太田述正コラム#8361(2016.4.27)
<皆さんとディスカッション(続x2976)>
<太田>(ツイッターより)
「潜水艦受注で日本敗退…ターンブル首相から安倍晋三首相に、ペイン国防相から中谷防衛相に、ビショップ外相から岸田文雄外相にそれぞれ電話が…豪政府に説明要求へ…」
http://toyokeizai.net/articles/-/115654
慇懃無礼なこっちゃ。
そうりゅう、豪なんかより印度に売ったげようじゃないか。
火曜に行われた米東北5州における大統領選予備選で、トランプは地滑り的全勝、クリントンはサンダースに4勝1敗。
で、早くも本選を意識し、クリントンとトランプは、方やジョーク的批判、方や女性差別的批判、を投げつけるというジャブの応酬をした。
http://www.nytimes.com/2016/04/27/us/politics/donald-trump-hillary-clinton.html?hp&action=click&pgtype=Homepage&clickSource=story-heading&module=a-lede-package-region®ion=top-news&WT.nav=top-news&_r=0
<太田>
関連記事だ。
「・・・ローウィ国際政策研究所(シドニー)のユアン・グラハム氏は、潜水艦選定で「政局も考慮されたと思われて仕方ない」と指摘する。
中国の王毅外相は2月、訪中したビショップ豪外相との共同会見で「日本は第二次大戦の敗戦国。武器輸出を規制されてきた歴史的経緯を考慮すべきだ」と述べ、豪州に圧力をかけた。・・・
海自幹部が「もともと官邸が押し込んできた話だった。機密情報が中国に漏れる懸念があった」と胸をなで下ろすように、政府が豪州との共同開発に積極的だったのに反して、海自には最高機密が集積する潜水艦の情報流出を懸念し、消極的な考え方が強かったという。・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/11460008/
<太田>
それでは、その他の記事の紹介です。
まず、三菱自動車問題から。↓
<事実関係がかなり明らかになってきた。↓>
「・・・相川哲郎社長は、燃費算出の基となるデータ測定で国の規定と違う方法を取っていたことについて、こう述べた。1991年から不正は続き、07年には社内マニュアルで国の定める方法を使うと決めたが、その後も異なる方法を継続していた。
異なる測定方法が長期間に及んでいたことに加え、すでに不正が判明していた4車種の多くのタイプで実測をせずに机上でデータを算出していたことが明らかになった。・・・
同社が2001年に行った比較試験では「高速惰行法」の方が最大2・3%抵抗値が大きく出て燃費に不利な結果だったが、別の試験では燃費に有利な結果が出たこともあった。・・・
eKワゴンの最も燃費が良いタイプの1リットル当たり29・2キロの燃費性能について、中尾龍吾副社長は、同水準の燃費性能をうたった「(ダイハツ工業の)ムーヴの値をもとに提案したと考えられる」と述べた。
このタイプの燃費目標値は11年2月時点では26・4キロ。その後、スズキが12年9月に28・8キロのワゴンRを発売し、ダイハツが同年12月に29キロのムーヴを売り出した。この間、三菱自の燃費目標は5回にわたって引き上げられ、最終的に13年2月に29・2キロになったという。
中尾副社長は「今回の変更(の頻度)は弊社のなかでもあまり例はないくらいのレベルだった。(開発現場に)プレッシャーがかかったんだと思う」と口にした。
一方、20日の会見で、データ偽装を指示したとした当時の性能実験部長は、その後の社内調査で不正の指示を否定しているという。現時点でも不正の経緯や全容が把握できておらず、同社は外部の特別調査委員会に調査を委ねる。・・・」
http://digital.asahi.com/articles/ASJ4V6551J4VUTIL05H.html?rm=475
<相川社長が確信犯?(それで、会長が姿を現さないのか?)(太田)↓>
「・・・目標引き上げは社長ら経営陣も出席する社内会議などで決まっており、組織的関与の疑いを濃くする会見内容になった。・・・」
http://mainichi.jp/articles/20160427/ddm/003/020/107000c
<もう新聞人事が出ちゃったが、当然だろな。(太田)↓>
「三菱自–相川社長が引責辞任へ 燃費データ不正・・・」
http://mainichi.jp/articles/20160427/k00/00m/020/147000c
