太田述正コラム#0274(2004.2.29)
<危機の韓国(その7)>

4 諸悪の根源=対中事大主義

 (1)中国に叩頭する韓国
以前、中国が高句麗史を全面的に中国史の中に取り込もうとしている話をご紹介したことがあります(コラム#141、142)が、北朝鮮は何の反応も示さず、韓国も完全に腰が引けた対応をしています。
この話を世界で初めて報道した昨年8月14日付の産経新聞の記事の中で、執筆者の黒田勝弘記者は、「韓国の学界は・・強く反発している。・・・韓国側は警戒を強めている」と書いて韓国側に奮起を促したにもかかわらず、当初韓国内では何の動きもありませんでした。
それから4ヶ月も経過した昨年12月7日にもなって、韓国では朝鮮日報が初めてこの話を報じ、「<我が国の>政府は、この中国による歴史の簒奪について、ほとんど気付いていないかのように眺めている」(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200312/200312050018.html(2003年12月7日アクセス)と嘆いて見せました。
さすがにほぼ同じ時期の12月9日、韓国の古代史学会や考古学会等の17の学会は合同声明を出し、「日本の教科書に見られるような、この種の覇権主義的な歴史観は中国と周辺諸国との関係に悪影響を及ぼすだけだ」とした上で、韓国政府に対し中国に抗議するよう求めましたhttp://english.chosun.com/w21data/html/news/200312/200312090010.html。12月10日アクセス)。自分の国の歴史が丸ごと盗まれようとしている深刻な事態だというのに、こんな時にまで日本のことを引き合いに出したり、あえて「韓国」或いは「韓国及び北朝鮮」と言わずに「周辺諸国」という婉曲的表現を用いたり、という対中配慮ぶりにはため息が出ました。
その後今年に入ってから、朝日新聞もこの話を報道しました(http://www.asahi.com/culture/update/0111/007.html。1月11日アクセス)が、いまだに韓国政府が中国に抗議した様子はありません。

確かに現在の中韓関係の密接さを考えると、韓国の人々が中国に及び腰になるのも分からないでもありません。
例えば、現在3万人の韓国人留学生が中国で学んでいますが、この数は各国中のダントツのトップです。また、昨年の韓国の対中輸出額は前年に比べて50%も増え、昨年の韓国の対中投資額は25億ドルと対米投資額の三倍に達し、韓国の対外投資総額の実に半分を占めるに至っています(http://www.nytimes.com/2004/02/26/international/asia/26KORE.html。2月26日アクセス)。
韓国の中国志向ぶりのすさまじさは、中国フィーバー真っ最中の日本の比ではないのです。
 しかし、それにしても、歴史問題等に関し、韓国の中国に対する態度と日本に対する態度とでは違いがありすぎるとお思いになりませんか。また、そもそも昨今の、韓国の中国への入れ込み方はいささか常軌を逸しているのではありますまいか。

 (2)米英の憂慮
日本のプレスは口を拭っていますが、米英のプレスからさえ、韓国のこのような態度を憂慮する声が出てきています。
2002年5月30日付けのインターナショナル・ヘラルド・トリビューンの論説は、「韓国はダブルスタンダードだ。韓国人は日本がどんなに良いことをしても悪いと言い、中国がどんな悪いことをしても良いと言う」と韓国を批判しました。
また、2002年2月19日付のファイナンシャルタイムズ掲載の論考は、中韓貿易が米韓貿易を凌駕しようとしている今、韓国の中国一辺倒ぶりは、(日本のみならず)米国の東アジアでの利益をも損なうと警告しました。
(以上、http://www.atimes.com/atimes/China/FA06Ad01.html(1月6日アクセス)から孫引き。)
 それから二年。「韓国の親中親北朝鮮的態度にはほとほと愛想が尽き果てた。ただちに在韓米軍は撤退すべきだ」、と言い切るのが、キム・ヨンソプとともに既に何度も登場した在韓の米国人教授のディビッド・スコフィールドです。(http://www.atimes.com/atimes/Korea/FB28Dg06.html。2月27日アクセス)
 
(続く)