太田述正コラム#6360(2013.7.31)
<皆さんとディスカッション(続x1976)>
<太田>(ツイッターより)
「人気AV女優・麻生希、主演映画の宣伝で上海入り…」
http://j.peopledaily.com.cn/206603/8345880.html
いやーまたでっせ。
日本の昔の女性は廓務めをして大身の男性に身請けされることをめざし、今どきの女性はAV女優をして中共の男性ファンの心を掴み、同国で一旗揚げることをめざすってワケだな。
<TA>
≫ところが、戦前の日本は、もっぱら対赤露抑止戦略を推進していた、という重要な事実については、いまだに殆んど誰も指摘していません。≪(コラム#6357(未公開)。太田)
同台経済懇話会とかいう団体(注1)の『大東亜戦争の本質』という本に、太田さんと同様の主張を「発見」しました。↓
「アメリカが戦勝に酔って、民主主義や、平和の英雄気取りで日独への報復的占領や裁判に血道を上げている間に、折角長年に亙って熱烈に援助し、アジア政策の中心としてきた中国では、国民党政権が中国共産党軍に追い出されて、台湾に逃げ込んだ。中国本土には忽ち共産主義国家が誕生してしまったのである。
アメリカは中国での利権どころか、それまでは、日本が必死になって防波堤の役を果たしてきた共産勢力と、アジアに於いても直接に対決しなければならなくなってしまったのである。
その後のことは、戦後歴史の中でどのように評価したらよいであろうか。
アメリカは、自らの国民の更に多くの血を流して、朝鮮戦争を戦わねばならなかったし、国防長官であったマクナマラまでが、「あの戦争は間違っていた」と言わざるを得なかった悪夢のようなベトナム戦争を、七年にも亙って戦って敗北し、インドシナ半島からも撤退しなければならなくなったのである。
私見になるが、アメリカのアジアに於ける対ソ連政策の歴史を観ると、ソ連の本質に対する判断の甘さと、アジアでの情勢分析についての偏りが見られると思う。その「シベリア出兵」の時期から、アメリカは、日本の大陸進出ばかりを警戒して、共産主義ソ連の本当の凄さ、恐ろしさを知らなかったのではないだろうか。満州を防共の防波堤として、全力を挙げてアジアへのソ連の南下を防いでいた日本の役割を、アメリカは全然理解していなかったと思わざるを得ない。
「日本がこの役割を放棄せざるを得なくなったら、アメリカは、直接ソ連の脅威に直面するのだ」と主張した、松岡外相の意向は、野村大使を通じて、ローズヴェルトに伝えられていたのであるが、ローズヴェルトはこのことを無視した。
かくてアメリカは、皮肉にも、全力を挙げて叩きのめした日本だけを、アジアでの橋頭保として残すだけになってしまったのである。」(24~26頁。瀬島龍三(注2))
「日本は、国内政策でも対外政策でも、共産主義防衛を重要視した。しかし、ソ連邦から遠く離れているアメリカやイギリスは、日本の防共政策に同情することがなかった。
大東亜戦争開戦前の日米交渉で、アメリカは日本の中国での防共政策をすべて無視し、戦後の極東国際軍事裁判(東京裁判)でも、判事団は検事側の異議申し立てにより、弁護側の立証しようとする防共政策の証拠を却下するのが例であった。
共産主義に関連する弁護側の証拠提出を却下する理由の多くは、共産主義問題は「国際問題」ではなく、その国の「国内問題」とするのである。
ソ連邦に隣接する日独とは異なり、離隔している米英などの共産主義に対する認識は、どうしても甘くなりがちで、第二次大戦後に間もなく世界が冷戦状態に陥ったのは、米英のこのような認識に大きく影響されている。」(244~245頁。野村実(注3))
(注1)同台経済懇話会
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8C%E5%8F%B0%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%87%87%E
8%A9%B1%E4%BC%9A
(注2)瀬島龍三
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%80%AC%E5%B3%B6%E9%BE%8D%E4%B8%89
(注3)野村実
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E6%9D%91%E5%AE%9F
私はこの著作、5年ほど前に読了しており、当時はスルーしていたようです。軽く再読した限り、これ以外の記述はありません。「いろいろな側面から見た大東亜戦争」(3頁。瀬島)の一側面、という扱いなのでしょう。
ところで、野村氏の上記記述の参考文献として『東京裁判却下未提出弁護側資料』(注4)というのがありました。ご参考までに・・。
(注4)「東京裁判・・・における弁護側準備資料のうち、却下・未提出のもの2306件を法廷審理の順序に従って編纂・集大成した、初公刊の資料・・・。」
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336036810/
<太田>
どーもどーも。
