太田述正コラム#7375(2014.12.21)
<皆さんとディスカッション(続x2483)>
<太田>(ツイッターより)
北朝鮮、『インタビュー』がらみのハッキングをやったという濡れ衣を着せられたとし、米国に本件での共同調査を提案。
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-30560712
喜劇映画にふさわしい展開になってきたが、今更私が言うまでもなく、進行中の拉致問題「調査」なんて悲劇を悪用した「たかり」だぜ。
<5CFBIVO>
≫誰か<、日本が世界で稀な女性優位社会だという主張に対し賃金格差や管理職の割合等のデータで反論する>人のために、過去の関連コラムのいくつかを列挙していただけないかな。≪(コラム#7369。太田)
いい検索語彙が思いつかないので上手く探せませんが、いずれにせよ、縄文モード論から話を始めないといけませんね。↓
コラム#3515 <縄文時代は男女平等?>
http://blog.ohtan.net/archives/51456405.html
直接的な説明にはなりませんが、江戸時代の支配者階級である武士について考えてみるのも意味のあることだと思います。↓
武士の質素な生活様式に外国人は驚いた
http://d.hatena.ne.jp/jjtaro_maru/20121001/1349098468
↑現代の国会議員や管理職の男女比率から、男性を現代の支配者階級としてもあながち間違いではないと考えますが、これって江戸時代の武士階級と何が違うの?
日本での「支配」行為って、そんなにオイシイことなのかな?
「支配者」は面倒事を押し付けられているカワイソーな人たちだって見方も可能だと思いませんか?
<太田>
後者はいいポイントです。
(引用に出てくる、「地位非一貫性」という言葉は知りませんでした。)
私は、日本は、弥生モードに切り替わった明治維新以降、弥生人的な武士階層の家観念や男性優位の考え方を、欧米の女性差別や一夫一婦制墨守的制度を取り入れることで、全国民に及ぼした、という考えであるわけですが、武士階層自体が、縄文人化していた点に着目すれば、おっしゃるような見方ができそうですね。
なお、Ke+yQiTwクン(コラム#7369)に対して、私の現在の考え方の傍証として、2点を挙げておきましょう。
第一点は、データ的には日本は先進国の中で最もひどい女性差別国であるわけですが、いまだに、女性差別解消を公約等の主要な柱の一つにしている政党が存在しないこと。
(これは、女性が「差別」解消など基本的に求めていないことを意味しています。)
第二点は、これは何度か過去コラムで指摘していることですが、日本人の平均寿命が女性は概ね世界一を維持してきているというのに、男性はそうではないことです。
(平均寿命は、性差を除けば、心身の健康度で決まる、と考えられます。端的に言えば、日本の女性は世界一幸せだが男性はそうではない、ということになります。)
<UxdUhNDH>
アメリカのセキュリティ研究家のマーク・ロジャーズという人が、
「今回のソニーへのサイバー攻撃は北朝鮮によるものではない」
と、自身のブログに記しています。↓
http://marcrogers.org/2014/12/18/why-the-sony-hack-is-unlikely-to-be-the-work-of-north-korea/
これは、「その10の理由」という形式で書かれていますが、目を引くのが、「このハッカー攻撃では北朝鮮で実際に使用されている朝鮮語で書かれていない」ことを筆頭の理由にあげていることです。
ロジャースさんは、ソニーへのサイバー攻撃は、
「英語使用者が意図的に誤った英文を書いた疑いがある」と述べていまして、
「英語使用者がおこなったサイバー攻撃である」としています。
このブログについては、12月19日のIT Mediaニュースの記事でも書かれていますので、抜粋します。
セキュリティ研究者のマーク・ロジャース氏は自身のブログで、北朝鮮の関与は「あり得ないと思う」
との見方を示した。
その根拠として、攻撃者が使っている英語の誤りには、朝鮮語使用者にありがちな典型的な誤りが一切なく、英語使用者が意図的に誤った英文を書いた疑いがあると指摘する。
また、SPE攻撃に使われたマルウェアが朝鮮語のPCで作成されたと伝えられている点については、「むしろ北朝鮮である可能性は薄くなる。北朝鮮では伝統的な『朝鮮語』ではなく独自の方言を使っていて、伝統的な朝鮮語は禁止されている」と解説した。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1412/19/news046.html
記事には多くのコメントが寄せられていて、出ている意見としては、
・英語圏の者がおこなった
・中国、イランなどが関与した
・アメリカ政府の自作自演
・ソニーの内部関係者
・北朝鮮以外には考えられない
などがありました。
<太田>
英米の主要メディアは、そういう声についてはまともに取り上げてませんね。
下掲記事が言及はしてますが・・。↓
・・・some in the hacker community remain skeptical・・・
http://www.theguardian.com/world/2014/dec/20/us-china-north-korea-cyberattacks-sony-pictures-hack
<QZEaG3vg>
中国国営紙、ソニー映画を批判 「傲慢さの表れ」
http://www.afpbb.com/articles/-/3034816
日本への応援?
