太田述正コラム#5069(2011.10.23)
<皆さんとディスカッション(続x1358)>
<太田>(ツイッターより)
日本のロリータだのゴスロリだのの若い女性のファッションが米国の一部にも普及し始めたみたいね。
http://geekout.blogs.cnn.com/2011/10/21/lolita-fashion-finds-a-niche-in-the-u-s/?hpt=hp_mid
宗主国は、植民地や保護国の影響を受けるもんだからねえ。
「終末論・太平天国・白蓮教」シリーズへの反響がないなあ。
支那のことに、意外に日本人、関心持ってないのかもねえ。
<ΤΖΖΤ>(「たった一人の反乱」より)
<ΤΤΖΖクン(コラム#5067)、>日本のやっていた対共産主義封じ込めを英米が妨害したという認識はあるつもりなんだがねえ。
ただ、対米戦は海軍の組織の特殊性にも起因しており、それを陸軍は容認したと自分は考える。
大敗北の原因は、おもに米国との戦闘に起因するわけだから、その判断ミスは大きいと思う。
それに、中国と満州に大軍をはりつけて、南方や太平洋に軍を展開したわけで、何でも英米の愚かさのせいにしてしまう気にはなれないだけだよ。
<ΖΤΖΤ>(同上)
アメリカ、イギリスとの対外関係の中で開戦責任を日本側に求めるのは無理筋だという事を前提として、専ら微視的に国内における敗戦責任の問題について考えた場合、陸軍にも(敗戦)責任があったのではないかと言われれば、あっただろうとしか答えようが無い訳だけど、ナンセンスじゃね。
≫「ハル・ノートのようなものをつきつけられれば、モナコ公国やルクセンブルク大公国でさえ戦争に訴えただろう」というA.J.ノックの言葉
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%80%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%AB
・・パール自身の言葉ではなかったんだ!・・をもう一度噛みしめてください。≪(コラム#4777。太田)
http://blog.ohtan.net/archives/52082697.html
≫ハルノートが最終段階での仕上げだったのか、まだその先が予定されていたのかはともかく、それ以前から、(同床異夢と言ってもよかったけれど、)チャーチ ルもローズベルトも日本に対米開戦をさせようという魂胆で対日挑発を繰り返してきていたことを思い出してください(コラム#省略)。下心あるストーカーが執拗に少女に迫っていたところ、少女は、ハルノートを見て、相手がついに襲い掛かってきたと受け止めて死に物狂いの抵抗を始めた、と見りゃいいでしょう。≪(コラム#4779。太田)
http://blog.ohtan.net/archives/52082883.html
<jaguar321>(ツイッターより)
おーたさん・・・が紹介した、日韓スワップ協定は日本も得なんじゃね的な報道
「S Korea and Japan boost currency swap deal」
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/f57b8216-fa3c-11e0-b70d-00144feab49a.html##axzz1bV1yH37I <(コラム#5063)>
短絡的に韓国を切り捨てる訳にもイカンなあ。
<べじたん>
≫どうやら、狩猟採集時代ないし縄文時代は、人口比で(戦争等による)殺人が今より多かったというのが通説になりつつあるようですが、べじたんさん、そうではない、と私が書いた過去の事例を教えていただけませんか。≪(コラム#5039。太田)
きちんと書かれたことはなさそうで、見つからない感じです。
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#1336(2006.7.8)<言語と人種の歴史(その1)>
・・・英ネーチャー誌や米サイエンス誌の編集者や記者を経てニューヨークタイムスの科学記者をしているウェード(Nicholas
Wade)が、このたび上梓した’Before the Dawn : Recovering the Lost History of Our
Ancestors’は、古生物学・考古学・人類学・言語学・歴史学等の研究成果を、最新の遺伝子学の観点から批判的に総合し、人類史に新しい光を当てたとして話題になっています。
そのほんのさわりをご紹介しましょう。・・・
2 言語の歴史
(1)狩猟採集経済と言語
狩猟採集経済下の人類の三分の二は恒常的な戦争状態にあり、彼らは毎年人口の0.5%を戦争で失っていた(注2)。
(注2)この率でいくと、20世紀には20億人の(広義の)戦死者が出る計算にあるが、20世紀の戦争や共産主義・ファシズムによる殺戮を全部併せても、その10分の1程度に過ぎない。
戦争による死亡率がかくも高かったのは、敵対勢力は絶滅させるのが習いだったからだ。
未開時代には人々は平和に暮らしていたが、文明が戦争をもたらした、という観念が依然根強いが、むしろその逆が正しい(注3)。
(注3)私の日本ないし日本史観は、縄文時代の平和が弥生時代に破られた、という前提に立ち、縄文モードと弥生モードが交替する形で日本史が展開していく、というものだが、ウェードの指摘が正しいとすると、この前提たる私の認識は誤りだということになるのか、それとも、縄文人は、恒常的な戦争状態にはない三分の一に属するのか。(太田)
