太田述正コラム#6240(2013.5.31)
<欧州売春事情>(2013.9.15公開)
1 始めに
表記に係るシュピーゲル誌の記事
http://www.spiegel.de/international/germany/human-trafficking-persists-despite-legality-of-prostitution-in-germany-a-902533.html
のさわりをご紹介し、私のコメントを付したいと思います。
2 欧州売春事情
「ドイツには、200,000人にのぼる現役の売春婦がいる。
少女達のうちの65~80パーセントは外国からやって来ている。
その大部分はルーマニアとブルガリアからだ。・・・
2001年に、ドイツの連邦議会は、当時の社会民主党と緑の党の連立政権が、売春婦達の仕事環境を改善することを意図した売春法を採択した。
この新法の下で、女性達は、自分達の賃金に係る裁判を提起できるようになり、また、健康、失業・年金保険諸制度に声を反映できるようにもなった。
この法律の目的は、売春を、銀行の窓口係や歯科助手のような職業とすることで、蔑視されるのではなく、<社会に>受け入れられるようにすることだった。・・・
<しかし、>現在では、売春に詳しい、<ドイツの>警察官達、女性諸団体、そして政治家達の多くが、この善意の法が、実際には、女衒への補助金制度と大差ないこと、そして、人身売買者にとって<売春>市場をより魅力的なものとしている、と確信するに至っている。
この売春法が施行された時、ドイツの民法も改正され、<それまでは、>「売春の助長(promotion)」は犯罪であるとされていたのが、「売春婦の搾取」によって置き換えられた。
<そして、>(売春婦の)周旋(procurement)は、それが「搾取的」または「統制的(dirigiste)」である場合に<限って>犯罪となる<、とされた。>
こういった犯罪の諸要素を証明するのは極めて困難なので、警察と検察は挫折感を覚えている。・・・
・・・<ドイツの売春婦の大部分は外国からやって来ているわけだが、>モルドヴァの二人の少女達<の場合>、それぞれ15歳と16歳の時に、彼女達の兄弟や父親が、しばしば彼女達に対して、「売女よ、外に行って少しはカネを稼いで来い」と言い放ったのだという。・・・
<結局、彼女達も人身売買的にドイツに連れてこられるのだが、こういった問題もあり、>かつて、ドイツ同様の道を追求した諸国のうちの若干が、スウェーデンによって打ち立てられた範例に倣おうとしている。
ドイツが売春法を採択する2年前に、スウェーデンは正反対のアプローチをとった。・・・
<すなわち、>1999年に、スウェーデンは、性的諸サービスを買うことを違法としたが、同国の欧州での隣接諸国は全く信じ難い思いだった。
売春婦ではなく顧客が処罰される、と言うのは<欧州(?)で>初めてのことだった<からだ>。・・・
スウェーデンの件の法は、<ドイツの売春法のような>自主的(autonomous)意思決定を行う売春婦の権利にではなく、スウェーデンとドイツの両方の憲法で謳われているところの、男性と女性の同等の地位に立脚していた。
<スウェーデンでの>議論を、ざっくり単純化して言えば、売春は搾取であって、常に力の非均衡が存在する、というものだ。
スウェーデン人達は、男性がセックスのために女性を買うことができるという事実は、全女性の平等権にとって有害な女性に係る認識を固定化してしまう、と主張する。・・・
欧州の何カ国かは、このスウェーデン・モデルに追随しつつある。
<スウェーデンと>同じような法律を採用したアイスランドでは、政治家達が、オンライン・ポルノの禁止すら考慮中だ。
ノルウェーは、2009年以来、売春婦の顧客を、やはり処罰してきた。
<スペインの>バルセロナでは、街娼サービスを利用することは違法だ。
<また、>2006年に施行されたフィンランドの法では、<男性が、>女衒のために働いている売春婦や人身売買の犠牲者たる売春婦の顧客になると、処罰されることがある。
しかし、男性がそうであることを知っていたことを証明するのは不可能であることが証明されている。
フィンランドの法務省は、フィンランドがスウェーデン・モデルを採用すべきかどうかの報告書を準備中だ。
フランスの多くの人々はスウェーデンに倣おうとしている。
<フランスの女性の>女性人権担当相・・・は、就任する直前に、大胆な声明を発した。
「私の目標は、売春が消滅することを見届けることだ」と彼女は言ってのけたのだ。
政治家達や社会学者達はこのアイディアを「ユートピア的」であると嘲り、売春婦達はリヨンとパリの街路で抗議の声を上げた。
<彼女の>法案は顧客に最高6か月の入獄と3,000ユーロを科そうというものだった。
しかし、彼女が政府内で優勢となるには若干の時間がかかることだろう。・・・
オランダは、ドイツより2年前に<売春に関し、ドイツ同様の>法的規制緩和の道を選んだ。
オランダの法務省と警察は、爾来、売春婦達に明瞭な改善は見られないことを認めている。
彼女達は、全般的に以前に比べて健康状態は悪化し、より多くの者がドラッグ中毒になっている。
<オランダの>警察は、売春婦達の50~90パーセントがその職に自分の意思で就いたわけではない、と推定している。」
3 終わりに
全般的に英米に比べて売春に寛容な欧州大陸諸国ですが、(立ち上がりの頃のサロンを疑似的売春宿と形容できるかもということはさておき、)欧州大陸にはセックスだけの即物的な売春の歴史しか基本的にないことが、売春婦に社会の最底辺の人々がなり、かつ、売春に人身売買がつきものになっている原因ではないのでしょうか。
売春婦や売春宿にも序列が付き、序列が上になればなるほど、顧客とのセックス以外の知的交流の度合いが大きくなり、最上級の序列の才色兼備の売春婦ともなれば、国民的アイドルたりえたところの、江戸時代への回帰を目指し、日本で遊郭を本格的に復活させ、世界に範を示す意義と必要性は大きい、と改めて思います。
それにしても、どうして、こんなことまで、私が声を挙げなければならないのでしょうか。
欧州売春事情
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