太田述正コラム#7211(2014.9.30)
<皆さんとディスカッション(続x2401)>
<太田>(ツイッターより)
 「中国国際経済交流センター副理事長の魏建国氏が…「今後10年から15年にかけては、中日経済貿易発展の黄金時代となる」と…講演<で>…指摘した。…」
http://j.peopledaily.com.cn/n/2014/0929/c94474-8789529.html
 芸術的対日戦略の転換は止む無しとしても、ちと性急かつ直截過ぎやあしませんか、習近平閣下。
<f9ib19hY>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
≫アルバニアには、いつの時代にもイスラム教徒はあんましいなかったことをキミも認めたわけね。(太田)≪(コラム#7209。太田)
 『イスラームの歴史2 拡大する帝国』やWikipediaでもことごとく「スーフィーの影響によりイスラムへ改宗した」と記述されている通り、同じく「イスラムへ改宗した」と思ってるよ。
 こればっかりは見解の相違というやつだから、しょうがない。
⇒なんだ、元の木阿弥か。
 「見解の相違」なんかじゃなく、キミのは、単なる「事実誤認に基づく思い込み」。(太田)
 で、そちらの「アルバニアのイスラム教徒は動機が不純でオボテュニスト」の言だけど、根拠としているのが前掲の「ベクタシュ教団の教えに従い、交易網や官僚、軍隊で優位に立つため、アルバニア人が徐々にイスラム教へ改宗。」で、でもスーフィー(ベクタシュ教団)はイスラム教徒じゃないと言うのなら、「スーフィーになったのは動機が不純」ということになるよね。
 でも先に示した通りスーフィーは地道で真面目な活動もしていて実利だけではなかった。
 ということは、「アルバニアのイスラム教徒は動機が不純でオボテュニスト」の言は、どうしたって破たんしてんじゃん。
⇒名無しの権兵衛なら、せめて、僕の口調のマネじゃない、もうちっと丁寧な日本語を使わんとな。
 そもそも、スーフィー≠ベクターシ≠イスラム教、だ。
 いい加減に、このこと、理解しな。(太田)
 ところで、アルバニアがイスラム教徒になった動機は不純だったと断定するときはスーフィーの言を根拠としておいて、スーフィーのもう一面を提示したら今度はスーフィーはイスラム教じゃないってのは、ずいぶん都合がいいね。
⇒だから、こんな文章はそもそも成り立たないの。
 歴史的経緯は次のようなカンジ。
 オスマントルコの時代に、異教に寛容な当局の姿勢の下で興隆したベクターシは、もともとスーフィーとイスラム教との混淆宗教だったが、更に、アルバニアを含むバルカン半島の土俗信仰とも習合した。
 要するに、いいころかげんな、アラカルト宗教だったわけさ。
 土俗信仰ってのは、世界中どこでも、基本的に現世利益志向だってのは知ってるだろう。
 しかも、オスマントルコの軍隊(ジャニサリー)にはベクターシが多かった。
 だもんだから、立身出世に資するという魂胆もあり、当時オスマントルコ領のアルバニアの人々の間で、ベクターシに入信するインセンティヴが働いた。
 (ベクターシたるアルバニア人の出世頭の一人が、オスマントルコの欧州における領域全体の太守(pasha)になったアリ・パシャ(1740~1822年)だ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Ali_Pasha )
 しかし、オスマントルコの国教は何と言ってもイスラム教だ。
 だから、イスラム教も、というか、むしろ、イスラム教の方が立身出世の手段としてはベターだ、と思うアルバニア人もいたはずであり、そういう人は、ベクターシじゃなく、イスラム教に改宗したことだろう。
 (イスラム教徒たるアルバニア人の出世頭の一人が、エジプトの太守となり、エジプトを事実上オスマントルコから独立させたムハンマド・アリー(1769~1849年)だ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Muhammad_Ali_of_Egypt )
 さてと、そもそも、ベクターシは、最初から、イスラム教の要素を取り入れていたんだったよな。
 だから、ベクターシに入信したアルバニア人の中からも、イスラム教に再改宗する人が出てきたとしても、これも不思議じゃなかろ。
 いずれにせよ、1826年に、さすがに寛容なオスマントルコ当局も、ついにベクターシを禁止した。
 そこで、ベクターシたるアルバニア人の大部分がイスラム教に改宗し、そんでもって、最初からイスラム教に改宗してた人と合わせ、アルバニア人中でイスラム教徒は多数派になった。
 とはいえ、ベクターシ経由の再改宗であれ直接改宗であれ、もともとの改宗動機が(現世利益とか立身出世とか)不純であっただけに、また、ベクターシ経由者の場合は、ベクターシのいいころかげんさに慣れてるってこともあり、そのうち、真正イスラム教徒と呼べる者は少なかった。
 その後、オスマントルコのベクターシ禁止は緩和されたが、第一次世界大戦後の(ほぼアナトリア半島だけに縮小しちまった)新生トルコのアタチュルクは、改めて、(スーフィーとともに)ベクターシを禁止した。
 (旧ベクターシたるトルコ人は、その後、トルコの世俗化の中心的担い手となるのだが、それは、この宗教のいいころかげんさからして、驚くべきことではなかろ。)
 この時、ベクターシは、アナトリア半島からアルバニア南部に本拠を移した。
