太田述正コラム#0273(2004.2.28)
<危機の韓国(その6)>
3 危機の韓国
(1)棄国ブームの韓国
2003年4月に実施された調査によれば、梨花女子大の学生の4割は朝鮮半島で戦争が起こったら国外に逃げると答え、延世大学の学生の9割は、(海外逃亡という方法によるものもであれ何であれ)何とか軍役を免れたいと思っていると答え、ソウル市民を仰天させました。北朝鮮の核問題が再び取りざたされ始めたという背景があったとはいえ、若者達にはもはや愛国心などないのかというわけです(http://www.csmonitor.com/2003/0508/p06s01-woap.html。2003年5月8日アクセス)。
韓国の技術系のバックグラウンドを持っている人々の頭脳流出傾向もどんどん加速しています。スイスの国際的ビジネススクールのIMDによれば、韓国の技術的頭脳引止め度は、10年ちょっと前は37か国中6位だったのに、2002年には50か国中40位にまで低下してしまいました(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200401/200401270026.html。1月28日アクセス)。
そして、昨年は海外移住熱ブームに火がつきました。8月には「移民請負商品」が2800万ウォンで売りに出されて何千人もの人々が「購入」するという騒ぎになりましたし、9月にソウルで開かれた「海外移住―移民博覧会」には前年の2倍を超える1万8000人もの人々が訪れました。韓国から海外に留学する人々の数も急増しています(http://www.onekoreanews.net/20030917/syakai20030917002.htm(在日の電子版新聞)。2003年9月17日アクセス)。
どうしてこんなことになったかについては、北朝鮮の核問題のほか、「不景気と就職難、破格な子女教育費、社会の分裂・葛藤、不安定な政治など、未来に対する不確実性があまりにも多い韓国の現実に嫌気が差し」(統一日報前掲)ている韓国人が増えているためだとされています。
もっとも、これだけ韓国で棄国願望が高まっている一方で、実際の海外移住者数は伸び悩んでいます。先進国は韓国からの移住者急増を警戒して、移住枠を絞り始めているからです(統一日報前掲)。
脱出したいのにできない人々で溢れている国、それが現在の韓国なのです。(何だか「兄弟国」の北朝鮮とそっくりですね。)
(2)危機的な韓国社会
最近の韓国社会は音を立てて自壊しつつある、と言っても過言ではありません。
私が気がついたその兆表をいくつかご紹介しましょう。
韓国の離婚率は1990年には11,4%だったのに、10年ちょっとしかたっていない2002年にはこれが実に47.4%に上昇しました。既に米国の51%やスウェーデンの48%と並び、二組に一組の夫婦が離婚するという、世界有数の高さであり(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200312/200312290007.html。2003年12月29日アクセス)、しかも離婚率は更に上昇すると見込まれています。 また、経済的理由による離婚は1992年には1.9%に過ぎなかったのに、2003年にはこれが13.7%へと7倍にも急増しています(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200312/200312210020.html。2004年2月29日アクセス)。利害関係だけで結びついている索漠とした夫婦関係が見て取れます。
日本が統治下の朝鮮半島に移植しようとした近代的家族制度(コラム#265)は、定着したかどうか定かでないうちに早くも崩壊しつつあるようです。
国際新聞研究所(International Press Institute=IPI。世界45カ国の57の報道・人権団体によって設立)は2002年、2003年と韓国の報道の自由の状況に対して強い懸念を表明しました。キム・ヨンサム政権下の1995年にはIPIが韓国は報道の自由が保証されている国だと認定し、総会をソウルで開いたというのに、金大中政権の半ばから再びおかしくなり始め、その状況はノ・ムヒョン政権になってから、大統領自ら「保守系」新聞の報道姿勢を非難するなど、悪化の一途を辿っています(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200304/200304280029.html。2003年4月28日アクセス)。
最近の韓国では市民による騒擾事件(市民対官憲、市民対市民)が頻発しています。使われる「武器」はエスカレートするばかりであり、投石機器、火炎瓶、ガスボンベ、先を尖らせた鉄棒が日常的に用いられているほか、最近では劇薬入りガラス瓶や鋲打ち銃が用いられるに至っています。騒擾の主は労働組合、追放反対を叫ぶ外国人不法就労者、自由貿易協定締結に反対する農民、或いは在韓米軍撤退や韓国軍のイラク派遣反対を叫ぶデモ隊であったり様々です。
その結果、騒擾事件に対処する警察官の負傷者数は一昨年には287名でしたが、昨年は11月までだけで680名に達しました。
韓国のあらゆる不満分子に空手形を乱発して期待を膨らませるだけ膨らませたノ・ムヒョン氏が大統領になってから、事態は一層深刻化しました。ストやデモに参加した労働者数は一年で50%も増え、ロンドンの世界市場調査センターは昨年12月、韓国のカントリーリスクを前年の2.25から2.5に引き上げました(最低が1、最もリスクが高い国は5)。
海外から韓国への直接投資が1999年には106億ドルだったのに、2003年は12億ドル(見込み)へと10分の1に激減したのは当然です。
この間に、韓国では、行政・立法・司法の三権とも汚職まみれとなり、市民の順法精神も地に墜ちてしまいました。
(以上、http://www.atimes.com/atimes/Korea/EL04Dg01.html(2003年12月4日アクセス)による)。
(続く)