太田述正コラム#6707(2014.1.20)
<『「里山資本主義」のススメ』を読む(その3)>(2014.5.7公開)
 「エコストーブはもともと、1980年代にアメリカで発明され、「ロケットストーブ」と呼ばれていた。和田さんがその存在を知ったのはほんの数年前のことだ。・・・
 しかしロケットストーブは、子どもの背丈ほどもある大きなドラム缶をベースに、レンガを使って作られるため重く、とても持ち運ぶことはできない。そこで、仲間の一人が、ひとまわり以上小型のペール缶で同じ構造もものができないかと改良を加え、今の形ができあがった。<(注2)>・・・
 (注2)「エコストーブ(ロケットストーブ)の作り方」(写真・ユーチューブ映像へのリンク付)
http://hirotaguchi.net/satoyamalife/eco-stove/
 和田さん<が>・・・1982年に立ち上げたのが、「過疎を逆手にとる会」だった。・・・
 しかし、都市部の人々を惹きつけるのには、何か決定打がない。そう感じ始めていた2011年初頭、出会ったのが、エコストーブだった。・・・
 以来、和田さんたちは、各地で「エコストーブ講習会」を開くようになった。・・・
 原発を止めることはできなくても、里山では電気使い放題でない暮らしができる。そういう価値に気づいていくことが、21世紀の里山暮らしなのである。・・・
 <ちなみに、>オーストリアは、・・・岡山県真庭市のように、木を徹底活用して経済の自立を目指す取り組みを、国をあげて行っているのである。
 国土はちょうど北海道と同じくらいの大きさで、森林面積でいうと、日本の約15%にすぎないが、日本全国で1年間に生産する量よりも多少多いぐらいの丸太を生産している。・・・
 ヨーロッパでは、スウェーデンやフィンランドといった北欧でも林業が盛んだが、これらの国々では平地にある森で営まれるため、険しい山を持つ日本にとっては、その技術は参考にしづらい。しかし、アルプスを抱えるオーストリアの山々は日本と同じように切り立っていて、そこで培われた技術は、日本にも導入しやすいそうである。・・・
 取材<当時、>・・・灯油1リットルはおよそ80セント。これに対し、同じ熱量分のペレットは、半分のおよそ49セント。・・・
 残念ながら、・・・標準的なボイラー1台<と>・・・石油ボイラー<1台>との価格差は3000~4000ユーロある。しかし、その差がなくなるのも時間の問題だ・・・。・・・
 ここまで、オーストリアが里山資本主義を進めてきた背景にある、<ロシアからパイプラインで運ばれてくる天然ガス等に依存しない>エネルギーの安全保障と地域経済の自立の理念を見てきたが、オーストリアにはもう一つ、忘れてはならない重要な理念がある。
 オーストリアは、世界でも珍しい「脱原発」を憲法に明記している国家である。・・・
 オーストリアは、軍事利用であれ、平和利用であれ、原子力の利用そのものを憲法で否定している数少ない国の一つなのだ。・・・
 オーストリアでは、・・・近いうちに電力の輸入を全て停止し、原発由来の電力を完全に排除することができると計算している。・・・
 <ただし、>オーストリア<での>・・・木質バイオマスエネルギーの割合はまだ10%(日本はわずか0.3%)<だ。>・・・
→10%とは驚きです。
 原発の是非とは関わりなく、日本でもバイオマスエネルギーの一層の活用を目指すべきでしょう。(太田)
 中島さんの次なる革命は、工場の片隅でひっそりと進められていた。製造ラインはまだないため、手作りで試作を繰り返しているという建築材。
 一見、板を重ね合わせただけの何の変哲もない集成材。ところが、よく見ると、通常の集成材は、板は繊維方向が平行になるよう張り合わせているのだが、こちらは板の繊維の方向が直角に交わるよう互い違いに重ね合わせられている。
 その名もCLT。クロス・ラミネイティッド・ティンバーの略で、直訳すると、「直角に張り合わせた板」<(注3)>だ。・・・実は、たったこれだけのことで、建築材料としての強度が飛躍的に高まるのだという。・・・
 (注3)「日本ではJAS(日本農林規格)化が進められ、JASでのCLTの名称は、「直交集成板」となっています。・・・建築材料としてのメリットは、寸法安定性の高さ厚みのある製品であることから高い断熱・遮音・耐火性を持つこと、また、持続可能な木質資源を利用していることによる環境性能の高さなどが挙げられます。
また、CLTパネルを用いた構法として見ると、プレファブ化や、接合具のシンプルさなどによる施工性の速さや、RC造などと比べた場合の軽量性も大きな魅力です。」
http://clta.jp/clt/
 これまで建築が認められてこなかった、木造の高層建築が可能になるというのだ。・・・
 CLTが誕生したのは、2000年頃。これまた・・・オーストリアからだった。・・・
 CLT建築は、・・・夏は暑く、冬は寒い石造りや鉄筋コンクリートより快適な住環境を提供した。・・・
 <また、>イタリアにある・・・研究所が、地震にも強いことを実験によって証明した・・・。・・・
 <オーストリアでは、>今は9階建てまで、CLTで建設することが認められているという。・・・
 <イタリアでは>近々、13階建てのCLT建築も登場するとのことだった。・・・
 火事への備えも万全。・・・
 <こうして、CLTは、>ヨーロッパ全体で、・・・建材生産量・・・の8分の1を占めるまで成長した。・・・
 <これに比べ、日本では取り組みが遅れている。>
→五重塔や天守閣といった高層建築を木材で建ててきた日本でCLTの普及が遅れているとは何たることでしょうか。
 農水省と経産省と国交省の縄張りの狭間の領域だからくさいですね。(太田)
 最近でこそ、2010年、・・・「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が策定され<たが、>・・・毎年、新規に着工される公共施設のうち、木造はわずか8.3%にとどまっている上、公共施設だけでは爆発的な木材需要の向上は期待することもできない。
 そうした現状を打破しようと、中島さんは、2012年1月、鹿児島、鳥取の製材会社と連携し、「日本CLT協会」<(注4)>を設立。中島さん自ら会長に就任し、本格的な普及に向け、乗り出した。」(50~51、56、60~61、65、67、73~74、88、90、105~106、108~110、113)
 (注4)「本部(事務局)〒717-0013 岡山県真庭市勝山1209(銘建工業株式会社内)」
http://clta.jp/about/
(続く)