太田述正コラム#5581(2012.7.6)
<皆さんとディスカッション(続x1594)>
<太田>(ツイッターより)
フロリダの海水浴場で、監視員が監視員のいない海岸で溺れている人の所に行って助けたところ、勝手に持ち場を離れたとしてクビになったとさ。
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-18715684
<ななし>
管さん、評価されなかったね・・・残念だ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120705/plc12070517030013-n1.htm
<太田>
報告書全文がネット上にアップされている
http://www.naiic.jp/blog/2012/07/05/%E3%80%90new%E3%80%91%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E4%BA%8B%E6%95%85%E8%AA%BF%E3%80%80%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%81%8C%E5%85%AC%E8%A1%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82%E3%83%80/
から、本来、直接それにあたるべきであり、産経の記事なんかに依存すべきじゃないのだが・・。↓
「・・・東京電力福島第1原発事故を受け、国会が設置した事故調査委員会(黒川清委員長)は5日、「事故は自然災害ではなく明らかに人災だった。政府、規制当局、東電は人々の命と社会を守るという責任感が欠如していた」と厳しく批判する報告書をまとめた。事故当時、菅直人首相らが現場に直接指示を出したことも「現場対応の重要な時間を無駄にしただけでなく、指揮命令系統の混乱を拡大させた」と断罪した。・・・
→この報告書、危機管理の何たるかが分かってない人達が書いたんだね。(太田)
報告書では、東電の清水正孝社長(当時)が第1原発からの全面撤退を申し出て菅氏が阻止したとされる問題に関しては「東電で全面撤退が議論された形跡はない。菅氏が阻止したと理解することはできない」と結論づけた。その上で「重要なのは首相の能力、判断に依存するのではなく、国民の安全を守ることのできる危機管理の仕組みの構築である」とした。
→「仕組み」をいくら整えてもリーダーの能力、判断は重要。(太田)
東電側の対応についても「官邸の顔色をうかがい、官邸の意向を現場に伝えるだけの状態に陥った」と批判。「緊急時対応での事業者の責任、政府の責任の境界が曖昧だった」とした。・・・
根源的な原因として「規制する立場と規制される立場が逆転し、原子力安全についての監視機能の崩壊が起きた」と認定。「規制当局の防災対策への怠慢と、官邸の危機管理意識の低さが、住民避難の混乱の根底にある」と結論付けた。」
→菅首相の危機管理意識は低かったのではなく高かったというのにねえ・・。(太田)
<宮里>
6月30日のオフ会に参加できず残念でした。
ところで、前にお伝えしたとおり、当日は沖縄に帰っておりましたが、ちょうどそのとき森本防衛相も沖縄入りし、仲井真知事に普天間基地へのオスプレイ配備に理解を求め、否定的返答を得ていました。
地元紙(琉球新報、沖縄タイムス)は、盛大にオスプレイの危険性と、この配備を「強行」しようとしている日米両政府を糾弾していました。
しかし、もとより普通の地元の人々は、冷静でこれを取り立てて話題にする感じはありませんでした。が、それでも自分が身近のひとにこの配備について聞いてみると、「欠陥機」と喧伝されるオスプレイが配備されることには、やはり、不安や反対の声を聞きました。これは政治的思惑や利権がらみの駆け引きとはまったく関係ない、素直な気持ちだと思います。
地元の防衛問題に関心の深い友人に訊ねたところ、「最新技術を取り入れた、まだ技術的に成熟していないオスプレイが事故を起こしやすいのは、当然といえば当然。ジェット機でも最初は何度も事故を起し、そのつど問題点を検討し改良して、安全性を高めていった。
そういう意味で、回転翼と固定翼を併用した画期的という大型輸送機のオスプレイが(大小を問わず)事故を起こしやすいのも当然では」と、言われました。
そのうえで、「米軍(海兵隊)が、これを承知で普天間基地に配備しようとしているのは、軍事の観点からは、そうおかしなことではないと思うが、今回、やや「強行」に進めようと見られるのは、冷静終結後にその存在価値すら問われている海兵隊に、最先端装備を早く保持したいという組織防衛の論理が働いているからではないか。
そしてこれに配慮するつもりで進めていた住宅地に近接する普天間基地から、海に面して近くが過疎地である辺野古への基地移設を反故にされたことに、もう我慢できないということではないか」と、言われました。
そこで太田さんにお教えいただきたいのは次の2点です。
一、オスプレイは現時点で、本質的な技術上の問題を抱えているのか。
二、オスプレイの配備は単なる新旧機種の入れ替えというだけか、それともこれと別の目的なり、思惑があって、普天間基地に配備しようとしているのか。