59,000年前に東北アフリカで誕生した人類(modern Homo sapiens)の内の150人程度が、
50,000年前に紅海南端のバブエルマンデブ海峡をわたってアフリカからユーラシア大陸に移住して行った。その時点では全員同じ言葉を使っていたのに、その後急速に言葉が分化したのは、上述したような恒常的な戦争状態の下で、よそ者を見分け排除する必要性に迫られたためだと考えられる(注4)。
(注4)文字通り恒常的な戦争状態が続いてきたニューギニアには現存する世界の6,000の言語中1,200が存在しているが、ニューギニアの言語は、四分の一ずつ、これまでの各世紀ごとに失われてきた、と考えられている。
http://blog.ohtan.net/archives/50954497.html
#3591(2009.10.18)<ウェードの本をめぐって(その3)>
http://blog.ohtan.net/archives/51425195.html
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#2266(2007.12.29)<昔の文明論コラム2篇>
・・・コラム#2253に引き続き、自衛隊専門新聞「朝雲」に1990-1993年の間、隔週74回にわたって連載された私のエッセーの中から、拙著『防衛庁再生宣言』に収録されなかった二篇(文明論的なもの)をご披露しましょう。・・・
・・・そもそも日本の社会環境は、世界でも希なほど平和で安全なものであった。
戦争は生産物に余剰の生じた農業社会の到来とともに始まったらしいが、日本は、他の先進国やかっての先進地域と比べて、一番農業社会の到来が遅かった(稲作の伝播によって弥生時代が始まったのは、わずか2300年前)ため、それまでの長期にわたる平和な狩猟採集社会の時代の記憶が残ったとの指摘がある。
しかも、農業社会が到来してから、最も短期間(数百年)の内に統一国家が形成された。爾来現在に至るまで一度も外敵の侵略を受けず、また室町期及びその前後を除いて内乱が長期間続いたこともない。かくも平和で安全であったため、日本の都市には、世界の都市にかってつきものであった城壁が設けられたことがない。
いつもこれに引き続いて、これまた特異な、全く牧畜を伴わない日本の稲作農業文化について一くさり語った上で、相手が関心がありそうなら、おもむろに筆者得意の憲法第9条や防衛政策の話に入って行くことにしている。
http://blog.ohtan.net/archives/51233702.html
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#3140(2009.3.8)<人間主義の起源>
・・・米国の人類学者にして類人猿学者であるサラ・ブラッファー・ハルディ(Sarah Blaffer Hrdy。1946年~) の“Mothers and Others: The Evolutionary Origins of Mutual Understanding,”です。
さっそく、その内容の一端をご紹介しましょう。・・・
3 感想
何せまだ出版されていない本なので、これ以上のことは分からないのですが、これは極めて画期的な本だと思います。
人間は、本来的に個人主義的な存在なのではなく、人間(じんかん)主義的な存在なのである、という指摘が、アングロサクソン世界の中で、学問的に打ち出されたからです。
イギリス人や、特に米国人の物の見方がいかに個人主義イデオロギーによってゆがめられているかは、「・・・人類学者達は、子供達が娯楽的価値を持っているという驚くべきことを発見した。テレビやインターネットがない数多の伝統的文化において、へまをやらかす赤ん坊は町の最上の見せ物なのだ。」というくだりからも明らかです。
それこそ、人間主義文明たる日本文明の申し子である皆さんは、そんなことに「驚く」アングロサクソンに「驚く」ほかない、という印象を抱かれたことでしょう。(コラム#89で引用した英国アン王女の発言も参照されたい。)
もう一つ重要なのは、ここでもまた、狩猟採集時代における人類は平和に生きていた、という推測がなされていることです。
人類は本来的に人間主義的で共感能力が高い存在であるとすれば、互いに相争ったり、いわんや殺戮し合うようなことはしないはずである、ということがその根拠になっているわけです。
これは、私がかねてから主張しているところの、縄文時代という狩猟採集社会・・ただし定住生活と部分的農業を伴っていた・・の時の縄文モードを基底としている、日本文明の平和・鎖国回帰性、という説を補強する話でもあります。
ここでも、残念でならないのは、こういう研究成果が、日本ではなく、米国人の手によって米国でなされたことです。しかも、女性の手で。
http://blog.ohtan.net/archives/51403818.html
<太田>
大変ありがとうございました。