<単純な話、重工と切り離されてから、どんどん、(相川現社長を含め、)自動車の技術者の水準が劣化して行ったから、だろ。(太田)↓>
「・・・三菱問題の難しさと若干の悲しみは、もともと世界ラリーでの活躍や四駆が売りだっただけに、もともとは三菱自動車のクルマに燃費を求めるユーザーというのはそれほど多くなかったはずだ。むしろタフさ、速さ、そして信頼性が商品の強みだったはずだ。ところが過去の不祥事の発覚や世界ラリーのレギュレーション変更、不景気局面における日本の顧客の過剰なまでの燃費志向など、相次ぐ向かい風のなかで、なぜかブランドの強みではなかったはずの燃費競争や軽自動車に経営資源を集中しつつ、参入していった。・・・」
http://blogos.com/article/173425/
<三菱自動車は、ダイムラーのせいで、グループとの関係以外では、日本的経済体制を放棄させられたんだね。
放棄させられた同士である日産と「合弁」したことが命取りになった、とは何たる皮肉だろうか。(太田)↓>
「・・・三菱自動車は、当時資本関係にあったダイムラーの意向により、系列の部品メーカーで構成された協力会である「柏会」を2002年に解散し、部品メーカーとの取引をオープンにした。日産自動車と同じく系列を事実上解体したワケだが、これと業績悪化があいまって筆者の勤めていたような部品メーカーに対する無茶な値下げにつながったのだろう。業績が厳しかったことは理解できるが、そのシワ寄せを不合理に下請けへ食らわせたのだ。・・・」
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e4%b8%89%e8%8f%b1%e8%87%aa%e5%8b%95%e8%bb%8a%e3%81%ae%e5%85%83%e4%b8%8b%e8%ab%8b%e3%81%91%e7%a4%be%e5%93%a1%e3%81%8c%e8%a6%8b%e3%81%9f%e7%95%b0%e8%b3%aa%e3%81%aa%e9%a2%a8%e5%9c%9f-%e4%b8%80%e6%b5%81%e8%87%aa%e5%8b%95%e8%bb%8a%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%82%ab%e3%83%bc%e3%81%a8%e3%81%af%e6%af%94%e3%81%b9%e3%82%8b%e3%81%b9%e3%81%8f%e3%82%82%e3%81%aa%e3%81%84/ar-BBsjdoW?ocid=iehp#page=2
<ところで、下掲の「セクショナリズム」≒「職人気質」説は、本質的な部分において完全に誤りじゃないかな。理由は、後で記す。(太田)↓>
「・・・燃費データに届出値との乖離があることを指摘したのは日産自動車だ。昨年の11月ごろに気付き、12月に合同調査をしたいと三菱側に申し入れをした。それを受けて今年2月に2社の合同調査を実施し、分析結果で走行抵抗に差があるということが判明したのが3月末。その結果を踏まえて、4月から社内調査を行い、「不正」が判明して、品質統括部門長開発担当の中尾龍吾副社長に届いたのが今月12日。その翌日に相川社長が知ることになった。
「不正」だと確定してからは早いような印象を受けるかもしれないが、日産側が「乖離」を指摘してからは5カ月、自分たちもかかわる合同調査の結果が出た後も2週間も経過している。・・・
事実と個なる報告をする。そして、不正を隠す――。こうした三菱自動車社内の空気を、メディアはポート社長のように「隠蔽体質」と報じていた。
が、よくよく考えてみると、「上」に情報をあげないというのは、「上」を信頼していないということであり、もっと言ってしまえば、「自分たちしか信じない」という現場のセクショナリズムのあらわれのような気がする。・・・
よく言えば、個を尊重して他人の仕事に口出ししない。悪く言えば徹底的なセクショナリズム。これは三菱重工以来の伝統で、他部門に口を挟まないのが企業文化として定着している。その結果、社内批判がなくなった。・・・
開発部門に「個」を尊重するカルチャーが強ければ、「組織」のルールを軽んじる空気、つまり不正に対する罪悪感のまひがあったというのは容易に想像できる。事実、かつてそのようなルールを破り、それを誇らしげに語っていた三菱自動車の技術屋がいる。
なにを隠そう、相川社長だ。・・・
新社長就任の際には、こんな職人気質がアピールされた。
