりのように、ハメリンは、クラシックとポピュラーの垣根を乗り越えたピアニスト兼作曲家であり、まさに、私の感性にぴったりの音楽家なのです。
 ハメリンとの旅は、まだまだ続きます。
(続く)