太田述正コラム#6217(2013.5.20)
<皆さんとディスカッション(続x1905)>
<太田>(ツイッターより)
 「「飯島訪朝」を“アシスト”した民主党幹部の極秘訪朝…」
http://news.livedoor.com/article/detail/7688005/
 野田前首相の功績がまた一つ明らかになった。
 現在の政治家の中では彼が群を抜いている。
 これは奇跡と言ってよい。
 そう遠くない将来に復活を遂げられんことを祈っている。
<TT>
 ・・・慰安婦問題について「ネトウヨの諸君」はこういうこと↓はやっているようです。
http://sakura.a.la9.jp/japan/
 むしろ逆効果なのか、蟻の一穴になるのか・・・。
<太田>
 逆効果どころではありません。
 対米的にも対日本国内的にも最悪の結果を生むだけです。
 お示しのサイトに掲げられている檄文に出て来る「韓米公共政策委員会 Korean American Public Affairs Committeeの働きかけ」だの「韓国の慰安婦プロパガンダ」という表現がそのことを端的に示しています。
 米国は世界覇権国として世界中の国々等と関わっていますから、外から働きかけがないとなかなか反応しませんが、反応するのは、働きかけを受け入れる素地がある場合であり、慰安婦問題を始めとする日本がらみの歴史問題については、米国に韓国(や中共)の働きかけを受け入れる素地がある、ということなのです。
 ところが、上記サイトの檄文では、邪悪な韓国のプロパガンダに善良な米国が乗せられた、という誤った構図に乗っかった記述がなされています。
 そうではなくて、米国の反日的歴史認識に染まった韓国人・・例えば、米国に「亡命」していた李承晩・・等(後述)が、かかる歴史認識を韓国内で人々に注入し、かかる歴史認識を注入された韓国人が、それを米国に逆輸出した、という構図であることに、我々は気付かなければならないのです。
 
 そして、上記の誤った構図を、日本において、ネトウヨ、「タカ」派、「正統」右翼、そして純粋に日本を愛する人々に日々植え付けているのが産経新聞なのです。
 本日の記事でもって、これを検証してみましょう。↓
 「「安倍首相、大宰相の可能性」右傾化批判一転、米国で高評価の兆し・・・
 「フォーリン・アフェアーズ」は16日の電子版で安倍首相へのインタビュー記事を掲載し、「安倍首相の政権復帰は当初、投資家や有識者を当惑させたが、就任後間もなく、日本経済復興の野心的なキャンペーンに着手した。約半年たった今、それは効果をあげているように思われる」と紹介した。・・・
 ラスト・デミング氏は・・・尖閣諸島周辺で挑発を続ける中国への対応について「安倍首相をナショナリスト(民族主義者)と批判する向きがあるが、実効支配している尖閣諸島を守ることは右翼ではない。世論に広く支持された国民の意思だ」と指摘、こうした日本の対応に中韓両国や一部米メディアが日本全体が右傾化していると批判するのは見当違いだと強調した。
 憲法改正についても、「米国が起草した憲法の改正を多くの国民が支持している」とした。」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130520/amr13052008440002-n1.htm
 産経の電子版は、昨日私が紹介したワシントンポストの恐るべき反日コラムには知らぬ顔を決め込み、同じく昨日私が紹介したフォーリン・アフェアーズインタビュー記事を捻じ曲げて紹介した上、米国では圧倒的少数派の安倍擁護論・・ただし、オバマのホンネを代弁していると私は思う・・をあえて紹介しています。
 フォーリン・アフェアーズ記事の下掲のようなインタビューワーの発言には、私は、むしろ、安倍首相への強い敵意を感じました。
 
 「あなたが歴史問題について語ると、必ず問題化するようだ。歴史について語るのを控えようと考えたことはないか。これに関連して、歴史問題を棚上げにするために、首相を務めている間は、靖国神社を公人としても私人としても参拝しないと表明しようと考えたことはないか。・・・
 靖国神社には13人のA級戦犯が合祀されている。だからこそ、日本の歴代首相が靖国神社を参拝すると中国や韓国は強く反発してきた。靖国参拝はしないと約束する方が合理的な行動ではないだろうか。・・・
 あなたは1月に、尖閣諸島をめぐって(中国と)交渉する余地はないと発言している。日本政府がそうした頑なな態度をとり、中国も頑なな態度をとっている限り、問題が解決に向けて進展することはないと思う。・・・」
 中国の台頭、その攻撃的な行動からみて、あなたは日米安全保障条約の価値に十分な信頼を置いているだろうか。それとも、日本はもっと防衛力を強化すべきだと考えているのだろうか。・・・」
 そもそも、このインタビューワーは、「安倍政権の支持率は70%を超えているし、株式市場は5年ぶりの高値水準にある。」と言う客観的事実を援用しているにとどまっているところ、一体全体、このどこが安倍首相の「高評価」なのでしょうか。
 昨日私が言ったことを繰り返しますが、我々は、韓国を批判するなんてことは止めて、大本の米国(の大方の日本がらみの歴史認識)を、もっぱら批判しなければならないのです。
 古くは朝鮮戦争、そして朝鮮半島の南北対立、更には最近の中共による東北工程(コラム#3997等)に至るまでの韓国の悲劇・屈辱の、ほぼ全てをもたらしたのは米国による日本帝国解体なのだけれど、その怒りが米国に向けられないよう・・いや、つい数年前には、激しく向けられたばかりだ・・、米CIAが、韓国は反日へと、そして日本に関しては、日本が反米に転じないよう反韓へと、誘導している可能性が高いと私は考えています。
 私は、役所にいた頃から、自民党/産経が、無条件で自衛隊ヨイショにして親米であることに強いわだかまりを覚えていました。
 産経に関しては、これに無条件の自民党礼賛と反韓が加わり、また、日米関係筋なるソースから、正確な自衛隊/在日米軍関連機密情報が同紙面上にリークされ、それら「スクープ」記事が産経のウリの一つになっていることに、とりわけうさんくさい思いを抱いてきました。
 つまり、産経がCIAの日本における事実上のエージェントである可能性は排除できない、ということです。
 私が、日本の広義の「右」の人々に対し、産経の購読を止めるように呼びかけるゆえんはここにあります。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 維新の支持率は下がるところまで下がったけれど、今回の橋下・石原発言によって、むしろ下げ止まった、と私は見ている。↓
 「・・・橋下氏の一連の発言については「大いに問題がある」は32%、「ある程度問題がある」は43%。「あまり問題はない」は15%、「まったく問題はない」は5%にとどまった。橋下氏の発言で維新の印象が「悪くなった」は50%。「変わらない」は44%で、「よくなった」は2%だった。
 参院選の比例区投票先については、自民が49%(同46%)。この質問を始めた1月の40%と比べてみても、かなり増えている。対照的に、維新は今回、7%(同10%)。16%だった1月以降、下落が止まらず、8%(同6%)となった民主に初めて抜かれた。・・・
  安倍内閣の閣僚が靖国神社を参拝したことについては「よかった」は48%で、「よくなかった」の37%を上回った。・・・」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201305190225.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201305190225
 <ここが決め手。↓>
 「・・・歴史認識をめぐり、安倍晋三首相が自身の発言で海外から反発を呼んだことを受け事実上軌道修正を図ったのに対し、日本維新の橋下徹共同代表が発言を維持している・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013051901001583.html
