太田述正コラム#7988(2015.10.23)
<米海兵隊について(その7)>(2016.2.7公開)
ウ ジョンソン国防長官への抵抗
「・・・敵の二番手はルイス・ジョンソン(Louis Johnson)<(注18)>だった。
(注18)Louis Arthur Johnson(1891~1966年)。陸軍次官補:1937~40年、第二代米国防長官:1949~50年。ヴァージニア大法学部卒、弁護士、西ヴァージニア州下院議員、そして、第一次世界大戦に陸軍中佐として従軍し、弁護士に復帰後、陸軍次官補。そして、国防長官。
https://en.wikipedia.org/wiki/Louis_A._Johnson
彼は、トルーマンが国防予算についての見解の不一致で<初代国防長官の>ジェームズ・フォレスタル(James Forrestal)<(注19)>を首にした時に第二代の国防長官になったところの、政治的老いぼれ馬(hack)だった。
(注19)James Vincent Forrestal(1892~1949年)。海軍長官:1944~47年、国防長官:1947~49年。ダートマス大を経てプリンストン大に入学したが学費が続かず中退。後に海軍飛行士となるが、第一次世界大戦後は投資会社に入社しその会社の社長になる。海軍次官、海軍長官を経て国防長官。
「陸軍から陸軍航空軍を分離する形で新しく創設された空軍・空軍省は、地上基地から作戦を遂行できると主張し、彼の空母機動部隊計画に反対した。<この>空軍との対立・・・<に加え、>・・・国防費の抑制を主張する・・・トルーマン大統領と、それに反対する軍部の板挟みにな<ったことが、>・・・彼を神経衰弱(鬱病)に追い込み、最終的に自殺に繋がった。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AB
1949年12月、ジョンソンは、<海兵隊の喧伝するところの、>水陸両用諸攻撃(amphibious assaults)は、<もはや>過去の諸事柄である、と宣言した。
その10か月後、海兵隊は、仁川に上陸することによって、不意をつかれた米軍とその朝鮮の同盟軍とを殆んど打ち破っていた北朝鮮の攻勢の背骨をへし折った。
最初に朝鮮に送られた諸部隊の即応性が欠如していたことで非難されたジョンソンは、長官辞任へと追い込まれた。
海兵隊を巡る諸問題は、アイゼンハワー政権の間も続いたが、議会が1953年に法律を通し、海兵隊に法制的保護を提供したことによって、ようやく、同隊の編制(force structure)と教義に対する実存的脅威は消滅することとなった。・・・」(F)
エ アイゼンハワー大統領への抵抗
「・・・<話を少し戻すが、>海兵隊は、<自らが、>アイゼンハワー大統領の下でも統合諸計画に直面したのだが、同隊は、この政権の間に、彼の後継者達同様、彼が頼みにするに至った道具たる、「米国の軍事力の最も鋭くして迅速なる諸道具の一つ」であることを証明した。
今日では、核諸兵器、及び、戦争の、種々の機械化され電計化された諸装置(instruments)、の出現(advent)にもかかわらず、海兵隊は、「即応兵力(force-in-readiness)」として、米国の外交諸関係と国防における、筆頭の軍事道具になっている」のだ。・・・」(E)
(6)今後の展望
「・・・ベトナムでの戦争のエスカレーションに伴い、不人気な戦争を巡っての<米国民の間での>政治的怒り(furor)が、国防省内における、海兵隊が重複的地上軍であるという諸留保を圧倒した。
海兵隊は、<このベトナムで>激しく戦った。
そして、それは、この弱者を維持するに十分な理由になった。
ベトナム戦争後は、米国での戦争に対する<米国民の>諸態度は劇的に変化した。
というのも、我々の志願制軍隊は、<もはや、>我々の若者達のわずか2%程度しか占めていないからだ。
公衆は、親戚達が殆んど関わっていないので、<米軍の>当事者ではなくなった。
戦争は、オールスター諸チームが囃し立てられるところの、見物されるスポーツになったのだ。、
我々の諸コマンド・・特殊作戦コマンド(Special Operations Command)<(注20)>・・は公衆の想像力を捉えた。
(注20)統合特殊作戦コマンド (Joint Special Operations Command/JSOC)は、「<米>特殊作戦軍(U.S.SOCOM)隷下のサブコマンドの一つで、デルタフォースや海軍特殊戦開発グループなどの“特殊任務部隊(SMU)”を運用している。・・・
“特殊任務部隊(SMU)”とは、デルタフォースや海軍特殊戦開発グループのように活動内容や存在そのものが黙秘される部隊の総称。対して、グリーンベレー(<米>陸軍特殊部隊群)やNavy SEALsなど、場合によってはメディアにも露出するオープンな部隊は“特殊作戦部隊(SOF)”と呼ばれる。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B1%E5%90%88%E7%89%B9%E6%AE%8A%E4%BD%9C%E6%88%A6%E3%82%B3%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%89
オサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)を殺害したところの、小さなSEAL<(注21)>チームは、アフガニスタンで汗を流していた、100,000人の陸軍兵士達や海兵隊員達よりも、大きな注目を集めた。・・・」(C)
(注21)United States Navy SEALs。「<米>海軍の特殊部隊である。<米>海軍特殊戦コマンドの管轄部隊であり、2つの特殊戦グループ、8つのチームに分かれて編成されている。ベトナム戦争における南ベトナム解放民族戦線掃討を目的として1962年1月1日に結成された。前身として第二次世界大戦中に活躍した水中破壊工作部隊(UDT)があり、その歴史は米軍の近代特殊部隊の中で最も古い。・・・
SEALsという名称は、SEがSEA(海)、AがAIR(空)、LがLAND(陸)と、陸海空のアルファベットの頭文字から取られており、アザラシ(英: seal)を掛けたものでもある。その名の通り陸海空問わずに偵察、監視、不正規戦等の特殊作戦に対応出来る能力を持つ。・・・」
https://ja.wikipedia.org/wiki/Navy_SEALs
(続く)
米海兵隊について(その7)
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