太田述正コラム#0408(2004.7.12)
<参院選(その2)>
2 参院選についての英米の論調
(1)論調の紹介
ア 英国
ガーディアン:無視。
ファイナンシャルタイムス:見出し・・小泉大打撃を受ける(Koizumi dealt heavy blow)。解説・・年金(実体面と手続き面)、自衛隊イラク派遣(実体面)問題が原因。(http://news.ft.com/servlet/ContentServer?pagename=FT.com/StoryFT/FullStory&c=StoryFT&cid=1087373635222&p=1045050946495。7月12日アクセス(以下、同じ))
BBC:見出し・・首相、票を減らす(PM suffers poll setback)。解説・・首相への国民の三年間にわたった恋愛感情の終わり、自民党支持層の小泉改革による痛みへの怒りが原因。(http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/3883671.stm)
イ 米国
ワシントンポスト:見出し・・与党票を減らす(Setback to Ruling Party)。解説・・小泉改革による(?)経済の回復にもかかわらず、年金(手続き面)、自衛隊イラク派遣(手続き面)、それに北朝鮮拉致問題が原因。(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A42222-2004Jul11.html)
ニューヨークタイムス:見出し・・自民党権力を維持(Majority Party in Japan Retains Power)。解説・・年金(実体面と手続き面(注2))、自衛隊イラク派遣問題(実体面と手続き面(注3))が追い風にはなったが、民主党は、共産党等の小政党の大敗の分得をしただけのこと。とまれ、日本は二大政党制に次第に近づきつつある。ただし、自民党と民主党はどちらも保守政党であり、大部分の政策で差異はない。(http://www.nytimes.com/2004/07/12/international/asia/12japa.html?hp)
クリスチャンサイエンスモニター:ベタ記事扱い。見出し・・連立政権多数は確保(ruling coalition holds majority)。解説・・年金と自衛隊イラク派遣が足を引っ張った。(http://www.csmonitor.com/newsinbrief/brieflies.html#WORLD16:52:30)
CNN:見出し・・小泉首相打撃を受ける(Election blow for Koizumi)。解説・・年金(実体面)、自衛隊イラク派遣(実体面と手続き面)、が原因。(http://www.cnn.com/2004/WORLD/asiapcf/07/11/japan.poll/index.html)
ロサンゼルスタイムス:無視。
(注2)実体面とは、給付の減と負担の増の問題。手続き面とは、首相自身を含めた政治家の不払いまたは国会運営の問題。
(注3)実体面とは、派遣の是非の問題。手続き面とは、首相がサミットでブッシュ大統領に対し、真っ先にイラク主権移譲後も引き続き自衛隊派遣を続けると言明したことの問題。
(2)感想
英国のメディアは三つだけ参照していますが、三つの対応がそれぞれ全く異なっていて面白いですね。
ガーディアンは日本の参院選の結果はニュースに値せず、(当然)解説にも値しない、と判断したのでしょう。
ファイナンシャルタイムスは、米国のメディアも含め、最もセンセーショナルな見出しをつけて報道しました。これは、日本の株価に悪い影響を及ぼすという判断からだと思われます。
BBCは米国のメディアも含め、最もユニークな解説ぶりですね。それでいて、結構説得力があります。
次に米国のメディアですが、西海岸の新聞であることから、日本に強い関心を持っているはずなのに、ロサンゼルスタイムスが無視した、というのは感心すべきなのか心配すべきなのか、よく分かりません。
ワシントンポストは、英国のメディアも含め、唯一、日本経済の現在の好調ぶりと拉致問題に言及した点はさすがですが、全般的に、めずらしくニューヨークタイムスの方が見出し、解説とも冴えています。
ニューヨークタイムスは、私の考えと殆どおなじです。
クリスチャンサイエンスモニターは、無視に近い扱いですが、内容的にはニューヨークタイムスに近いと言っていいでしょう。
最後にCNNですが、内容的にはワシントンポストに近いですね。
こうしてみると、英米では一つ一つのメデイアが実に個性的であり、とりわけ英国のメディアは個性的だと改めて痛感させられます。日本のメディアが参考にして欲しいところです。
(完)