太田述正コラム#8465(2016.7.4)
<入院「バカンス紀行」(その3)>(2016.10.18公開)
というのも、自分達は、患者に奉仕するために存在している、という意識が彼女(彼)達の間で徹底しているんですね。
ラジオの提供だってそうです。
要求していないのに、ベッド横の棚の上に持ってきてくれていました。
そのラジオ、(ICUでもTVは見ようとすればできたと思いますが、)HCUに移った時もついてきましたが、その翌日だかに、TVのプリペイドカード(1枚1000円。5時間分)を買いに行ってもらってから、TVを見始めてふと気が付いたら、いつの間にか撤去されていました。
また、これはどの病院でも多分ほぼおんなじなのでしょうが、清拭のための清拭剤(注8)とボディシャンプー、ティッシュペーパー、そして、水分補給と薬の服用のためのストロー付水飲み、そして着替え用のパンツ(トランクス)、を私の財布からお金を出して買ってくれたほか、私が、電池式の髭剃器と歯ブラシしか洗面用具を持参していないことをチェックしたということか、私が頼まないのに、ミニ歯磨き粉が買い整えてあったのにはちょっと驚きました。
(注8)【皮ふ洗浄・清拭剤】スキナ(泡タイプ) 150g
http://store.shopping.yahoo.co.jp/wel-sense-shop/10001065.html?sc_e=slga_pla
そして、それら全てに、黒のマジックで私の名前をカタカナで書いてくれていました。
かつまた、私は、手帳は持ってきたが筆記用具は忘れたところ、ボールペンを買ってきて欲しいと頼んだら、自分が使っている三色ボールペンを無償提供してくれました。
このほか、無償提供されたもの・・こちらは当然その代金は入院代の中で払っているのでしょうが・・としては、エコノミークラス症候群ソックス(注9)があります。
(注9)着圧ソックス。
https://medicil.jp/7708
このソックスは、退院日まで、(風呂に入った時を除いて)着用し続けさせられました。
始めのうちは、ゴム部分に当たり負けして痒くて仕方がありませんでしたが・・。
スマホから電報を打つ方法を調べて教えてくれたのも看護婦達です。
その看護婦達が、誰も制帽(ナースキャップ)を着用していないのには、ちょっと戸惑いました。
看護学校に戴帽式があるくらい、制帽は付き物だ、という認識があったからです。
看護婦が、男性にも門戸を開いて看護師になったからかな、とその時は思ったのですが、衛生上の観点からだったのですね。(注10)
(注10)「看護師の仕事は病人に奉仕するという意味合いがあり、昔は・・・キリスト教の・・シスターの仕事だったわけです。シスターは長いガウンのようなベールのような制服を着ていますが、看護師のユニフォームはシスターの服装が原点になっていると解釈されます。
従ってナースキャップもこれに由来していると考えられ、誇りをもって仕事をするための象徴でした。・・・
<しかし、>ナースキャップは毎日は交換しません。しかも形を整えるためにガチガチにノリ付けされています。このノリが細菌増殖の温床になっていることが分かってきました。夏は頭皮に発汗するので、汗が適度の湿度を与える結果になるとキャップは細菌の培地となってしまいます。
また、必ずしも毎日洗髪するとは限りませんので、頭髪、頭皮、フケに病原菌を飼っている可能性も否定できません。」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20140203/382283/?rt=nocnt
ここまでは、ここが人間主義の日本だということを踏まえれば当たり前かもしれませんが、私が感服したのはこの先です。
まず、彼女(彼)達が、入れ代わり立ち代わり、私と積極的に会話をして、私の話を引き出そうとしてくれたことです。
私がブログを書いていること・・さっそく、ブログ読ませていただきました、という看護師が2人もいた・・、そして、私の舛添論、等々。
後で思ったのですが、これ、患者が落ち込まないよう、退屈しないよう、患者を興奮させない範囲で、重篤患者に、あえて話をさせていたんですね。
さほど高くない給与で、激務をこなしながら、しっかり、ホステス(ホスト)業もやってくれていた、というわけです。
極め付きは、初日に悪戦苦闘の上、コンタクトし、初日に、一家3人そろって見舞いに来てくれた読者一家に対する対応です。
翌日には読者と奥様、更にその翌日には奥様が1人、で来訪した後、何日か間が空いたのです。
その間、他の見舞客はあったのですが、看護婦達は、シフト勤務なのに、どんな人がどんな頻度で特定の患者の見舞いに来ているのか、を記録し、それを引き継いでいるのでしょう、看護婦から奥様に電話がかかってきたというのです。
「太田さんは一般病棟に移られていますが、次はいついらっしゃいますか」と。
たまたま、この奥様に、後、一度だけ、家事・・ピアノ部屋の除湿器の溜まった水の廃棄・・をお願いしていて、私自身も彼女の来訪を待ってはいたのですが、この奥様に、「太田さんが看護婦さんに頼まれたのですか」、と来訪時に笑いながら問われ、真顔で否定しておきました。
これ、ちょっと凄いハナシじゃありません?
ところで、初日の2度目の真夜中に、仮眠するため(?)か髪を下した2人の看護婦が私のベッドの横で計器類のチェックを静かにしているのに気付いて目が覚めたのですが、薄暗がりの中で、私の目には、この2人の姿が女神のように神々しく、美しく映ったことを、今も感動と共に思い出します。
(続く)
入院「バカンス紀行」(その3)
- 公開日: