太田述正コラム#5641(2012.8.5)
<皆さんとディスカッション(続x1624)>
<ねこ魔人>
毎度、わざわざご丁寧な対応をしてくださりありがとうございます。
鉄の三角同盟と、政官業癒着構造は異なる概念であることを知ることができ、また外国語は当該語句が誕生したいきさつに目を配らせなければならないことにまで認知することができました。
<太田>
それでは、記事の紹介です。
部隊で実施したアンケート調査が情報公開や裁判で提出を求められる証拠の対象になる、ということが確定しそうで、困ったもんだ。↓
「・・・訴訟で海自側は1士への暴行の存在は認めたが「立ち入りが制限されたあるいは人目に付きにくい場所、時間帯に行われていた」として当時は十分に把握できなかったと主張。一方、アンケートでは「艦橋で」「食堂」と多くの乗員が立ち入る場所で暴行が目撃されていた。・・・
また「10月/2曹が士長に/殴るけるなど」と、1士に対するもの以外にも艦内で暴行があったことを示す記載もあった。
1士の遺族は先輩のいじめが自殺の原因として、国などに賠償を求め提訴。05年に海自の調査について情報公開請求したが、海自は「アンケートは破棄した」と説明した。しかし、国側の指定代理人を務めた現役3等海佐が「隠蔽(いんぺい)している」と内部告発。杉本正彦海上幕僚長(当時)は今年6月、「調べたところ横須賀地方総監部の書庫のファイルから見つかった」と発表した。」
http://mainichi.jp/select/news/20120804k0000e040270000c.html
アフガニスタンで米海兵隊、米陸軍それぞれでいじめによって自殺者を出した者に対する軍法会議で、両事件とも1名に1か月収監の刑を下すにとどまったことを問題視する米下院議員のコラムだ。↓
http://www.nytimes.com/2012/08/04/opinion/military-hazing-has-to-stop.html?_r=1&pagewanted=print
これ↑は、この下院議員の方がおかしい。
本人も書いているように、自殺した兵士は、どちらも戦場で任務中にいねむりをしたことを咎められたものであり、それは部隊全体を危険に晒す行為なのであり、ここかから先は彼と見解を異にするわけだが、そんな場合に「指導」が行き過ぎることはままありうることだ、と私は思う。
自衛隊の場合、自殺した士長が何を咎められたのか定かではないが、自衛隊には軍法会議がないために、事件発生から何年も経過しているというのに、いまだに自殺に追い込んだ者に刑が下されておらず・・米国の上記ケースでは、どちらも極めて短時間で刑が下されている・・、しかも、事件にからんで実施されたアンケート調査の内容・・部隊の規律や士気が分かってしまう・・まで公開されるに至っている。
部隊内のいじめに対処する態勢だけをとっても、自衛隊は有事に戦うことなどできない、と言わざるをえない。
トルーマンの孫が広島で献花したことを、ワシントンポストとガーディアンが取り上げてたね。↓
http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/grandson-of-ex-president-truman-visits-hiroshima-to-attend-memorial-service-of-a-bomb-victims/2012/08/04/2007fe7a-de11-11e1-8ad1-909913931f71_print.html
http://www.guardian.co.uk/world/2012/aug/04/truman-grandson-hiroshima-memorial-wreath
中共における蒼井そら現象は、誰かにきちんと分析して欲しいもんだねえ。↓
「・・・今年5月、ネット上で公開された主演ショートフィルム「第二夢」が大好評だった蒼井そら。第2弾となる「let me go」の公開に先立ち、彼女自身が歌っている同名テーマソングがネット上で解禁された。・・・
中国で絶大な人気を誇る蒼井だが、ショートフィルムで演じた頑張る女性の姿が、実際に中国で奮闘する彼女のイメージとぴったりマッチする。中国版ツイッターと呼ばれるミニブログ「新浪微博」のフォロワー数も間もなく1300万人に届く勢いで、他の海外スターを完全に圧倒している。・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/6825215/
ロムニー支持を表明するなんて、クリント・イーストウッドも老いたってことなんだろなあ。↓
Clint Eastwood endorses Mitt Romney for president・・・
