太田述正コラム#8000(2015.10.29)
<米海兵隊について(その8)>(2016.2.13公開)
 (6)オコンネル批判
「・・・オコンネルは、統合論議の際の海兵隊の戦術を、秘の統合参謀本部諸書類を盗んだ上でマスコミや議会に漏らし、プロイセン式の軍国主義を志向していると陸軍(及びより統合された国防機構を志向した人々)を批判する寸前まで行き、過度に中央集権化された行政府についての、オコンネル言うところの「恐怖屋(fear mongering)」になったこと、に関し、叱り飛ばす。
 オコンネルは、同隊が、国家のためというより、その組織的存続の方により関心があったと示唆する。・・・
 <以上はともかく、>1950年代における海兵隊の暗黒部分・・家庭内暴力、アル中、等々・・に関しては、オコンネルは良くある間違いをしている。
 すなわち、彼は、海兵隊を文民たる対応物と階層(cohort)ごとに比較することを怠っている。・・・
 最後に、戦後、自分達が言いたいこと(story)が公衆に伝わるよう、議会やハリウッドとの同盟を鍛造したのは、海兵隊だけではない。
 新しく出現しつつあった空軍もまたこのアプローチを習得し、グレゴリー・ペック(Gregory Peck)が出演した『頭上の敵機(Twelve O’Clock High)』<(注22)>(1949年)を送り出した。
 (注22)「<米国>の第二次世界大戦 参戦初期にナチス・ドイツ及びナチス・ドイツ占領下のフランスに白昼爆撃を敢行したアメリカ陸軍第8空軍の兵士を描いた・・・映画」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%AD%E4%B8%8A%E3%81%AE%E6%95%B5%E6%A9%9F
 また、欧州で数多くの諸任務飛行を行うとともに、空軍予備役准将として勤務したところの、陸軍航空隊の爆撃機操縦士であるジェームズ・ステュアート(James Stewart)<(注23)>が、『戦略空軍命令(Strategic Air Command)』<(注24)>(1955年)のような諸映画でもって航空戦力の物語を普及させるのを助けた。
 (注23)1908~97年。「プリンストン大学で建築学と都市工学を学ぶ。・・・
 フランク・キャプラが「彼の平凡な魅力は、どこにでもいそうでどこにもいない」と着目し、『我が家の楽園』(1938年)、『スミス都へ行く』(1939年)で主役に抜擢。作品が大ヒットしスターとなる。・・・
 第二次世界大戦中は率先して軍隊に志願。陸軍航空軍のB-24爆撃機パイロットとして活躍した。出撃回数は20回、飛行時間は1800時間にも及び、1945年3月に大佐に昇進した。大戦後の1959年7月には空軍准将に昇進。1968年3月に空軍を退役し、その後少将に昇進している(ハリウッドの俳優としては最高位)。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88_(%E4%BF%B3%E5%84%AA)
 (注24)「主演はジェームズ・ステュアートとジューン・アリスンの黄金コンビ。・・・
 映像の主役は当時の戦略航空軍団の主力爆撃機であるB-36とB-47。高空を幾筋ものコントレールを引きながら飛ぶB-36の雄大さと、新時代を感じさせるスマートなB-47の姿が観る者に強い印象を与える。後の主力爆撃機B-52の実戦配備はこの映画が公開された3ヶ月後の1955年6月である。・・・
 新型のジェット爆撃機B-47を<米>本土から沖縄まで、無着陸で飛行させる<話がメイン。>・・・
 原題のStrategic Air Commandは、<米>空軍の組織である戦略航空軍団のこと・・・だが、日本での配給会社がCommandを「命令」と誤訳してしまった・・・。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E7%95%A5%E7%A9%BA%E8%BB%8D%E5%91%BD%E4%BB%A4
 「B-36は6発レシプロ機(プロペラは推進式に主翼の後ろに取り付けられている)・・・正式な愛称は存在しないが、公式な場でもしばしば「ピースメーカー(Peacemaker)」[1]との表現がなされ、これが半ば公式な呼称となっている。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/B-36_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)
 「B-47<は、>・・・ジェット推進戦略爆撃機。愛称はストラトジェット(Stratojet)。・・・35度の後退角を持った主翼、安定性増強装置(SAS)など、当時最新の技術が盛り込まれた。そのスマートなフォルムは、それまでのものと比べると革新的であった。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/B-47_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)
 「B-52<は、>・・・愛称はストラトフォートレス(Stratofortress<)>・・・先行するB-47で実証された諸要素を踏まえ大陸間爆撃機(ten ten Bomber)の航続力と兵装搭載力に亜音速の速度性能を与えた」
https://ja.wikipedia.org/wiki/B-52_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)
 今日では、もちろんのことだが、海軍のSEALsほど、その物語を成功裏に伝えるためにハリウッドを活用した組織はない。
 議会では、空軍もまた、この軍種の諸利害を増進させるにあたって、強力な議員達を頼みにすることができた。・・・」(F)
⇒以下については、いささか話が細かくなるので、当初は端折ろうと思ったのですが、考え直して、ご紹介することにしました。(太田)
 「・・・不幸にも、この本の著者は、余りにもしばしば、彼の読者に、決定的な諸概念や諸議論を典拠なしに受容するよう求める。
 例えば、海兵隊独特であると彼が同定するところの、諸価値、諸業績、諸標的、そして、インフラ、は、競争相手の諸軍種のそれらとの比較において証明される必要がある。
 ところが、オコンネルは、他の軍の諸部門が同隊の水準に近いところまで達していることを、<典拠なしに、>単に否定しているだけだ。
 彼はまた、たった一つの事例を一般的類型へと格上げする傾向がある。
 特定の海兵隊の諸物語(narratives)が具体的な(specified)文化的な諸価値ないし諸条件を表示しているということに、我々は、同意するものとみなされている。
 この著者は、特定の文化的諸属性についての文献を引用するけれど、それらが同隊全体としての諸特徴として、今なおある(、或いは、かつてあったことがある、)ということを説得力ある形で主張していない。
 読者は、全ての海兵隊の部隊や基地の兵士達の諸行動がこれらの諸属性を反映していると想像するよう仕向けられているのだ。
 著者は、また、冷戦の間の米国社会の軍事化が、どのように、陸海空軍に比べて海兵隊にとって具体的に有利であったのか、についても説明をしていない。
(続く)