太田述正コラム#6139(2013.4.11)
<皆さんとディスカッション(続x1866)>
<太田>(ツイッターより)
 「「集団登下校」の日本、「親が送り迎え」の中国…「中国式送迎」は社会に対する安心感が欠けていることの表れだ。「中国式送迎」をなくしたいのなら、生活習慣に矛先を向けるのではなく、<日本のように、>社会の安心感を高め、子どもが安心して通学できる環境をつくる必要がある。 」
http://j.people.com.cn/94473/8201767.html
 ウー泣けるじゃないか。
 日本語版だけじゃなく、漢語版の人民網、ひいては人民日報自身に、この種日本ヨイショ記事が掲載されているかどうか、 誰か教えてくれないか。
 記事を紹介することで中共当局の日本誑かしの片棒を担ぎたくないからねえ。
<TA>
≫ <(日本と台湾が、沖縄県の尖閣諸島周辺での漁業協定締結交渉で大筋合意したという報道に対し、)>メデタシメデタシ。≪(コラム#6137。太田)
 私はこの件をどう考えるべきか、整理がつきません。2000年の日中漁業協定でも似たようなものが既に取り決められているようですし。↓
 「日本の領土であるが、中国が領有権を主張している尖閣諸島の北方に関しては、「暫定措置水域」の設置で妥協された。
 暫定措置水域内では、いずれの国の漁船も相手国の許可を得ることなく操業することができ、各国は自国の漁船についてのみ取締権限を有する(§7)。
 同水域における操業条件は日中共同漁業委員会が決定する。同水域において相手国漁船の違反を発見した場合は、その漁船・漁民の注意を喚起すると共に、相手国に対して通報することができる(§7-3)。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E4%B8%AD%E6%BC%81%E6%A5%AD%E5%8D%94%E5%AE%9A
 今回の日台漁業協定も、↑同様、単に領有権問題を棚上げしたというだけなのではないでしょうか。↓
 「・・・台湾も尖閣領有権を主張しているが、協定は領有権問題を棚上げした上で、尖閣周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)の一部海域を「共同管理水域」に指定し、台湾漁船の操業を認めることを盛り込む。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130410/plc13041009490010-n1.htm
 そして今回の決定を誰が主導したのかもよく分かりません。日本?↓
 「日本と台湾の漁業協定の合意は、沖縄県の漁業者の懸念にもかかわらず、首相官邸主導で日本側が譲歩した。
 同県の尖閣諸島を巡る問題で挑発行為を続ける中国に対し、政権発足以来厳しい姿勢を示す安倍首相の外交戦略の一環だといえる。・・・」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130411-00000257-yom-pol
 それともアメリカ?↓
 「・・・台湾外交筋によれば、経済面で中国への依存が深まっている台湾の馬政権は当初、取り決めに消極的で、 領海侵犯する反日団体の船の出航を許可するなど、中国と共闘するかのような姿勢を見せた時期もあった。 しかし、これが米国の強い懸念を招いた。米国のオバマ政権は取り決めの早期締結に積極的に動いたという。 日台交渉筋によると、今年2月以降、米国は台湾への武器輸出問題などで馬政権に対し強く圧力を加える一方、 日本に対しても、取り決めを速やかにまとめるよう強く求めたという。・・・」
http://news.guideme.jp/kiji/da2986514965538bf24c188badee75d9
 誰が主導したにせよ、沖縄が割を食ったのは間違いなさそうですが。↓
 「沖縄県の仲井真弘多知事は10日、日台漁業協定締結について「沖縄県からの要望が全く反映されておらず、台湾側に譲歩した内容で極めて遺憾」と批判するコメントを発表した。
 この中で知事は、「合意により漁場競合の激化や好漁場の縮小は避けられない」と指摘、「国に対して強く抗議する」としている。・・・」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130410-00000141-jij-pol
 今回の決定、中台の尖閣に対する連携を分断するというメリットはなくはないでしょうが、日本の実効支配を薄れさせることになるようにも見えます。
 竹島や北方領土の漁業権に関する扱いとの比較の必要性等もあり、この日台漁業協定締結、かなり詳細に考えるべきなのではないでしょうか。
<太田>
 米国による圧力については、既に私のコラムでも触れてきたところです。↓
