太田述正コラム#4937(2011.8.18)
<皆さんとディスカッション(続x1297)>
<太田>(ツイッターより)
 大英帝国崩壊後の、エリート層、ひいては非エリート層の堕落・劣化にもかかわらず、イギリスが表見的には破綻を免れて今日にまで至ることができたのは、帝国時代の遺産(在外資産/シティー/国際情勢ノウハウ/移民、等)とEU加盟のおかげ。
 だけど、ついに遺産を食いつぶし、それにEU経済も・・。
<21century_po>(ツイッターより)
 これは。。。太田述正氏、アングロサクソン信仰を脱却か。
 アングロサクソン信仰といえば岡崎久彦氏ですが、今後は後継者なく途絶える方向なのか。
 それともやっぱりアングロサクソン教こそ日本の国教?
<太田>
 イギリスはともかく、(イギリスを除く)英国は「健在」だし、元首が同じだから同じ国と言ってもよいカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、その他は絶好調だ。
 (カナダに関しては、先だって、アメフトで米国チームに地元チームが負けて騒乱状態にバンクーバーがなったけど(コラム#4815、4827)、これは旧来のサッカー・フーリガン現象の延長線上の話だということにしておこうよ。)
 だから、アングロサクソン全体について、悲観的になるのはまだ早い。
 京都地区が落ちぶれたって、東京を中心とした地区が繁栄してりゃ日本全体としてはまあまあだろって譬えで納得してくれたまえ。
<ζλλζ>(「たった一人の反乱」より)
 イギリスの暴動での逮捕者に、「ムッチャ重い刑を宣告し続けている」(コラム#4933)ってことで、下層の人たちに対して同情心の欠片もないような非人間主義的なことしてたら、ますます野蛮化するだけだよな。
 イギリス人って頭悪いの?
<太田>
 んなこたーない。
 平時と有事のメリハリをものすごーくきかせるのがアングロサクソンの真骨頂さ。
 建物に放火した奴らなんか、その場で射殺されなかっただけでもオンノジだぞ。
 とにかく、大暴動、収まったでしょ。
 原因だの再発防止策だのは、落ち着いてから考えりゃいいんだよ。
<ΜΜΖΖ>(「たった一人の反乱」より)
≫何度でも言うが、ソ連参戦によって、(日支戦争を含め、)先の大戦を日本が戦った前提・・対赤露抑止・・が崩壊したため、日本は米英に降伏することを決意したわけだ。≪(コラム#4935。太田)
 後出しジャンケンの理論だよ。
 アカのせいにすれば丸く収まると思って作られた異説。
 だったら、なんで南方に進出したの?
 アメリカに宣戦布告したのも、真逆の行動じゃね?
<ΜΖΜΖ>(同上)
 これを読んでわからなかったら、また質問どぞー。
 ↓は日本の対赤露抑止政策の前に立ちはだかった英国に対する世論の反応。
 「先の大戦直前の日本の右翼」
http://blog.ohtan.net/archives/52090194.html <(コラム#4701)>
http://blog.ohtan.net/archives/52090354.html <(コラム#4703)>
http://blog.ohtan.net/archives/52090530.html <(コラム#4705)>
http://blog.ohtan.net/archives/52090995.html <(コラム#4711)>
http://blog.ohtan.net/archives/52091205.html <(コラム#4713)>
 ↓はその世論に呼応するように作られた陸軍の対英戦争計画についてのコラム。
再び日本の戦間期について(その5)
http://blog.ohtan.net/archives/52089150.html <(コラム#4689)>
<太田>
 迷える子羊のΜΜΖΖクンには、
一、日本が日支戦争を戦ったのは対赤露抑止政策の一環としてであったこと、
二、この日支戦争に英米がかねてから国民党政権側に立って実質的に参戦していたこと、
三、ハルノートは米国による事実上の対日宣戦布告であったこと、
を理解させなければならず、まずは、「ロバート・クレイギーとその戦い(続)」シリーズ(コラム#3956、3958、3960、3964、3966、3968、3970)は必ず読んでもらう必要があるだろうが、その他の必読コラムを拾い出すのは大変だなあ、だけど誰かやってくれるだろうと思っていたところ、やってくれてサンキュベリマッチ。
 二を扱った、「先の大戦直前の日本の右翼」シリーズに着目するとは秀逸。
 三については、(ほとんど常識じゃないかと思うが、)上記シリーズ中のコラム#3958に出てくるけど、きちんと取り上げたコラムはなかったんじゃないかな。
