太田述正コラム#7032(2014.7.2)
<皆さんとディスカッション(続x2312)>
<太田>(ツイッターより)
 「集団的自衛権の行使を認めた閣議決定」・・実際のタイトルは違うが・・を読んでみた。
http://www.asahi.com/articles/ASG713DQGG71UTFK00J.html
 一般の人が読んでもさっぱり分からないんじゃないか。
 自衛隊がやっちゃいけないことだけ書けば(=ネガ規制にすれば)分かり易くなるが、いつそうなることやら。
 いずれにせよ、今回、9条に関しても日本国憲法に規範性がないことが紛れる余地なく示されたことを、そして、何よりも、日本が、(自覚なきままではあるが、)「独立」に向けての確実な第一歩を踏み出せたことを、僕としては、心から寿ぎたい。
 希望を持ってこれからも頑張るので応援してね。
<DsYW5jx5>
 今回の集団的自衛権の解禁、太田さんは安部首相に対し一定の評価をしているんですか?
 それとも前に言ってた通り、限定解禁なら「しないほうがマシ」という立場でしょうか?
<太田>
 かなり前に、限定解禁でもやらないよりはマシって立場に変わってまっせ。
 なお、先ほどの私のツイートも参照のこと。
<TA>
  –ツイッターのつぶやきについての質問–
>集団的自衛権の行使を認めた閣議決定」・・実際のタイトルは違うが・・を読んでみた。http://www.asahi.com/articles/ASG713DQGG71UTFK00J.html 一般の人が読んでもさっぱり分からないんじゃないか。
 記事中の、
 「我が国による「武力の行使」が国際法を遵守して行われることは当然であるが、国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある。憲法上許容される上記の「武力の行使」は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。この「武力の行使」には、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするものが含まれる
が、憲法上は、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち、我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として初めて許容されるものである。」
について質問ですが、この文章、「憲法上許容される上記の「武力の行使」」とやらは「国際法上<の>集団的自衛権」よりも狭い概念である、と言っているように読めるような気がするのですが、気のせいでしょうか。
<太田>
 憲法上許容される個別的自衛権が国際法上許容される個別自衛権よりも狭いという建前であったことと、平仄を合わせた、というだけの意味だ、と言いたいところではあるけれど、個別的自衛権的な集団的自衛権の行使しかできないという意味だとすると、かなり狭い、ということになるのかもしれません。
 しかし、この閣議決定の解釈は、首相・・正確には内閣・・が行うのでしょうし、その「解釈」が文面と乖離し過ぎていると思われるのであれば、新たな憲法解釈を閣議決定すればいい、ということになるので、心配はなさそうです。
 まあ、私に言わせれば、憲法に規範性がないのだから、当然のことですが・・。
<pZjdJN3s>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
 集団的自衛権行使反対を表すかのような出来事が↓
 いじめかばう女児を暴行 三河の公立小、担任制止できず
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014070190090301.html
 しかし安倍ちゃんの説明も滑舌が悪いせいもあるが、それだけではないと思う。
 私ならこう言う。命の危険があろうとも消火活動する消防隊員と一緒でしょ。と
 119番の通報があればサイレンを鳴らして現場へ駆けつけるのが、当然であり、ガス爆発等によって二次災害の可能性ががあっても消火活動するのが、消防の仕事で、命の危険があるから消火しなければ、燎原の火となるし、危険があるからと言って消防隊員が居なくなったらどうすんのさ。
 実際 総務省消防庁が毎年発表している『消防白書』にそれによると、公務災害死者(「公務中」ですので火災などの災害現場とは限りません)の数は…、
平成20年中……5人
平成19年中……7人
平成18年中……3人
平成17年中……8人
平成16年中……5人
 パーセンテージは低いと思うが0ではない。
 全く平和ボケを享受している人たちは危険性0%でないといけないと言うのかと安倍ちゃんが言ってはくれないのかな。
<6uRdH1aM>(同上)
 TV新聞に出てくる人出てくる人、縄文モード全開やな。
⇒事例だ。「閣議決定で大江健三郎さんら会見 「平和憲法ひっくり返した」・・・」http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014070101002128.html、「「司法 違憲判断も」 専門家「従来解釈が確立」・・・」http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014070202000122.html。(太田)
<TTiiED1w>(同上)
 <omHsHCcUクン(コラム#7030)、>あれ?違うの?
 もし共産や社民みたいなのが政権取って(この前提が有り得ない話だけど)憲法の解釈変えたら、また集団的自衛権を行使出来なくなると思ってたよ俺。
⇒その通り。憲法に規範性がないってのはそういうことさ。(太田)
<b6DmvwKU>(同上)
 憲法解釈を閣議決定で変更するのは,やっぱり乱暴じゃね?
 そもそも国民に戦う覚悟があるのか疑問なんだけどなー。
 変えるにしても,変えないにしても,やはり国民の意思は問うべきでしょ。
<iB4ViACk>(同上)
 そもそも、<自衛隊を認めてる>いままでの「解釈」自体が法的根拠がないんじゃないの?