<太田>
ソニーは、ソニーピクチャーズも含めて日本だからねえ。
ビミョーだよ。
とまれ、そんな中共にさえ、腰を低くして本件での協力をお願いした米国政府。
(早く、日本も「独立」しなくっちゃ。(太田))↓
「米、中国にサイバー協力要請 北朝鮮から経由と判断・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014122101001133.html
ところで、ソニーが、公開を諦めた訳じゃない、と反転攻勢に出たのは、助っ人女性アドバイザーの助言に従ったんだろうって言われてるぞ。
また、一旦、ソニーが公開を諦めたと言ったのは、保険金をもらいたかったんだろう、とも。↓
http://www.theguardian.com/film/2014/dec/20/sony-celebrity-spin-doctor-judy-smith-interview-north-korea-scandal-hacking
また、ソニーがこれを契機にソニー・ピクチャーズを手放すんじゃないかという憶測記事も出てた。
(なお、ソニー本社は、『インタビュー』制作に懸念を抱いていたが、ピクチャーズに押し切られた、ということも書かれている。)↓
Sony Pictures hack fuels speculation about studio’s possible sale・・・
http://www.latimes.com/entertainment/envelope/cotown/la-fi-ct-sony-future-20141221-story.html#page=2
</LCRJC4w>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
なぜ米国債売却しない?ドル高で「25兆円」の含み資産
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/155940/1
いくら属国といっても、少しぐらいは米国債を売る度胸がないとだめではないか。
<AH>
7年間の太田コラム購読により広大な未知の世界に触れることができました。
「日支戦争をどう見るか」、「日英同盟をめぐって」「ワシントン体制の崩壊」などわたしの心を変えたコラムは枚挙できません。
しかし、このところ未消化のコラムが増加の一途をたどる状況で、ストレスの原因となっています。
そこで、しばらく新しいコラムの購読を休み、溜まったコラムの消化を試みたく思います。
したがってこのたびの更新はいたしません。
<太田>
長年のご購読、まことにありがとうございました。
話は変わって、コーヒーについて、もう少し具体的に皆さんの中のコーヒー通にお聞ききします。
エスプレッソ、カプチーノ、ラテはインスタントコーヒーやドリップバッグやコーヒー豆を挽いたもの、では作れないのか、また、それはさておき、こういったものを全て作れるコーヒーメーカーとしてはどの機種がお奨めか、それとも、そもそも、例えばエスプレッソだけが作れるコーヒーメーカーに焦点を絞るべきか、の3点です。
それでは、その他の記事の紹介です。
まず、昨日の残りから。
スターリンの伝記の書評からだ。↓
<若き日まで遡ってスターリンを分析していない、と書評子が指摘している(のはおかしいのであって、むしろ、その神学生時代まで遡ってスターリンを分析していない、と指摘すべきだった。(太田))↓>
・・・He deprives the reader of insight into how Stalin’s early experience as a writer and an outlaw influenced his later life. ・・・
<トロツキーの主張に反し、スターリンこそが党組織を作った、ということをこの本は指摘している、と。(スターリンが通暁していたところの、キリスト教教会組織がモデルになってるに決まってんだろ。(太田)↓>
Reversing Trotsky’s famous conclusion that “Stalin did not create the apparatus. The apparatus created him,” Kotkin shows convincingly that “Stalin created the apparatus, and it was a colossal feat.”・・・
<スターリンは骨の髄まで共産主義者だったとこの本は指摘しているとした上で、ここでも、若き日まで遡ってどうしてスターリンがそうなったかを分析していない、と書評子が指摘している。(冒頭でのと同じ批判を彼にしておきたい。(太田))↓>
“The fundamental fact about him,” Kotkin writes, “was that he viewed the world through Marxism.” He was “marinated in Communist ideology.” Yet the book offers little discussion of Jughashvili’s gravitation from romantic Georgian nationalist to “Russian” Marxist, passionately absorbed in the intricacies of party organization and the nuances of Marx’s historical analysis of social change.・・・
http://www.washingtonpost.com/opinions/book-review-the-son-of-god-for-the-secular-age-by-james-carroll/2014/12/19/207bf60c-71b4-11e4-8808-afaa1e3a33ef_story.html
キリスト教が生まれる数百年前からユダヤ人は様々な社会において、迫害の対象に既になっていた、とさ。(ユダヤ教自体に問題がある、と考えるべきだろう。(太田))↓
・・・ hundreds of years before the birth of Christianity, various societies found it useful to attack their Jewish minorities, establishing the model for Western scapegoating. ・・・