瀬島が、「私見」などと途中でトーンダウンしたり、松岡からローズベルトへの伝言の典拠を示さなかったり、野村が「日本は、国内政策でも対外政策でも、共産主義防衛を重要視した」ことの典拠を示さなかったのが惜しいですね。
極東裁判で、戦前の日本の対赤露抑止戦略関係の証拠提出が軒並み脚下されたことは、私がコラム#6357(未公開)で示唆したところの、占領軍意思を裏付けるものです。
<u83aN2eE>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
≫ありがとう朝鮮日報。気が付かなかったよ。 (自国防衛の観点からホントは欣喜雀躍して欲しいところだが、)客観的な筆致にも好感が持てる。≪(コラム#6358。太田)
来るべき第二次朝鮮戦争で、日本はどういう軍事行動をしたら良いか聞いてみたら?
(説得ではなく、壁打ち練習として。)
<はま>
東京大空襲はいいとして、英国がアヘン戦争を教えないのは、やっぱりわざとでしょう?ずるくない?
当時の日本人がヨーロッパまじやばいと思ったのは、アヘン戦争で中国が敗れたからって歴史で習うから、ターニングポイントとなる超重要な事件だったわけだけど、英国にとっては、トリビアな出来事に過ぎず重要ではないってこと?
そうじゃなくて、英国がアヘンを売りまくってたことを隠したいから教えてないんじゃないの?
<太田>
おっしゃるとおり。
で、初めてキミの拠ってる対談
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20130724/251502/?P=1&rt=nocnt
を読んでみたんだけど、ボクが面白かったのは、ロイドが、男性原理と女性原理を対比させた上で、「少なくとも西洋の文化では、家父長制が始まったのは馬を飼いならしたことに始まる。馬に乗った男性は、徒歩の男性の5倍強くなれる。もっと背が高くなり、もっと速く走れ、もっと大きな武器を運べる。だから馬を飼いならしていない社会では家母長制の文化もあった。古代ミノス文明がそう。しかしミケーネ人とギリシア人が侵攻し、さらに不運なことに津波に襲われた。そのあとにミケーネ人が入り込んで馬を飼いならしてからは、家母長制はなくなった。その文化が古代ギリシア文化へ伝わり、中東に伝わり、さらにはローマ時代を経て、果ては英国の騎士道につながった…というわけですよ。全部、馬が関係しています。770年ごろ、遠征で軍事的な力を拡大していった、欧州のフランク王国におけるカール大帝の登場は象徴的ですね。」と言ってる箇所だな。
オフ会でボクは、キリスト教は男性原理(女性差別)の宗教だって言ったばっかしだったからね。
なお、「英国では騎士道、日本では武士道と言っていますが・・・同じような封建制度を経験してきた。」は、前段に注目するのはマルだけど、後段は間違いだ。
英国(イギリス)には封建制は「ほぼ」なかったからね。
<TKS>
日曜日<のオフ会で>は本当にありがとうございました。
ニューミュンヘンから参加されたSさんから、太田さんに会えて、感激しました<と>のメールをいただきました。
次回の関西オフ会については、今回の反省を生かし、2次会・3次会からの参加もしやすいような会場や連絡方法を考えます。
岩国のSさんによれば、関西でのオフ会は、東京まで足を運ばなくて済むので、助かるとの話でした。
太田さんには、ご負担をかけるかと思いますが、今後、年に1回か2回の関西オフ会をお考えいただければと
いう気持ちです。Sさん曰く「次は忘年会ですね」との話、意気込みでした。
また、太田さんには、芦田均について論じていただければと思っています。短命内閣で、最も影の薄い首相とも言われていますが、
(私もそのように思っていましたが)彼の外交官としてロシアで、眼前でのロシア革命を見た経験、また、吉田茂との論争、憲法9条の芦田修正を考えると、吉田より、物事がわかっていたのではないかと思っています。
<太田>
以前に少し芦田に触れたことはあります。
外務省出身者の中では出色の人物であったことは確かですね。
それでは、その他の記事の紹介です。
長年の防衛費逓減の結果自衛隊がひどい状況に陥っており今後更にひどくなるというコラムだ。↓
<ちょっと増える日本の2013年防衛費をベースにしても、10年間で日本の防衛費は5%減ったが、中共は270%増え、韓国は45%増え、台湾は14%増えた。↓>
・・・Even accounting for the 0.8 percent increase contained in Abe’s 2013 budget, Japan’s annual defense budget has declined by over 5 percent in the last decade. During the same period, China’s defense budget increased by 270 percent (South Korea’s and Taiwan’s grew by 45 percent and 14 percent, respectively.)
