太田述正コラム#0068-2(2002.10.19)
<印パの緊張緩和>

 10月16日にインドが、パキスタンとの国境に終結させていた75万人に及び陸軍兵力の一部を撤退させると発表したところ、その翌日にパキスタンもこのインドの動きに対応する措置をとると発表しました。
 両国間の緊張が今年5月に最高潮に達した後、インドは海軍をアラビア海の前線から退け、しばらくたってから、パキスタンの航空機のインド領空飛行禁止も解除していましたが、今回、ようやく本格的な緊張緩和への動きが出てきたわけです。(http://newssearch.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/2335599.stm。10月18日ア
クセス)
 双方とも、最前線の兵士の志気が維持できなくなってきており、また、経費の負担にも耐えられなくなってきていたのですが、直接のきっかけになったのは、インドではカシミール州議会の選挙が行われ、また、パキスタンでは総選挙が行われ、それぞれ、印パの政権にとってまあまあ満足の行く結果に終わったことでしょう(http://newssearch.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/2336963.stm。10月18日アクセス)。(前者では、カシミール自治派が躍進し、過激派の選挙ボイコット戦術の限界が露呈しましたし、後者では、ムシャラフ大統領の与党が過半数はとれませんでしたが第一党となり、またイスラム諸派が予想外に健闘したとは言っても、イスラム法の厳格な適用など考えていない旨の声明を選挙後に出したこと等から、必ずしも過激派ではないことが明らかになったからです(http://newssearch.bbc.co.uk/2/hi/business/2334535.stm。10月18日アクセス)。)
 
 もっとも、本コラムを前から読んでおられる読者は、私が今年の初め(コラム#9参照)の時点で、印パが本気で事を構える気などないと断言したことを覚えておられると思います。
 つまりは、今回の動きは、それぞれの国内消費向けのポーズだけの大動員を、事実上両国が示し合わせて部分的に解除する時期がようやくやってきたということに過ぎません。
 しかし、大動員は、核保有国たる両国の間での偶発戦争勃発の危険性を伴っていただけに、これがいいニュースであることは確かです。