そもそも、「どうやら、狩猟採集時代ないし縄文時代は、人口比で(戦争等による)殺人が今より多かったというのが通説になりつつあるようですが、べじたんさん、そうではない、と私が書いた過去の事例を教えていただけませんか。」という私の問題提起は、「どうやら、狩猟採集時代は、人口比で(戦争等による)殺人が今より多かったというのが通説になりつつあるようですが、べじたんさん、狩猟採集時代ないしは(定着的狩猟採集時代たる)縄文時代はそうではない、と私が書いた過去の事例を教えていただけませんか。」であるべきでした。
しかしながら、いずれにせよ、お示しいただいた私の過去コラムにおいては、私は、狩猟採集時代については、殺人が今より多かったという感じで記している一方、縄文時代については、判断を留保している、という感じで記していることから、結論的には「見つからない感じです」(べじたん)ということでよさそうですね。
それでは、その他の記事の紹介です。
カダフィの死体の最も鮮明な写真が載ってるね。
金やカネをやるからと言って命乞いしたカダフィ。↓
・・・Libya’s former “brother leader” repeatedly offered gold and money in return for his life. “・・・
”He was repeating that he would give everyone cash, that he would pay for our children to go to school. At one point someone yelled at him that instead of talking about money, he should pray, like a good Muslim, and entrust his soul to God before dying. But he continued to say he was ready to give us money, lots of money and gold.”・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/22/libya-gaddafi-dead-body-treatment
<最期の最期まで独裁者然としていて、上から目線で「命乞い」をしたKYなカダフィ。↓>
・・・”When he came out from the hole, he started saying: ‘What’s up, guys, please wait. What’s the problem? I’m with you. You’re not allowed to do that. Hey!’ He still thinks he is the president or the dictator.”・・・
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-15419106
ドイツの諜報機関(だけ?)は、カダフィの居所を把握してたらしいね。
諜報機関すらない日本とはエライ違いだ。↓
The decision to opt out of NATO efforts to aid the Libyan revolution alienated Germany from it Western allies. But・・・Germany’s foreign intelligence service, the BND, helped root out the location of deposed Libyan dictator Moammar Gadhafi last Thursday before his capture・・・.・・・
Indeed, the fugitive former leader’s exact whereabouts in his hometown of Sirte had been known for weeks by the BND ahead of his capture and subsequent death on Oct. 20.・・・
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,793376,00.html
だけど、それ↑だけじゃ、リビアへの介入に「反対」した前科を赦してはもらえそうもないドイツ。
それに加えて、ユーロ危機への対処に真剣に取り組まないドイツに対する米英の批判のボルテージは高まる一方だ。↓
The US is becoming increasingly impatient with Europe’s seeming inability to solve the ongoing euro crisis. Many in the United States think they know who is to blame: Germany. ・・・
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,793289,00.html
<英国銀行の頭取は、そもそもユーロ危機の根本原因の一つはドイツの輸出志向で貯蓄志向だとドイツを非難している。↓>
Germans need to stop saving and start spending, or the rolling financial crisis that kicked off in 2008 will only get worse.
