太田述正コラム#8765(2016.12.1)
<米リベラル知識人の内省一(その2)>(2017.3.17公開)
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[トランプの「反ユダヤ主義性」問題(於米国)の背景]
ブルマのこのコラムがNYタイムスに掲載された、米国時間の11月29日、ユダヤ系米国人であるスティーブン・ムヌキン(Steven Mnuchin。1962年~。エール大卒、ゴールドマン・サックスに17年間勤務の後、プライベート・バンカーとなり、ハリウッド映画制作等に携わり、トランプ選挙運動の財務責任者を務める。)が財務長官に指名された
https://en.wikipedia.org/wiki/Steven_Mnuchin
http://www.haaretz.com/world-news/u-s-election-2016/1.756154
ことで、トランプが反ユダヤ主義者などではありえないことが明白になった。
いや、そもそも、ムヌキンはトランプ選挙運動の財務責任者だったのだから、それだけで、ずっと以前からそんなことは明白だった、と言うべきだろう。
更に言えば、米国時間の11月30日、今度は、商務長官にウィルバー・ロス(Wilbur Ross)が指名された
http://time.com/4585879/donald-trump-steven-mnuchin-wilbur-ross-treasury-commerce/?xid=homepage
が、彼は、ロスチャイルド社(N M Rothschild & Sons)のニューヨーク事務所に24年間務め、同社の専務理事にまでなったところの、2014時点で資産29億ドルの大金持ちで、かつてトランプのカジノ商売上の危機を救った人物である
https://en.wikipedia.org/wiki/Wilbur_Ross
ところ、彼は、ユダヤ人でこそないけれど、大方の人が御存じのとおり、ロスチャイルド社は、ユダヤ系イギリス人一族の会社
https://en.wikipedia.org/wiki/N_M_Rothschild_%26_Sons
https://en.wikipedia.org/wiki/Nathan_Mayer_Rothschild
であり、トランプは、(長女の結婚相手といい、)むしろ、ユダヤ人フェチではないか、とさえ思えてくる。
実際、トランプは、親イスラエル政策を打ち出している。
トランプが、イスラエル政府が批判しているところの、(オバマ政権が締結した、)イランとの核協定の破棄を唱えていることはよく知られているところだ。
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-38149088
そのトランプだが、彼は、選挙中の5月の冒頭に、(これまでの米国政府が、パレスティナ和平の妨げになるとして反対してきたところの、)ヨルダン川西岸でのイスラエル人入植地の建設について、イスラエルは、それを続けるべきだ、と発言している
http://www.timesofisrael.com/liveblog-may-2-2016/
し、また、その選挙運動期間を通じて、米国政府が過去70年間にわたってイスラエル政府の要請に抵抗し続けてきたところの、エルサレムのイスラエル首都としての承認とそこへの(テルアビブ)からの米国大使館の移転、を自分が大統領になったら行う、と誓約し続けてきた。
http://edition.cnn.com/2016/10/26/politics/trump-pence-israel-jerusalem/
にもかかわらず、米国の主要メディアは、トランプが反ユダヤ主義者である、との批判を執拗に行ってきた。
これは、ユダヤ系が牛耳っている(典拠省略)米国の主要メディアが、米国の対イスラエル政策を主導してきた(典拠省略)ところ、それを種々の点で変更しようとしているトランプを目の敵にし、トランプが白人至上主義のKKK系の人々や米ナチス党(merican Nazi Party)・・これらは論理必然的に、それぞれ、反ユダヤ人/アラブ人、反ユダヤ人、的である・・の勝手連的支持を受けている(上掲)こと等を引き合いに出して、「トランプ=反ユダヤ主義者」的イメージをでっち上げた、と見るべきだろう。
こんなことが起きるのは、結局のところ、在米ユダヤ人達、とりわけその知識人達が、米国、とりわけ米国のリベラル、に過剰適応してしまっていて、彼らは、基本的には親イスラエルであるものの、重要な諸点で、それに徹しきれないところ、そこをトランプに突かれたことに逆上したからであり、一種の近親憎悪だ、と私は思うのだ。
まだ、形の上ではオランダ人で、しかも、ユダヤ系イギリス人であった母親を持つ、ブルマにして、その長い米国在住を通じ、やはり、米国のリベラルに過剰適応してしまった、という可能性が高い、というわけだ。
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(続く)
米リベラル知識人の内省一(その2)
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