 はなっから規範性がない。(おいら法律知識ないので適当だが。)
 もちろん、国民に戦う覚悟はないわねw。
 本当は解散総選挙すればいいんだけどね。
⇒党綱領で憲法改正を謳ってる自民党に国民は政権を取らせたんだから、憲法解釈変更については、次の総選挙の時に国民が民意を示せばいいんじゃないかな。(太田)
<iB4ViACk>(同上)
 今朝の新聞が紙面を大きくさき、あらゆる手段を使って反対キャンペーン論陣を貼っていてワロタ。
 少しは賛成意見も載せてほしいな。
 
<iB4ViACk>(同上)
 ウチは地方紙だから、しょうがないんだけどな。
 産経新聞だったら賛成意見ありそうだ。
⇒朝日新聞だって社是「(日本はどこへ 集団的自衛権:1)「強兵」への道、許されない 編集委員・三浦俊章・・・」http://www.asahi.com/articles/DA3S11220047.html?iref=comtop_list_ren_n04、「日本の重大な分岐点 「解釈」の果てに 文 保坂展人・・・」http://www.asahi.com/and_w/interest/SDI2014070198271.html?iref=comtop_list_andw_n01 に反する、賛成意見載せてたぜ。「「首相はオオカミ少年ではない」 河村・名古屋市長・・・」http://www.asahi.com/articles/ASG7174H2G71OIPE03R.html?iref=comtop_list_pol_n02 (太田) 
<太田>
 関連記事だ。
 国連が新たに集団安全保障が発動することほぼありえないから、議論の意味は殆んどない。
 唯一の集団安全保障の発動例が朝鮮国連軍だが、今回の憲法解釈変更で、朝鮮有事で出動している米軍等の艦艇・航空機を韓国の領域外で守ることはできる・・韓国の領域内でも韓国政府の同意があればそれができる・・ようになったことで、このケースにおいても、もはや議論の意味は殆んどなくなった。↓
 「政府答弁書が波紋 集団安全保障下での日本の防衛は許されない?・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140701/plc14070123590027-n1.htm
 さすが選良。
 一般国民の水準よりはマシなようで。↓
 「閣議決定、賛否まだら模様の野党 結束なく批判迫力欠く・・・」
http://digital.asahi.com/articles/ASG713H74G71UTFK00S.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG713H74G71UTFK00S
 芸術的なまでの、集団的自衛権行使の個別的自衛権的説明であるな。↓
 「自衛官守る上でも大きな一歩…自民・佐藤正久氏・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140701-OYT1T50164.html?from=ytop_ylist
 毎日は社是を変更したのか?
 朝日と東京も見習って欲しいねえ。↓
 「・・・閣議決定で行使を容認したのは、国民の権利としての集団的自衛権であって、政治家や官僚の権利ではない。歯止めをかけるのも、国民だ。私たちの民主主義が試されるのはこれからである。」
http://mainichi.jp/opinion/news/20140702k0000m070166000c.html
 当たり前だろー、と言いたいところをぐっと堪えて、目出度し目出度し。↓
 「集団的自衛権:行使容認に懸念表明の韓国政府も反対せず・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/07/02/2014070200965.html
<太田>(ツイッターより)
             
 「…上海であった出来事…あるスーパーマーケットで1歳の娘と買い物をしていると、娘がおやつ売り場の商品をいじってしまった。そのまま立ち去ろうとしたところ、日本人の母子がやってきて、5歳くらいの男の子が娘がいじった商品をきれいに並べ始めたではないか。…なにかで自分を激しく削られた感じがした…」
http://news.livedoor.com/article/detail/8999068/
 人間主義であるな。「…アルプス電気の片岡政隆会長が…訪れた広東省内の関連会社での会議で「第二次世界大戦で日本は中国を侵略していない。逆に中国が米国などの植民地状態から脱却するのを助けた(中国語記事からの日本語訳)」などと発言。…片岡会長が従業員の前で謝罪することで、騒ぎは収まったという。…」
http://news.livedoor.com/topics/detail/8998314/
 片岡サン、動機が人間主義だったというところまでは正しいけど、目的は植民地解放じゃなく、対赤露抑止だったんだからね。
 ま、早晩、中共人民が自ら正解に辿りつくことだろうて。
<gddhE.Gw>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
 「脳は主語を理解出来ません。だから、人の悪口を言うと脳の中では自分が悪口を言われた状態になります。
 つまり、誰かの悪口を言うと自分自身に悪口を言っていると判断し、自分も傷つき気分が悪くなります。
 この脳の特性を理解し、良い言葉を日常的に使うようにしましょう。
 相手にかける言葉を大切にする事が結果的に自分自身をも大切にする事につながります。」
http://matome.naver.jp/odai/2136590852040993701?guid=on
<53yjrJAo>(同上)
 アファーマティブアクションの現状
http://i.imgur.com/MXiqgET.jpg
<太田>
 プッ。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 オボ嬢様にはご機嫌麗しく祝着至極に存知奉りまする。↓
 「小保方氏が理研に出勤、実験参加・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/9000339/
 イラク議会、何も決められず散会。
 さっさと三分割しちまえってんの!↓
 Iraqi parliament session collapses amid political standoff・・・
http://www.theguardian.com/world/2014/jul/01/iraqi-parliament-session-collapses-death-toll-isis
 停戦期間明けの大攻勢で、ウクライナ政府軍、赫赫たる戦果。
 (どうやら、終わりが近いようだ。)↓
 Ukrainian troops hit pro-Russian rebel positions with artillery and air strikes after president declared end to the ceasefire ・・・ taking back a key border crossing and three villages.・・・
http://www.theguardian.com/world/2014/jul/01/ukraine-petro-poroshenko-goes-on-attack 
 アメちゃんの自信喪失ぶりは凄まじい。↓
 <自分達の自由度への満足度は、8年間で91%から79%に下落。↓>
 ・・・Seventy-nine percent of US residents are satisfied with their level of freedom, down from 91 percent in 2006・・・.