That, in a nutshell, was Bank of England Governor Mervyn King’s message in a speech he made earlier this week,・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204485304576643093490179766.html
ピンカーの新著に対する英国人の投書集から2例を紹介しよう。↓
<時間当たり殺人数を問題にすべきだ。そういう発想に立てば、ピンカーが日本への原爆投下を取り上げないのはおかしいという投書。↓>
・・・For Pinker, the fall of Rome, across two centuries, is rated the fifth most violent with 8 million actual killings. Yet on 6 August 1945 in Japan an estimated 50,000 people were killed in just one day with another 50,000 dying in the days that followed. I would suggest that it is more statistically sound to measure the rate of violence against time than by adjusted and protracted strife over decades.・・・
<英国統治下のインドの累次の大飢饉は、不作為の罪であり、ホロコースト等の作為の罪には比肩し得ないという投書。↓>
To refer to Britain’s serious negligence in response to famine as an atrocity is a misuse of language.・・・
http://www.guardian.co.uk/theobserver/2011/oct/23/observer-big-issue-steven-pinker
昨日に引き続き、非人間主義社会の実態をご紹介しよう。↓
<米国で黒人がむっちゃくちゃに投獄されている。↓>
・・・An estimated 50 percent of all extended black and Hispanic families in the United States have had a member incarcerated in the past 35 years. For the poorest in both groups, the figure approaches 100 percent. Drucker points out that black males between 21 and 44 are 40 times more likely to be incarcerated for drug offenses than white males of the same age group. In light of numerous studies showing that people of all races are about equally likely to use and sell illegal drugs, this is a telling statistic, to say the least.・・・
・・・an epidemic that first broke out as slavery and later as Jim Crow, and now has mutated, resurfacing in a new form. ・・・
http://www.washingtonpost.com/entertainment/books/review-a-plague-of-prisons-and-the-collapse-of-american-criminal-justice/2011/09/06/gIQAmMTUkL_print.html
<依然として黒人の子供の40%は、ほとんど黒人だけの学校に通っている。↓>
・・・40 percent of African American kids still attended schools that were almost completely segregated. ・・・
http://www.washingtonpost.com/entertainment/books/david-margolicks-elizabeth-and-hazel-two-women-of-little-rock/2011/09/19/gIQArqeN4L_print.html
<イルカは高知能であるが故に特別に保護されなければならない、という恐るべき偏見を吐き続けている米国人。↓>
・・・“Dolphins are among the smartest creatures on the planet — fully conscious, creative, and highly communicative, with an intelligence rare in nature,” writes Diana Reiss in “The Dolphin in the Mirror.” Now Director of Dolphin Research at Baltimore’s National Aquarium・・・
Reiss, who served as an adviser on the Oscar-winning 2009 film “The Cove,” which documented bloody dolphin hunts in Tajii, Japan, writes passionately about the need to protect these sentient creatures who she believes are capable of empathy. ・・・
http://www.washingtonpost.com/entertainment/books/the-dolphin-in-the-mirror-exploring-dolphin-minds-and-saving-dolphin-lives-by-diana-reiss/2011/10/07/gIQAPhrO4L_print.html
『1Q84』の書評が今度はワシントンポストに出たよ。
これ以上はない絶賛だな。↓
・・・Once you start reading “1Q84,” you won’t want to do much else until you’ve finished it.・・・
http://www.washingtonpost.com/entertainment/books/michael-dirda-reviews-1q84-by-haruki-murakami/2011/10/14/gIQAyyzwyL_print.html
アルコール摂取は、少量ずつなら毎日でもいいが、大量に摂取する人は、時々休肝日を設けないと致命的だってさ。ジョーシキ!↓
・・・If someone drinks one drink a day, one small drink every day of their life, they’re most unlikely to run into harm. But if you are going out and having a lot to drink then you should perhaps rest your body.・・・
・・・safe limits for drinking alcohol by older people should be drastically cut.・・・
http://www.bbc.co.uk/news/health-15415713
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太田述正コラム#5070(2011.10.23)
<中野雅至『天下りの研究』を読む(その2)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x1358)
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