太田述正コラム#7776(2015.7.9)
<現代米国人かく語りき(その1)>(2015.10.24公開)
1 始めに
たまたま、スタンフォード・ビジネススクール(GSB)の同窓会誌・・Stanford Business Spring 2015)に紹介するにたる論考が、珍しくも何本も載っているのを発見したので、引き続き、表記のように銘打って、小シリーズを立ち上げることにしました。
なお、ビジネススクールに行っていただけで送られてくるのか、それとも政治学科の修士課程にも在籍したので送られてくるのかは知りませんが、スタンフォード大学そのものの同窓会誌・・Stanford・・も送られてくるところ、こちらの方は、いい意味でも悪い意味でも紹介するにたる論考に遭遇した試しが殆んどありません。
2 Jon Shalowitz’How a Bit of Play Just Might Lead to Better Work’(PP40~41)
Shalowitzは、GSBのMBA(1996年卒)という人物です。(上掲)
「2014年のギャラップ調査によれば、全従業員の約32%しか仕事に集中していない。
つまり、ある時点で、3分の2を超える者達が窓の外を眺めているか、自分達の週末の諸計画の白昼夢を見ているか、会社の諸会議でいたずら書きをしている、ということだ。
しかし、レッドウッドシティー(Redwood City)<(注1)>のバジャーヴィル(Badgerville)という会社は、被雇用者達の諸仕事を、より報われる(rewarding)ものにすることによって、これら数値を改善することが可能である、と信じている。
(注1)「カリフォルニア州中部サンマテオ郡の都市であり、同郡の郡庁所在地である。サンフランシスコ半島にあり、サンフランシスコ市からは約25マイル (40 km) 南、サンノゼ市からは北に27マイル (43 km) に位置している。・・・オラクル・・・など技術系の会社が拠点を構えている。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%A6%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3
その方法は、仕事場を「ゲーム化する(gamihuying)」ことだ。
ゲーム化するには、最高の業績を示すスコアボードを掲げることから、働き手達が困難な任務を達成した時のデジタル「記章群(badges)」<(注2)>の手交に至るあらゆる形がありうる。」
(注2)「デジタルバッジは、学習者がある内容について習得したことを示すもので、学習者の個人ページやLinkedinのようなサービスのマイページ上に、通常バッジを模した画像で表示される。このバッジをクリックすると、リンク先でそのバッジの発行者やバッジの発行条件、またその学習者が習得のために行った活動を証明する情報が表示される。このようなバッジシステムの仕組みにMozilla Open Badgesがあり、誰しもがこのようなバッジを発行できるような仕組みやツールが提供されている。・・・
学生のポートフォリオの中にそれぞれの能力を身に付けたことを示すバッジが表示され、そのバッジをクリックすると、その学生がその能力を身につけた具体的な経験についての情報を見ることができる仕組みを導入する。
デジタルバッジが「公正」なものであるためには、発行者や発行基準が正当なものであることが大前提だが、このようなバッジを様々な学習機会に応じて発行することで、その学習者が何を学び、どのようなことができるのかについてより具体的に示すことができるようになる。インターネット上で本人のプロフィールや経歴を示すことが今後より多くなると予想されることから、デジタルバッジの仕組みが本人の能力を示す一つのツールとして定着する可能性がある。」
https://www.facebook.com/permalink.php?id=215554871920993&story_fbid=272247682918378
⇒ゲームを個人間の戦いないし個人の記録の向上、と捉えている点が物足りません。
日本の組織内においては、集団間の戦いないし集団の記録の向上のゲームだって行われていますし、純粋に楽しみとしてのゲームだって行われています。
いや、そもそも、日本では、職場は遊び(ゲーム)の場でもある、換言すれば、仕事即遊びである、と、私は、かねてから指摘してきたところです。(太田)
「もう一つのギャラップ世論調査は、忙しくしている(engaged)働き手達(workers)で構成されている諸会社は、より高い利益率と顧客評価、より少ない転職率、そしてより少ない安全上の諸事件をもたらしていること、を発見した。」
⇒(米国の通常の組織は論外として、かかる「優良」組織に関してですが、)短期的にはその通りでしょうが、私見では、全員が常に仕事に集中している組織は、長期的には衰退することになることでしょう。
だからこそ、日本には長寿企業が多いのに対し、米国では極めて少ない(コラム#7745)のです。(太田)
(続く)
現代米国人かく語りき(その1)
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