 「・・・日台交渉筋によると、今年2月以降、米国は台湾への武器輸出問題などで馬政権に対し強く圧力を加える一方、日本に対しても、取り決めを速やかにまとめるよう強く求めたという。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130410/amr13041021370009-n1.htm
 「・・・菅義偉官房長官は10日夜、首相官邸で記者団に「歴史的な意味を有するものだ。心から歓迎申し上げたい」と語った。・・・菅氏は「今後の地域の安定にもつながっていくだろう」と満足げな表情を浮かべた。」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130411/plc13041101090000-n1.htm
>2000年の日中漁業協定でも似たようなものが既に取り決められているよう<(TA)
 むしろ、だからこそ、今回の日台間での協定締結に意義があるのです。
 (日本が中共と台湾とを、それぞれ主権国家であるかのように、同列・平等に扱ったということ。)↓
 <日本は、国際海洋法条約を批准した直後に、尖閣等に係る漁業協定を中共だけと締結していたわけですからね。↓>
 ・・・China also claims sovereignty over the Diaoyutais. Japan and China signed a fisheries agreement in 1997, which took effect in 2000, under which both sides co-manage waters above 27° north latitude.・・・
 Taipei and Tokyo initiated fishery talks following incidents of Taiwanese fishing boats being seized, detained or expelled by the Japan Coast Guard after Tokyo ratified the UN Law of the Sea Treaty in 1996 and set up a 200 nautical mile exclusive economic zone that included waters surrounding the Diaoyutais.・・・
 <台湾当局が、(日本漁船とともに)中共漁船に尖閣の「領海」内で操業をしないように呼びかけたってのがミソ。↓>
 Coast Guard Administration Minister Wang Jinn-wang (王進旺) called on Japanese and Chinese fishing vessels not to operate in waters within the 12 nautical miles ・・・
 <中共当局は、深い憂慮の念を表明した。↓>
 Meanwhile, China yesterday expressed concern about the new agreement.
“We are extremely concerned about Japan and Taiwan discussing and signing a fishing agreement,” Chinese Ministry of Foreign Affairs spokesman Hong Lei (洪磊) told a daily news briefing.
“We hope that Japan earnestly abide by its promises on the Taiwan issue and act cautiously and appropriately,” she said.・・・
http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2013/04/11/2003559323
 <BBCは、中共当局が、この協定締結に反対表明をした、と報じている。↓>
 ・・・China has expressed opposition to the agreement. It claims sovereignty over Taiwan, and insists that nations cannot have official relations with both China and Taiwan.
 ”China’s position on Taiwan’s foreign exchanges is clear and consistent,” Chinese Foreign Ministry spokesman Hong Lei said on Wednesday.
 ”We are extremely concerned about Japan and Taiwan discussing and signing a fishing agreement.”