 <この水準は、120か国中36位。↓>
 That 12 point drop pushes the US from among the highest in the world in terms of perceived freedom to 36th place, outside the top quartile of the 120 countries sampled, trailing Paraguay, Rwanda, and the autonomous region of Nagarno-Karabakh.・・・
 <政府に対する信頼性はガタ落ち。大統領職は29%、最高裁は30%、議会は7%。↓>
 Since June 2013, confidence of Americans in their government has dropped significantly. In a poll released Monday, Gallup reports a 7 point drop in confidence in the presidency (to 29 percent), a 4 point drop for the Supreme Court (to 30 percent), and a 3 point drop for Congress (to 7 percent, a record low.)
 <米国に腐敗が蔓延していると思う人は、59%から79%に上昇。↓>
 ・・・the portion of Americans who believe there to be “widespread corruption” in the US has jumped from 59 percent in 2006 to 79 percent in 2013.
 <内国歳入庁が保守派を付け狙っていることやNSAによる盗聴が明らかになったせいか。(いんにゃ、もっと根源的な不信感、自身喪失感なんじゃよ。(太田))↓>
 ・・・It could be due to recent scandals like the IRS’s targeting of conservative groups and the NSA leaks.”・・・
http://www.csmonitor.com/USA/Politics/2014/0701/Land-of-the-free-Not-so-much.-Americans-sense-of-freedom-drops-poll-finds
 自由民主主義を旗印にした対外政策を止めろと訴えるコラムだ。
 (だけど、至上の文明を劣位の文明が継受するのは極めて困難だからっていうリクツだが、そのリクツが間違ってんだよ。アングロサクソン文明は、人間主義文明に比べて劣位の文明であり、自由民主主義なんてのは、人間主義ほど普遍性がないことが決定的なんだよ。(太田))↓
 ・・・Liberals rightly emphasize individual liberty and are wary of unchecked power, and they believe that these principles apply to all human beings. Accordingly, liberals believe democracy is the best form of government and favor the rule of law, freedom of expression, and market economies. They also believe — with some validity — that most human beings would be better off if these practices were universal. ・・・
 Unfortunately, the past 20 years have shown that liberalism is a poor guide to conducting foreign policy. ・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2014/07/01/american_values_are_to_blame_for_the_worlds_chaos_democracy_human_rights_ukraine_iraq?wp_login_redirect=0
 米墨戦争も米西戦争もベトナム戦争も、米側が相手方の攻撃をでっちあげたし、対イラク戦争も攻撃の切迫をでっちあげたが、例外が日米戦争だと。
 (経済制裁とフライングタイガースをやっててなおかつ、真珠湾だけを問題にするのけ?この米国人に残された最後の、神話に基づく矜持を我々は粉砕する世界史的義務があるのさ。(太田))↓
 The Mexican War began when President Polk cited an attack on American troops in Texas — troops he had deliberately placed there to provoke Mexico. The Spanish American War began when President McKinley claimed that the battleship Maine had been blown up by Spanish saboteurs; subsequent investigations showed that the explosion originated inside the ship, probably due to an accidental fire in the munitions compartment.
 More recently, the Vietnam War moved into high gear when President Lyndon B. Johnson used an incident in the Gulf of Tonkin to justify massive military intervention in Southeast Asia. The incident occurred in disputed waters, and one supposed gunboat attack never really happened. The enemy might very well have been a pod of whales.
 This pattern is not perfect. The Japanese attack on Pearl Harbor was not a figment of President Franklin D. Roosevelt’s imagination. Nor have subsequent conspiracy theories arguing that he was willfully negligent, searching for a “back door to war” against Germany, stood the test of time.
 American military intervention in Iraq, however, fits the pattern perfectly.・・・
http://www.latimes.com/opinion/op-ed/la-oe-ellis-iraq-history-vietnam-20140702-story.html
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太田述正コラム#7033(2014.7.2)
<欧州文明の成立(続)(その5)>
→非公開。