太田述正コラム#6314(2013.7.7)
<日進月歩の人間科学(続x32)(その1)>(2013.10.22公開)
1 始めに
女性の方が男性よりも、本来的には、性により貪欲である、という本を紹介したことを覚えておられるかもしれません。(色々検索をかけたがコラムを発見できなかった。分かった方はご教示願いたい。)
これを受けて、コラム#6229と6249でその話題を持ち出したところです。
そこへ来て、このたび、ガーディアン紙に、この本からの抜き刷りが掲載され、
A:http://www.guardian.co.uk/books/2013/jul/05/what-do-women-want-extract
この本がどのような実験結果を踏まえて書かれたのかがよく分かることと、この本の書評が同紙に掲載された
B:http://www.guardian.co.uk/books/2013/jul/05/what-do-women-want-daniel-bergner
ことから、改めてこの本を取り上げることにしました。
なお、女性の性的貪欲性は、人の人間主義性同様、かつては意味があったのに、現在は意味が余りなくなっているために、休眠状態にある、という点で共通する、と言えるでしょう。
2 驚くべき実験結果
「心理学者のメレディス・チヴァース(Meredith Chivers)は、・・・プレチスモグラフ(plethysmograph)(注1)を用いた調査を行った。
(注1)「心拍数・血液の流れなどの変動を測定する<機器>」
http://ejje.weblio.jp/content/plethysmograph
それは、膣の中に挿入される小さな電球と光センサーだ。
半ば身を横たえて、彼女の女性被験者達は、古い嵩張ったパソコンのモニター画面で一連のポルノを見せられた。
この2インチのプレチスモグラフは膣壁に光線を照射し、跳ね返って来る光を読み取る。
このようにして、この機器は、膣への血流を測定し、非常に原始的な方法(level)でもって、何が女性を性的に亢進させるかを発見する。
この調査に応じるにあたって、チヴァースの被験者達は、自分が異性愛者であるか同性愛者であるかを開示させられた。
彼女達は、男女間、女性同士、男性同士、そして(類人猿の一種である)ボノボの番同士、の性交の映像を見せられた。
被験者達は、異性愛者も同性愛者も、そして類人猿同士のものも、そのいずれによっても、瞬時に性的に亢進した。
彼女達は、押ボタン(keypad)を持たされ、<映像を>見ながら、自分自身の亢進感の程度を入力させられた。
よって、チヴァースは、生理学的数値と自己申告数値を得たわけだ。
<ところが、>この両者は、殆んど全くと言ってよいほど合致しなかった。
チヴァースが得た客観的数字・・これは、技術的には膣<血>脈振幅(vaginal pulse amplitude)と呼ばれるものを追跡したものだ・・は、スクリーンに何が映し出されていようと、また、彼らが相互に、或いは彼ら各々で、何をやっているかに関わらず、上昇した。
押しボタンはプレチスモグラフと完全に齟齬をきたした、ということだ。
自己申告では、<全員、>ボノボ達には無関心であると表明した。
しかし、驚くのはこれからだった。
女性二人が自分自身に触れ<て自慰し>た後、相互にからみあっ<て性技をし>たフィルムの場合には、異性愛者たる被験者達は、自分達の生殖器が<客観的に>宣言したものに比べて、はるかに少なくしか亢進しなかったと<主観的には>述べた。
男性の同性愛者の性交の部分に関しては、異性愛者たる女性による<自己申告>評点はそれよりも更に低かった。
<次に、>チヴァースは、異性愛者と同性愛者の男性達に対して同じ調査を行った。
男性用のプレチスモグラフを<男性器に>括り付けられた彼らは、彼女が「範疇特定的(category specific)」と名付けたところの、予想されたパターンでもって回答した。
異性愛者たる男性<の性器>は、男性達が各々自慰行為をしているのを見ると少し膨張し、彼らが一緒になっ<て性交し>たのを凝視するようになると、更にもう少し膨張した。
しかし、これは、フィルムが女性一人<で自慰している>場合や女性と男性<が性交している>場合に比べればものの数ではなかったし、女性同士<が性技をしている>場合にはとりわけ<膨張度はスゴいもの>だった。
範疇特定的と言えば、それは同性愛者たる男性には更にあてはまった。
彼らの計測値は、男性達が<各々>自慰行為をした場合に跳ね上がり、男性が男性と性交した場合に噴射的に上昇した。
他方、男女の<性交>場面を見せられた場合にも上昇はしたけれど、それはより緩慢な上昇だった。
そして、場面に女性達しか現れなかった場合は、プレチスモグラフは殆んど反応しなかった。
ボノボ達に関しては、同性愛者たる男性も異性愛者たる男性も、その反応は、山々や諸平野が映し出(panning)された光景に接した場合と同程度だった。
そして、<女性の場合とは違って、>男性の場合は、客観と主観は同調していた(in sync)。
すなわち、<女性の場合と違って、男性の場合は、>体と心は同じ物語を語っていたのだ。
(続く)
日進月歩の人間科学(続x32)(その1)
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