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-china-22092853
<太田>
>中台の尖閣に対する連携を分断するというメリットはなくはないでしょうが、日本の実効支配を薄れさせることになるようにも見えます。竹島や北方領土の漁業権に関する扱いとの比較の必要性等もあ<ります。><(TA)
 日本が抱える領土問題中、日本が実効支配しているのは尖閣だけですからねえ。あえて「比較」することもないでしょう。
 「中台の尖閣に対する連携を分断するというメリット」が決定的に大きい、と言えそうです。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 笑っちゃうね。↓
 「韓国はなぜこんな扱いを受けるのか・・・
  米国と北朝鮮の間で生じた対立の構図で、韓国は立つ瀬がない。北朝鮮による連日の戦争脅迫を見るにつけ、北朝鮮の相手は米国であって、韓国はご主人さまの米国に追従し、付和雷同する端役の俳優にすぎないと思える。・・・
 欧米メディアは最近、泰然とした韓国の姿を興味深い見せ物であるかのように報じている。大抵は専門知識がないまま、現場に投入された「落下傘記者」がそんな記事を書いている。最近米国の大企業の会長が韓国工場の撤収計画を示唆し、至る所で北朝鮮リスクがささやかれ始めた。それによって、韓国経済や株式市場も動揺している。一方、北朝鮮はさらに勢いを増し、米国経済は好調を見せている。対北朝鮮強硬論では自他共に認める存在の日本も順調だ。
 さらにあきれるのは、国際社会が往々にして韓国を北朝鮮と並ぶ「リスク要因」として、同列に位置づけていることだ。中国は頻繁に韓国と北朝鮮の双方に「状況を悪化させる行動を自制しろ」と求めている。欧州各国が「仲裁役」になると言えば、北朝鮮と手を結んで核・ミサイル開発を行ってきたイランまでもが「関係国の自制」を求め始めた。こうして誰が加害者で誰が被害者なのかさえあいまいになった。ホワイトハウスや米国国務省は最近、記者団に対し、B2など戦略爆撃機が韓半島に出動したのは、韓国が対抗する行動に出る必要がないことを明確にするための計画的措置だと説明した。北朝鮮の挑発やさまざまな脅迫に耐えている韓国が黙って平手打ちを食らっているような状況だ。・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/04/10/2013041001351.html
 <北朝鮮の軍事的脅威をモロに受けてるくせに、こんだけ防衛力整備を(物心両面で)サボってきたんだから、当然の報いってやつだよ。↓>
 「・・・韓国軍は現在、100キロ以上の・・・高度で進入してくるミサイルを迎撃できる海上の対空兵器を持っていない。 イージス駆逐艦に搭載されている海上配備型迎撃ミサイル(SM2)は最大到達高度が30~40キロにすぎない。一方、米国と日本のイージス艦は最大到達高度160キロ以上のSM3を搭載している。・・・
 韓国軍のPAC2システムは迎撃率が40%以下にとどまり、ミサイルよりも航空機の迎撃用<だ。>・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/04/10/2013041002581.html
 ドローンによる標的殺害の実態について、米国政府がウソをついてきた、と強く批判するコラムだ。↓
 <米国政府は、標的は(国際的デラシネの)アルカーイダだと言ってきたが、半分以上はアフガニスタン、パキスタン、「その他」・・正体をきちんと把握できてない!・・の過激派だ。↓>
 ・・・the CIA killed during a 12-month period ending in September 2011 were not senior al Qaida leaders but instead were “assessed” as Afghan, Pakistani and unknown extremists. Drones killed only six top al Qaida leaders in those months・・・
 Forty-three of 95 drone strikes reviewed for that period hit groups other than al Qaida, including the Haqqani network, several Pakistani Taliban factions and the unidentified individuals described only as “foreign fighters” and “other militants.”…
 <しかも、武装集団と関係がある或いは武装集団に属している、という疑いがあるだけの人も標的にしてきた。↓>
 At other times, the CIA killed people who only were suspected, associated with, or who probably belonged to militant groups.
 This scope of targeting complicates the Obama administration’s claim that only those al Qaeda members who are an imminent threat to the U.S. homeland can be killed. In reality, starting in the summer of 2008, when President Bush first authorized signature strikes in Pakistan, the vast majority of drone-strike victims were from groups focused on establishing some form of Sharia law, attacking Pakistani security forces, and destabilizing Afghanistan by supporting the Taliban and attacking U.S. servicemembers.・・・
 <それどころではない。サービスで、パキスタン政府だけにとって脅威となっている人物すら標的にしてきた。↓>
 In addition, the CIA was engaging in “side payment strikes” against the Pakistani Taliban to eliminate threats on Islamabad’s behalf. ・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2013/04/10/an_inconvenient_truth_drones?page=full
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太田述正コラム#6140(2013.4.11)
<太平洋戦争における米兵のPTSD(その10)>
→非公開