太田述正コラム#5409(2012.4.9)
<皆さんとディスカッション(続x1517)>
<太田>(ツイッターより)
 タイタニック号が沈んでいく様子が図解されている。
 また、海底に横たわる同号の残骸「ツアー」の映像もいくつか見られるよ。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-17511820
 桜を見飽きたら、ロサンゼルスタイムスの有名人写真集をどうぞ。
http://www.latimes.com/entertainment/news/la-ca-2012-celebrity_pictures,0,3878557.photogallery?track=ud
<Βββββ>(「たった一人の反乱」より)
 「自力で生活できない人を政府が助ける必要はない」が約4割
 1つは、日本では「自力で生活できない人を政府が助けてあげる必要はない」と考える人が世界中で最も多くなっている点である(出典:「What the World Thinks in 2007」The Pew Global Attitudes Project)。
 「助けてあげる必要はない」と答えた人の割合は日本が38%で、世界中で断トツである。
 第2位はアメリカで28%。アメリカは毎年多数の移民が流入する多民族、多文化の国家であり、自由と自己責任の原則を社会運営の基軸に置いている。この比率が高くなるのは自然なことだ。
 そのアメリカよりも、日本は10%も高いのである。
 日米以外の国におけるこの値は、どこも8%~10%くらいである。イギリスでもフランスでもドイツでも、中国でもインドでもブラジルでも同様で、洋の東西、南北を問わない。
 経済水準が高かろうが低かろうが、文化や宗教や政治体制がいかようであろうが、大きな差はない。
 つまり“人”が社会を営む中で、自分の力だけでは生活することすらできない人を見捨てるべきではない、助けてあげなければならないと感じる人が9割くらいいるのが“人間社会の相場”なのである。
 にもかかわらず日本では、助けてあげる必要はないと判断する人の割合が約4割にも達している。
 日本は、“人の心”か“社会の仕組み”かのどちらかが明らかに健全/正常ではないと言わざるを得ない。
 この場合、政治の制度や仕組みと比べて人の心はずっと普遍的であるはずなので、問題は日本の政治の仕組みや政策にあると考えるのが妥当である。
 言い換えるなら、人の心をここまで荒んだものにしてしまうほどに、現行の日本の政策や制度は正しくないということになる。」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111114/223822/?rt=nocnt
 戦後日本はむしろ人間主義が崩壊しつつあるんじゃないかと勘ぐりたくなる。
<太田>
 たまたま気が付いたけど、人間主義に近い言葉に、間接的互恵的利他主義(indirect reciprocal altruism)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%92%E6%81%B5%E7%9A%84%E5%88%A9%E4%BB%96%E4%B8%BB%E7%BE%A9
ってのがあるんだね。
 さて、統計ってのは、社会的背景の下で解釈されなければならない。
 「所得が生活保護支給基準以下となるケースの内、実際に受給している割合を示す「捕捉率」は、イギリスでは87%、ドイツは85-90%なのに対し、日本は約10-20%となっている」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E6%B4%BB%E4%BF%9D%E8%AD%B7
が示しているのは、日本では、助けてもらってしかるべき人々の方も、助けてもらいたくない、助けてもらう必要はない、と考えている人が大部分だってことだ。
 となると、これらの統計的事実をもって「日本は、“人の心”か“社会の仕組み”かのどちらかが明らかに健全/正常ではないと言わざるを得ない」と断じる上記コラムニストは早とちりだってことになりそうだ。
 ボクの仮説だけど、日本は人間主義社会だから、助けてもらいたい人、助けてもらう必要のある人の大部分は、現に他人達から助けてもらっているからこそ、それを超えて、政府に助けてもらいたい人、助けてもらう必要がある人は少ないってことであり、一般の人々もこのことを何となくだけど分かってる、ってことなんじゃないかな。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 米国はシリアに軍事介入する時が近づいてるってさ。↓
 A ticking clock on Syria
 Intervention is likely, and the United States won’t wait as long as it did in Bosnia.・・・
 In Bosnia, it took more than three years for the United States to overcome its reservations and resort to military force. But that was a generation ago, when the idea of humanitarian intervention in a civil war was still novel.
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-mcmanus-column-syria-20120408,0,2841124,print.column
 パキスタンの大統領が、イスラム聖者の墓の参拝を名目にインドを訪問し、インドの首相と昼食を共にした。↓
 Pakistani president visits Indian shrine after talks with PM・・・
 <その墓の主はクリスティ。なるほど、考え抜いた名目だったなと思うなあ。↓>
  Zardari spent an hour at the tomb of Khwaja Moinuddin Chishti<(注)>, a 12th-century saint, in the desert city of Ajmer, 250 miles south-east of Delhi. ・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2012/apr/08/pakistan-president-visits-india
 (注)1141~1230年。現在のアフガニスタン生まれのスーフィ(Sufi=イスラム神秘主義者)。ムハンマドの子孫。非イスラム教徒への宗教的寛容を説いた。
http://en.wikipedia.org/wiki/Moinuddin_Chishti
 オバマ政権は、内政において、(日本等を見倣って)産業政策の公然たる実施、しかも工業での初実施、へと米国の政策の歴史的転換を図りつつあるってさ。
 没落しつつある米国の尻に火がついた証拠ってやつだ。
 だけど、思い立つのが遅すぎたし、思い立ったとしても、実行などできないだろうけどね。↓
 America reassembles industrial policy・・・
 Could industrial policy be creeping back into fashion?