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-19121795
スポーツ観戦一般について、同じことが言えそうだけど・・。↓
「サッカー観戦は人の性欲をアップさせるという研究結果 / 特に男性への影響は顕著・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/6824675/
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太田述正コラム#5642(2012.8.5)
<ロシアと国家マフィア主義(その3)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x1624)
- 公開日:
「自殺した兵士は、どちらも戦場で任務中にいねむりをしたことを咎められたものであり、それは部隊全体を危険に晒す行為なのであり、ここかから先は彼と見解を異にするわけだが、そんな場合に『指導』が行き過ぎることはままありうることだ、と私は思う。」
「海上自衛隊大好き人間」としての立場から、自殺した1士と、居眠りした兵士を同列に論ずることによって、「悪いのは自殺した1士であり、いじめをおこなった元2等海曹は悪くない」という印象操作・情報操作を行おうとしているように思えてなりません。
「自衛隊の場合、自殺した士長が何を咎められたのか定かではないが」
「たちかぜ」事件は海上自衛隊史上屈指の不祥事なのですが、なぜ関心をお持ちにならないのでしょうか。海上自衛隊の暗部から目をそらし、海上自衛隊の良い所にだけ目を向けて「海上自衛隊大好き人間」を名乗ることには違和感を覚えます。
ちなみに自殺したのは「士長」ではなく「1士」です。
また、「自殺した士長(正しくは1士)が何を咎められたのか」について言えば、「何も咎められていない」が答えです。「たちかぜ」事件は、元2等海曹が艦内に空気銃・ガス銃を持ち込み、自殺した1士のみならず多くの海曹・海士を的にして撃ちまくり、その上自殺した1士を含む一部の海士からはアダルトビデオの代金の名目で金を脅し取っていたという事件です。業務上の指導の延長線上に発生した事件ではなく、業務とは無関係な暴行・恐喝事件と言えるだろうと思います。
「自衛隊には軍法会議がないために、事件発生から何年も経過しているというのに、いまだに自殺に追い込んだ者に刑が下されておらず・・米国の上記ケースでは、どちらも極めて短時間で刑が下されている・・、」
元2等海曹には平成17年1月に執行猶予付きの有罪判決という「刑が下され」ており、また同月懲戒免職にもなっているのですが、何をもって「刑が下されておらず」と言っておられるのでしょうか。損害賠償問題が解決していないことは、「刑が下されておらず」とは言わないと思います。
また、少なくとも本件に関しては「軍法会議」云々は無関係でしょう。事件発覚が平成16年10月末で、刑事処分・行政処分が17年1月ですから、まあまあ迅速に処理されたと言うべきでしょう。損害賠償問題が解決していないことについては、そもそも軍法会議との管轄競合が問題となる話なのか疑問ですが、その点は措くとしても、少なくとも本件とは無関係でしょう。本件においては「たちかぜ事件」について広報から発表が為されたほか、「『たちかぜ』事件事故調査結果」やその下資料が情報公開されたり、裁判所に提出されたりして、既に「たちかぜ」が極めて士気が低く規律が弛緩した状態にあったことは明らかになっていました。その上で、「アンケート」等が(例えばアンケートにだけ軍事機密が書かれているとか)合理的理由もなく隠されていたから問題となっているのです。「アンケート」等が軍事機密等の理由で裁判所に提出できないがために訴訟が遅延した…といったことはありません。
「しかも、事件にからんで実施されたアンケート調査の内容・・部隊の規律や士気が分かってしまう・・まで公開されるに至っている。」
「部隊の規律や士気」に関する情報だから一律に非公開が許されるというものではなく、結局は(例えば国民の知る権利とか)他の利益・価値との比較衡量により開示すべき範囲が定まるものなのではないでしょうか。「部隊の規律や士気」に関する情報だから一律に非公開が許されるというのであれば、そもそも「たちかぜ」でいじめがあった事実自体を隠すことが許されるということになるのでしょうか。その論理で行くと、太田氏が著書やブログで内局や航空自衛隊の不祥事に言及するのは、「内局や航空自衛隊の士気や規律が分かってしまうからいけないことだ」ということになるのでしょうか。
http://www.ohtan.net/bbs/
にお答えをアップしておきました。
(コラムのナンバー等は未チェック。)