太田述正コラム#5056(2011.10.16)
<2011.10.15オフ会次第(その2)>(2012.1.7公開)
3 やりとりから(oは私)
o:このところ、読者がありがたいことに私に提供してくれる資料を読んでコラムにすることが多いが、時々、自分はお仕着せのエサをあてがわれるブロイラーみたいだなと思ったりもする。
a:外交安保に携わることの政治家にとっての重要性をどう第三者に教えたらよいだろうか。
o:「外交安保に携わるということは、日々、人を殺す決断を迫られるということだ。
その一番端的な例が、軍事力の行使だ。その場合、相手にもこちらにも、しかも軍人にも民間人にも死者が出るのが通常だ。それぞれ、どれくらいの死者を受忍するかを政治家は考えることを強いられるわけだ。鍛えられるのは当然だろう。」(コラム#5010)と説明して欲しい。
なお、人間、実のところは軍事力の行使(≒戦争)が大好きだ(コラム#省略)、ということも小さい声で言うとよいと思う。
b:佐藤優が何人かと一緒に話をした時にその話を聴いたところ、彼、東京生まれだが、「おもろそうし」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%82%82%E3%82%8D%E3%81%95%E3%81%86%E3%81%97
や神皇正統記を読んだと言っていた。
どっちも古文で書かれているが、彼が本当に読んだのか疑っている。
自分は沖縄出身だが、「おもろそうし」は、沖縄の人間でも読める人はほとんどいない代物だ。
o:しかし、あれだけ活躍しているのだから、大変優秀な人物であることは間違いない。
b:元ウズベキスタン大使で元防衛大教授の孫崎享の話も聴いたことがあるが、日本は米国の属国であるとしながら、日本が集団的自衛権を行使することになると、自衛隊が米国の戦略に組み込まれることになるので好ましくないと言っていた。
o:外務省出身者で評論家として「活躍」している者というと、「ノンキャリ」だった佐藤が突出していて、キャリアじゃ、孫崎や天木直人ぐらいだというのだから、一頃までの岡崎久彦さん等活躍を思うと、外務省の「凋落」ぶりはひどいもんだ。
c:太田さんは以前は英国の外交官はみんな優秀だと書いていたと思うが、最近は英国の外交官にも出来不出来があると変わってきている。どうして評価を変えたのか。
o:おっしゃる通りだとすると、単に、昔の私は無知でした、ということだろう。
d:どうして戦前の日本の外交官はダメだったのか。
o:どの国の外交官でも、一般に、堕落しない方が不思議だとも言える。
何せ、高給をもらっていい暮らしをさせてもらって、パーティ漬けの毎日を送るんだからね。(もちろん、パーティ漬け等には合理的な理由があるわけだが・・。)
しかも、在留自国民の上にふんぞりかえって君臨するってんだから・・。
日本の外交官の場合、外交官試験を通った連中が外交官になるようになってから、てきめんにダメになったような感じがする。
一つには、キャリアに東大法出身者・・私の言うところの「短大」卒者。戦後はこの「短大」すら卒業せずに中退して外務省に入ってくる奴がもてはやされた。勉強をしなければしないほど評価されたっちゅうんだからねえ・・が多かったことと、それに加えて、入省してからの人事・教育がまずかったんだと思う。
ちなみに、明治期の日本の外交官がワリと優秀だったのは、江戸時代は、鎖国していたとは言うものの、幕府と各藩の間で諜報活動も外交活動も活発に行われており、そのノウハウが維新後活かせたからだと考える。
b:戦後は、諜報活動を完全に止めてしまているわけだから、今後この活動を再開しようと思っても、そのベースになるものが皆無だから不可能なのでは?
o:必要性さえ生ずれば、ゼロからであっても、活動再開後、試行錯誤しながら、次第に何とかなっていくだろうと希望的観測をしている。
e:英国の官僚は優秀なような気がするが、どうしてなのか。
o:インド帝国官僚について書いたことがある(コラム#省略)が、公のために自分を犠牲にして奉仕するのが彼らの身上であり、同じことが本国の官僚についても言えるはずだ。
f:太田さんは、パブリックスクールでは軍事が必修になっていると書いているが、やはりそのあたりがカギのような気がする。
c:自分は、浪人中に太田コラムと出会い、大学で歴史学を専攻することにし、現在に至っている。
o:そういう形でも、私は、色々な人に影響を与えているわけか。
g:この前、たかじんに出演したが、別のTV局からの出演依頼とか、講演依頼が来るのでは?
o:来ないだろう。
2007年にたかじんに2回出演した時は、防衛庁不祥事問題がらみで、引き続き、別のいくつかのTV局から出演依頼は来たけど、講演の話は皆無だった。
講演ともなると、防衛庁不祥事じゃなくて、外交・安保・防衛問題の話ということになるのだろうが、依然として、日本では、本籍防衛省(防衛庁)の人間なんかに需要はほとんどないのだ。
この関連の話をしておこう。
スタンフォード大への留学から帰ってしばらく経った頃、防衛庁勤務のむなしさに苛まれて、役人を辞めることを考えた時期があった。
そこで、少しあたってみたところ、さすがに給料こそちょっぴりはあがるが、防衛庁での仕事に比べてさえ、面白くなさそうな仕事の話しか回って来なかったので、今畜生と思って、勤めを続けることにした。
その時に某ヘッドハンターいわく、「防衛庁勤務という経歴さえなければ、もうちょっといい話をご紹介できるのだが」と。
防衛庁勤務歴って、再就職にはプラマイゼロどころかマイナスになることを思い知らされたわけだ。
だから、心の準備はしていたつもりだったのに、それから20年くらい経って、防衛庁を辞め、選挙に出ることにした時に、私は、改めて自分の甘さに愕然とさせられることになる。
防衛庁批判本まで出したというのに、主要紙が全く私についてもこの本についても書かないんだもんね。
産経新聞に至っては、防衛官僚が選挙に出ることになったというベタ記事すら載せず、私を完全に黙殺した。
私が外務省キャリアであったとならば、そんなことはありえなかったろう。
いわんや、経産省(通産省)キャリアであったとすれば、現在の古賀君のケースでも明らかなように、大騒ぎになったはずだ。
h:太田さんはどういう毎日を送っているのか。
o:一日中パソコンの前にすわっている。後は、往復10分ちょっとのスーパーに買い物にでかけるだけだ。
世界の動きを追いつつ、並行してじっくりした話にも取り組んでると、そうならざるをえない。
世界の動きだけを追っかけている国際問題の専門家達の中にさえ、休むことをいやがる者がいることを思い出して欲しい(コラム#4765)。(注)
(注)「日本のある政治家が<ビクター・>ゾルザに日本人の訓練を依頼したら、「公務員は駄目」と斷られた。自國の公式行事に參加するため、屡(ママ)休むからだと。共産國を觀察するには、克明に新聞を讀み續けねばならぬ。一日でも休むと穴が開く。それでは情報通になれない、と。」
http://www.jas21.com/athenaeum/athenaeum187.htm
いわんや、それに加えて、「じっくりした話」にも取り組んでいる私においてをや。
こういう生活を一旦始めてしまうと、毎日ネットを通じて新たな動きや発見が飛び込んでくるので面白くって仕方がない。
だから、(それ自体がコラムを書く材料として使えるケースはともかくとして、)パソコンの前を離れることは、大学で教えること等を含め、全くやりたくなくなったな。
(完)
2011.10.15オフ会次第(その2)
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