 一については、書き終わったばかりの「孫文の正体」シリーズ(未公開)やこれから書く「赤露による支那侵略(仮称)」シリーズ中で、「当初の中国国民党=赤露」であったことを明らかにしているが、「日支戦争勃発時の中国国民党≒赤露」を明らかにした過去コラムとしては、どれがいいんだろうね。
 なお、陸軍の対英戦争計画については、「ロバート・クレイギーとその戦い(続)」シリーズ中の#3964のほか、同じくクレイギー側の観点からの#4394、また、ボクの観点からの#4372をまず読むといいかもしれないね。
<太田>(ツイッターより)
 日本の戦前史を理解するためには、少なくとも、日本史全体(タテ/時系列)と当時の世界情勢(ヨコ/環境)についての相当程度の理解が必要であることを痛感するね。
 ボクの場合、最終的目的は、日本の現在(同時代史)を説明することであり、それがひいては日本の「独立」に資することなんだけどね。
<まるこう>
 ・・・高校生の息子たちに原子爆弾の話をするのですが、その際に、広島や長崎など、「目標都市は原爆の破壊力がはっきり分かるよう、通常の空襲は行わなずに町並みを温存しておくことが決定されていた」ということを説明するつもりです。
 そこで、この典拠を探しております。
 典拠の出自に加え、原文と、出来れば日本語訳があると有難いです。・・・
<Fat Tail>(同上)
 この記事↓読んで、太田さんと太田コラムを思い浮かべました。
 少なくとも91歳まで執筆の程お願い致します。
 Ehsan Yarshater’s Encyclopedia of Iranian History
http://www.nytimes.com/2011/08/13/books/ehsan-yarshaters-encyclopedia-of-iranian-history.html?_r=1&src=tp
<太田>
 激励、痛み入るが、それを実現するためには、未充足条件を、少なくとも一つはクリアする必要がありますねえ。
<MS>
 ・・・上野の国立博物館で開かれている、特別展「孫文と梅屋庄吉 100年前の中国と日本」を見てきました。
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1398&lang=ja
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1412#2
 始まったばかりの#4934<から>の<「孫文の正体」>シリーズ<(未公開)>や#1820「梅屋庄吉をめぐって」 
http://blog.ohtan.net/archives/51094624.html
にも関連していると思<います>。
 孫文、蒋介石や宋家の人を梅屋家の人々が囲んで一緒にうつっている集合写真などに、戦前の日本人の人間主義的姿勢がよく現れている気がするので、興味がある人は見に行ってみると面白いかもしれません。
 ちなみに他のイベントがめちゃ混みなのを尻目に、ガラガラでした。・・・
 簡単ですが、とくに印象に残っているものを、いくつか写真を交えて紹介。
 写真は下記よりとりました。
http://mainichi.jp/enta/graph/sonbun/index.html
http://www.nagasaki-ryomadori.com/blogs/denderaryu/2011/02/20110210.html
http://www.museum.or.jp/modules/topics/?action=view&id=47 (重いので注意)
http://www.tnm.jp/uploads/r_press/15.pdf
 (番号は、目録、
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1412#2 
による。)
68 原宿の孫文邸に於ける志士集会の記念写真 『梅屋庄吉アルバム』より
http://mainichi.jp/enta/graph/sonbun/16.html
79 鄒魯 『梅屋庄吉アルバム』より
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%84%92%E9%AD%AF
→ 反共の人 
  
88 孫文一行と安川家の人々
http://mainichi.jp/enta/graph/sonbun/3.html
→ 人間主義。
89 革命の志士の寄せ書き衝立
http://www.nagasaki-ryomadori.com/blogs/denderaryu/2011/02/20110210.html
→ 漢字であらわされる抽象的な美徳に酔っている感じ。
孫文夫妻と梅屋トク
http://www.nagasaki-ryomadori.com/blogs/denderaryu/2011/02/20110210.html
→ 史上最大の惨禍をもたらした仲人!?