http://www.washingtonpost.com/opinions/book-review-dark-mirror-on-origins-of-anti-jewish-iconography-by-sara-lipton/2014/12/18/6c374700-7997-11e4-9a27-6fdbc612bff8_story.html
次いで本日分です。
検証実験の結果が公表されてから、この類の「まともな」記事が出たの初めてだね。↓
「小保方氏が理研退職へ…研究費めぐり「詐欺罪」適用の可能性・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/9597619/
間違っていることを言ってるとは思わないが、こういう話は、統計学的に結論を出すべきだろう。
なお、学力が必ずしも受験力とイコールじゃないことも忘れてはなるまい。↓
「東大合格請負人「挨拶ができない子は東大に行けない理由」・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/9598389/
「東大合格請負人「偏差値35の野球バカが東大に受かった理由」・・・」
http://www.news-postseven.com/archives/20141218_293119.html
あそーなの。↓
「日本人には意外…「クール・ジャパン」と外国人観光客が群がる東京の「ロボットレストラン」・・・ホテルの「キティちゃん部屋」・・・「カプセルホテル」・・・」
http://www.sankei.com/premium/news/141221/prm1412210020-n1.html
1954年に米最高裁は、分離平等の原則(separate but equal)を判示したが、南部の多くの地域で、現在、元に戻ってしまっている、とさ。
(結局、人種主義を克服できないまま、米国は没落するんだろな。(太田))↓
・・・IN 1954, when the United States Supreme Court rejected the notion of separate but equal schools in its Brown v. Board of Education decision, St. Louis ran the second-largest segregated school district in the country.
After the ruling, school officials promised to integrate voluntarily. But the acceleration of white flight and the redrawing of school district lines around black and white neighborhoods allowed metropolitan St. Louis to preserve its racial divide. Nearly 30 years later, 90 percent of black children in St. Louis still attended predominantly black schools.・・・
http://www.nytimes.com/2014/12/21/sunday-review/why-are-our-schools-still-segregated.html?ref=opinion&_r=0
ヴィクトリア女王はヴィクトリア朝的ではなかったのに、孫のジョージ5世とひ孫のジョージ6世がヴィクトリア朝的な矮小なイギリスにしてしまったとさ。↓
<ヴィクトリア女王はセックスが大好きで、現代芸術収集家で、裸体の男性の絵を見るのが好きで、我儘で、芝居じみていて贅沢で、公務を疎かにし、下層階層を好んだ、と。↓>
Queen Victoria was not the most Victorian of our monarchs. She enjoyed sex, bought modern art, liked looking at drawings of naked men, was emotionally self-indulgent, histrionic and luxurious, neglected her public duties and preferred people lower down in the social scale (whether politicians such as Disraeli or confidants such as the drunken gillie John Brown). Victorian values, as we understand them, reached their apogee in the reigns of her grandson George V (1910-36) and his son George VI (1936-52). They were our two Spartan monarchs, duty-bound, sexually repressed, emotionally disciplined, wanting everyone kept in place and convinced that material discomfort improved people’s characters. And to a great extent, their subjects emulated their example, and made mid-20th-century Britain into a nation that was conventional, stable, prudish, dingy and insular. Neo-Georgian Britain was nothing if not self-respecting and therefore law-abiding.・・・
http://www.theguardian.com/books/2014/dec/20/george-v-david-cannadine-vi-philip-ziegler-review-review
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太田述正コラム#7376(2014.12.21)
<85歳のウィルソン(その3)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x2483)
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