リコール隠し事件発覚後、「仲間のエンジニアが相次いで会社を去ったのはつらく悲しかった」と語るが、ダイムラー傘下で開発中の軽自動車「i(アイ)」に開発停止命令が下ったときは「開発コード」を変更してまで極秘裏に続行。誠実で偉ぶらない性格だが、iのボディーをベースにした世界初の量産電気自動車「i-MiEV」も「あのとき、中止していたら作れなかった」と、技術屋魂を燃やす頑固さもある。(PRESIDENT 2014年4月14日)
カッコいいエピソードに仕立てあげられているが、これは冷静に考えれば「命令無視」だ。コードを変更してまで開発を続行したのも「隠蔽」ととれないことはない。
「上」の命令に従わず、「技術屋」という世界の「正義」に基づいて動く。このようなカルチャーが燃費データの改ざんというユーザー目線の欠如した不正に走らせたことはないのか。・・・」
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e3%81%aa%e3%81%9c%e4%b8%89%e8%8f%b1%e8%87%aa%e5%8b%95%e8%bb%8a%e3%81%af%e4%b8%8d%e6%ad%a3%e3%81%ab%e8%b5%b0%e3%81%a3%e3%81%9f%e3%81%ae%e3%81%8b-%e3%80%8c%e6%8a%80%e8%a1%93%e5%b1%8b%e3%81%ae%e9%a0%91%e5%9b%ba%e3%81%95%e3%80%8d%e3%81%8c%e8%90%bd%e3%81%a8%e3%81%97%e7%a9%b4/ar-BBsg8Mq?ocid=iehp#page=2
⇒人間の知力に優劣があるのは誰でも知っているが、上澄みに行けば行くほど、知力・・知力といっても様々だが、立ち入らない・・の優劣格差が乗数的に大きくなっていくこと、そして、それがどういうことなのか、までは、大部分の人には分からない。
幸か不幸か、高校、大学、官僚機構、スタンフォード大・・、という具合に、青年時代から落選するまで、それが実感できる環境にずっといた私には、体に染みついている感覚だけどね。
で、三菱自動車の場合、重工から分離されてしばらく経つと、重工から天下りしてくるトップとその他社員との間で、絶望的なまでの知力格差が生じて現在に至っているに違いない、と想像できるんだな。
こうなると、トップのところには、その他社員は、御機嫌伺いのために訪れるだけで、誰も新しい発想とか悪い情報なんかはあげなくなる。
「新しい発想」など、大部分は、トップから見れば陳腐過ぎて嘲笑されるだけであり、況や呆れられて譴責されるだけの「悪い情報」をや、というわけだ。
「知力」で頑張っても認められることがない、意味がない、となれば、「念力」と「体力」で頑張るしかなくなり、そして・・、ということ。(太田)
キャリア以外でまだこんな調子だってんだから、ホント、戦後日本の女性は男性差別の上に胡坐をかいてるよ。↓
「国家公務員–女性3分の1超える 最多の34.5% 今年度採用・・・
幹部候補となる総合職に占める女性の割合は33・5%で、過去最高だった前年度から0・8ポイント減少した。・・・」
http://mainichi.jp/articles/20160427/ddm/008/010/151000c
では、本日も中共官民の日本礼賛記事群だよー。↓
「日本のメディアとの交流では、ある2つのデータがしばしば話題にのぼった。一つは昨年日本を訪れた中国人観光客が延べ469万人に達し、2014年と比べ倍になったこと。もう一つは日本の最新アンケートによれば、日本国民の中国への好感度がきわめて低く、マイナスイメージを抱く人が80%以上にも達したことだ。・・・
先進各国の中でも日本が中国に対する技術貿易が最も多く、今日の中国製造業における数多くの技術は全て日本から学んでいるからだ。ある華僑は「中日の経済的な冷え込みが長期化していけば、遠く対岸でコントロールしているあの国を利するだけだ」と懸念するように語った。・・・」
http://j.people.com.cn/n3/2016/0426/c94473-9049702.html
「・・・今日頭条はこのほど、秩序ある被災地の様子を紹介しつつ、「日本人は本当に恐ろしい民族だ」と伝えている。
日本人の災害時における秩序ある行動は熊本地震に限ったものではないとして、記事は日本でこれまで発生した災害時に共通して見られた日本人の行動の数々を紹介している。
階段に腰掛けて休む被災者たちが、階段の真ん中は通行人のために空けておきつつ、自分たちは階段の端に寄っている様子や、公衆電話を利用するために列を作る人びと、女性や子どもを優先して物資を提供する様子を写真とともに紹介した。
