太田述正コラム#5247(2012.1.20)
<皆さんとディスカッション(続x1439)>
<太田>(ツイッターより)
 にわかに信じがたいだろうが、かつてのスイスは貧しく、1950年代まで、貧困家庭から当局が4歳くらいになると子供を取り上げ、遠隔地の農家に預けるという政策が行われており、これらの子供達は、粗末な部屋と食事を与えられ、こき使われたんだとさ。
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-16620597
 人民網の定番だ。
 支那の80年代の「爽やかな美しさを持つ美女」達が紹介されている。
 これが美女?なんてのも含まれてるね。
http://j.people.com.cn/94689/94691/7709993.html
<TK>
 一部の方の関心しか呼ばない話題ですが、軍事衛星システムの運用要求は、それがそのまま設計ドライバーとなって、システムに体現されるため、嘘のない世界が広がります。
 一般的な質問というか、おぼろげに感じたことを言語化するならば:
(1) イギリスはアメリカと一心同体であり、通貨も情報も、欧州諸国と共有するつもりはない。(核戦略の情報ネットワークは自前でもたずアメリカのものを共同利用)
(2) フランスは、小規模ながら自前の核戦略と旧植民地支配が運用要求。
(3) イタリアはなぜ戦勝国なのだろう。戦争に弱いわりに、重要な立場にあるように感じるのはなぜだろう。イタリアはなぜ核戦争時に使用できる通信システムをもっているのだろうか。
(4) スペインはいまだに南米を植民地経営している。
(5) ドイツには、運用要求がない。敗戦国だからか。衛星もNATOのための思いやりで作ったのではないか。そもそも軍隊の指揮権はどこにあるのだろうか。
 私がこのように感じたことが、はたして正しいのか。自分自身のなかで、思考結果の整理をつけたいと思っているのです。
 明日お目にかかることを楽しみにしております。
 ・・・
 <さしあたりの質問ですが、>ドイツの軍隊は、NATO軍の指揮下にあるのですか。
 ドイツが2年前に軍事通信衛星を2機打ち上げましたが、これは自国の安全保障ではなく、NATOのための思いやりだったのでしょうか。
 もし何かお気づきでしたら、どうか教えてください。・・・
<太田>
 最後の一番目のご質問に対するお答えは、一般論としてはイエスです。
 NATO加盟国の軍隊は、基本的にNATO隷下にあるからです。
 加盟国(含む、北回帰線以北所在の加盟国軍隊及びフランスの若干の属領)が攻撃された時、理論上は、加盟国は軍事的対応をする義務はありませんが、事実上義務があると考えられています。
http://en.wikipedia.org/wiki/NATO#Military_structures
 ただし、例えばドイツの陸軍について言えば、以下のように、(少なくとも平時においては)NATO隷下にない部隊があります。
 しかし、この部隊もNATO軍を支援するのが役割です。
 The land forces of the Bundeswehr were first, the German Army, and secondly, the Territorial Army. The army was firmly situated within the NATO command structure. Later in 1957, the “Office for territorial defense” was established as the highest Territorial Army authority. The Territorial Defence was under the command directly of the Federal Ministry of Defence. In a narrower sense, the territorial defence was a separate organisation equal to the army, navy and air force. The units of the Territorial Defence was under national command and were not integrated into the NATO command structure. The main function of the Territorial Army was maintaining the operational freedom of NATO forces through providing rear area defence against saboteurs, enemy special forces, and the like.
http://en.wikipedia.org/wiki/German_Army
 ドイツ以外のNATO加盟国についても、同様の部隊の仕分けがあるのではないでしょうか。
 次に二番目のご質問ですが、ユーザーはドイツ軍とドイツ政府の他の部局の二つであり、NATO軍事規格の通信も行いますが、それ以外の通信も行います。
http://www.defencetalk.com/military-communication-satellite-for-germany-launched-22145/
 従って、この通信衛星そのものが平時からNATOの軍事機構に組み込まれている、とは言えないようですね。
 なお、「イタリア<が>・・・核戦争時に使用できる通信システムをもっている」ということは知りませんでした。
 インターネット上の典拠をご存じであれば、お教えください。
それでは、その他の記事の紹介です。
 1944年の春にイタリアを占領していたドイツの部隊が無辜のイタリアの一般住民335人を虐殺した。↓
 ・・・In the spring of 1944, Nazi troops massacred hundreds of Italian civilians in the Ardeatine Caves near Rome. ・・・a total of 335 men, the youngest of whom was only 15.・・・
 <共産主義パルチザンが、その前日にローマのドイツ警察部隊を襲撃した報復だった。↓>
 The German occupiers wanted to avenge an attack that communist partisans had carried out a day earlier on a German police unit in Rome’s Via Rasella. The victims of this retaliatory act were chosen at random.・・・None of them had been involved in the attack.・・・
 <処刑者の多くが大酒を飲みながら銃で撃ったので、すぐ死ねない者もいた。最後はうず高く積みあがった死体を爆破した。↓>
 Even more horrific, many of the executioners drank heavily during the operation, which made their shooting increasingly erratic. Several victims survived the initial shots. Some suffocated under the weight of the dead lying on top of them. Then, the SS detonated explosives in the caves.・・・
 This act of violence went down in the history of war crimes as the Fosse Ardeatine massacre. After the war, it became a symbol of German atrocities in Italy during the Third Reich. Today, a large memorial commemorates the event, and leading Italian politicians lay wreaths there each year.
