太田述正コラム#5324(2012.2.26)
<大英帝国再論(その12)>(2012.6.12公開)
<追記>
 「・・・オマール・ハッサン・アル=バシール<スーダン>大統領は、シリアのバシャール・アル=アサドより恐らく300倍も多くの人々の殺戮を主管してきた。
 しかし、バシールがアサドほど詮索されない理由の一部は、彼の殺人行為の多くがカメラのない辺鄙な地域で行われているからだ。・・・
 ・・・昨年6月、スーダン政府は、ヌバ(Nuba)<(注47)(前出)>の叛乱者達を支持している人々を追いかけることによって反乱を破砕すべく、悪辣な攻勢をかけた。・・・
 政府は、叛乱者達が保持している諸地域への食糧の搬入を遮断している<ため、人々は飢餓に直面している。>・・・」
http://www.nytimes.com/2012/02/26/opinion/sunday/kristof-battling-sudans-bombs-with-videos.html?_r=1&ref=opinion#h
(2月26日アクセス)
 (注47)スーダンの南コードファン(Kordofan)州内の面積48,000平方Kmのヌバ山地地区のこと。ヌバ人(Nuba peoples)という黒人系の雑多な人々が住んでいる。18世紀には王国があったがマーディによって滅ぼされ、英国がマーディ勢力を倒した後、英国の属国となった。その後、アラブ系のバッガーラ(Baggara Arabs)がこの地にやってきて両者間で紛争を引き起こすことになり、現在に至っている。
http://en.wikipedia.org/wiki/Nuba_Mountains
http://en.wikipedia.org/wiki/Nuba_peoples
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 (4)イラク
 「・・・<イラク各地で>1月5日に起こった、シーア派イスラム教徒を標的にした一連の爆発は、少なくとも71人の人々を殺害したが、それは、この国をすんでのところで分解させるところだった地域的暴力に再点火させるためにイラクの政治家達の間の様々な緊張関係を活用しようとする歴史を持つ、スンニ派アラブ人叛乱者達によるものであることの紛れ無き徴表を帯びていた。
 ・・・<それは、その>3週間弱前に米軍がイラクを去ってからの主要な攻撃の波としては2度目のものだ<った>。・・・」
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-iraq-bombings-20120106,0,792291.story
(2月23日アクセス。以下同じ)
 「<2月23日に>イラク各地で<三回目の>爆発と射撃の波が起こり、少なくとも55人の人々が殺害され何百人もが負傷した。・・・
 イラクのアルカーイダは、以前の12月と1月の攻撃の波は自分達が実行したと語った。
 この爆発群は、既に延期がなされていたが、バグダッドで予定されていたアラブ連盟首脳会議の数週間前に起こったものだ。・・・」
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-17136646
(2月25日アクセス)
 「・・・ジョージ・W・ブッシュ政権との間でなされた合意に基づき、最後の米軍部隊が12月18日にイラクを去った。・・・
 [その翌日、]政府の役人達を標的にした殺人班[にカネを出し、]使っていたとの嫌疑の下、この国のスンニ派の副大統領のタリク・ハシミ(Tariq Hashimi)に対して逮捕状が発出された。
 ハシミは、この嫌疑は政治的動機に基づいていると語っている。
 彼は、半独立のクルド地域に身を潜めている。
 そこにおれば、バグダッドの保安諸部隊は彼に手は出せない。
 <イラク首相の>マリキ(Maliki)はシーア派だが、彼を独裁者に準えたところの、副首相であるスンニ派のサレー・ムトラク(Saleh Mutlak)に対する不信任投票も呼び掛けた。
 ハシミとムトラクが所属している政治ブロックのイラキーヤ(Iraqiya)は、シーア派による権力固めとスンニ派の力の減殺とこのブロックが描写しているところのものへの抗議として、議会と内閣における全ての会議をボイコットしてきた。・・・」
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-iraq-bombings-20120106,0,792291.story (同上)
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-17136646 (ただし[]内)
 「・・・米軍のイラク撤退と時期を同じくして進行したシリア内紛は、イラク危機の発生とそのタイミングの主要原因である、と若干の分析者達は見ている。
 イラクにおける体制変革が多数派のシーア派を権力の座に就けたように、ダマスカスのバシャール・アル=アサド政府の崩壊は論理必然的にシリアの多数派たるスンニ派の権力掌握を意味することになろう。
 イラクの、シリアとの長い国境に隣接している地域は、ほとんど完全にスンニ派が支配的だ。
 この何週間かシリアの危機が深まるにつれて、イラクで二つの顕著な動きがあった。
 スンニ派が多数を占める諸州では、以前は、憲法で許されているところの、クルド地区型の自治地域を樹立するという考え方は排斥されていたが、この考え方を抱懐するむきが増え、これについて、・・・シーア派たる首相のヌーリ・マリキは目に見えてご機嫌が悪い。
 ・・・マリキとシーア派は、バース党的にして原理主義的傾向のあるスンニ派のシリアが出現することを譫妄的に恐れている。・・・
 <他方、>スンニ派の指導者達は、マリキ首相と彼のシーア派の同盟者達がイランと結託していて、この国をペルシャの属州(satrapy)に変えようとしていると非難している。・・・
 「イラクに民主主義をもたらすと想定された政治過程が、実際には一つの党と一人の人物がイラクを統治するという事態をもたらした」と、もう一人のスンニ派の重鎮である副首相のサレー・アル=ムトラクは、マリキ氏とそのシーア派のダーワ(Daawa)党に言及しつつ語る。
 「その他<の勢力>には真の<政治>参加は実現できておらず、この国は智慧の断片すらなき苛烈な後ろ向きの独裁へと向かいつつある」と。
 「私は政治的合意の欠如によって生じた真空がこの国を分割へと導くことを惧れている。
 分割の前には戦争が起こり、分割の後には境界線と天然資源を巡る戦争が起こる」と彼はBBCに伝えた。
 シーア派とスンニ派の深刻な断絶のもう一つの徴表だが、マリキ氏は、<副首相による>かかる扇動的な諸言明をとらえて、議会に対して正式にムトラク氏を弾劾するよう求めた。・・・」
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-16275674
(続く)