太田述正コラム#7227(2014.10.8)
<皆さんとディスカッション(続x2409)>
<太田>(ツイッターより)
「ノーベル物理学賞に赤崎勇・天野浩・中村修二の3氏…」
http://www.asahi.com/articles/ASGB273RRGB2ULBJ068.html?iref=comtop_6_01
こいつは目出度い。
それにつけても、ノーベル賞のある経済学も含めた日本の人文社会科学の相対的遅れを痛感する。
人文社会科学の振興に務めれば、もっと自然科学の受賞者も増えるんだけどなあ。
「ノーベル物理学賞・中村…教授は「日本人…」
http://news.livedoor.com/article/detail/9335325/
「ノーベル賞受賞も、日本の研究環境を取り巻くお寒い状況…」
http://blogos.com/article/96057/ 。
前者はヒトの鎖国(逆のケースなし)、後者は「学術研究」軽視の問題を示<し>てる。
<太田>
自然科学者たるノーベル物理学賞受賞者の南部、中村両氏の米国への脱出は、それぞれの個人的理由は別として、日本の学術研究環境の劣悪さ、及び、それともあいまったところの、日本の人文社会科学の学術研究水準の低さの反省の資にしなければならな。
後者は、要するに、米国が、先の大戦で日本等に対して行ったことの凶悪さ、米国という国の醜悪さ、をまともに総括し、提示することを怠ってきたってことだ。
米国の凶悪さ、醜悪さを知っている私の場合、どんな事情があったとしても、米国籍を取得することだけはありえない。
そんなことをするのは、日本、いや、世界の人々に対する裏切りだ、申し開きができない、とさえ思ってる。
南部、中村ご両名も、そういうことをご存知だったら、米国籍など取得してなかったんじゃないかな。
中村氏は、「2000年からの研究の場となった米国について「やはり自由主義。誰もが自由にアメリカンドリームを見るチャンスを与えてくれる。年齢による差別もない」と語る。
研究の予算を得る必要などから米国籍を取得したが日本国籍を捨てたわけではないと説明。「道徳という面では日本が世界で一番だと思う。ゴミを(道に)捨てる人もいないし、日本は一番美しい国だ」と述べた」
http://www.sankei.com/west/news/141008/wst1410080013-n1.html
というが、「日本国籍」は「日本」の(本人か記者の)誤りだろう。
中村氏は、これだけ日本が好きなのだから、上述した米国の真の姿をご存知であれば、日本国籍を捨てることはなかった、と思いたい。
(そもそも、「研究の予算を得」たかったのであれば、彼が提起した訴訟で、和解に応じるようなことなく、うん百億円を手に入れ、それを自分の研究費に投じておれば済んだはずだ。さほどの有名校でもない、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究環境など、たかが知れている。)
関連だが、朝鮮日報が、南部、中村両氏を日本人にカウントしていることを含め、好意的な記事を載せたことは、称賛に値する。↓
「・・・今回の受賞で日本のノーベル物理学賞受賞者は10人になり、物理学を含む科学分野では19人、全受賞者数は22人に増えた。特に2000年代に入ってから日本は13人のノーベル賞受賞者を出している。今年のノーベル化学賞候補に挙がっている劉竜(ユ・リョン)韓国科学技術院(KAIST)教授は「何代にもわたり家業を継ぐ日本の職人魂が学界にも浸透している。これこそ立て続けにノーベル賞受賞者を輩出している日本の基礎科学の底力」と語った。」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/10/08/2014100800954.html?ent_rank_news
<k9T2eDHo>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
≫いちいち過去コラムをあげないけど、そもそも、日本の国立は「学術研究より職業教育をという発想」で始まり、遺憾ながら、私学もこの発想を踏襲して現在に至ってるわけだ・・・。≪(コラム#7225。太田)
これですね。↓
コラム#1059(2006.1.25)<on the job training・実学・学問(その1)>
http://blog.ohtan.net/archives/50954774.html
<から始まるコラムシリーズ。>
このコラムシリーズを発端に結構なディスカッションがあったと記憶しますが、探してみると面白いかもよ?