 <しかし、今日に至るまで、その下手人の大部分は処罰されていない。↓>
 But even if it continues to be publicly commemorated to this day, neither German nor Italian officials had any interest in bringing its perpetrators to justice. Indeed, the only person to be punished for it was Herbert Kappler, the SS officer in charge of German police and security services in Rome during the war. He was sentenced to life in prison in 1948. ・・・
 <イタリアは、先の大戦においてドイツと途中までつるんでいて、バルカン地方ではイタリア自身が一般住民虐殺をやらかしていたし、ここでは引用しなかったが、共産主義パルチザンだって処罰しなければならなくなるのを避けたかったし、戦後の良好な独伊関係にひびを入れたっくなったから。↓>
 After all, Italy had sided with Nazi Germany until 1943 and occupied parts of the Balkans, where hundreds of thousands of people fell victim to the Italians’ reign of violence.・・・
http://www.spiegel.de/international/germany/0,1518,809537,00.html
<FUKO:翻訳>
 太田述正コラム#5221・・・より
 日本の失われた10年というのは神話だってさ。
 英語できる人は絶対に全文を読んで損をしないコラムだよ。↓
DESPITE some small signs of optimism about the United States economy, unemployment is still high, and the country seems stalled.
Time and again, Americans are told to look to Japan as a warning of what the country might become if the right path is not followed, although there is intense disagreement about what that path might be. Here, for instance, is how the CNN
analyst David Gergen has described Japan: “It’s now a very demoralized country and it has really been set back.”
But that presentation of Japan is a myth. By many measures, the Japanese economy has done very well during the so-called lost decades, which started with a stock market crash in January 1990. By some of the most important measures, it has done a lot better than the United States.
Japan has succeeded in delivering an increasingly affluent lifestyle to its people despite the financial crash. In the fullness of time, it is likely that this era will be viewed as an outstanding success story.
How can the reality and the image be so different?
And can the United States learn from Japan’s experience?
It is true that Japanese housing prices have never returned to the ludicrous highs they briefly touched in the wild final stage of the boom.
Neither has the Tokyo stock market.
But the strength of Japan’s economy and its people is evident in many ways. There are a number of facts and figures that don’t quite square with Japan’s image as the laughingstock of the business pages:
 米国の経済について、いくつかの小さな楽観できる兆候があるにもかかわらず、失業率はいまだ高く、米国は行き詰っているようだ。
 もしも正しい道を伴わなければ国がどのようになるかということについての戒めとして日本を見るよう、米国人は何度も言われてきた。しかしながらその道がどのようなものだったかについては激しい意見の相違がある。例えば、CNNのアナリストDavid Gergen がどのように日本を評しているかというと、「いまや非常にやる気のない国であり、文字通り停滞を続けてきた」とのことである。
 しかし日本に対するその表現は、神話である。多くの基準から見ると、日本の経済は1990年1月の株式市場の暴落に始まる、いわゆる「失われた10年」の間、とても上手くいっていた。いくつかの最も重要な基準によれば、米国よりもはるかに上手くいっていたのだ。
 日本は、その財政的破綻にもかかわらず、自国民にますます裕福な生活様式をもたらすことに成功してきた。
 時満ちて、この時代は傑出したサクセス・ストーリーとして見られることになるだろう。
 どうして現実と印象がこうも違っているのだろうか。そして、米国は日本の経験から学ぶことができるだろうか。
 日本の住宅価格が、そのにわか好景気の手に負えない最終段階において少しの間到達した、こっけいとも言える高価格に決して戻らなかったのは事実である。東京株式市場についても同様である。
 しかし日本経済と日本人の強さは多くの点で明らかである。
 ビジネスの笑いものとしての日本のイメージとあまり一致しない事実と数字が数多くある。
http://www.nytimes.com/2012/01/08/opinion/sunday/the-true-story-of-japans-economic-success.html?_r=1&ref=opinion&pagewanted=all
 (以下具体的な数字が述べられていきます。続きはまたお送りします。)
<太田>
 2か所やや問題があったところ、あなたの翻訳能力が高いだけに、やや厳しい評価をさせてもらいました。
 22(行)マイナス2か所x5で、12ポイントですね。
 続きに期待しています。
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太田述正コラム#5248(2012.1.20)
<「第二の私小説と日本の闇」資料集(その1)>
→永久非公開
太田述正コラム#5249(2012.1.20)
<イギリス史とロシア史が共鳴した瞬間(その1)>
→非公開