太田述正コラム#6362(2013.8.1)
<皆さんとディスカッション(続x1977)>
<やへがき やくも>
≫共産党が自衛隊容認に転じさえすりゃ、民主なんていらなくなるんだけどね。≪(コラム#6358。太田)
共産党、期待できますかね。共産党は自衛隊の容認どころか、自衛権のなんたるかも理解できないのですから、わたしとしては期待できかねますね。
国際法上の自衛権行使とは「国内刑法が正当防衛を違法性阻却事由とするのと対応」し、「本来、国際法上違法なものであっても、その違法性が阻却される」ものですから、通常時に違法とされる行為でなければ、これにあたらないわけです。
自衛権(じえいけん)[ 日本大百科全書(小学館) ] [ 執筆者:石本泰雄 ]
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9/
ところが、先日の参院選で当選した小池晃氏は産経新聞のインタビューで、自身の主張である「常備軍によらない自衛権」を問はれ、「他国との争いは軍隊によらず外交交渉で解決する、というのが9条の精神だろう」と答へたのです。
【金曜討論】「憲法9条」 佐藤正久氏「国防軍を持つことを明記」、小池晃氏「国民合意で9条を完全実施」+(4/5ページ) – MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130628/plc13062807550003-n4.htm
もとより、外交交渉に違法性はありませんから、こんなものは自衛権をもちだすまでもない。これなら自衛権の否定を明言する方がよほど筋が通る。
党副委員長をつとめる人物がこれですから、共産党が自衛権についてまともに考へたことがあるとは思へません。
<太田>
共産党は、自衛隊を事実上認めてますよ。
お示しの記事の中で、小池晃は次のように言っています。
「「憲法は『陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない』としており、自衛隊は9条2項に明白に違反する戦力、つまり軍隊そのものだ。私たちは対米従属の根源である日米安保条約を廃棄するとともに、自衛隊については、当面軍縮の措置をとり、国民の合意で9条を完全実施する、すなわち自衛隊の解消を目指す・・・アジアの政治・軍事情勢が変わっていくことと『自衛隊をなくして大丈夫』という国民の合意が得られることが前提となる。・・・
解消に取り組む過渡的な時期はあるわけで、その間に外国から急迫不正の侵害があれば、必要なあらゆる手段をとって排除することは当然だ・・・
国家には当然、自衛権があるが、必ずしも常備軍が必要だとは考えていない。侵略などがあったときに主権を守っていくのは国家に固有の権利だ。・・・
自衛権も常備軍によらずに行使していこうというのが9条の規定だといえる・・・
中国や北朝鮮の現状をみればすぐに実現は難しいが、他国との争いは軍隊によらず外交交渉で解決する、というのが9条の精神だろう。・・・」
これは、日米安保の下での自衛隊は憲法違反だが、憲法違反の日米安保を廃棄すれば自衛隊は合憲である、という趣旨でしょう。
「アジアの政治・軍事情勢が変わ」らない限り自衛隊は解消しない、ということは、そういうことです。
外交云々は、憲法解釈論ではなく、「憲法の精神」論に過ぎません。
私が共産党に求めたいのは、同党が、(日米安保とは無関係に、)自衛隊は(それが軍隊であるかどうかはさておき)合憲であり、維持する、とはっきりさせ、その上で、日米安保は(それが違憲であるかどうかはさておき)廃棄する、とすべきだ、ということです。
こんな政策はフィージビリティがないですって?