<oQqZWa1E(コラム#7225)>サン。
<太田>
お示しのシリーズ、読み返してみたら、(いつも同じことを言ってるんじゃないかと思うが、我ながら)オモロイねえ。
なお、このシリーズも完結してなかったのね。
<SATO>
疑問<に>さっそく答えていただきありがとうございました。・・・
<この際、>アメリカ(に限らず)の金融資本に関しての質問です。
ジョン・グレイは、20世紀末に出した「グローバリズムという妄想」で、サッチャリズム-新自由主義が、市場ではなく、一国の社会市場(この言葉を使ってました)を壟断するものとして、厳しく批判していました。
ニュージーランドを、その弊害の最たる被害者として引いていたのですが、公共機関の民営化と福祉の衰退とがあいまって、中産階級の没落と犯罪の増加を、当然の帰結として描写していました。
グローバリズムがナショナルな経済を崩壊させるモーメントを、その金融資本の非国境性として内包していることを考えると、本来独立性を保つべき政治の領域にも過剰に浸透しているようにも思えます。
あるいは、タックスヘイブンに見られるように、政治の手から逃亡するように、独立した汚れた王国を築き上げているようにも思えます。
ジョン・グレイの認識では、これらは自由主義の一側面として、イギリスの政治史に時たま顔を表す行き過ぎた自由の偏重であるとしていましたが、アメリカでは、それが本流のように我が物顔をしているような気もします。
世界的にかまびすしいテーマとなっているグローバリズムについて、太田さんのお考えをお聞かせ願えるなら幸いです。
<太田>
「19世紀から1945年までの欧米列強による帝国主義・植民地主義もグローバリズムの一種であるが、3国以上の列強の勢力圏で閉じた経済活動を行うブロック経済であった。1991年にソ連が崩壊した後は、<米>国の一方的な軍事力を背景とした世界の画一化や新自由主義を指す事が多い。これは、しばしば各国独自の伝統・慣習と衝突<することとなるのであって、最近で言えば、>・・・ロシア、<中共>やインドの急速な台頭による多極化や、経済面での地域統合の動き(南米の南の銀行、<欧州>のユーロ通貨など)により、今後グローバル化の動き<がどうなるかは予断を許さない。>」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0
という、グローバリズムについての一般的な理解からも透けて見えてくるのは、政治的統一なくして経済的統一もまたありえない、つまりは、世界政府の樹立なくしてグローバリズムなど成り立ちえない、という冷厳たる事実です。
なお、この類の話より、私にとってより関心があるのは、先進諸国における、(スターリン主義経済体制がほぼ払底した現在、)原理主義的資本主義体制(米国型)、福祉国家体制(広義の欧州型)、日本型政治経済体制(日本型)、という、三つの政治経済体制同士のせめぎあいの行く末です。(TPPなんてものは、新手の関税同盟に過ぎない、という認識です。)
ちなみに、前2者は非人間主義政治経済体制、最後のは人間主義政治経済体制、ということになります。
<TA>
・・・<市民セミナー最終回のレジメ案についてですが、「中東イスラム世界」の関連で>パキスタンの核が言及され<てい>ましたが、対するインドの核についての言及がないことが気になりました。・・・
⇒インド側は、何事によらず、パキスタンのことなど余り眼中にないのであって、インドの核開発も、もっぱら中共の核の抑止を念頭においてなされたものですから言及しなかったものです。(太田)
インパール作戦<については、>個人的感情で恐縮ですが、同作戦についてコラム#1250あたりからもう少し言及してもいいように思います。・・・
⇒インドの将来が不透明なこともあり、また、時間の関係からも、「インド」に余りスペースは割けない、という判断です。(太田)
<中東イスラム世界の部分についても、>聴講者にある程度、誤解・誤読されるのは仕方がないにせよ、説明不足という批判をかわすために過去コラムを<もっと>多く提示する必要を感じます。
杞憂かもしれませんが・・。
⇒相当、スペースを当てたと思っています。
短時間では、どうしたって、中東イスラム世界について、一般の市民に、十分理解してもらうことは不可能でしょう。
ヒントを提供できればいいし、関心のある人には、レジメを手掛かりに、自分で更に勉強をしてもらうしかありません。(太田)
<太田>
それでは、その他の記事の紹介です。
そんでも、なお、与えた博士号はただちには取り消さないの?
一体、早稲田人のアタマの中はどうなってんだ?↓
「小保方氏指導の早大教授を停職…総長も手当返上・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/science/20141008-OYT1T50084.html?from=ytop_main2
FTが、エルドアンに対し、対Isis戦で、旗幟を鮮明にせい、と詰問したでー。↓
・・・Mr Erdogan needs to put an end to his complicated juggling act. He should recognise what the fall of Kobani – if it happens – would signify for Turkey’s reputation. In the US, Europe and the Middle East, many will struggle to understand how a country with the second-largest armed forces in Nato could allow an irregular jihadist movement to take over so much of its border. ・・・
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/96b54a7c-4e31-11e4-adfe-00144feab7de.html?siteedition=intl#axzz3FWSvaCzC
<そのエルドアンの頭の中を推測したコラムだ。↓>
http://www.foreignpolicy.com/articles/2014/10/07/fiddling_while_kobani_burns_turkey_islamic_state
<焦点となっている、クルド人都市のコバニ(Kobani)がらみの地図が載ってるよー。↓>
http://blog.foreignpolicy.com/posts/2014/10/07/you_can_t_understand_how_beleaguered_kobani_is_until_you_see_these_maps?wp_login_redirect=0
<コバニで、初めて、空爆がIsisの進撃を一旦挫折させたとさ。↓>
Intensified U.S. airstrikes keep Kobane from falling to Islamic State militants・・・
http://www.washingtonpost.com/world/airstrikes-target-islamic-state-positions-near-embattled-kobane/2014/10/07/122c9a76-1bba-4c8c-a3df-16e5a0545bb0_story.html
欧米は、中東アラブ世界も、ロシアも、全く分かっちゃないね。
太田コラム読者は、どっちも分かってるってのになあ。カワイソ。↓
「<欧米等による経済制裁にも関わらず、>ロシアのプーチン政権の支持率が衰えを見せない。80%超の数字を維持しているだけでなく、かつて反政権だった都市部の中流層も相次ぎ支持に回っている。・・・」
http://www.sankei.com/world/news/141005/wor1410050008-n1.html
インドが廃棄すべき10の法律が紹介されている。
「女王陛下」という言葉が出てくる法律まであるんだね。
(独立インドは、これまでのところ、丸っきし覇気がないね。(太田))↓
http://www.bbc.com/news/world-asia-india-29516976
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太田述正コラム#7228(2014.10.8)
<宗教の暴力性?(その2)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x2409)
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