 結果的に、ベクターシは、アルバニア(南部)だけで、いいころかげんさを維持しながら、細々と生きながらえて、共産党政権時代を迎えることになる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Islam_in_Albania
http://en.wikipedia.org/wiki/Bektashism_and_folk_religion
http://en.wikipedia.org/wiki/Bektashi_Order
 以上は、上掲典拠に載ってる史実を僕の言葉に直すとともに、それに若干の僕的補足を加えて整理したもんだ。
 じっくり反芻してみな。
 良い日本語の使用を心がけるとともに、もっともっと勉強をすることだ。(太田)
<QOHev4oY>(同上)
≫「英語ウィキペディア「アルバニア」の太田さんが引用した文章(コラム#7197、#7201)と「国務省が出した2007年レポート」(コラム#7197、英語)」・・・が典拠として挙げられている以上、「このレポートが肝」なわけがありません。・・・それは太田さんの「この私の直観は英語ウィキペディアでも(若干の想定を交えつつも)裏付けられた」(コラム#7207)からも明らかでしょう。≪(コラム#7209。TA)
 太田さんは、X=9 は拘っていなく、9http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3_(%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89)
 Therion – Live Wacken Open Air 2007
http://www.youtube.com/watch?v=97nLpf8dC2o
 前回紹介したナイトウィッシュが好評でしたが、セリオンが先駆者です。
 楽曲にオペラ要素を入れ、オペラ歌手に歌わせたらああなったってことですね。
 但し、ナイトウィッシュのターニャ(既に脱退)レベルの歌手はそんじょそこらには居ないのでそこは勘案してください。
⇒エー!あれでオペラ歌手?
 せめて、男の方だけでも、自分達で歌わず、まともなオペラ歌手を調達すりゃあよかったのに。
 これだけ聴衆が集まってんだから、出演料をはずめるはずであり、もうちっと何とかなったのかなあ。
 そもそも、曲もイマイチ。(太田)
 二年前に初来日したオランダのディレイン
http://en.wikipedia.org/wiki/Delain
http://www.youtube.com/watch?v=54WBP0NLsLw
⇒メロディーが軽すぎ可もなく不可もなし。女性ボーカルの歌唱力もそうだし、そのルックスも動作もちーと物足らない。(太田)
 同じくオランダのエピカ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%94%E3%82%AB
 Epica live @ Pinkpop 2014
http://www.youtube.com/watch?v=msgADxrjwe4
⇒本日の3組の中では、曲もまあまあである上、女性ボーカルの声質が素晴らしいことから、イチバン。(太田)
 時期的に皆さんユーロ導入とほぼ同時期に出てきたのが、興味深いですね。
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 この女性も、(無意識的に?)戦後日本における女性に係る歪曲的現状認識の補強に一役買ってるわけだ。↓
 「『やまとなでしこの性愛史 古代から近代へ』 和田好子著・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20140929-OYT8T50169.html?cx_text=12&from=ytop_os_txt2
 この米学者の、「昭和天皇=人形遣い≠人形」観は間違い。
 昭和天皇が、言ってるところの「天皇制の維持」とともに、「象徴天皇制≒民主主義」の維持を図らねばならなかったというだけのこと。
 前者が後者と抵触すると彼が考えたごくわずかな限界的事例において、昭和天皇は異論を唱えることを躊躇しなかったというだけのことなんだよ。↓
 Hirohito: String Puller, Not Puppet・・・
 Hirohito was a timid opportunist, eager above all to preserve the monarchy he had been brought up to defend. ・・・
http://www.nytimes.com/2014/09/30/opinion/hirohito-string-puller-not-puppet.html?ref=world
 下掲の小特集をNYタイムスが組んだ。
 (香港の自治なんて中共の下でありえるはずないだろってんだ。
 好みの首長を選んで反抗して武力で粉砕されるか、当局寄りの首長で我慢して自己検閲でお茶濁すかの選択なんだから、後者の方がいいに決まってんだろ。
 香港の上澄みの連中は、せめて中共当局の何分の1かでいいから、人間主義への憧憬の念を抱けってんだ。(太田))↓
 Is Autonomy Possible for Hong Kong?・・・
http://www.nytimes.com/roomfordebate/2014/09/29/is-autonomy-possible-for-hong-kong?ref=opinion
 シリアの穏健叛徒達は、米軍の空爆が、提携関係にあるアルカーイダ系まで対象にしていること、アサド政府軍の空爆を阻止していないこと、等から反米感情を高まらせているとさ。(予想通りだなあ。(太田))↓