<米ドル換算では、2000年に防衛費は日本が中共より63%多かったが、2012年には3分の1になってしまった。↓>
In U.S. dollar terms, Japan’s defense budget was 63 percent larger than China’s in 2000, but barely one-third the size of China’s in 2012. In fact, since 2000, Japan’s shares of world and regional military expenditures have fallen by 37 percent and 52 percent, respectively. ・・・
<日本の防衛費中の装備費は、2002年から約20%減少し、装備の調達を減らした結果、冷戦終了時には修理費は調達費の約45%だったのに、今では150%に上昇している。↓>
・・・much of the burden fell on the equipment procurement budget, which has declined by roughly 20 percent since 2002. Japanese defense policymakers have coped by extending the life of military hardware, such as submarines, destroyers, and fighter jets. As a result, Japan’s focus has shifted from acquisition to preservation, and maintenance costs have skyrocketed: at the end of the Cold War, maintenance spending was roughly 45 percent the size of procurement expenditures; it is now 150 percent.
<1980年代には毎年護衛艦3隻と戦闘機18機を調達していたが、今では護衛艦1隻と戦闘機5機に過ぎない。↓>
Because of declining procurement budgets and higher unit costs, Japan now acquires hardware at a much slower rate: one destroyer and five fighter jets per year compared to about three destroyers and 18 fighter jets per year in the 1980s.
<今後10年間で、護衛艦の隻数は30%減るだろう。↓>
In the coming decade, Japan’s fleet of destroyers stands to be reduced by 30 percent. ・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2013/07/30/the_land_of_the_sinking_sun_japan_military_weakness?page=full
一夫一妻制の起源について、哺乳類を広く調べた研究が二本出て、一つは嬰児が他の雄によって殺されるのを防止するためだとし、もう一つは、広大な地域にバラバラにいた雌が他の雄に孕まされるのを防止するためだとした。
後者の研究は、余りにも特殊な哺乳類である人間にこの種の研究結果があてはまるかどうかは疑問だとし、人間にとって一夫一妻制は必然であるとは言えないとしている。
(ボクはモチ、後者の説乗りだ。)↓
http://healthland.time.com/2013/07/30/the-reason-for-monogamy-researchers-disagree/
授乳期間が長ければ長いほど、その子供の言語能力やIQが高くなるんだと。↓
・・・The longer moms exclusively breast-fed their babies, the better those children did at age 3 on a vocabulary test, and at age 7 on an intelligence test,・・・
http://www.latimes.com/news/science/sciencenow/la-sn-breast-feeding-iq-20130729,0,7420604.story
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太田述正コラム#6361(2013.7.31)
<日支戦争をどう見るか(その10)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x1976)
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