64 宋慶齢の書簡
 恩人トクあてに送った手紙。英語で書かれています。
 トクが英語を読めたのなら良いけれど、そうじゃないとしたら日本語か中国語(孫文は中国語のようです)で書くべきではないかと思いました。
 宋慶齢、14歳よりアメリカで教育を受け、過剰適応してしまったのではという感じがします。
 勝間和代を思わせるような、いけ好かない感じが。。。
 書簡の写真はありませんが、以下を参考に。。。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%8B%E6%85%B6%E9%BD%A2
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/feature/article5/20110404/20110404_0001.shtml
<太田>
 だけど、宋慶齢、容共の夫の孫文の考えにも過剰適応して、蒋介石と結婚した妹の宋美齢とも袂を分かって、反米姿勢を明らかにした中共による支那統一後、最終的に国家副主席に就任する(ウィキペディア上掲)のですから、面白いですよね。
なお、こんな記事が今日ありました。↓
 「孫文・梅屋夫妻の像、中国が返礼で長崎県に贈呈・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110817-OYT1T00850.htm
 
 それでは、その他の記事の紹介です。
 環境省に移す前に、一旦保安院を解体した方がよくない?↓
 「新潟県が10年に実施した避難訓練について、地震災害と原子力災害の同時発生という想定は「住民に不安と誤解を与えかねない」という趣旨の助言を経済産業省原子力安全・保安院が同県に対ししていた・・・」
http://mainichi.jp/life/today/news/20110818k0000m040125000c.html
 リビアの反体制派は、今月末までに内戦は終わると言いだした。↓
 ・・・the rebels believe they will win this war by the end of August・・・
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-14561904
 リビアの最新状況が一目でわかる地図が載ってるよ。↓(上↑のにも載ってる。)
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-14560983
 このシリアのホムス(Homs)という町のドキュメンタリー記事を読むと、シリアで、アサド政権による住民虐殺の継続にもかかわらず、反体制運動が続いているのは、反体制派の大部分が「殉教」を厭わないイスラム(スンニ)原理主義者達だからだ、という気がしてきたな。↓
http://www.nytimes.com/2011/08/18/world/middleeast/18homs.html?_r=1&ref=world&pagewanted=all
 冷戦終焉後の欧州NATO諸国の防衛努力は米国に比べて大幅に減った。英国は、これから更に防衛努力に大鉈を振るう。日本はどうする?↓
 ・・・Since the Cold War’s end, the combined gross domestic product of NATO’s European members has grown 55 percent, yet their defense spending has declined almost 20 percent. Twenty years ago, those nations provided 33 percent of the alliance’s defense spending; today, they provide 21 percent.・・・
 Prime Minister David Cameron・・・<announced> plans to slice military personnel by 10 percent and the army’s tanks and artillery by 40 percent, and the decommissioning of Britain’s only aircraft carrier capable of launching fixed-wing aircraft. Britain will have no carrier, an essential instrument of power projection, until 2020. ・・・
http://www.washingtonpost.com/opinions/americas-lost-ally/2011/08/16/gIQAYxy8LJ_print.html
 イギリスの1612年の魔女裁判で10人が処刑されたのは、その家族の9歳の女の子の証言によるってんだけど、背景には、国王のジェームス1世主導の反カトリシズム・ヒステリーがあったんだね。
 20世紀米国のマッカーシズムの赤狩りの17世紀版、と理解すべきなのかもしれない。
 ところで、この女の子、想像するに、恐らく、毒親
http://www.winpal.net/~jiro/h/doku.html
に復讐したかったんだろうな。↓
 
 ・・・Nine-year-old Jennet Device・・・’s evidence in the 1612 Pendle witch trial in Lancashire led to the execution of 10 people, including all of her own family.・・・
 There had been earlier cases of children being witnesses in witch trials, but the law stated those under 14 were not credible witnesses because they could not be sworn under oath. Jennet’s testimony changed all that.