 Opposition in Syria Is Skeptical of Strikes・・・
http://www.nytimes.com/2014/09/30/world/middleeast/opposition-in-syria-is-skeptical-of-strikes.html?hp&action=click&pgtype=Homepage&version=HpSum&module=first-column-region&region=top-news&WT.nav=top-news
 トルコが、地上部隊の派遣、シリア国内での(飛行禁止区域を伴った)緩衝地帯の設置、という形での対Isis戦への積極的関与の意向を表明。
 これは、トルコ、イラク、シリアに跨って居住しているクルド人の独立機運に水を差したいためだろう、という解説。
 (ちゃうよ。そんなの対欧米向け擬態に過ぎないんであって、トルコは、水面下でIsisとつるみ続けるつもりなのさ。(太田))↓
 After months of hanging back amid angry accusations of collusion, Turkey is gearing up for a bigger role in the fight against Islamic State (Isis) that could include sending Turkish ground troops across the border into Syria and Iraq.
 But counter-terrorism aside, Turkey’s leaders have another, less altruistic motive for getting involved: preventing independent-minded Syrian and Iraqi Kurds, who have links to Turkish Kurd separatists, from further strengthening and exploiting their position as key western allies.・・・
 Ankara wants to set up a buffer area inside Syria, protected by a no-fly zone, in part to halt the flow of refugees. An estimated 1.5 million Syrians are now in Turkey, including 160,000 Syrian Kurds who fled the recent fighting with Isis around Kobani. ・・・
http://www.theguardian.com/world/2014/sep/29/turkey-role-fight-islamic-state-isis
 アメちゃん評論家で、死刑ファトワを受けても仕方がない粗忽モンが、またもや出現したでー。↓
 Here There Is No Why For ISIS, Slaughter Is an End in Itself・・・
http://www.nytimes.com/2014/09/30/opinion/roger-cohen-for-isis-slaughter-is-an-end-in-itself.html?ref=opinion
 カタロニア人の過半近くは、もともと、スペインの憲法裁判所の決定に従う意向のようだ。
 そんな甘っちょろい気持ちじゃあ、到底独立なんてできやせんで。↓
 Spain’s Constitutional Court has suspended Catalonia’s planned independence referendum.・・・
 A recent poll for Spain’s El Pais newspaper showed that 45% of Catalans were in favour of suspending the referendum if the Constitutional Court declared it illegal.
Only 23% would like the referendum to go ahead regardless, the survey suggested.
http://www.bbc.com/news/world-europe-29410493
 ドイツは経済的にフランスは精神的にロシアとお友達だとさ。
 (だから言ってんだろ。欧州とロシアは、プロト欧州文明回帰志向のお仲間なんじゃわよ。(太田))↓
 ・・・While Germany is Russia’s main business partner, France has a special place in Russia’s heart,・・・
http://www.nytimes.com/2014/09/30/opinion/sylvie-kauffmann-to-russia-with-love.html?ref=opinion
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太田述正コラム#7212(2014.9.30)
<中東イスラム文明の成立(その14)>
→非公開