 「・・・石原氏は橋下氏の発言に「意味はよく分かる」と理解を示した。橋下氏は「誤解を生むような発言があったことは申し訳なかった」と陳謝し、「丁寧に説明していく」と語ったという。第二次世界大戦の歴史認識を巡っては、橋下氏が周辺諸国への侵略だと主張したが、石原氏は受け入れず、党見解はまとめないことになった。・・・」
http://mainichi.jp/select/news/20130520k0000m010086000c.html
 むしろ、みんなは野垂れ死か分裂に向かっている。↓
 「みんな 維新と選挙協力解消・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013052002000112.html
 北朝鮮が新たな拉致稼業に勤しんでいる。↓
 「北朝鮮が中国漁船拿捕 釈放に1千万円支払い要求・・・」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130520/kor13052008320002-n1.htm
 例の中共の軍のハッキング部隊が、しばらく鳴りを潜めた後、再び米国に対して「お仕事」を始めたとさ。
 懲りない中共当局!↓
 Three months after hackers working for a cyberunit of China’s People’s Liberation Army went silent amid evidence that they had stolen data from scores of American companies and government agencies, they appear to have resumed their attacks using different techniques・・・
http://www.nytimes.com/2013/05/20/world/asia/chinese-hackers-resume-attacks-on-us-targets.html?ref=world#h[]
 シリアは、憂うべき状態に陥りつつあるようだ。↓
 <反体制派を支援すべく、EUがシリア産石油輸入の解禁をしたことが、油田地帯を抑えているアルカーイダ系に有利に働いている。↓>
 The EU decision to lift Syrian oil sanctions to aid the opposition has accelerated a scramble for control over wells and pipelines in rebel-held areas and helped consolidate the grip of jihadist groups over the country’s key resources.・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2013/may/19/eu-syria-oil-jihadist-al-qaida
 <そして、その結果、イラク(北西部)とシリアのアルカーイダ系地区を一丸とした「国」の存在が浮き彫りになってきた。↓>
 The stranglehold that Jabhat al-Nusra and its allies have achieved over Syria’s oilfields signals a decisive moment in the conflict that will shape the rapidly and violently evolving map of the new Middle East.
 <彼らは、石油収入を民生にも回し、支持を広げている。↓>
 The impact is immediately visible. With a new independent source of funding, the jihadists holding the oilfields between al-Raqqa and Deir Ezzor are much better equipped than their Sunni rivals, reinforcing the advantage originally provided by Qatari backing. They have been able to provide bread and other essentials to the people in the areas under their control, securing an enduring popular base.・・・
 <彼らと、アラウィ派政権へと「純化/強化」されたアサド政権との間で、事実上の停戦が成立するとともに、石油収入の山分けが行われている。↓>
 More importantly, as so often in history, control over hydrocarbons has solidified new lines on the map. The fact that the Syrian army has withdrawn from the heart of the country and that the victorious Salafist groups have not pressed their attack, but instead entered into a revenue-sharing agreement with Damascus over the oil, show that both sides are satisfied with the dividing lines.
The regime’s forces, made more ethnically pure and more resolute by two years of Sunni defections, is clearing out an Allawite state along the Syrian coastal plain. The horrific massacres of Sunni communities in Baniyas and al-Bayda earlier this month were acts of ethnic cleansing designed to scare away any remaining Sunni pockets.
 With the rise of al-Nusra, meanwhile, the importance of the Syrian-Iraq border, forged nearly a century ago by Britain and France in the Sykes-Picot agreement, is eroding fast as Sunni Salafist groups on both sides find common cause.・・・
 <彼らの「国」の北と東には、これまた事実上のクルド「国」が立ち現われてきている。↓>
 While the makings of a Sunni mini-state are emerging in al-Jazira plain, Upper Mesopotamia, stretching from Turkey to central Iraq, a Kurdish state is forming to the east, again crystallised with the help of oil. ・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2013/may/19/jihadists-control-syrian-oilfields
—————————————————————————————————————————————————-
太田述正コラム#6218(2013.5.20)
<中共の資本主義化の軌跡(その6)>
→非公開