そんなことはありません。
米国と韓国の同盟関係や米国と台湾の事実上の同盟関係は継続するという前提で、日本の核武装も視野に入れれば、この政策には十分フィージビリティがあります。
(私は同意いたしかねますがね・・。)
私から見れば、仮に共産党がこのような安保政策を打ち出せば、米国からの「独立」を巡って日本国内で議論が起きざるをえないでしょうから、大変結構なことなのです。
「日本がアメリカの準州か、何番目かの州になれば、沖縄にあんなに基地を置けない・・・首都圏がこれほど外国軍によって占拠されているのは、おそらく世界で日本だけ・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013080102000129.html
日本のこんな状態を異常だと思わない人には、共産党にすら期待を寄せざるをえない私の心情をご理解いただけないでしょうね。
(オフ会の二次会で、ハンドルネーム文十郎さんが、「首都圏・・・」の部分に言及しつつ、どうしてみんな平気な顔をしてるんだろう、と力説してましたよ。)
「やへがき」さんの批判がぴったりなのは、むしろ、長沼事件第一審の札幌地方裁判所の1973年9月7日の判決でしょう。
同判決は次のように判旨しています。
「自衛権の行使は、たんに平和時における外交交渉によつて外国からの侵害を未然に回避する方法のほか、危急の侵害に対し、本来国内の治安維持を目的とする警察をもつてこれを排除する方法、民衆が武器をもつて抵抗する群民蜂起の方法もあり、さらに、侵略国国民の財産没収とか、侵略国国民の国外追放といつた例もそれにあたると認められ、また・・・非軍事的な自衛抵抗には数多くの方法があることも認めることができ、また人類の歴史にはかかる侵略者に対してその国民が、またその民族が、英知をしぼつてこれに抵抗をしてきた数多くの事実を知ることができ、そして、それは、さらに将来ともその時代、その情況に応じて国民の英知と努力によつてよりいつそう数多くの種類と方法が見出されていくべきものである。」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12106818837
抵抗方法として合法なものも違法なものもごっちゃまぜで、しかも、外交を最初に挙げている、というトンデモ判決です。
なお、元外務省キャリアの浅井基文も、(本人に自覚があるのが救いではあるものの、)国際法の法理を「発展」させちゃってるところの、(こちらは違法なものだけを挙げているから、この判決よりはマシだとは言えるが、)モノスゴーイ主張をしてますよ。
「刑法で個人に認められる「正当防衛」(「緊急避難」)の権利のいわば国家版が自衛権です。・・・
-国家の自衛権と人民の自衛権:もう一つ、「国家=お上」意識が根強い私たち日本人として、特に踏まえておきたいことがあります。つまり、アメリカ独立戦争、フランス革命を経て「人民主権」(民主)の考え方が世界的に確立した今日とそれ以前の時代とでは、自衛権が意味することの中身も異なっていることです(ただし、このように考える私の意見はまだ多数説ではありません)。・・・
*「国家の自衛権」を「行使する」場合は、もっぱら「国家の戦力(軍事力)」を使用することが中身となります。しかし、
*「人民の自衛権」を「行使する」場合は、その中身は人民の意思に基づいた実に多様なものであり得るのです。戦争放棄・戦力不保持の第9条を前提にして考えれば、例えば第二次大戦時のフランス、ポーランドなどにおけるレジスタンス運動、占領・支配に対する不服従運動があります。」
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2013/533.html
それでは、その他の記事の紹介です。
まことに申し訳ないが、単に、頭が悪い、頭の中が整理されていない、としかこの発言、形容のしようがないね。↓
「麻生副総理の憲法改正めぐる発言・・・」
http://www.asahi.com/politics/update/0731/TKY201307310562.html
トヨタやホンダや藤本隆宏
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E6%9C%AC%E9%9A%86%E5%AE%8F_(%E7%B5%8C%E5%96%B6%E5%AD%A6%E8%80%85)
さんの意見を聞きたいなあ。↓
「・・・訳知り顔の評論家たちは、デトロイト破綻の原因として、労働組合の存在や犯罪の多さ、税金の高さを挙げるかもしれない。だが本当の根深い原因は、自動車が誰でもつくれる時代になり、デトロイト最大の雇用主が自動車メーカーであるという簡単な事実にある。市の最大の雇用主が、簡単にはつくれないものをつくるようになれば、デトロイトは息を吹き返すことだろう。」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2901T_Z20C13A7000000/?dg=1
ドイツも、戦死者を現地に葬るんだー。↓
http://www.spiegel.de/international/europe/germany-to-open-last-wwii-war-cemetery-in-russia-a-914093.html
コラム#6336(未公開)で、「できそこないのアングロサクソンの米国では、遺骨は米国に持ち帰って葬る・・・ということは、恐らく欧州諸国でも米国と同じではなかろうか。」と書いたのは誤りであったことになる。
ハリー・ポッターの著者のローリングが、別のペンネームで書いた犯罪小説の著者がローリングであることを漏らした、自分の弁護士事務所及びこの弁護士事務所のパートナーの友人がローリングと和解し、この本の印税をローリングが寄付する、英軍兵士のための慈善団体に、彼らも寄付をすることになった。↓
J.K. Rowling announced she will donate profits from her book written under the pseudonym Robert Galbraith to charity.・・・
・・・the pseudonym reveal was the result of・・・Chris Gossage, who is a partner at Rowling’s law firm・・・casually mentioning it to family friend Callegari, who then spilled it to a Sunday Times journalist on Twitter.・・・
Both Gossage and Callegari apologized for the leak, and the Russells law firm apologized and agreed to both pay Rowling’s legal fees and to also make a substantial donation to The Soldiers’ Charity.・・・
http://www.latimes.com/features/books/jacketcopy/la-et-jc-jk-rowling-donates-galbraith-royalties-to-soldiers-charity-20130731,0,2397359.story
タイムトラベル映画で女性が(一人で)タイムトラベルするものがないだと。
そう言えばそうだな。↓
http://www.theguardian.com/film/2013/jul/31/why-cant-women-time-travel
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太田述正コラム#6363(2013.8.1)
<日支戦争をどう見るか(その11)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x1977)
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