 In England at that time paranoia was endemic. James l was on the throne, living in fear of a Catholic rebellion in the aftermath of Guy Fawkes’ gun powder plot. The king had a reputation as an avid witch-hunter and wrote a book called Demonology.・・・
 In his book Demonology, James l wrote: “Children, women and liars can be witnesses over high treason against God.” This influenced the justice system and led to Nowell using Jennet as his key witness. ・・・
 ・・・Jennet’s evidence were included in a reference handbook for magistrates, The Country Justice.
 The book was used by all magistrates, including those in the colonies in America, and led them to seek the testimony of children in trials of witchcraft.
 <これが先例となって、子供の証言が中心になって、英領北米植民地のサーレム(Salem)の1692年の魔女裁判(コラム#2114、3712)で19人が処刑されることになったとよ。↓>
 So at the notorious Salem witch trials in 1692, most of the evidence was given by children. Nineteen people were hanged.・・・
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-14490790
 イギリスの14世紀の黒死病を媒介したのはネズミじゃなかったって。(蚤でもなかったとよ。)そもそも、腺ペストだったのかどうかも疑問視されるようになってきたらしい。↓
 Plague of 1348-49 spread so fast in London the carriers had to be humans not black rats,・・・
 While some suggest that half the city’s population of 60,000 died, ・・・it could have been as high as two-thirds. Years later, in 1357, merchants were trying to get their tax bill cut on the grounds that a third of all property in the city was lying empty.・・・
 It was certainly the Black Death but it is by no means certain what that disease was, whether in fact it was bubonic plague.・・・
 Mortality continued to rise throughout the bitterly cold winter, when fleas could not have survived, and there is no evidence of enough rats.・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/17/black-death-rats-off-hook
 なんで最後の最後までナチスドイツの政府が機能し、市民も「平穏」な日常生活を送っていたのか。共産主義ソ連と反共の英米が決裂して戦争を始め、ドイツはついに英米側に立ってソ連と戦うことになるだろうと多くが信じていたからだってんだけど????↓
 ・・・Even on the brink of collapse, some aspects of normal life in Germany continued: Bayern Munich were still playing football matches a week before Hitler’s suicide; the Berlin Philharmonic gave a concert just four days before the war ended; and the bureaucrats were being paid until the very end.・・・
  Their remaining hope was that this unnatural coalition” – of the UK, the US and the Soviet Union – “would fall apart and that the west would finally see that the Bolsheviks were the real problem and would cease the war in the west and come in on the side of Germany. People such as Himmler had this illusion until the very end.・・・
http://www.guardian.co.uk/culture/2011/aug/17/ian-kershaw-life-writing-interview
 スタンフォード囚人実験で有名(悪名高い?)ズィムバルド(Zimbardo)教授かく語る。(本当にこの実験結果が文明を超えた普遍性を持っているのか、最近疑問を覚え始めたぜ。)↓
 ”It does tell us that human nature is not totally under the control of what we like to think of as free will, but that the majority of us can be seduced into behaving in ways totally atypical of what we believe we are,” he said
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-14564182
 TVを見ると寿命が縮むことが分かった。
 理由は運動不足になりがちなのと、ジャンクフード広告に影響されるからってんだけど???↓
 ・・・every hour of TV that participants watched after age 25 was associated with a 22-minute reduction in their life expectancy.・・・
http://healthland.time.com/2011/08/17/want-to-live-longer-try-turning-off-your-tv/
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太田述正コラム#4938(2011.8.18)
<赤露による支那侵略(その1)>
→非公開