ご教示を賜れば有り難く存じます。
また、このほかにオスプレイ配備に関連して気付いたことがあればお教え頂ければ幸いです。
<太田>
一について:
米国政府が、同機を、2007年6月に米海兵隊で就役させ、10月に戦闘配備した(米空軍でもその前後に就役させ、戦闘配備した)
http://en.wikipedia.org/wiki/V-22_Osprey
のは、「本質的な技術上の問題を抱えていない」と判断した、ということでしょう。
それどころか、同年2月に、海兵隊司令官が、過去10年のオスプレイの事故率は、海兵隊の全航空機の平均の約半分であり、同機は、海兵隊の航空機としては、最も安全な、ないしは最も安全に近い航空機である、としたところです。
http://en.wikipedia.org/wiki/V-22_Osprey 上掲
その後、同機の事故が3件起こっていますが、2010年4月のアフガニスタン南部での米空軍所属機の夜間着陸時の事故の原因こそ分かっていないものの、今年4月のモロッコでの米海兵隊所属機の共同訓練中の事故は機体が原因ではないことが分かっていますし、6月のフロリダ州での米空軍所属機の訓練中の事故については事故調査結果がまだ明らかになっていないことはご承知の通りです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Accidents_and_incidents_involving_the_V-22_Osprey
以上が示しているのは、同機は米本土にも配備されていること、原因が明らかになっている事故は人為的原因の可能性が示唆されていること、原因が不明ないしまだ明らかになっていない事故は米空軍特殊戦部隊所属機である
http://en.wikipedia.org/wiki/V-22_Osprey 上掲
ことです。
海兵隊とは違って空軍特殊作戦部隊では、同機を性能限界で使用することがままあると考えられるところ、海兵隊では、(救難機として使用するような場合はともかくとして、兵員輸送機として使用する場合には)そのような使い方はしないであろう、というかする必要がないであろうし、普天間飛行場に配備された暁には、なおさら、注意深く運用するであろうと思われるところです。
二について:
米海兵隊においては、オスプレイは、ヘリコプターのC-46の後継として計画され、導入されたものですが、その後、様々な固定翼ジェット機の後継としての位置づけも付加されつつあります。
http://en.wikipedia.org/wiki/V-22_Osprey 上掲
そういう意味では、「オスプレイの配備は単なる新旧機種の入れ替えという」域を超えている、と言えそうですね。
やや誇張して言えば、オスプレイには、(ご友人も示唆しておられるように受け止めましたが、)米海兵隊の存続、というか、将来がかかっている、と言っても過言ではないのかもしれません。
なお、同機について基本的な知識を身に付けたい方は、オスプレイに関する日本語ウィキペディアをどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/V-22_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)
それでは、その他の記事の紹介です。
野田首相のこれまでの安全保障への取り組みを見ていると、ひょっとして集団的自衛権に関する政府解釈の変更にまで在任中に踏み込むかも、という期待感を持っちゃうなあ。↓
「・・・<野田>首相の指示で日本の中長期ビジョンを検討してきた国家戦略会議の「フロンティア分科会」は、報告書の中で「米国など価値観を共有する国との安全保障協力を深めるため、協力相手としての日本の価値を高めることは避けられない」「集団的自衛権に関する解釈など、従来の制度や慣行の修正を通じ、安全保障協力の手段の拡充を図らなければならない」と指摘した。・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/07/06/2012070600861.html
米軍撤退後、イラクの暴力的事件の頻発状況に変化はなく、むしろ状況は悪化しているようだが、もはや、本当のところは調べる手段がないのでよく分からないんだね。↓
・・・although there was no meltdown, there was also no drop in violence as U.S. targets disappeared.・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/07/05/blind_in_baghdad?page=full
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太田述正コラム#5582(2012.7.6)
<クラシック音楽徒然草–歌劇(その2)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x1594)
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