さらに、中国の雲南省で地震が発生した際、被災者に向けてテントが提供されたが、テントを受け取る際に「保証金」を支払う必要があったという事例を紹介しつつ、日本では災害が起きれば食べ物や飲み物が無料で提供されることを指摘。中国で見られた対応を皮肉った。
中国人はしばしば「自分たちにはできないこと」などについて、感嘆の意味を込めて「恐ろしい」という言葉で表現するが、記事も、災害時における日本人の民度、素養に対して「恐ろしい」と綴っているほか、被災者にとって地震災害は「もちろん災難である」としながらも、被災者の行動は全世界に向けた「学び」を提供していると伝えている。」
http://news.livedoor.com/article/detail/11458276/
「・・・今日頭条はこのほど、「日本が衰退していると思ったら大間違いだ」と指摘し、熊本地震で日本経済の実力が見えたと論じた。
半導体の生産には豊富な水と電力が必要不可欠だが、九州はこの条件を満たすうえに交通インフラも整備されていたことから、多くの半導体工場が九州で生産を行っていた。半導体工場の数はピーク時に比べれば随分と減少したが、それでも九州には大手メーカーの工場が数多く存在する。
記事は、ソニーのCMOSイメージセンサーの工場が熊本地震の影響で生産停止に追い込まれたことが世界的な懸念を招いたと伝え、米アップルの新型iPhoneをはじめとする世界の大手メーカーのスマートフォンの出荷にも影響を及ぼす可能性について言及。熊本地震が世界の企業に大きな影響を与える恐れがあることは、すなわち日本の影響力の大きさを示すものであり、日本経済や日本の半導体産業が衰退したと考えていてはいけないと論じた。
続けて、一部の中国メディアが「日本企業は衰退した」、「日本は衰退している」などと主張していることについて、「衰退しているのは、あくまでもコンシューマー向けの製品に限った話」であると指摘。今なお日本企業は企業向けの部品などの分野においては非常に大きな影響力を持ち、日本企業が生産する基幹部品なしでは成り立たない産業が多いと伝えたうえで、「日本企業が世界のサプライチェーンの要に位置していることは、日本の電子産業の実力を示すもの」と論じた。
記事は、スマートフォンの分野を例に日本企業の世界における影響力を論じている。確かに近年はスマートフォン市場から撤退する日本メーカーもある一方で、韓国や中国メーカーの躍進が目立つ。だが、世界中で売れているハイエンドスマホには例外なく日本企業の部品が搭載されており、こうした事実を無視して「日本は衰退している」と主張するのは筋違いと言える。」
http://biz.searchina.net/id/1608286?page=1
朝鮮日報が、熊本地震に藉口して、日本礼賛キャンペーンに乗り出したようにも見えるが・・。↓
「インターネット上で1枚の写真が話題になっている。安倍首相が熊本地震の避難所を見舞った時のものだ。ひざまずき、両手を床に置いて、腰を曲げて被災者と対話する姿が印象的だ。歴史問題に関しては韓国でいい評判が聞かれない安倍首相だが、今回は評判がいい。低い姿勢が被災者たちの痛みを和らげているように見えるというのだ。「韓国の大統領もあのように被災者に接してはどうだろうか」という声もあった。・・・
重要なのは立っているか座っているかではなく、目の高さだそうだ。日本人は上から見下ろす視線を禁忌だと思っている。自分の目線を相手の目線に合わせようとするから座るのであって、結果的に座ったから正座で礼を尽くしたということだ。私は彼の言葉にうなずいた。床に座った被災者を壇上から見舞ってはならない。ひざまずいて「子どもを助けてほしい」と言われた時は、一緒にひざまずいて手を握り、相手と同じ目の高さにするのが見舞うことの第一歩だ。韓国人にとっても必要なのは100の言葉ではなく、まず同じ目の高さではないかと思う。」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/04/27/2016042700644.html
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太田述正コラム#8362(2016.4.27)
<一財務官僚の先の大戦観(その15)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x2976)
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