 The correct answer is that it never went out of favour, even if the term itself became taboo.・・・
 Washington never stopped promoting favoured sectors. Manufacturing was simply not among them.・・・
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/6cbeb150-7da4-11e1-bfa5-00144feab49a.html#axzz1rV790hfU
 オバマ政権は、対外政策において、領域防衛へと米国の政策の歴史的転換を図りつつあるってさ。
 これもまた、没落しつつある米国の尻に火がついた証拠ってやつだ。
 アジアへの米軍の前方展開の強化なんて早く諦めな。↓
 <史上初の米加墨三国国防相会談が開かれた。↓>
 ・・・ defense ministers of Canada, Mexico and the US held their first ever trilateral meeting.・・・about 10 days ago in Ottawa, Canada・・・
 <テロ、密輸、麻薬、女性密輸対処がメインだって。↓>
 ・・・stopping the infiltration of terrorists, smugglers, illicit drug runners and people traffickers.・・・
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2012/04/08/2003529782
 英国に自ら操縦かんを握って「亡命」した、ナチス副総統のヘスと接見していた英国の精神病医のメモが発表された。
 欧州人がどんなにイギリス人にコンプレックスを抱いていて、イギリス人がどんなに欧州人を見下しているのかが改めてよーく分かるぞな。↓
 ・・・<British> army psychiatrist・・・Dr Henry Dicks <visited the detained>・・・Germany’s Deputy Fuhrer, Rudolf Hess・・・”The first impression is undoubtedly of a schizoid psychopath,” Dicks wrote in the notebook, which has only recently been made public by his family.・・・
 <ヘスやヒットラーがどんなにイギリスを尊敬し、イギリスに恐れを抱いていたかにびっくりしたって。↓>
 As their talks progressed, Dicks was struck by Hess and Hitler’s admiration of the English, despite Germany having the upper hand in the war at that time.
“I believe they are trying to frighten us but are themselves frightened of us,” he wrote.
 <連中は、イギリス人を羨ましがり、生活様式、衣類、何が正しいかといったことを猿真似している。連中は、密かにイギリス人を愛しているのだ、と。イギリス人は、手の届かない、より高等な人種であって、連中は一生懸命イギリス人のようになろうとしているのだ、と。↓>
 ”They have always envied us and aped us in their life forms, dress, correctness etc… They are at least, in part, ambivalently in love with us. We are that elusively superior race they so frantically want to be themselves.”
 <だからこそ、ヘスは平和を求めてイギリスにやってきたのだ、とも。↓>
 Dicks thought an affection for the British may have been why Hess chose to make his solo flight to Scotland on 10 May 1941, in what he said was a peace mission.
 <ヒットラーは、ヘスは頭がおかしくなったと述べた。(ここでは引用しなかったが、この精神病医は、ヘスが統合識失調症だと診断を下している。)↓>
 Hitler said he had no knowledge of what Hess was trying to do and the Nazi Party soon declared him insane. ・・・
 <ヘスが求め続けるので、英国政府高官を彼に会わせた。↓>
 Following his arrival in Scotland, Hess was furious he’d been kept as a prisoner instead of being treated as a peace envoy. He had demanded to meet a senior British official and eventually the government decided to play along, sending the Lord Chancellor Sir John Simon on 10 June 1941.
 <ヘスは、この高官に会うまえには(恐らくは劣等感に襲われて)不安でたまらなくなり、会った後には(予想通り)精神が更に不安定になり、自殺を図った。↓>
 Dicks recorded Hess’s intense anxiety prior to the meeting and attributed it to his unconscious feelings of inferiority around the British. After Lord Simon had rejected Hess’s proposals, Dicks worried his patient would spiral out of control. His fears proved correct.
 Days later Hess threw himself over the banister(階段の手すり) of the staircase in the building where he was being held. He demanded to see Dicks in the early hours of the morning then rushed towards him, jumping over the banisters and breaking his leg, according to the psychiatrist.・・・
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-17588632
<太田>
 昨日のディスカッション、あわててアップしたのでミスプリ的な間違いが多数あったけど、ブログを直してあります。
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太田述正コラム#5410(2012.4.9)
<日本・法王庁「同盟」(その4)>
→非公開