太田述正コラム#7906(2015.9.12)
<米国人の黙示録的思考(その13)>(2015.12.28公開)
「・・・その真の信者ではないにしても、福音主義的な聖書の予言の学徒であったところの、ロナルド・レーガンが、福音主義者達の全国連合(National Association of Evangelicals)を前にして、ソ連を「悪の帝国」と呼んだ時、彼は自分が何をやっているのかを明確に知っていた。
この大統領は、彼の攻撃的な核政策を福音主義者達が支援してくれることを欲していたし、福音主義者達が、ロシアが悪の帝国になるであろうことを長きにわたって信じてきたことを認識していた。・・・
ソ連の崩壊と冷戦の終焉は、福音主義者達には、彼らが自分達の諸聖書を誤読していたのかもしれないように見えた。
ジョージ・W・ブッシュ大統領の間は、福音主義者達は、次の世界の準備をするというよりは、この世界の中で働くことに向けてエネルギーを、より、投資し始めた。
多くの者達の、聖書の予言に対する関心はすぼんだ。
福音主義的巨大教会(megachurch)の牧師達(pastors)の多く、例えば、リック・ウォレン(Rick Warren)<(注42)>、T.D. ジェークス(T. D. Jakes)<(注43)>、そして、ジョエル・オスティーン(Joel Osteen)<(注44)>、は殆んど終末期について説教をしなくなった。
(注42)1954年~。「2009年1月20日、バラク・オバマの<米>大統領就任式で開会の祈祷を務めた。・・・カリフォルニアバプテスト大学 (California Baptist University) で文学士、西南バプテスト神学校 (Southwestern Baptist Theological Seminary) で神学修士を得て(1979年)、フラー神学大学で牧会学博士号が与えられた。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AC%E3%83%B3
(注43)1957年~。黒人。西ヴァージニア州立大中退。
https://en.wikipedia.org/wiki/T._D._Jakes
(注44)1963年~。父が創設した米国最大のプロテスタント宗派の上級牧師。オラル・ロバーツ大(Oral Roberts University)中退。
https://en.wikipedia.org/wiki/Joel_Osteen
⇒米国の知識人中の知識人で、恐らくは、キリスト教原理主義者でないことはもちろん、リベラルキリスト教徒ですらない、形だけのキリスト教徒たるオバマが、かねてより、その米国への根底的批判に共感して私淑してきていたところの、黒人のライト師を切り捨てざるを得なくなった時に、白人の福音主義者中、博士号まで取得している点で形式的には突出した学歴を持つ・・但し、「まともな」大学とまでは言えそうもない・・人物を就任式祈祷者に選んだのは、もちろん、政治的思惑以外の何ものでもないわけですが、学歴の点では、自分の好みを押し通した、という感じですね。(太田)
そこへ、プーチンが登場した。
この元KGBの工作員は、若干の福音主義者達の間における黙示的思考の復活を率いることに資するかもしれないように見える。
ベストセラー福音主義本の著者であるジョエル・ローゼンバーグ(Joel Rosenberg)<(注45)>、巨大教会牧師のジョン・ハギー(John Hagee)<(注46)>、そして、テレビ予言の専門家のジャック・ヴァン・インプ(Jack Van Impe)<(注47)>その他大勢が最近、このロシアの指導者を旧約聖書の予言と結び付けている。・・・
(注45)1967年~。父親がユダヤ系母親がイギリス系。米大統領候補やイスラエルの有力政治家等のコンサルタント等を務めた後、福音主義的キリスト教政治学者にしてスリラー作家。シラキュース大卒。
https://en.wikipedia.org/wiki/Joel_C._Rosenberg
(注46)1940年~。トリニティ大(Trinity University)卒、北テキサス大修士
https://en.wikipedia.org/wiki/John_Hagee
(注47)1931年~。両親はベルギーからの移民。無学歴。
https://en.wikipedia.org/wiki/Jack_Van_Impe
⇒「まともな」大学を出ているローゼンバーグが、福音主義の徒ではあっても、牧師にはなっていないことは示唆的ですね。
穿った見方をすれば、彼、黙示的言動は、あくまでも、「愚かな」福音主義信奉の大衆に自分の本を売り込んで儲けるための便宜的なものでしかないのではないでしょうか。(太田)
2006年のピュー世論調査では、米国のキリスト教徒達の79%がキリストの再臨を信じており、20%は、それが自分達が生きている間に起きることを予期している、ということが明らかになった。
また、2010年のピュー世論調査では、全米国人中、(優に1億人を超える人々であるところの、)41%、そして、白人の福音主義者達の58%が、イエスが「間違いなく」、或いは、「恐らく」、2050年までに再臨すると信じていることが明らかになった。
最後に、最近の2014年の『米国人の生活の中の聖書』<調査>は、全米国人中50%が前年中に聖書を読んだことがあり、3分の1を超える者達が、「未来について学ぶために」そうした、と主張したことが明らかになった。・・・」(J)
3 終わりに
私のこれまでの人生を振り返ってみると、それぞれが狂気の米と露(ソ)が対峙する形で世界を取り仕切っていた、狂気の冷戦時代を最初から最後まで生きた後、今度は、それに、イスラム原理主義というもう一つの狂気が加わったところの、更なる狂気の時代を現在生きている、ということになろうかと思います。
日本の「独立」が一刻も早く実現することを願って止まない次第です。
(完)
米国人の黙示録的思考(その13)
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